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The Woman's Health Movement


女性解放運動/フェミニズムの諸潮流の中でも、一九七〇年代に全米から展開した「女の健康運動」は、男性医師の管理下にあった性や生殖を女の手に取り戻す、生身の実践だった。日本ではウーマン・リブの優生保護法改定反対運動、さらには生殖技術をめぐる議論へつながっていく。意識変革の時代を振り返り、女のからだの現在と未来を考える。

1960-70年代の女性解放運動のなか、「女のからだ」をめぐる諸問題――性・生理・生殖・妊娠や中絶を、恥や非難を恐れず語り、知識を獲得し、女たちは自らの意識変革を経験した。市場商品と生殖技術の溢れる選択肢という新たな難問に立ちすくむ今こそ、「からだをとりもどした」あの時代を振り返ってみよう。


――女の自立や解放は自分のからだについて知ることから始まる――
 女性解放運動/フェミニズムには、諸権利の獲得や、性別役割からの解放とならんで、あまり知られていない「女の健康運動」と総称される流れがあります。文字通り、性や生殖など、女のからだにかかわる知や制度を、男が大半だった医療専門家の管理から取り戻す実践です。
 アメリカでは、女性の自分のからだについての見方を変える啓発や、法に反して妊娠中絶を求める女性を支援する地下組織にも展開しました。日本では70年代、ウーマン・リブの女性たちが、優生保護法改定(中絶の事実上の禁止)の阻止や、「産む・産まない自由」をめぐる障害者たちとの論争、ピルの是非をめぐる議論などに向き合い、議論を深めてきたのです。
 本書では、それぞれの社会の女たちの運動がどのような社会背景のもと、何を課題とし、具体的にどんなことに取り組んだのかを、つぶさに見ていきます。
 「女(わたし)のからだをとりもどす」という、その真摯な挑戦は、現代にもそのまま投げかけられています。若々しくあり続けるための情報は溢れる一方、卵子が年齢とともに老化することを知らない「からだ音痴」の女性が増えたこと。「からだは自分そのもの」というより、「自分の所有物であり、意のままにコントロールしうる対象」として、テクノロジーと市場に依存する傾向が強まっていること。いずれも、フェミニズムが直面する「解放」のジレンマとして、著者は正面から問いなおします。
 女は、はたして自由になったのか。からだを取り戻したか
 ――まずは現代史から、ひも解いてください。


≪目次: ≫
はじめに――フェミニズムと女のからだ
変革の時代とフェミニズム/第二波フェミニズムの二つの流れ/コンシャスネス・レイジング(CR: consciousness raising)/性差ミニマリズム/マキシマリズム/女性学の挑戦/女の健康運動

第1章 女の健康運動――一九七〇年代のアメリカ
 1 女と医療をめぐる状況
女の健康運動の始まり/中絶問題の重要性
 2 何よりも中絶の自由を――レッドストッキングス
レッドストッキングスの女たち/中絶法をめぐる攻防/スピークアウトからロウ判決へ
 3 女をモルモットにするな――ピル、DES、ダルコン・シールド
ピルに対する警告/DESの危険性と放置/ダルコン・シールド等のIUDによる被害/女の健康ネットワークの結成/黒人女性のためのプロジェクト
 4 自分の子宮口を見てみよう――スペキュラムとデル・エム
性器を自分の手に取り戻す/デル・エムの考案とセルフヘルプ運動/女のためのクリニックとバックラッシュ
 5 「こちらはジェーンです」――伝説の中絶地下組織
「ジェーン」の誕生/ジェーンでの中絶のやり方/警察の手入れと活動の終了

第2章 地球を旅する本――『私たちのからだ・私たち自身(OBOS: Our Bodies, Ourselves』の軌跡
 1 「それはこんなふうに始まった」――起源の物語
フェミニズムの隠れたベストセラー/OBOSの誕生/OBOSはなぜ支持されたか
 2 OBOSの魅力とは何か
知識は力なり/女たちの経験の重視/当事者によって語らせる/成長し続ける集団プロジェクト
 3 国境を超えて
国際的広がりの三つの時期/さまざまな翻訳・翻案のあり方/グローバル・ネットワークの形成
 4 二つの日本版OBOS
リブのなかのOBOS/第二の日本版OBOS/『からだ・私たち自身』の試み

第3章 日本のウーマン・リブと女のからだ
 1 リブの誕生
「おんな」たちの出会い/ウーマン・リブは輸入か自前か
 2 優生保護法をめぐる対立
優生保護法改定の動きとリブの反対運動/障害者からの反対/リブと障害者運動との対峙/中絶は「女の権利」と言えるのか/リブのなかの分裂/リブは「母性主義」か
 3 ピルへの複雑な思い
ピル推進派と懐疑派と/ピルは飲んでも飲まれるな/からだへの向き合い方
 4 女のからだの日常から
ベビーカ締め出し反対運動/モナリザ・スプレー事件/生理休暇は是か非か論争

第4章 一九八〇年代の攻防と、その後
 1 優生保護法改定運動の再浮上
「胎児の生命尊重」というレトリック/アメリカの反中絶派との連携
 2 改悪反対運動の広がり
女たちの決起/反対運動への既成女性団体の参加/反対運動の拡大と改定の試みの頓挫
 3 富士見産婦人科病院事件
事件の発端/告訴と医学界の反応/長期裁判の過程で
 4 富士見病院事件と女のからだ
「いらない子宮はとってあげる」/無知と羞恥心を乗り越えて/「中絶の自由」への屈折した思い
 5 阻止連と障害者運動
リブを引き継いだ阻止連/女性障害者たちとの連携/優生保護法改定をめぐる相克/妥協の産物としての母体保護法
 6 女のためのクリニック活動
女のための医療づくりに取り組む/アメリカの運動に学ぶ/「私たちはピルを選ばない」/クリニックの開設

第5章 生殖技術という難問
 1 産むための技術の焦点化
新たな問題の浮上/体外受精という技術の持つ意味/\舷プロセスのパーツ化と外部性/∪舷の脱セックス化と商品化/生殖細胞への人為的介入の可能性
 2 不妊とフェミニズムの関係
不妊と卵子の老化/卵子老化問題とフェミニズム
 3 生殖技術と日本の現状
ARTと阻止連の主張/生殖技術をめぐる日本の世論
 4 アメリカの生殖資本主義
ベビーM事件/代理出産ビジネスの活発化/代理出産をめぐるフェミニズム内の対立/歯止めをかけることはなぜ難しいか

おわりに――女のからだは誰のもの
女たちは自由になったのか/ARTをめぐる困難/「選択の自由」の変質

主要参考文献
図版出典一覧


≪著者: ≫ 荻野美穂 (おぎの・みほ) 1945年生まれ。神戸女学院大学文学部卒、奈良女子大学大学院中退、お茶の水女子大学より博士号取得(人文科学博士)。大阪大学大学院教授を経て、同志社大学教授(歴史学、ジェンダー研究)。著書、『生殖の政治学――フェミニズムとバース・コントロール』『ジェンダー化される身体』『中絶論争とアメリカ社会――身体をめぐる戦争』『「家族計画」への道――近代日本の生殖をめぐる政治』ほか。編著、『〈性〉の分割線――近代日本のジェンダーと身体』。共編著、『身体をめぐるレッスン』(全4冊)。翻訳書、A.マクラレン『性の儀礼――近世イギリスの産の風景』、J.W.スコット『ジェンダーと歴史学』ほか。



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