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情報力 情報戦を勝ち抜く“知の技法”

著者: 佐藤優、鈴木琢磨
出版: イースト・プレス (2008/5,単行本 267ページ)
価格: 1,680円
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作家・外務省元主任分析官“佐藤優”と、毎日新聞編集委員“鈴木琢磨”の対談を書籍化。

言語は思想であり、文化である。言語ができずに相手の内在的論理を掴むことはできない。 (P.3)

「汝の敵を愛せ」というのは、イエス・キリストの言葉だ。
《あなたがたも聞いているとおり、『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。》(日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書第五章第四三〜四五節)
以下は、私なりの解釈である。イエスは「敵を愛して、仲良くしろ」と言っているのではない。敵を憎むのは、人間として自然の感情だ。しかし、憎しみをもつと、どうしても認識が歪む。歪んだ認識で判断すると、過ちを犯す。その結果、自分が損をする。太陽は敵の前でも昇るというリアリズムを大切にせよということなのだ。もちろん、敵を愛することなどできない。しかし、そのような「不可能の可能性」を追求することによって、専門家は冷静に情況を分析することができるようになる。 (P.5)

[鈴木] なぜ、戦前の書物のほうが理解しやすいのでしょう?
[佐藤] よくわからないのですが、私なりに次のような仮説を持っています。一九三〇年代の大学生や高校生には戦争の影が迫っていました。学徒動員で駆り出されてしまっては勉強も満足にできません。当時、哲学の本を読む学生たちは持ち時間が非常に限られていた。戦争に出かければ、ある程度の確率で死ぬことは確実です。学生たちは生き死にの狭間にさらされながら、いま学ばなければならない本だけを限定して学んでいました。そういった読み手の需要を版元は知っていたために、編集者は緊張感を持って著者を選び、本を組み立てています。そのことが本を読んでいてわかるのです。たんなるお勉強会のように衒学的な言説を羅列しているような本は、当時の学生には必要ありませんでした。ライプニッツやカントの言わんとしている思想はこういうことなのだと、ギリギリの解釈で表現している『西哲叢書』のような本こそ必要だったのです。
[鈴木] なるほど。著者や編集者、読者の緊張感が、戦前と戦後ではまったく違うということですね。
[佐藤] そう思います。日本が生き残るためには、西洋哲学の思想についてきちんとした情報をつかみ、分析しなければならない。そうした緊張感が、戦前の出版人にも読者にも強くあった。思想書を勉強するときには、あえて戦前、戦中の版を読むようにしています。 (P.176-P.177)



