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アメリカン・スクール 改版 (新潮文庫 こ 7-1)

アメリカン・スクール 改版 (新潮文庫)

○著者: 小島信夫
○出版: 新潮社 (1967/6;改版 2008/1)
○価格: 580円
○ISBN: 978-4101145013


小銃は私の女になった。それも年上の女。しみこんだ創、ふくらんだ銃床、まさに年上の女。知らぬ男の手垢がついて光る小銃。  (P.126、「小銃」)
これだけは外せない。解説で江藤淳も引用している。保坂和志も、自らの他の何かの著作で引用していた(どの著作であったかの記憶が定かではないのだが、フレーズが明確な記憶として残存している)。それを承知で、それでもやっぱり引用せずにはいられない。すごい。すごい。スゴイ。

・・・
「馬鹿! けちで意気地なしで、汚くて、そのくせ物は気前よく盗られる。よくも自分のからだは盗られないわね」
佐野は、実は自分のからだも序(つい)でに盗られてしまえばよかったと思った。かれは、又もや生きていることが、いかにもむだなこととかんじられてくる。さて死ぬのなら、どんな死に方をしてやろうか。死ぬということは未知のことだが、未知のことは世の中にいくらもあるものだ。そうか、それならおさらばしようか。死んでそれっきりになってしまうことは、何か、なるほど淋しいみたいだが、どうせ一秒ながらえたところで、その一秒が、どうせ大した碌(ろく)なことはあるまい。それでは逃げ出して、何もかも、無くなってしまおうか。佐野は、二人の子供のことも、何もかも、遠のいて、乗客や細君の声も姿も別の世界へぼやけて行き、自分が、はかない影のような、もやもやしたものになってしまい、いかにも文字通り無になって行くのだ。  (P.64-P.65、「汽車の中」)



≪目次: ≫
汽車の中
燕京大学部隊
小銃

微笑
アメリカン・スクール



解説/江藤淳
解説/保坂和志


≪著者: ≫ 小島信夫 Kojima Nobuo (1915-2006) 岐阜県生れ。東京大学英文学科卒。1954(昭和29)年「アメリカン・スクール」で芥川賞、1965年『抱擁家族』で谷崎潤一郎賞、1972年『私の作家評伝』で芸術選奨文部大臣賞、1981年『私の作家遍歴』で日本文学大賞、1982年『別れる理由』で野間文芸賞、1997(平成9)年『うるわしき日々』で読売文学賞。その他の著書に『各務原・名古屋・国立』、保坂和志との共著『小説修行』ほか多数。2006年遺作『残光』を発表後、肺炎のため死去。

残光 (新潮社,2006/5)』
保坂和志との共著小説修業 (朝日新聞社,2001/9)』
書簡文学論 (水声文庫,2007/11)』
小説の楽しみ (水声文庫,2007/11)』


Cosmos bipinnatus