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変身/掟の前で 他2編 Das Urteil/Die Verwandlung/Ein Bericht für eine Akademie/Vor dem Gesetz (光文社古典新訳文庫)

○著者: カフカ、丘沢静也 訳
○出版: 光文社 (2007/9,文庫 180ページ)
○価格: 440円
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かつて、ぼくが読んだ『変身』『』が新潮社、『審判』が岩波書店、ということで、どうやら“ブロート版”だったようだ。ブロートの編集したカフカ、であり、介入された編集により「読みやすい作品」として提示されている、と本書の解説にある(解説からの引用は避けたいが、やむを得ぬ?!)。
さらに、解説によると、1968年のブロートの死とともに、カフカのノート類が読めるようになり、カフカの手稿にもとづいて「忠実に」テキストを確定した“批判版”があり、日本語訳としては、白水社の「新校訂版」と呼ばれるもの。
ところが、1995年には、“批判版”にあっても、テキストを確定する作業のときに編集のバイアスがかかるということで、テキストの編集を断念して、カフカが書いたもの(手稿、印刷されたもの、タイプで打ったもの)を、そのまま提示した“史的批判版”が、紙本とCD-ROMの2本立てで、シュトレーム書店から出された。「オリジナルに忠実に」。なるほど、「作品が書かれた時代(ピリオド)の流儀にしたがって」演奏しようとする、クラッシック音楽の、『ピリオド奏法』に例えられる。
本書は、この史的批判版カフカ全集を底本にしている。
だからって、「犬」とは、、、新訳♪

「なんでそんないぐずぐずして、一人前にならなかったんだ。母さんは死んでしまった。喜びの日を味わうこともなく。友だちはロシアで途方に暮れている。3年前から黄ばんで紙くず同然。この私は、ほら、見てのとおりだ。お前にも目があるだろうが」
「じゃ、待ち伏せしてたんだね、父さん」とゲオルグが叫んだ。
同情して父親はさりげなく言った。「そのセリフ、もっと早く言えばよかったな。だが、いまじゃ似合わん」
そしてもっと大きな声で言った。「わかったか。おまえの知らない世間があるのだ。これまでおまえは自分のことしか知らなかった。もともとたしかに無邪気な子どもだった。だがじつはな、悪魔のような人間だったんだ。――だから、よく聞け。これから判決をくだしてやる。おぼれて死ぬのだ!」 (P.28-P.29「判決」)
彷彿とさせる「父殺し」?!


≪目次: ≫
判決』(Das Urteil,1912)
変身』(Die Verwandlung,1912)
アカデミーで報告する』(Ein Bericht für eine Akademie,1917、短篇集『田舎医者』(Ein Landarzt,1920)に収録)
掟の前で』(Vor dem Gesetz,1914、短篇集『田舎医者』(Ein Landarzt,1920)に収録)
解説――ピリオド奏法の時代がやってきた/丘沢静也
4つの作品について/プロート問題/新しいカフカ全集、もっと新しいカフカ全集
フランツ・カフカ年譜
訳者あとがき――犬のように


≪著者: ≫ フランツ・カフカ Franz Kafka [1883−1924] チェコ生まれのユダヤ系。ドイツ語で書いた。「文学以後の文学」とも称される斬新な作風で、その作品は、なにが書かれているかはクリアにわかるが、それがどういう意味なのかは、さまざまな解釈を呼ぶ。おもしろいだけでなく、奥深いアクチュアリティをいまだに更新しつづけている不思議なカフカ文学は、文学を超えて、突出した魅力と存在感をもつ。代表作は、本書に収めた短編『判決』『変身』などのほかに、未完の小説『審判』『城』など。

≪訳者: ≫ 丘沢静也 1947年生まれ。首都大学東京教授。著書に『マンネリズムのすすめ』『からだの教養』『コンテキスト感覚』など。訳書に『鏡のなかの鏡』(エンデ)、『数の悪魔』(エンツェンスベルガー)、『反哲学的断章』(ヴィトゲンシュタイン)、『とばりを降ろせ、愛の夜よ』(ライヒ=ラニツキ)など。



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