上司は思いつきでものを言う (集英社新書)
著者: 橋本治
新書: 221ページ
出版社: 集英社 (2004/04)



簡単です。あきれちゃえばいいのです。「ええーっ?!」と言えばいいのです。途中でイントネーションをぐちゃぐちゃにして、語尾をすっとんきょうに上げて下さい。
  〜第三章「下から上へ」がない組織 より
橋本治が説く、人間関係の極意。会社という社会組織における人間と人間との関係。

本音を言えば、新書で語って欲しくなかった。
大きくかさばる単行本にこそ、重みを感じたりする。その重さと装丁は、見掛けだけの違いなんだけれども、それでもやっぱり、そこには大きな違いがある。あくまでも個人的な思い込みでしかないんだけれど、コンパクトに纏められた姿に、ありがたみも同調する。だから何なんだでしかないんだけれど、、、
そこには、出版業界の現状と、橋本治の苦渋の思惑まで、勝手に想像を進める。
単行本は”ありがたみ”があるんだけれど、本を読まなくなってしまった現状において、そのありがたみであり、重みが、さらに本を読むという行為から人々を遠ざける。モノに溢れる現代人は、大きくて重い本など持ち歩きたくない。ありがたみは、ありがた迷惑との紙一重、教えを請うなど、大きなお世話?! 世知辛い世の中、時間に追われる現代人、本など読んでる時間はない! (時間はあくまでも創り出すものなんだけど・・・)
だから、本を書くことを職業とする橋本治は考える。このままでは本が売れない。本が売れないと困る。自らの豊かな生活が実現できない。豊かな実りある人生を生きたい。本を売りたい。
それよりも何よりも、悩んで困っている人々の助けになりたい。橋本治の本を読んで、何かを感じて、何か人生の転機のキッカケを掴んでもらえたら、という熱い想いを実現させたい。そのためには、まずは何より、本を手にしてもらうことから。社会生活を送る多くの人々が、何に思い悩み、何を求めているのか? そして、どんな本にしたら売れるのか?? だって、売れなければ意味がない。売れなければ、それはただの自己満足、自慰行為でしかない。
サラリーマンは、会社帰りの赤ちょうちん(?!)で愚痴る。「会社が、、、上司が、、、」とどのつまり、人間関係に問題を抱えている。人間関係に悩みを抱えるサラリーマンは、あまり本を読まない。向上心を抑え、組織からはみ出さないのが、ある部分では会社という組織に生き残る重要なテクニックのひとつだったりする。だから、赤ちょうちんで愚痴ったりするのであろう。愚痴ることによって問題をうやむやに消化させ、本質の直視を避け、現実逃避し、現状に慣れて、中途半端に満足してしまう。だから、社長にも、上司にもなれない、資格も能力も有しない。ただそれだけ。
それでも、会社という組織に居残るために、やっぱり問題として意識の片隅に消えない人間関係に、最低限の努力は惜しまない。会社に居残れなかったら、生活が成り立たなくなっちゃうから、保身のために。理由が何であれ、問題を抱えている現状に相違はなくって、それでも、ありがたい立派な本から、教えを請うなどということは、まっぴらゴメン。プライドだって許さない。どんなプライドなのか、考えると悪寒がするけど、そういうものなんだ、でしかない。
装丁を落として、価格を抑えて、微妙に”ありがたみ”も軽減させた、お手軽な”ビジネス書”の”新書”が、サラリーマンの人間関係の入門書としての地位を築く。手にされ、売れて、認知されなければ、存在の意義が無い。

それもこれも、橋本治の”思いやり”。
そこまでしてでも、本を書く意義を感じている。
本書においても、官僚制度やら、儒教やら、民主主義やら、日本の歴史、民族性まで持ち出して、懇切丁寧に説くことは、とどのつまり、『思いやり』に尽きる。
表面を取り繕うだけじゃない、本質的な思いやりの行き着く態度が、『あきれちゃう』なのである。
互いがプライドを有し、個性を有した個別の人間同士が、相手を思いやり、プライドを傷付けることなく、上手く関係を築くには、相手を敬う気持ちを有するが故に、時に自らのプライドをかなぐり捨てて、本気で心の底から『あきれちゃう』しかない。