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ことばをめぐる哲学の冒険
ことばをめぐる哲学の冒険

○著者: 長谷川 宏
○出版: 毎日新聞社 (2008/6,単行本 288ページ)
○価格: 1,890円
○ISBN: 978-4620318851
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思うに、「愛」に始まり「旅」に終わるこの本の執筆に当たって、わたしには古今東西のすぐれた表現のあいだを旅していくという思いがあった。足を使って歩く旅ではないが、多彩な表現をたずね歩く観念の旅にも希望の喜びのあることを願う気持ちはあって、『イタリア紀行』をもって全体を締めくくろうとは思っていた。筆を執りながらの旅は、当然にも、希望や喜びよりも苦労のほうがずっと大きかったが、なんとか終点にたどり着くことができた。 (P.286)

ぼくには哲学がなにであるのか、まだよくわからない、説明をすることができないのではあるけれども、どうやらその側面のひとつには、ことばあそび、というのか、ことばをなくしてなせない、ことばをつくしてなしえるいとなみ、との印象をいだいている。ぼくたちが日々なにげなく無意識のうちに使っていることばが、もしもなかったら?、なんて想像は、とても想像しえないんだけれども、そうしたらそうなったで本能的な適応性を発揮して、絵を描いたり、顔の表情やボディランゲージやらで、他者との意志の疎通を図るのであろうが、、、どんなに素晴らしい考えも、誰かに伝えることなくしては、少なからぬ他者の賛同を得て、広く世間に認知され、なんらかのかたちで後世にまで伝え遺されなければ、自己満足の域を超えない。

引用文献
第一章  「古事記」『日本古典文学大系新装版』岩波書店、一九九三年・「万葉集」『日本古典文学大系第四−第七』岩波書店、一九五七−一九六二年・木下順二「山の背くらべ」『木下順二作品集 第三巻』未来社、一九六三年・スタンダール/生島遼一、鈴木昭一郎 訳「恋愛論」『世界文学大系 二二巻』筑摩書房、一九六〇年・Alain, Definitions,Bibiothèque de la Pléiade, 1958 *森有正による邦訳がある。アラン『定義集』みすず書房、一九八八年
第二章  久保栄『火山灰地』新宿書房、二〇〇四年・深沢七郎『笛吹川』新潮文庫、一九六六年・「ルカによる福音書」『新共同訳新約聖書』日本聖書協会、一九八九年・吉野弘「I was born」『吉野弘詩集』思潮社現代詩文庫、一九六八年・三島由紀夫『仮面の告白』新潮文庫、一九五〇年・Hannah Arendt, The Origins of Totalitarianism, Harcourt Brace, 1979 *大久保和郎による邦訳がある。ハナ・アーレント『全体主義の起源1〜3 新装版』みすず書房、一九八一年・Hannnah Arendt, The Human Condition, The University of Chicago Press, 1958 *志水速雄による邦訳がある。ハンナ・アレント『人間の条件』ちくま学芸文庫、一九九四年
第三章  鶴屋南北『新潮日本古典集成 東海道四谷怪談』新潮社、一九八一年・柳田国男「妖怪談義」『定本 柳田国男集 第四巻』筑摩書房、一九六三年・「北野天神縁起」『日本思想大系20 寺社縁起』岩波書店、一九七五年・シェイクスピア/小田島雄志 訳『白水Uブックス シェイクスピア全集 ハムレット』白水社、一九八三年
第四章  ヘロドトス/平松千秋 訳『世界古典文学全集第10巻 歴史』筑摩書房、一九六七年・ホメーロス/呉茂一 訳「イーリアス」『世界古典文学全集第1巻 ホメーロス』筑摩書房、一九六四年・アリストパネス/高橋春繁 訳「平和」『世界古典文学全集第12巻 アリストパネス』筑摩書房、一九六四年・アリストパネス/高橋春繁 訳「女の平和」『世界古典文学全集第12巻 アリストパネス』筑摩書房、一九六四年・Immanuel Kant, Zum ewigen Frieden, Felix Meiner Verlag, 1992 *池内紀などによる邦訳がある。池内訳は、カント『永遠平和のために』集英社、二〇〇七年・小田実「「難死」の思想」『小田実評論撰 1』筑摩書房、二〇〇〇年・リゴーニ・ステルン/大久保昭男 訳『雪の中の軍曹』草思社、一九九四年・小川環樹 訳『老子』中公文庫、一九九七年
第五章  「伊勢物語」『日本古典文学大系 竹取物語 伊勢物語』岩波書店、一九九七年・菅江真澄/内田武志、宮本常一 編訳『菅江真澄遊覧記2』東洋文庫、一九六六年・Johann Wolfgang von Goethe, Italienische Reise, Karl Hanser Verlag, 1992 *相良守峯などによる邦訳がある。相良訳は、ゲーテ『イタリア紀行 上中下』岩波文庫、一九六〇年  (P.290-P.291)



≪目次: ≫
第一章 愛
第二章 誕生
第三章 亡霊
第四章 平和
第五章 旅
あとがき(二〇〇八年五月八日 長谷川 宏)
引用文献
人名索引


≪著者: ≫ 長谷川 宏 (はせがわ・ひろし) 哲学者。1940年、島根県生まれ。1968年、東京大学大学院哲学科博士課程単位取得退学。在野の哲学者として、小・中学生対象の学習塾「赤門塾」を開く傍ら、原書でヘーゲルを読む会を主宰。哲学書をはじめとする翻訳の仕事も多く、その平易な訳文に定評がある。1998年、ヘーゲルの『精神現象学』の翻訳により、ドイツ政府よりレッシング翻訳賞を受賞。ほか、主な訳書にヘーゲル『法哲学講座』『美学講座』。アラン『芸術の体系』など。近刊書に『格闘する理性 ヘーゲル・ニーチェ・キルケゴール』『高校生のための哲学入門』『いまこそ読みたい哲学の名著』『思索の淵にて 詩と哲学のデュオ』(共著)などがある。


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人間の誕生は、生物学的な過程として見れば、哺乳類の雄と雌が交合し、精子と卵が合体して受精卵となり、その受精卵が雌の子宮内で成長し、月満ちて新生児として母胎の外へと出てくるということだ。また、社会的な過程として見れば、一組の男女がたがいに相手に惹かれるものを感じ、精神的・肉体的に交流を深め、自分たちの子どもをもち、育てることを決意し、出産へと至るということだ。・・・  (P.111、第二章 誕生)