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本「言葉にのって 哲学的スナップショット」ジャック・デリダ
言葉にのって 哲学的スナップショット  Jacques Derrida, SUR PAROLE――Instantanés philosophiques (Édition de I'Aube, 1999) (ちくま学芸文庫)

○著者: ジャック・デリダ、林好雄・森本和夫・本間邦雄 訳
○出版: 筑摩書房 (2001/1,文庫 254ページ)
○価格: 998円
○ISBN: 978-4480086136
おすすめ度: 4.0
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 デリダ――私がどのように私の死を想像するのか、あなたに言うことはできません。あまりにも多くのしかたでそれを想像するのです。その点については、私は、あまりにも多くの想像力を費やしているので、それであなたの耳をうんざりさせるのは慎むことにします。もちろんそうしたイメージの特に何度も繰り返して現われるいくつかの形があって、自動車事故だとか水死だとかを私は想像します。自殺劇は今でも見られますが、相変わらず不信心な誰かのためのものです。なぜなら、私はしばしばそのことを考えますが、私の自殺はありえないと思うからです。そのことは、私が頭の中で、しょっちゅ自殺のシナリオを自演する妨げにはなりませんが……。  (P.078、肉声で)


もし仮に、私にとってこれほど不確かなことはないのですが、あらゆる危険を冒して、人前でこうし話を即興でしなければならなかったとして、そのあとは、時を越えて、沈黙や忘却の手に委ねてしまったほうがよかったのではないか。
最初の間違いを直さないのは、第二の間違いを早めることになる、と言われます。それなら、私にとってこれほど不確かなことはないのですが、言いなりになって、一瞬無防備なこれらの言葉が一つの著作の中に書き留められることに、納得しなければならなかったのでしょうか。
すんだことはしかたがないと、いくつかの親しい声が私に言います。すでに公開されたのだから、公表されたのも同じだ。スナップショットはとられた。それはきみをとった。写真でとるように。そして、他者の目にきみをさらしたのだ――本物の姿ではないにしても、少なくとも一連の徴候として。
となると、ただ一つの規則は、ごまかさないこと、一字一句書き写すときに、何も変えないこと。たとえ一つ一つの文句が、豊かな展開によって、解釈や複雑さによって、もっと説得力のある分析、ニュアンス、洗練された言葉づかいによって、時にはそれ自身に対する異議や取消しによって、未決定な状態におかれているように私に見えるときでも。とりわけ口調の変化によって、そう見えるときでも。遅すぎるのです。だから、自由に行なわれたのは、いくつかの句読法に関するものだけ。生き生きとした言葉の息吹が、時に《生放送》の直接的な書き写しにあらがって、それをものともしないような場合に。それと何箇所か、めったにないのですが、ただ明快さのために、二つか三つの語を付け加えてありますが、つねに〔 〕に入れて示しててあります。  (P.007-P.008、序)

フランス・キュルチュールにおけるラジオ番組《肉声で》の一環として、カトリーヌ・パオレッティは、一九九八年の十二月十四日から十八日までの一週間、ジャック・デリダと対談しました。その対話からは、哲学の豊かで多様な道程が姿を現わしています。私たちはここに、その対談をノーカットで書き写したものを再録します。
アントワーヌ・スピール制作の番組《スタッカート》の何回かの放送は、ジャック・デリダによって論じられたいくつかの独自の考察テーマに割かれています。すなわち、歓待について(一九九七年十二月十九日)、正義と赦し(一九九八年九月十七日)、政治における虚言について(一九九九年一月七日)、現象学について、およびマルクス主義について(一九九九年七月六日)です。それらは、たんに清書されたあとで、抜粋の形で、入念な配慮のうえ、ここにまとめられています。  (P.009、刊行者ノート)



