Gori ≒ ppdwy632

〈ぼく〉の思索の一回性の偶然性の実験場。

佐藤優

本「核と戦争のリスク  北朝鮮・アメリカ・日本・中国 動乱の世界情勢を読む (朝日新書645)」薮中三十二/佐藤優5

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――北朝鮮の核保有容認にしろ、先制攻撃にしろ、「日米べったり」にこそ 真の危険が潜んでいる!――
トランプの「忠実なお供」と見られている日本。安全保障の根幹に触れる国家の危機が迫る今、日本人の基礎体力と感性の低下が、より深刻な事態を招いている。大国に割って入る知恵と戦略を持つにはどうすべきか。6者協議をはじめ、北朝鮮、中国と激しい外交交渉を行った元外務事務次官と人気作家が緊急ガチンコ対談!


≪目次: ≫
はじめに――日米一体路線への不安 (2017年11月14日 薮中三十二)

第1章 北朝鮮とアメリカ――今そこにある戦争の危機
 日米「べったり」がはらむリスクとは?
  ●同じスクール同士のつき合い
  ●Shinzo, Let’s go together! の恐怖
  ●100万単位の死者が出るシミュレーション
  ●日本で国連軍会議が開かれている?
 アメリカに日本はどう向き合うか?
  ●アメリカでは「部族間対立」が起きている
  ●日米の立場は同じではない
  ●CIAと「ロケットマン」の真意
 国際情勢が緊迫する中、リーダーの役割は何か?
  ●「扱い」をめぐる日本とドイツの差
  ●首脳同士の「親密さ頼み」は危険
  ●首脳の役割が高まる時代

第2章 日本の上空を北朝鮮のミサイルが飛んだ日
 あの日、政府はなぜ浮足立ったのか?
  ●国家存亡の危機?――日本政府の過剰反応
  ●だれも国際法を知らなかった?
  ●「戦闘行為」という言葉の意味
  ●本当の危機意識を持つとき
 「なんとなく」ではなく、ハードエビデンスで分析する
  ●制裁効果が表れている証拠はあるか?
  ●北朝鮮が本当に破れかぶれになるとき

第3章 北朝鮮の核容認論と日本の核武装論
 アメリカの論調「核保有やむなし」への異論
  ●恫喝外交がまかり通る危険
  ●自民党が封印したあの議論
  ●「北朝鮮のパキスタン化」の危機
  ●危機意識の持ち方、考え方
 核をめぐる日本のシナリオとは何か?
  ●閣議決定された「核保有も核使用も憲法は禁止せず」
  ●ウラン濃縮とプルトニウム抽出が認められる国
  ●原発と核開発の基礎能力
  ●日本が核武装できない理由
  ●「非核1・5原則」で内閣総理大臣が核のボタンを押す?

第4章 小泉訪朝と6者協議――あのとき何が起きていたのか
 2005年の非核化合意はなぜ破られたのか?
  ●外交交渉における戦略とは
  ●金正日が大嫌いだったプーチン
  ●小泉訪朝で示した金正日の本音
  ●北朝鮮をめぐる二つのパイプライン
  ●見逃された心理面からのアプローチ
  ●当事者なのに交渉には入れない
  ●最後は決裂してもいい
 拉致問題でなぜ読み違えたのか?
  ●北朝鮮が初めて謝罪した日
  ●個人主義と合理主義

第5章 北朝鮮の真相――リーダーの頭の中、民衆の本音
 金正恩の革命観の根底にあるものは何か?
  ●金正恩はロシア語にも通じている
  ●レーニンの革命モデルにもとづく
  ●初めて現れた「クーデター」という言葉
  ●朝鮮半島統一のその先
  ●ロシアが警戒する朝鮮ナショナリズム
 北朝鮮の国民は現状をどう認識しているか?
  ●北朝鮮の民衆と終戦間際の日本
  ●大量消費社会の到来が体制崩壊につながる
  ●政権がはらむ自爆の可能性
 経済発展と管理システムは両立できるのか?
  ●北朝鮮はなぜ潰れないのか
  ●クリスチャンとしての金日成
  ●中国で目の当たりにした経済発展
  ●北朝鮮崩壊、三つのシナリオ