≪目次: ≫
はじめに 「不可能の可能性」を追求するインテリジェンス能力とは?/佐藤優
第一章 プロが読み解く「日朝情報戦」のカラクリ
交渉の照準を小泉に絞った北朝鮮インテリジェンス/金正日小泉を「男ではない」と評した理由/金丸金日成会談の情報は、なぜ生かされなかったのか?/外務省の内部情報から読み解く交渉混乱の原因/日本に有利な状況を、いかにしてつくり出すか?/「二〇〇二年は歴史の分岐点」と考える北朝鮮からのサイン/鈴木琢磨が「後継者はすでに決まっている」と判断した根拠/複数の国のインテリジェンス情報から判断できること/交渉を膠着させた日本政府の「弱気の読み」/会談の解釈をめぐる鈴木琢磨vs.金正日の「情報戦」/北朝鮮の対南工作は、すでに成功している!?/「自転車の目線」から感じた日本の北朝鮮情報との温度差/北朝鮮人民を“洗脳”する「国家の物語」/本当は優雅!?な北朝鮮人民の一日/犬とビールから読み解く北朝鮮社会の実情/日朝交渉を神話に変えた「不老長寿の酒」伝説/「二〇一八・八・二五、後継者誕生」を示唆するこれだけの兆候/「金王朝伝説」を描いた陰のプロデューサー/支配システムをつくりあげた巧みな情報操作
第二章 公開情報から真実を見つける「情報収集力」
なぜ、複数の情報大国が日本のインテリジェンス力に注目するのか?/二〇〇七年元旦の社説に込められた、見逃せないシグナル/「朝鮮半島統一」へのメッセージは、なぜ見逃されたのか?/日本人が知らないインテリジェンスの世界標準/わずかな言葉の温度差から真実をつかむ「文書諜報」の技術/“謎のイギリス人”の記事が持つスクープ性/小説に織り込まれている、きわめて重要な指摘/北朝鮮、旧ソ連で小説家がVIP待遇された理由/「門外不出」の一級資料は、こんなに簡単に入手できる/日朝外交を決定づける情報を握っている「ある国」/インテリジェンス力とは、転がっている情報に「気づく力」/戦前の日本がつくった「超一級資料」の教え/「マスコミ・タブー」が覆い隠していること/テレビが「思考停止」を引き起こすメカニズム/“情報戦”は、焼肉屋からでも始められる/インテリジェンスの基盤は民間人でもつくれる/「一枚の写真」に込められた、とっておきのインテリジェンス/北朝鮮専門書店「レインボー通商」で手に入るお宝情報/「二、三割の真実」と「七、八割のウソ」を読み解く視点
第三章 相手の真意を的確に見抜く「教養力」
北朝鮮ウオッチャー・鈴木琢磨を生んだ韓国人との出逢い/滋賀・近江京にあった日朝関係の源流/同志社大学神学部を震撼させた「学園浸透スパイ団事件」/キリスト教が結びつけた佐藤優と朝鮮半島の縁/伝説の「T・K生」が実名公表で訴えたかったこと/ある概念を「わからない」ということの意味/キリスト教の基礎を熟知し、活用していた金日成/佐藤と鈴木、二人を結びつけた「奇妙な偶然」/「朝鮮人の時間軸」と「日本人の時間軸」の違い/北朝鮮では「大正時代」が延々と続いている/旧宗主国の日本にとって、北朝鮮は「謎」でもなんでもない/なぜ、戦時中の出版物で学ぶと“腹”に入ってくるのか?/金正日が着目した陸軍中野学校の「インテリジェンス遺産」/敗戦後を見据えた、驚くべき工作ネットワーク/高齢者のインテリジェンス力に敬意を払え/デタラメな情報に振り回されないための視座/インテリジェンスと新聞記者――「情報」を仕事にしたきっかけ/情報力で歴史のジグソーパズルを解く楽しみ/「昨日の敵は今日の友」は相互関係の必然である/人びとを支配する神話=イデオロギーが情報分析の基礎である
第四章 膨大な情報を瞬時に捌く「整理力」「勉強力」
『試験にでる英単語』に学ぶ情報の集め方、使い方/正確な情報は、ブームのときには出てこない/膨大な資料は、一カ所に放り込めば手間なく整理できる/記憶できない情報は、不必要な情報である/雑多な本棚の中から情報を抽出するトレーニング/情報が自然に集まる「しくみ」のつくり方/名刺のデータベース化ほど無意味なことはない/「速達」が生み出す心理的効果/ノート、メモ、スクラップ帳の効果的な使い分け方/電子機器をデータベースにするこれだけの危険性/本当に必要な人脈は、じつは五〜六人程度しかいない/お金を払って得た情報は、頭に残りやすい/完璧に正確な情報ほど、シンプルに入手できる/インテリジェンスのプロは新聞の影響力を侮らない/“駅前留学”で学んだ語学では外国人の思想はつかめない/外国語はネイティブより日本人講師に習え/「国家の情報操作」は辞書から読み解ける/辞書の改訂版から見えてくる思想の変化/文献から封印された単語が浮き彫りにすること/インテリジェンスに必要な基礎語学力は、たった二年程度で身につく/インテリジェンス力を高めることで、敵の戦意を喪失させる
おわりに 佐藤さんと語り合って再認識した、情報を得るための「王道」/鈴木琢磨


≪著者: ≫
佐藤優 (さとう・まさる)
1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。イギリス、ロシアにて大使館勤務の後、1995年より外務本省国際情報局で主任分析官として活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑の「国策捜査」で逮捕され、512日間拘留。2005年2月、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を言い渡されて控訴したが、2007年1月、東京高裁で控訴棄却。著書に『国家の罠』(新潮社、毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(新潮社、新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『国家論』(日本放送出版協会)、『インテリジェンス 武器なき戦争』(手嶋龍一との共著、幻冬舎新書)、『国家情報戦略』(コウ・ヨンチョルとの共著、講談社+α新書)など多数。

鈴木琢磨 (すずき・たくま)
1959年滋賀県大津市生まれ。毎日新聞社夕刊編集部編集委員。大阪外国語大学朝鮮語学科を卒業後、毎日新聞社に入社。いまや絶滅した「探訪記者」の生き残り。硬派から軟派まで朝鮮問題にこだわり、どこへでも足を運ぶ。「サンデー毎日」記者時代から北朝鮮報道を担当。高英姫の偶像化キャンペーンを世界に先駆けてスクープした。TBSテレビ『みのもんたの朝ズバッ!』コメンテーターも務める。著書に『金正日と高英姫』(イースト・プレス)、『テポドンを抱いた金正日』(文春新書)、共著に『在日朝鮮人ジャーナリストが書いた 図説 内側から見た朝鮮総連』(イースト・プレス)、『エリート教育の光と影』(毎日新聞社)がある。



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