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永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編  Beantwortung der Frage: Was ist Aufklärung? 1784 / Idee zu einer allgemeinen Geschichte in weltbürgerlicher Absicht 1784 / Mutmaßlicher Anfang der Menschengeschichte 1786 / Das Ende aller Dinge 1794 / Zum ewigen Frieden 1795  Author:Immanuel Kant (光文社古典新訳文庫)

○著者: カント、中山元 訳
○出版: 光文社 (2006/9,文庫 387ページ)
○価格: 680円
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◇啓蒙の定義
啓蒙とは何か。それは人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。だから人間はみずからの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる。こうして啓蒙の標語とでもいうものがあるとすれば、それは「知る勇気をもて(サベーレ・アウデ)」だ。すなわち「自分の理性を使う勇気をもて」ということだ。

◇未成年の利点
ほとんどの人間は、自然においてはすでに成年に達していて(自然による成年,ナートゥラーリテル・マーイヨーレネス)、他人の指導を求める年齢ではなくなっているというのに、死ぬまで他人の指示を仰ぎたいと思っているのである。また他方ではあつかましくも他人の後見人と僭称したがる人々も跡を絶たない。その原因は人間の怠慢と臆病にある。というのも、未成年の状態にとどまっているのは、なんとも楽なことだからだ。わたしは、自分の理性を働かせる代わりに書物に頼り、良心を働かせる代わりに牧師に頼り、自分で食事を節制する代わりに医者に食餌療法を処方してもらう。そうすれば自分であれこれ考える必要はなくなるというものだ。お金さえ払えば、考える必要などない。考えるという面倒な仕事は、他人がひきうけてくれるからだ。 (P.10、「啓蒙とは何か」)

…賈椶砲靴晋曲犬離謄ストは、アカデミー版のカント全集第八巻『一七八一年以降の論文』である。この全集はボン大学のサイト(http://www.ikp.uni-bonn.de/kant/verzeichnisse-gesamt.html)で行番号つきで公開され、参照しやすくなった。 (P.3、凡例)


≪目次: ≫
凡例
啓蒙とは何か――「啓蒙とは何か」という問いに答える(一七八四年) Beantwortung der Frage: Was ist Aufklärung
啓蒙の定義/未成年の利点/未成年状態から抜けだせない理由/公衆の啓蒙/理性の公的な利用と私的な利用/三つの実例/人間性にたいする犯罪/君主の役割/フリードリヒ大王の世紀/啓蒙の広がり/啓蒙の逆説

世界市民という視点からみた普遍史の理念(一七八四年) Idee zu einer allgemeinen Geschichte in weltbürgerlicher Absicht
自由の発展/自然の意図/第一命題/自然にそなわる素質の目的/第二命題/類としての存在/第三命題/自然の配慮/第四命題/非社交的な社交性/悪の起源/第五命題/市民社会という〈檻〉/第六命題/支配者のパラドクス/第七命題/国際的な連合の樹立/永遠平和の思想/自然の目的/世界市民状態/輝ける悲惨/第八命題/自然の隠された計画/進歩の諸条件/世界国家へ向けて/第九命題/自然の計画/人間の歴史の記述/歴史記述の役割

人類の歴史の憶測的な起源(一七八六年) Mutmaßlicher Anfang der Menschengeschichte
憶測による歴史の可能性/漫遊/エデンの園/神の命令/原初の侵犯――掟に対する違反/いちじくの葉/死の不安/自然の目的としての人間/楽園の夢/補足/悪の端緒/文化が自然に/端緒の歴史の終わり/農耕者と牧畜者の分離/統治機能と不平等の発生/都市の誕生/結論として/摂理/第一の逆説――戦争の悪とその役割/第二の逆説――寿命の短さとその役割/第三の逆説――ユートピアの空しさと不平等の役割/端緒の歴史の帰結とその教訓

万物の終焉(一七九四年) Das Ende aller Dinge
永遠という思想/最後の審判/救いに関する二つの体系/恐るべき世界の終焉/補足/終焉という理念の役割/万物の終焉の三つの概念/反自然的な概念/神秘的な終焉の概念/人間の愚かしさ/摂理/キリスト教の愛/愛と権威の矛盾/自由を重視する考え方/キリスト教と報い/万物の終焉の到来