第6章 変貌する中国とのつき合い方
 肥大化する中国の自己イメージにどう向き合うか?
  ●中国が抱く「新秩序」のイメージ
  ●ナショナリズムが作る「敵のイメージ」
  ●中国の海洋進出が終わる日
 日本から提案できることは何か?
  ●次官級協議でわかったこと
  ●南北でつけられた30分の時差
  ●「顔が見えたら撃てない」――国境警備隊司令官の言葉

第7章 海洋をめぐる戦い――尖閣問題と東シナ海
 「尖閣問題」の本質とは何か?
  ●墓穴を掘った「係争のある島」
  ●猪瀬直樹副知事の「金集め」
  ●見たこともない人が習近平の隣に
  ●立ち消えになった清国との割譲案
  ●地理的関係がすぐに頭に浮かぶ
 東シナ海での日中共同開発合意のメッセージ
  ●中間線での線引き
  ●取れるときに取らないと、一生取れない
  ●漁船衝突事件の真相
  ●日中の合意に慌てた韓国
  ●日本はもっと警護を固めた方がいい

第8章 二つの顔を使い分けるしたたかさ
 「大義」とタテマエを使って優位に立てるか?
  ●「平和」を大義に中国を追い込める
  ●したたかにやればいい
  ●中国と東南アジア、二つの顔を使い分ける
  ●「テロとの戦い」と Win-Win ゲーム
 中国にどこまで迫れるか?
  ●メンツ丸つぶれの中国
  ●「中国の核心」習近平の腹の中
  ●ユニラテラル会合? アメリカ一人ぼっち
 アメリカにとって日本とは何か?
  ●アメリカは国内しか見えないのか?
  ●70年間の平和の重み
  ●何が本当にヤバいのか――交渉のツボを見抜く力
 トランプの対北朝鮮問題への本気度は?
  ●トランプ大統領のアジア訪問、裏オモテ
  ●強いリーダーが好き――トランプ・習近平関係

おわりに――歴史的大転換を読み解く力 (2017年11月19日、曙橋(東京都新宿区)の自宅にて  佐藤 優)


≪著者: ≫ 藪中三十二 (やぶなか・みとじ) 1948年、大阪府生まれ。元外務事務次官、立命館大学特別招聘教授。大阪大学法学部中退。69年、外務省入省。73年、コーネル大学卒業。北米局第二課長、ジュネーブ国際機関日本政府代表部公使、在シカゴ日本領事、アジア大洋州局長、外務審議官(経済・政治担当)、外務事務次官などを歴任。2010年退官後、外務省顧問、大阪大学特任教授、グローバル人材を育成するための私塾「薮中塾グローバル寺子屋」主宰など多方面で活躍。著書に『国家の命運』(新潮新書)、『世界に負けない日本』『トランプ時代の日米新ルール』(共にPHP新書)など。

≪著者: ≫ 佐藤 優 (さとう・まさる) 1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官、同志社大学神学部客員教授。同志社大学神学部卒業。同大大学院神学研究科修了。85年、外務省入省。在英日本国大使館、在ソ連邦日本国大使館などを経て、95年から外務省国際情報局分析第一課に勤務。北方領土交渉などで活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、最高裁上告棄却。13年、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失う。著書に『創価学会と平和主義』『超したたか勉強術』『使える地政学』『悪の正体』(いずれも朝日新書)など多数。




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本「獄中記 (岩波現代文庫 社会184)」佐藤優5

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獄中記 (岩波現代文庫)
獄中記 (岩波現代文庫 社会184)

○著者: 佐藤優
○出版: 岩波書店 (2009/4, 文庫 607ページ)
○価格: 945円
○ISBN: 978-4006031848
おすすめ度: 4.0
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孤独はツライものであり、ラクなものではないのであろう。
孤独だからこそ、ラクじゃないから、ツライからこそ生み出される不可思議なエネルギー、というものがあるとするならば。みずから求めて得られるモノと言うよりは、予期せず与えられて課せられて、苦悶して苦しくて悶えて悶えて悶えて。どうなんだろう、予期せず与えられて課されるモノとは。じつは、気が付いて受け止めて取り組むのか、はたまた気が付くことなくスルーして通り過ぎて行ってしまうのも、なんてものもあるのかしら。好機として活かすことができるかどうかは、紙一重のような気がする。チャンスが与えられていないことはないのであろう。ほぼ平等に、というよりも際限なくその辺にゴロゴロと、じつはチャンスが転がっているものであって、石と見るのか、玉と見るのか、石に見えたら見向きもしないであろう、玉に見えても活かせるかどうか、磨いて輝かせることができるとは限られない。


