白楼夢―海峡植民地にて
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書評/ミステリ・サスペンス



本が好き!PJ”からの献本、七十作品目の書き記し。

多島斗志之が、”海峡植民地”と呼ばれていた、1920年代の英国領シンガポールを舞台に描くミステリ小説。
あとがきの”解説”にて、ミステリ研究家日下三蔵が評する。
当時の国際情勢を背景にした謀略小説であり、外地に進出した日本人たちを描く歴史小説であり、殺人事件の意外な真相を探る本格ミステリであり、迫力満点の逃亡サスペンスであり、男と女の色の行方を描く恋愛小説でもある。”

物語に描かれた後の、1941年には太平洋戦争が始まる。
日本と、主にアメリカイギリスオランダなど連合国との戦争は、ハワイオアフ島真珠湾攻撃”の 1時間49分前、1941年12月8日 日本時間午前1時30分(ハワイ時間12月7日午前6時)に、日本陸軍はアジアにおけるイギリスの拠点であるシンガポール攻略のために、当時イギリスの植民地であったマレー半島の、タイ王国国境に近いコタ・バル上陸作戦を仕掛けた、マレー作戦に始まる。
 (〜Wikipediaより)
第一次世界大戦 1914年〜1918年。

当時のシンガポールを、支配していた”イギリス”。
大航海時代を経て、世界屈指の海洋国家として、世界に植民地を拡大し、世界最大の奴隷貿易国などの、築き上げられた栄華に翳りが見え始めた頃?!
そして、イギリスは歴史的に階級社会であるとされる。
王室と世襲貴族を頂点に、爵位に基づく称号栄典上の階級が大規模に存続する。労働者階級であり、上流階級中流階級
本国から遠く離れていても、遠く離れているからこそ色濃く漂う。

外地に進出する日本人や華僑たち。自らの生まれ育った国を、何らかの理由から出でて、新たな可能性を求める行動を起こす。現在のように飛行機で何処でも気軽に、という時代ではない筈で、「二度と祖国の土を踏むことは無い」という強い想いを胸に抱き。異国の地で生きることに必死な人々。生きるために、娼婦だって拒まない。
そうして形成される、同文同種のコミュニティ(共同体)
日本人は日本人同士で、華僑は華僑同士で。経済活動に優れ、財を成した華僑たちは、更なる富を求め、利権を漁る。経済活動には、競争原理が働くから、生き残るために繰り広げられる熾烈な争い。時に武力抗争へと発展する。力の強い者だけが生き残る。支配する者と、支配される者。個人を超越して、国家間の策略さえもが垣間見える。
異国に地にあっても、築き上げられたコミュニティに働く、種の保存の本能。歳月を経ることによって、誰もが老い、輝きや威力を失い、翳りを見せる力。だからこそ、継ぎたい”血”。濃い血を遺す本能。強い者が放つ光、匂いが、強い者を惹き付ける。
それでも、血は抗えない。対抗する勢力同士であっても、何かのキッカケで引き起こされてしまう過ちは、それさえも時に必然であり、濃い血を有する者の”宿命”とさえ。
想像を絶するほどに苛酷な”血”。
歳月を経て、母であり、娘に襲い掛かる、不条理な事件。

”死”という不存在によって、覆い隠され、封印されてしまう真実。
それでも、どんなことがあったって、それが真実であるならば、いずれ明らかにされてしまう現実。

とどのつまりが、殺人事件の「犯人が誰であるか?」ということよりも、「何故に殺人事件が引き起こされたのか?」であり、そこに垣間見える人間模様が、物語の妙であり、犯人が明かされる痛快さに勝る、深い充実感に満たされる。









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