旅 2007年 07月号
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書評/旅行・娯楽



私の北欧のイメージは、、、
映画「かもめ食堂」かなぁ!? 映画は、フィンランドが舞台だったから、今回の特集のメインのコペンハーゲン(デンマーク)とはちょっと異なるけれど、広く北欧という括りの中で・・・
演出による部分を割り引いても、画面から溢れる雰囲気、癒し、心の安らぎ。脳裏に残る、どこか漂う、豊かな大らかなイメージ。

静かな蒼い海。それでもその海は、決して澄んだ青ではなくて、白い砂浜のビーチでもない。湾の内側の、寂れた漁港?!、小さな観光船や客船だって停泊するけど、人影は多くなく、賑わいを感じることはない。平穏な静かな静かな旧い街。そよぐ海風も、流れる時間も、全てが静かでゆったりと・・・
空だって鉛色で、雲間から漏れる優しい陽射しが照らすのは、味気ないコンクリートの岸壁に佇む、草臥れた猫を抱える初老の物憂げな男性。それでも、何かに急かされて、追い立てられることもなく、ただただ流れ往く時間にその身を委ねている。聴こえてくる、鉛色の大空を飛び交うウミネコの鳴き声。
蒼い海間に浮かぶ、旧い漁船やら客船やら。静かな海に、ただただ静かに漂う。
街を見渡すと、旧いんだけど、愛情たっぷり鮮やかなペンキに彩られた、ビルというには忍びないアパートメント?!たち。オレンジに、黄色に、緑色に、青色に、茶色に、ベージュに、白、、、 それぞれが個性を主張していて、オーナーたちの愛情に満たされて、とっても誇らしげ?!
旧い石畳の路地に面したアパートメントビルの一階の小さな食堂は、やっぱり旧いんだけれど、真っ白いペンキでお化粧されて、明るい清潔感に溢れる。高い天井まで大きく開いたガラス窓から射し込む陽射しは優しく室内を照らす。お客さんが誰もいない食堂には、小さな日本人の女性がひとり、キッチンのカウンターの前でグラスを磨いている。大切に大切に、愛情を籠めて・・・


どこまでも、ゆったりと流れる時間・・・
何も変わらない。
誰かに何かに、急かされることも、追い立てられることもなく、ただただ流れる時間にその身を委ね、自らが大切に愛するものと過ごす時間。誰のためでも、何のためでもなく、自らと、自らが愛するもののために紡がれる時間。自らが、自らの意思で紡ぐ時間が大切だから、その大切な時間は、愛するモノ(物)と過ごしたい。愛するモノは、誰のためでもなく自分のためのモノだから、誰かと比較することは一切不要で、だからこそ、本当に自らが欲する、自らの身の丈に合ったモノを、必要な分量だけ手にすればいい。手にした必要な分量だけの大切なモノには、常にたっぷりの愛情を注いで、長く長く大切に大切に遣い込む。愛情たっぷりに大切に大切に遣い込まれるモノたちだって、愛でられれば、それは誰だって嬉しいし、やっぱり素敵に誇らしげに、いつまでも輝きを失わない。



甘味たっぷり、愛情たっぷりのスイーツたちもいいけれど、
”をとこ”の私は、『船乗りたちが愛用した、まるいグラスの物語。』に魅せられる。
老舗グラスメーカー、ホルメゴー社の「シップグラス」。
”親しみやすく、丈夫で素朴なグラスたち。
 海からの風を感じて。”

とあるように、セーリングやボートなどの海上スポーツを愉しむ、海を愛する人々に好まれてきたグラスたちには、当然に高い耐久性が求められ、どこか逞しさすら漂い、遣い込むほどに馴染んできそう。
1971年に発表されたシリーズというから、決して旧い歴史とは言えないけれど、それでも35年以上の歳月を経て、語り継がれる物語は、ただただきらめく美しさだけではない、深い味わいを醸し出す。



”小さな町へ小さな旅”特集は、
天橋立(陸奥の松島安芸の宮島と並ぶ、日本三景)に見守られた、潮風の城下町『京都 宮津伊根』。
自然の不思議な微妙なバランスに創り出された造形美。
百人一首にも詠まれている古代からの名所。
おやおや、現在では、侵食問題により縮小・消滅の危機にあるらしい。
戦後、河川にダムなどが作られ、山地から海への土砂供給量が減少し、天橋立における土砂の堆積・侵食バランスが崩れたためであり、その対策として、行政では砂州上にそれと直交して小型の堆砂堤を多数設置し、流出する土砂をそこで食い止めようとしている(Wikipediaより抜粋)とある。
とっても現実的な問題。



私のお気に入りは、やっぱり”旅に持って行く本”!
何と、アリス・マンロー「林檎の木の下で」が一押しされております。
確かに、旅に持って行って、贅沢な時間を贅沢に愉しむに値する著作です!
私が参画させていただいている”本が好き!プロジェクト”に、素晴らしい書評の数々がアップされています。愉快爽快痛快な物語では決してないんだけれど、読み易い作品では決してないけれど、それでも深い満足感に浸れる秀作。



時にリアルであり、妄想であり、”旅”という”非日常”に求め、そしてそこから得られる幸福感。
リアルに、目で見て、耳で聴き、鼻で嗅ぎ、身体全体で感じる感覚、お洒落をして、たまには贅沢な時間を費やす必要もあろう。