≪目次: ≫
序章
第一章 塀の中に落ちて――2002年5月20日(7日目)から7月28日(76日目)まで
第二章 公判開始――7月29日(77日目から)9月27日(137日目)まで
第三章 獄舎から見た国家――9月28日(138日目)から12月31日(232日目)まで
第四章 塀の中の日常――2003年1月1日(233日目)から6月15日(398日目)まで
第五章 神と人間をめぐる思索――6月18日(401日目)から8月28日(472日目)まで
第六章 出獄まで――8月29日(473日目)から10月9日(出獄後1日目)まで
終章

付録   ハンスト声明/鈴木宗男衆議院議員の第一回公判に関する獄中声明/現下の所感――東京拘置所にて/冷戦後の北方領土交渉は、日本外交にどのような意味をもったか/「塀の中で考えたこと」
岩波現代文庫版あとがき――青年将校化する特捜検察――
獄中読書リスト


≪著者: ≫ 佐藤優 (さとう まさる) 在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、95年より外務省本省国際情報局分析第一課。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。05年2月執行猶予付き有罪判決を受け、現在上告中。『国家の罠――外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞、新潮文庫)『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、新潮文庫)ほか多数。

佐藤優『獄中記』(岩波書店、2006)









本「情報力 情報戦を勝ち抜く“知の技法”」佐藤優、鈴木琢磨5

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情報力 情報戦を勝ち抜く“知の技法”

著者: 佐藤優、鈴木琢磨
出版: イースト・プレス (2008/5,単行本 267ページ)
価格: 1,680円
≫Amazon


作家・外務省元主任分析官“佐藤優”と、毎日新聞編集委員“鈴木琢磨”の対談を書籍化。

言語は思想であり、文化である。言語ができずに相手の内在的論理を掴むことはできない。 (P.3)

「汝の敵を愛せ」というのは、イエス・キリストの言葉だ。
《あなたがたも聞いているとおり、『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。》(日本聖書協会『新共同訳 新約聖書』マタイによる福音書第五章第四三〜四五節)
以下は、私なりの解釈である。イエスは「敵を愛して、仲良くしろ」と言っているのではない。敵を憎むのは、人間として自然の感情だ。しかし、憎しみをもつと、どうしても認識が歪む。歪んだ認識で判断すると、過ちを犯す。その結果、自分が損をする。太陽は敵の前でも昇るというリアリズムを大切にせよということなのだ。もちろん、敵を愛することなどできない。しかし、そのような「不可能の可能性」を追求することによって、専門家は冷静に情況を分析することができるようになる。 (P.5)

[鈴木] なぜ、戦前の書物のほうが理解しやすいのでしょう?
[佐藤] よくわからないのですが、私なりに次のような仮説を持っています。一九三〇年代の大学生や高校生には戦争の影が迫っていました。学徒動員で駆り出されてしまっては勉強も満足にできません。当時、哲学の本を読む学生たちは持ち時間が非常に限られていた。戦争に出かければ、ある程度の確率で死ぬことは確実です。学生たちは生き死にの狭間にさらされながら、いま学ばなければならない本だけを限定して学んでいました。そういった読み手の需要を版元は知っていたために、編集者は緊張感を持って著者を選び、本を組み立てています。そのことが本を読んでいてわかるのです。たんなるお勉強会のように衒学的な言説を羅列しているような本は、当時の学生には必要ありませんでした。ライプニッツやカントの言わんとしている思想はこういうことなのだと、ギリギリの解釈で表現している『西哲叢書』のような本こそ必要だったのです。
[鈴木] なるほど。著者や編集者、読者の緊張感が、戦前と戦後ではまったく違うということですね。
[佐藤] そう思います。日本が生き残るためには、西洋哲学の思想についてきちんとした情報をつかみ、分析しなければならない。そうした緊張感が、戦前の出版人にも読者にも強くあった。思想書を勉強するときには、あえて戦前、戦中の版を読むようにしています。 (P.176-P.177)