≪目次: ≫

刊行者ノート


肉声で
歓待について
現象学について
政治における虚言について
マルクス主義について――ダニエル・ベンサイードとの対話
正義と赦し

訳註(林 好雄・本間邦雄)
訳者解説(訳者を代表して 林 好雄)  〈顔〉と〈声〉/〈現象学〉と〈マルクス主義〉/〈歓待〉の〈法(ロワ)〉
【デリダの著作】
1 『フッサール哲学における発生の問題』 le problème de la genèse de Husserl, PUF, 1990.
2 『エクリチュールと差異』 L'écriture et la différence, Seuil, 1967. (阪上修ほか訳、法政大学出版局、一九七七年、一九八三年)
3 『声と現象』 La Voix et le phénomène, PUF, 1967. (高橋允昭訳、理想社、一九七〇年)
4 『グラマトロジーについて』 De la grammatologie, Minuit, 1967. (足立和浩訳、現代思潮社、一九七二年)
5 『余白――哲学の/について』 Marges―― de la philosophie, Minuit, 1972.
6 『弔鐘(グラ)』 Glas, Galilée, 1974.
7 『拍車=衝角(エプロン)――ニーチェの文体』 Eperons, Les styles de Nietzsche, Flammarion, 1978. (『尖筆とエクリチュール』白井健三郎訳、朝日出版社、一九七九年)
8 『郵便絵葉書』 La Carte postale, de Socrate à Freud et au-delà, Flammarion, 1980.
9 『視線の権利』 Droit de regards, Minuit, 1985. (鈴村和成訳、哲学書房、一九八八年)
10 『パラージュ(海域)』 Parages, Galilée, 1986.
11 『ユリシーズ蓄音器――ジョイスのための二つの言葉』 Ulysse gramophone, Deux mots pour Joyce, Galilée, 1987.
12 『精神について――ハイデガーと問い』 De l'esprit, Heidegger et la question, Galilée, 1987. (港道隆訳、人文書院、一九九〇年)
13 『哲学への権利/法から哲学へ』 Du droit à la philosophie, Galilée, 1990.
14 『盲者の記憶――自画像およびその他の廃墟』 Mémoires d'aveugle, L'autoportrait et autres ruines, Réunion des musées nationaux, 1990. (鵜飼哲訳、みすず書房、一九九八年)
15 『解釈の戦争――カント、ユダヤ人、ドイツ人』 Interpretations at war, Kant, le juif, l'Allemand, in Phénoménologie et Politique, Ousia, 1990. (鵜飼哲訳、『現代思想』一九九九三年五〜八月号)
16 『他の岬』 L'autre cap, Minuit, 1991. (高橋哲哉・鵜飼哲訳、みすず書房、一九九三年)
17 『割礼告白』 Circonfession, in Jacques Derrida, Le Seuil, 1991.
18 『マルクスの亡霊たち』 Spectres de Marx, Galilée, 1993.
19 『友愛の政治学』 Politiques de l'amitie, Galilée, 1994.
20 『法の力』 Force de loi, Le 〈Fondement mystique de l'autorité〉, Galilée, 1994. (堅田研一訳、法政大学出版局、一九九九年)
21 『アポリア』 Apories, Galilée, 1996. (港道隆訳、人文書院、二〇〇〇年)
22 「信と知」 Foi et savoir―― les duex sources de la 〈religion〉 aux limites de la simple raison, in La religion, Seuil/Laterza, 1996. (松葉祥一・榊原達哉訳、『批判空間』彊谿譟前貉郵罅一九九六年〜九七年)
23 『万国の世界主義者よ、さらに努力を』 Cosmopolites de tous les pays, encore un effort!, Galilée, 1997. (港道隆訳、『世界』一九九六年一一月号)
24 『世界主義的観点から見た哲学の権利』 La droit à la philosophie du point de vue cosmopolitique, Unesco, 1997.
25 『賭けられたマルクス』 Marx en jeu, Descartes, 1997.
26 『歓待について』 De l'hospitalité, Calmann-Levy, 1997. (廣瀬浩司訳、産業図書、一九九九年)
27 『エマニュエル・レヴィナスへの訣別』 Adien à Emmanuel Levinas, Galilée, 1997.
28 『住まい/住みつく――モーリス・ブランショ』 Demeure, Maurice Blanchot, Galilée, 1998.
29 『死を与える』 Donner la mort, Galilée, 1999.

*本書は「ちくま学芸文庫」のために新たに訳出されたものである。


≪著者: ≫ ジャック・デリダ (Jacques Derrida) 1930年、アルジェリア生まれ。エコール・ノルマン卒業。脱構築の哲学者。著書に『声と現象』『グラマトロジーについて』ほか多数。

[訳者] 林 好雄 (はやし・よしお) 1952年、東京大学仏文科卒業。駿河台大学助教授(現在 駿河台大学教授)。
[訳者] 森本和夫 (もりもと・かずお) 1927年生まれ。東京大学仏文科卒業。東京大学名誉教授。駿河台大学教授。
[訳者] 本間邦雄 (ほんま・くにお) 1951年生まれ。東京大学哲学科卒業。駿河台大学教授


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