檸檬のころ
著者: 豊島ミホ
単行本: 261ページ
出版社: 幻冬舎 (2005/03)




”痛々しい。見ているこっちが疲れるんだよ。” 〜本文『金子商店の夏』より抜粋〜

痛々しいのって、本人が一番良く分かっていて、言われちゃうと結構キツイ。だって、誰だって好き好んでそんな状況に身を置いている訳では無いし、とはいえ全て自らに起因していることは間違い無くって、それでも自らの力や手では抜け出さないから甘んじて受け入れていることで、どうしようもないことだったりするから。
圧倒的に開き直るしかない!
だって、どうしようもないんだもん。人生色々あるんだから、こんな時があったって、仕方が無いよね。色々あって、色々な人たちがいるからバランスが取れているんだよ。誰にだって、そういう時があるよね。色々あるから愉しいんだよ。

R-18文学賞第1回の読者賞を受賞して、作家デビューを果たした、豊島ミホ、デビュー作の『青空チェリー 文庫版』に続いて手にした。1982年、戌年生まれということは、干支でひと回りも違うのね!? それでも、読みたくなるのは、やっぱり好きだから! 正直に言っておきます、いいです! そうそうそうだよねぇ〜、とか、そうだったなぁ〜、とか、そういうことだったのね!?、とか、おぢさんにも納得、思い起こされる懐かしい記憶、それだけでなく現在の現実でも思い当たる節がありあり、自然に心に沁み込む部分がてんこ盛り。甘く切ないだけじゃない。

著作は、東北地方の片田舎の高校生活(北高校)を、高校3年生の男女生徒とその周りの人々を主人公とした、七つの物語から成り立っている。高校生活の最後、卒業して生まれ育った故郷を離れ、夢と不安を抱いて東京へと飛び立つところまでが描かれる。
『タンポポのわたげみたいだね』は、橘ゆみ子の口から語られる。いつからか保健室の常連となっていた小嶋智と出会いと、藤山君の告白、そしてあらためて確認する小島智との友情。
『金子商店の夏』は、東京で司法試験の予備校に通う28歳の痛い金子晋平。金子の実家は、北校前の駄菓子屋。母から「おじいちゃんが死にそうなの」との電話で、久し振りに、避けていた帰郷を果たし、直面する跡継ぎ問題やら厳しい現実やら。それでも、駄菓子屋の店先に飾る風鈴を買いに行こうと思う夏。
『ルパンとレモン』は、北校の野球部の西君。中学の同級生で吹奏楽部の秋元加代子とは、中学卒業の頃にいい感じの時があって、今でも淡い恋心を抱いていて、でも同じ野球部の佐々木富蔵に奪われてしまう、悲しい現実。レモン味のリップクリームと、秋元さんが佐々木君のために奏でるルパンのファンファーレと。
『ジュリエット・スター』は、北校生らの下宿で母を手伝う娘、24歳の理可。美容師の彼氏、木島君がいて、北校の林君との規則違反の男女交際が故に下宿を追われる南高校の水橋珠記の対応を、父と母から押し付けられる。水橋珠記の、時に男に色目を使い、時に舞台を描いての迫真の演技。
『ラブソング』は、音楽好きの白田恵。いとこの志摩ちゃん(こちらも何故か保健室の常連)が音楽雑誌にレビューが掲載されて失われる自信。同じクラスの辻本君と音楽の趣味から恋心を抱いて、夢破れる現実。現実を知る前に書いちゃった、辻本君がバンド演奏する曲に合わせた詩。それは当然に、恋の詩。格好悪いけど、それが現実、格好悪くないよ!
『担任稼業』は、北校の教師の丹波先生。勤続15年あまり、マンネリで、多少自信喪失気味。独身で両親と同居。結構現実味ありあり。小嶋智の対応に苦慮する、出席が足りなくて卒業できないよ〜。何故か坂口安吾の「桜の森の満開の下」
『雪の降る町、春に散る花』は、やっぱりマドンナ秋元加代子。いよいよ卒業だもんね、クライマックス、美味しいところ。交際中の野球部の佐々木君の合格通知はいまだ届かず奮闘中、そして彼女は東京の大学へと準備に追われ、夢と希望と不安と色々な思いを胸に故郷を後にする。4年前に先に東京での生活を送る兄と、その実家に残された兄の部屋、そして父と母の会話、別れの時。故郷の思い出。

女子高校生の視点、男子高校生の視点、教師の視点、下宿の娘の視点、高校脇の駄菓子屋の孫(?!)の視点で、それぞれの想いをそれぞれの側面から綴ることによって、さらに大きく鮮明に描き出される物語。
当然にひとつひとつの物語は短編小説として独立して完結している。しかし、そのひとつひとつを完全に独立した物語として完結させているが故に、微妙な関連性のみを残して完結させているが故に、全体の物語の完成度が高められている。

それは即ち、そのまま映画にしたくなるのも頷ける訳で、映画「檸檬のころ -れもんのころ-」、著者が意図した訳では無いと思われるが、映画としても状況や情景が描き易い。当然に私も、その映画化の情報を入手した後に手にしている訳で、その部分のリサーチも興味深い部分ではあった。

読了後の、拙い私のリサーチでは、著者は、決して主役とならない保健室の常連『小嶋 智』?! 主役にはならないけれど、主役にならないからこそ、物語における重要な鍵を握っていて、この物語を創り出すことができた?!

とか色々言いながら、実際には、男性の教師や金子商店の孫の予備校生の描写には、多少の違和感を感じたり、う〜んと考えちゃうとこととか、若さ故とか、現実はね、何てところがない訳じゃ無いのよ(笑)!
そんな小さなことなんて、全く気にならない溢れる魅力!

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