≪目次: ≫
はじめに 「不可能の可能性」を追求するインテリジェンス能力とは?/佐藤優
第一章 プロが読み解く「日朝情報戦」のカラクリ
交渉の照準を小泉に絞った北朝鮮インテリジェンス/金正日小泉を「男ではない」と評した理由/金丸金日成会談の情報は、なぜ生かされなかったのか?/外務省の内部情報から読み解く交渉混乱の原因/日本に有利な状況を、いかにしてつくり出すか?/「二〇〇二年は歴史の分岐点」と考える北朝鮮からのサイン/鈴木琢磨が「後継者はすでに決まっている」と判断した根拠/複数の国のインテリジェンス情報から判断できること/交渉を膠着させた日本政府の「弱気の読み」/会談の解釈をめぐる鈴木琢磨vs.金正日の「情報戦」/北朝鮮の対南工作は、すでに成功している!?/「自転車の目線」から感じた日本の北朝鮮情報との温度差/北朝鮮人民を“洗脳”する「国家の物語」/本当は優雅!?な北朝鮮人民の一日/犬とビールから読み解く北朝鮮社会の実情/日朝交渉を神話に変えた「不老長寿の酒」伝説/「二〇一八・八・二五、後継者誕生」を示唆するこれだけの兆候/「金王朝伝説」を描いた陰のプロデューサー/支配システムをつくりあげた巧みな情報操作
第二章 公開情報から真実を見つける「情報収集力」
なぜ、複数の情報大国が日本のインテリジェンス力に注目するのか?/二〇〇七年元旦の社説に込められた、見逃せないシグナル/「朝鮮半島統一」へのメッセージは、なぜ見逃されたのか?/日本人が知らないインテリジェンスの世界標準/わずかな言葉の温度差から真実をつかむ「文書諜報」の技術/“謎のイギリス人”の記事が持つスクープ性/小説に織り込まれている、きわめて重要な指摘/北朝鮮、旧ソ連で小説家がVIP待遇された理由/「門外不出」の一級資料は、こんなに簡単に入手できる/日朝外交を決定づける情報を握っている「ある国」/インテリジェンス力とは、転がっている情報に「気づく力」/戦前の日本がつくった「超一級資料」の教え/「マスコミ・タブー」が覆い隠していること/テレビが「思考停止」を引き起こすメカニズム/“情報戦”は、焼肉屋からでも始められる/インテリジェンスの基盤は民間人でもつくれる/「一枚の写真」に込められた、とっておきのインテリジェンス/北朝鮮専門書店「レインボー通商」で手に入るお宝情報/「二、三割の真実」と「七、八割のウソ」を読み解く視点
第三章 相手の真意を的確に見抜く「教養力」
北朝鮮ウオッチャー・鈴木琢磨を生んだ韓国人との出逢い/滋賀・近江京にあった日朝関係の源流/同志社大学神学部を震撼させた「学園浸透スパイ団事件」/キリスト教が結びつけた佐藤優と朝鮮半島の縁/伝説の「T・K生」が実名公表で訴えたかったこと/ある概念を「わからない」ということの意味/キリスト教の基礎を熟知し、活用していた金日成/佐藤と鈴木、二人を結びつけた「奇妙な偶然」/「朝鮮人の時間軸」と「日本人の時間軸」の違い/北朝鮮では「大正時代」が延々と続いている/旧宗主国の日本にとって、北朝鮮は「謎」でもなんでもない/なぜ、戦時中の出版物で学ぶと“腹”に入ってくるのか?/金正日が着目した陸軍中野学校の「インテリジェンス遺産」/敗戦後を見据えた、驚くべき工作ネットワーク/高齢者のインテリジェンス力に敬意を払え/デタラメな情報に振り回されないための視座/インテリジェンスと新聞記者――「情報」を仕事にしたきっかけ/情報力で歴史のジグソーパズルを解く楽しみ/「昨日の敵は今日の友」は相互関係の必然である/人びとを支配する神話=イデオロギーが情報分析の基礎である
第四章 膨大な情報を瞬時に捌く「整理力」「勉強力」
『試験にでる英単語』に学ぶ情報の集め方、使い方/正確な情報は、ブームのときには出てこない/膨大な資料は、一カ所に放り込めば手間なく整理できる/記憶できない情報は、不必要な情報である/雑多な本棚の中から情報を抽出するトレーニング/情報が自然に集まる「しくみ」のつくり方/名刺のデータベース化ほど無意味なことはない/「速達」が生み出す心理的効果/ノート、メモ、スクラップ帳の効果的な使い分け方/電子機器をデータベースにするこれだけの危険性/本当に必要な人脈は、じつは五〜六人程度しかいない/お金を払って得た情報は、頭に残りやすい/完璧に正確な情報ほど、シンプルに入手できる/インテリジェンスのプロは新聞の影響力を侮らない/“駅前留学”で学んだ語学では外国人の思想はつかめない/外国語はネイティブより日本人講師に習え/「国家の情報操作」は辞書から読み解ける/辞書の改訂版から見えてくる思想の変化/文献から封印された単語が浮き彫りにすること/インテリジェンスに必要な基礎語学力は、たった二年程度で身につく/インテリジェンス力を高めることで、敵の戦意を喪失させる
おわりに 佐藤さんと語り合って再認識した、情報を得るための「王道」/鈴木琢磨


