辺境・近境
著者: 村上春樹
単行本: 252ページ
出版社: 新潮社 (1998/04)




旅行を綴るエッセイ集。
「やっぱり上手いなぁ」などと、その表現と言葉運び(?!)の妙に、今更ながら感嘆を漏らす。僕を読書の愉しみへと誘った”村上春樹”、まだまだ僕が未読の著作が少なくない。

そう、”忘れないこと(P.190)”、ノモンハンの旅行記を締め括る言葉。
それは、神戸を歩いて、”喪失感をもたらした、記憶の集積(僕の貴重な資産)”、1995年1月17日”阪神・淡路大震災”であったり、都市化されて様相を変えた街並。関連して思い起こされる、1995年3月20日にオウム真理教が起こした無差別テロ”地下鉄サリン事件”。
メキシコのチアパスの先住民族であるインディオたちがかつて侵略を受け、迫害されてきた歴史があって、失われた文化、そして今だって続く血なまぐさい抗争の舞台としての緊張。
1939年5月〜9月のノモンハン事件の傷跡をそのままに残す乾いた大地。
山口県の瀬戸内海に浮かぶ無人島の、日が暮れた後に何処からかゾロゾロと姿を現す”自立した生態系”にある、フナムシやらゾウリムシみたいなのやらの小さな生き物たち、ザワザワと不気味な音を立てて蠢き出しちゃったら、狭いテントの中に閉じ籠って朝を待つしかない人間の”闖入者”たる無力さ。
あぁ、忘れないこと!?


≪目次:≫
 イースト・ハンプトン 作家たちの静かな聖地 (1991.秋)
 無人島・からす島の秘密 (1990.8)
 メキシコ大旅行 (1992.7)
 讃岐・超ディープうどん紀行 (1990.10)
 ノモンハンの鉄の墓場 (1994.6)
 アメリカ大陸を横断しよう (1995.6)
 神戸まで歩く (1997.5)
 辺境を旅する (雑誌「波」1990年9月号)