永遠平和のために――哲学的な草案(一七九五年) Zum ewigen Frieden
留保条項
第一章 国家間に永遠の平和をもたらすための六項目の予備条項
戦争原因の排除/国家を物件にすることの禁止/常備軍(ミーレス・ペルペトゥウス)の廃止/軍事国債の禁止/内政干渉の禁止/卑劣な敵対行為の禁止/予備条項の性格の違い
第二章 国家間における永遠平和のための確定条項
自然状態(スタトゥス・ナーチューラーリス)の廃棄/永遠平和のための第一確定条項/協和的な体制の条件/共和制と戦争/三つの体制/第二確定条項/自然状態にある国家/〈法・権利〉の根拠/平和連盟(フェドス・パーキフィクム)の役割/消極的な理念としての連合/永遠平和のための第三確定条項/歓待の権利/世界市民法の可能性/第一追加条項/自然の配慮/氷の海と砂漠/戦争/戦争の意味/自然の意図/天使の国と悪魔の国/世界王国/商業の役割/第二追加条項 永遠平和のための秘密条項/許される秘密条項/法律家と哲学者/付録/政治と道徳の「対立」/永遠平和が「不可能な」理由/道徳的な政治家とは/実務的な法律家の過ち/三つの詭弁的な原則/政治と道徳の対立/理性の二つの原理/戦略問題と政策問題/普遍的な意志の威力/正義はなされよ……/悪の原理/神と人間の悪/政治と道徳の「対立」/公開性/公法の成立の条件/国内法における公開性の原則の実例――革命/国際法における公開性の原則の実例――他国との約束、他国への攻撃、合併/二重人格の二律背反(アンチノミー)/超大国への攻撃の二律背反(アンチノミー)/小国の合併の二律背反(アンチノミー)/世界市民法における公開性の実例/政治の策略/政治の二枚舌/公法の超越論的な原理再論/永遠平和という課題


カント年譜

解説――カントの思考のアクチュアリティ/中山元
第一章「啓蒙とは何か」
啓蒙の概念/自分で考える/哲学者の役割/この論文の新しさ/公的なものと私的なもの/自律した思考の原則
第二章「カントの歴史哲学」
三つの歴史哲学論文/歴史哲学の役割
第一節「世界市民という視点からみた普遍史の理念」
自然の狡智/個人の原理/非社会的な社会性/市民的な体制/支配者のパラドックス/戦争の逆説/世界市民状態へ
第二節「人類の歴史の憶測的な起源」
善悪の認識/原初の否定性――神の掟の侵犯/第一の反自然性――性の欲望/第二の反自然性――死/第三の反自然性――人間の平等/歴史の終焉の可能性
第三節「万物の終焉」
歴史の終焉/倒錯した歴史の終焉
第三章「永遠平和のために」
第一節 序
平和条約の予備条項/平和条約の確定条項
第二節 国家法における平和の条件
三つの国家体制/構成的権力/三つの理念/天使の国と悪魔の国/個人の意志と普遍意志
第三節 国際法における平和条項
国家の自然状態
第四節 世界市民法における平和の条件
歓待の権利と植民地の戒め
結論に代えて
自然の概念/自然の配慮/カントの思考のダイナミズム/希望、格律、原則

訳者あとがき


≪著者: ≫ イマヌエル・カント Immanuel Kant [1724-1804] ドイツ(東プロイセン)の哲学者。近代に最も大きな影響を与えた人物の一人。『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』のいわゆる三批判書を発表し、批判哲学を提唱して、認識論における「コペルニクス的転回」を促した。フィヒテシェリングヘーゲルとつながるドイツ観念論の土台を築いた。

[訳者] 中山元 Nakayama Gen 1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著に『思考のトポス』『フーコー入門』『はじめて読むフーコー』『思考の用語辞典』『〈ぼく〉と世界をつなぐ哲学』ほか。訳書に『自我論集』『エロス論集』(以上、フロイト)、『呪われた部分 有用性の限界』(バタイユ)、『パピエ・マシン(上・下)』(デリダ)ほか多数。

幻想の未来/文化への不満 (フロイト文明論集1,2007/9,光文社古典新訳文庫)』
人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス (フロイト文明論集2,2008/2,光文社古典新訳文庫)』


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