≪著者: ≫
佐藤優 (さとう・まさる)
1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。イギリス、ロシアにて大使館勤務の後、1995年より外務本省国際情報局で主任分析官として活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑の「国策捜査」で逮捕され、512日間拘留。2005年2月、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を言い渡されて控訴したが、2007年1月、東京高裁で控訴棄却。著書に『国家の罠』(新潮社、毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(新潮社、新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『国家論』(日本放送出版協会)、『インテリジェンス 武器なき戦争』(手嶋龍一との共著、幻冬舎新書)、『国家情報戦略』(コウ・ヨンチョルとの共著、講談社+α新書)など多数。

鈴木琢磨 (すずき・たくま)
1959年滋賀県大津市生まれ。毎日新聞社夕刊編集部編集委員。大阪外国語大学朝鮮語学科を卒業後、毎日新聞社に入社。いまや絶滅した「探訪記者」の生き残り。硬派から軟派まで朝鮮問題にこだわり、どこへでも足を運ぶ。「サンデー毎日」記者時代から北朝鮮報道を担当。高英姫の偶像化キャンペーンを世界に先駆けてスクープした。TBSテレビ『みのもんたの朝ズバッ!』コメンテーターも務める。著書に『金正日と高英姫』(イースト・プレス)、『テポドンを抱いた金正日』(文春新書)、共著に『在日朝鮮人ジャーナリストが書いた 図説 内側から見た朝鮮総連』(イースト・プレス)、『エリート教育の光と影』(毎日新聞社)がある。



Yasukuni Jinja




本「世界認識のための情報術」佐藤優5

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世界認識のための情報術

○著者: 佐藤優
○出版: 金曜日 (2008/07,単行本 250ページ)
○価格: 1,680円
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佐藤優 (1960- )”が、『週刊金曜日』に連載した「飛耳長目」の第一回(2006年3月10日号)から第二七回(2008年5月14日号)までと、独立した論考二本、書き下ろし100枚をまとめて書籍化。
私は、毎日最低、四時間、現在執筆している作品と直接関係しない本を読むことにしている。私の理解では、読書は、本を読んでから一定の時間、私の場合には最低三カ月くらいしないと、その内容が頭の中で発酵してこないのである。
最近読んでいる本は、外交官時代にロンドン、プラハ、モスクワで、古本屋を回って買った神学書が多い。さびつきかけているチェコ語やラテン語を復習しながら、「神はどうして人間になったのか」、キリスト神学でいうところの受肉論に関する問題を中心に神学書をひもといている。それ以外に、終末論の変遷について教理史に関する専門書と取り組むこともよくある。また、マルクス経済学関係の書物を読むことが多い。これはほとんど日本語である。
社会において、正義を行うことがなぜ必要なのかをキリスト教神学の立場から整理したいのだ。それとともに正義を行う運動が、自己絶対化の罠から逃れるためににはどうしたらよいかについて考えている。人間は、いかにして自己の絶対化を避け、他者との連帯を構築することができるかについて考えながら、読書を進め、思索ノートを作っている。 (P.36-P.37)




