ダーウィンの『種の起源』 (名著誕生 2) Darwin's“Origin of Species”
著者: ジャネット・ブラウン、長谷川眞理子 訳
単行本: 203ページ
出版社: ポプラ社 (2007/09)




そうかぁなるほどねぇ〜、いやぁすごいね、『種の起源』、“ダーウィン (Charles Robert Darwin,1809.2.12-1882.4.19)

恥ずかしながら、というより敢えて当然に!?、と言い放って、「ぼくは、ダーウィンも種の起源も進化論も、何も知らない、まるで読んだことがない」。
そう、読書の習慣がまったくなかった2年前までのぼくだったら、そこでお終い、何ら困ることはない。カッコつけて知ったかぶりをしてでしゃばった真似をしなければ、無知を暴かれて恥ずかしい思いをすることもない。
ところが、毎日のように本を読み耽るようになって、何が哀しいって、やっぱり無知。読めば読むほど、ジャンルが拡がって、ちょっと深い内容になればなるほどに、どうにもこうにも愉しくない。えっ?!、何が可笑しいの??!、ぼくには肝心要のところが腑に落ちない。
こればっかりは誰を責めることもできず、自らの不勉強を今さらながらにどんなに悔いたところで、突然に理解が訪れるはずもなく、地道な学習、本来であれば10代で為すべき知識の習得を、時間と手間を費やしてコツコツと取り組むしかない。

ところで、“名著誕生”シリーズ三作品目にして、やっと慣れてきたのか、コンセプトの理解に多少は及んだのか(にしても遅すぎ!?)、ちょっぴり氷解!、電車の中でも辺りを構わず、「ふむぅ〜、なるほどねぇ〜」と漏れる感嘆。こ〜んなにも盛り沢山な歴史的な背景から現代に至るまで様々な批判や論争、その及ぼした影響など広範な記述が、コンパクトに凝縮、入門書と侮れない!?
だって、残念ながら今のぼくが、1859年11月24日に出版された論文である『種の起源』の原著翻訳本を読んだとしても、仮に頑張って読み切ったとしても、間違いなく「ふぅ〜ん、そうなんだぁ〜」で終わっちゃうことが容易に想像できる。そりゃさ、「世界的で歴史的な著作を読んだ!」ってことで意義はあるんだろうけれども、今から150年近く前の論文でしょ、研究目的か相当な興味がない限り、正直なかなか読む気になれない。
だからこそ、本書の翻訳者で進化生物学に精しい人類学者“長谷川眞理子 (1952- )”は、『はじめに』で読者に投げ掛ける、
ダーウィンが何を書いたのか、ダーウィンがなぜそう考えたのか、なぜ、どんな論争が起こったのかの概要を、すべての人に知って欲しいと思うのである。それは、このことが、私たちの生命観、自然観、人間観に、深い影響を及ぼす問題だからである。
すべての生き物は歴史の産物である。私たち人間も例外ではない。私たちが歴史の産物であるということはどういうことなのか。人間の本性とは何なのか。私たちはこれからどこへ行くのか。進化の知識と考えは、これからの問題の核心に迫る自然科学である。ここに、出版以来ずっと、ダーウィンが、宗教や哲学の分野にまでわたって。つねに論争の中心におかれた理由がある。
本書はダーウィンの生い立ちから晩年までの人生をたどるとともに、『種の起源』の内容、その意味、論争の背景について解説してくれる。 (P.4-P.5)


なるほど、進化の理論は、ヒト(人類)の起源におよぶことが必至で、自然界における創造主たる神の存在に関する議論に発展し、宗教(神学)的、哲学的な問題を避けられない。批判論も擁護論も含めた様々な論争にあっても、公の論争を好まず、対立を嫌って表舞台を避け続けたダーウィンは、時代の恩恵や強力な仲間の支持を得て、さらに著述を重ねて究めることによって、その地位を確立した。
それでも、進化理論から発展した“優生学”は、その後のナチス・ドイツにおけるホロコーストとの関連を否定することはできないけれども、その一方で、人種差別と大量虐殺はダーウィン以前からあったとの指摘もされる。
アメリカでの、政治家と宗教家による、“ダーウィン理論”を公教育の世界から追放する運動は、現在でも結束と大衆の支持を取り付けているらしい。そういえば、以前に読んだ「反★進化論講座 −空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書 (ボビー・ヘンダーソン,築地書館,2006.11)」にも、公然としたアメリカでの支持が謳われていた。なるほど、未だに聖書が決定的な役割を果たしている、ユニークなプロテスタント国家、アメリカ。そこには、科学の進化に対する嫌悪、それ以前に、専門化と大衆の乖離の拡大への不満、不安定さを増す世の中における安心(宗教への依存!?)が垣間見えると著者は説く。
それ故!?に、「明らかに“事件”だった『種の起源』の出版」との小見出しが付けられて、締め括られる論説。
古い書物は、しばしば、新しい視点によって読み替えられるものだが、ダーウィンの『種の起源』は、主要な論点において揺るがずに生き残るとともに、読み手がどうあるかによって、いかようにも変われるもののようである。それゆえ、彼の著作は、教会の伝統や社会の道徳観に対してことさらに挑戦しようとした、孤立した声ではなく、西欧の思想をさまざまに変容させるもととなった中心点と見ることができるだろう。
 (P.194)


≪目次: ≫
 序章 起源
 第一章 始まり
 第二章 使える理論
 第三章 発表
 第四章 論争
 第五章 遺産
 原注
 ダーウィンを知ることの喜び 茂木健一郎


紅バージョン
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ダーウィン展
ダーウィン展
 2008年3月18日(火)〜6月22日(日) 国立科学博物館