ロリータ LOLITA (新潮文庫)
著者: ウラジーミル・ナボコフ、若島正 訳
文庫: 623ページ
出版社: 新潮社 (2006/10、単行本 2005/11)




先行して、訳者“若島正 (1952- )”による攻略本(?!)「ロリータ、ロリータ、ロリータ Lolita,Lolita,Lolita (作品社,2007.11)」を読了していたにもかかわらず、『ようわからん』、、、何とも難解な長篇小説で、なかなか読み進められない(きっと、小説のせいだけではないのであろうけれども、気乗りできない!?)ままに、読了までに延べ3日を要した。それでも、断片的に記憶が呼び起こされ、その文学的魅力の一部分が愉しめた(?!)という点において、攻略本(解説本)の存在の意義は小さくない、仮にそれを経ることなく挑んでいたら、中途で挫折していたことであろう!?

キッカケは、特集『海外の長篇小説ベスト100』(新潮社「考える人 2008年春号」)におけるランキング“第13位”、『ロリータ LOLITA (1955)』、
この投票で上位に入っているもののなかでは、おそらく最も敷居の低い作品だろう。少女愛を扱ったキワモノだという興味本位で手にとる読者にも、一応の満足は与えてくれるからである。しかし、問題はその先だ。ナボコフはつねに、読者に再読を要求する。読み返してみると、初読のときには何も読めていなかったことに気づいて、読者は愕然とする。さらに再読を繰り返すうちに、いつのまにかナボコフの術中にはまり、愛読者になってしまうのだ。その意味で、『ロリータ』はナボコフの入門篇であり、卒業篇でもある(ただし、いつになったら卒業できるのかはわからない)。ベストセラーであると同時に、二〇世紀文学の最高峰の一つという、稀有の作品。
 若島正 (P.56、新潮社「考える人 2008年春号」)
とは、アンケートの回答であり、小説の紹介。
このナボコフを慕う若島正の術中にまんまとはまった!?


ロシアで生まれ、ヨーロッパとアメリカで活躍した、「二〇世紀にそびえる小説家のひとり“ウラジーミル・ナボコフ (Владимир Владимирович Набоков,1899-1977)”の代表作の新訳版」。

たしかに私はロリータに永遠の恋をした。しかし、彼女が永遠にロリータでいるわけはないこともわかっていた。彼女は一月一日に一三歳になる。二年もたてば、ニンフェットではなくなり、「若い娘」になって、それから「女子大生」になるのだ――想像するだけで恐ろしい。「永遠」という言葉が指すものは、我が情熱、我が血の中に映し出される永遠のロリータしかない。骨盤がまだ拡がっていないロリータ、今日触覚でも、嗅覚でも、聴覚でも、視覚でもとらえることのできるロリータ、甲高い声に濃い茶色の髪をしたロリータ――前は切り下げ、横にはウエーヴをつけ、後ろはカールした髪、そして熱くねっとりとした首筋、それに下品な言葉遣い(「ムカつく」「サイコー」「ダサい」「ウザい」)――あのロリータ、我がロリータを、哀れなカトゥルスは永遠に失うことになるのだ。 (P.117-P.118)

読者の中にはそう思っていた方もいらっしゃるだろうが、私にはもちろん、彼女は殺せない。つまり、愛していたからだ。一目見たときから愛していた、最後に見たときも、そしていつ見るときも、永遠に。 (P.479)

・・・私は顔を手でおおって、これまで流したことのないような熱い涙をどっと流した。涙が指を伝って顎に落ち、私を燃やし、鼻がつまり、それでも涙が止まらずにいると、彼女が私の手首に触れた。
「触らないでくれ、そんなことをされると死にそうだから」と私は言った。「本当に一緒に来ないのか? 来る見込みはまったくないのか? それだけ教えてくれ」
「ないわ」と彼女は言った。「だめよ、ハニー、だめ」
彼女にハニーと呼ばれたのは初めてだった。
「だめ。まったく問題外。それくらいだったらキューのところに戻るわ。つまり――」
彼女は言葉を探した。私は頭の中でその言葉を見つけてやった(「あたしの心をめちゃめちゃにしたのはあの人なの。あなたはあたしの人生をめちゃめちゃにしただけ」)。
「ほんとに」と彼女は続けて――「あっ。(封筒が床にすべり落ち、それを拾い上げて)ほんとに、その、こんな大金くれるなんてほんとにあなたってすてき。これで万事解決、来週出発できるわ。お願いだからなくのはやめてよ。わかってちょうだい。もっとビールでも持ってきてあげましょうか。ねぇ、泣かないでよ、騙してほんとに悪かったって思うけど、世の中ってそういうもんじゃないの」 (P.497-P.498)
ハンバート・ハンバート(H・H)の独白。


≪著者: ≫
ウラジーミル・ナボコフ (Vladimir Nabokov)
(1899-1977)帝政ロシア時代のサンクト・ペテルブルグに生まれる。父親は政治家。ロシア革命で祖国を離れ、ベルリン、パリでの亡命生活を経て、1940年にアメリカに渡り、英語でも創作活動を始める。1955年発表の『ロリータ』が大反響を呼び、晩年はスイスのモントルーの高級ホテルで暮らした。代表作に『賜物』、『青白い炎』、『アーダ』など。ロシア・アメリカ文学史上に屹立する異形の大作家。



Hydrangea macrophylla
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