≪目次: ≫
はじめに
『週刊金曜日』への私の想い――序論として
バルコニーから歴史を観察するのではなく/「人間とはなにか」という根源的な問い/祖国にとどまり、民衆と苦難を共有する/外交官という進路への迷い/フィールドはこの世である/自由と寛容のメディアへ/北朝鮮批判の先駆/国家の暴力性/国家に依存しない共同体を/現実に影響を与えなければ意味がない/まず、世界情勢を認識せよ/
日露首脳会談――ロシアの“シグナル”を解読できなかった外務省の罪
上海領事自殺事件――外務省でおきた抗争と幕引きを急ぐ背景
機密費――報償費関連文書を開示せよ
嫌韓流――第一線の日本外交官に浸透した危険な“情緒”
日露関係――プーチン大統領と官僚の間隙に手を突っ込め
イラン問題――欧米主要国が警戒するイランと日本の特殊な関係
靖国問題――歴史を背負う国家首脳がとるべき姿勢とは
漁船銃撃事件――北方領土の拿捕事件で逃げる松田ロシア課長
袴田茂樹教授の「北方領土ビジネス」――国民にツケを回す空想論と訣別を
北朝鮮核実験――日本に有利な状況を作り出すために
外務省在勤手当て――外務省改革のために何か必要なのか
琉球処分――中央政府と沖縄のねじれを解明せよ
山崎氏訪朝――あらゆる経路を使った対話を継続せよ
防人の歌――国家という存在が「防人の歌」を歌わせる
岩下明裕教授の沈黙宣言に疑問――知識人は北方領土問題にいかにかかわるべきか
中国潜水艦火災――情報を新聞に流した真意とは
五・一五事件――別の未来を探る道はあった
松岡大臣自殺――松岡利勝氏の素顔と政治家の死を防ぐ方法
友好の家」不正利用――国後島「友好の家」の解体撤去を視野に入れよ
慰安婦」決議――米下院決議と過去の過ちを克服する道
集団自決――教科書検定問題で文部官僚を追い込め
南北首脳会談――流動化する朝鮮半島情勢を読む
小沢辞意表明――社会民主主義の歴史を再評価せよ
ロシア下院選挙――「プーチン二〇年王朝」というファシズム
北朝鮮三紙共同社説――「弱者の恫喝」外交成功で自信をもった北朝鮮
中国産餃子への薬物混入――新自由主義下の日中関係を『資本論』から読み説く
プーチン流イデオロギー――ファッショ国家の神話と動員とは
沖縄「集団自決」裁判――沖縄をめぐり左右の真摯な対話を
胡錦涛訪日――手を握る二つの帝国主義大国
世界をできるだけリアルに認識するために――あとがきにかえて
プーチンの長期戦略/過渡期のエリートの特徴/ロシアの國體を強化する/新自由主義はロシアに何をもたらすか/戦争と監視の時代に/山川均の反ファシズム共同戦線論/秋葉原事件と『蟹工船』/多元主義に向かうための五つのテーマ



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本「国家の崩壊」佐藤優+宮崎学5

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国家の崩壊

○著者: 佐藤優、[聞き手] 宮崎学
○出版: にんげん出版 (2006/02,単行本 366ページ)
○価格: 1,680円
≫Amazon



宮崎学[聞き手]が主催する研究会が、佐藤優をゲストに呼んで、八回に渡って「ソ連崩壊」について語ってもらった内容をまとめて書籍化。主題は「ソ連崩壊に見る国家の崩壊」 (P.344)
ソ連崩壊なんて、もう15年も前のことだし、共産主義国の話だし、日本には関係ない、と大方の人たちが思っていることだろう。だが、そんなことはない。
超大国ソ連があれほどあっけなく崩れ去るとは、世界に数あるソ連研究機関、ソ連研究家のだれもが予想できなかったことだったのだ。
ということは、アメリカ一極支配が急に崩れ去るということだって、充分にありうることだと思わなければならない。実際、一極支配から多極化への流れ、それにアメリカが乗り換える兆しは、色々なところに見え隠れしているのである。そして、もしアメリカが多極化に舵を取って東アジアから引けば、対米付属一辺倒のうえ東アジアで孤立している日本には、連鎖倒産の恐れが大いにある。
そんなときに、今のようなリアリティなき政治感覚を国民が持ち続けているのは、致命的である。だからこそ、多くの人たちが他人事としてではなく本書を読んで欲しいと思うのである。 (P.24-P.25)



≪目次: ≫
序文 突破者・宮崎学がラスプーチン・佐藤優に聞く/宮崎学
はじめに 国家崩壊の渦中にいるということ/佐藤優
ブレジネフ体制末期からゴルバチョフ登場まで
[概略と問題意識]/宮崎学
「豊かな社会」に隠された社会主義の危機/佐藤優
セイコーよりもカシオが高級ブランド?/投票率99.9%に隠された恐怖/ソ連共産党は腐っても鯛/イラン革命の衝撃――アフガン侵攻の真相/「母性英雄」人口政策で膨張したイスラームの台頭/アフガン戦争体験――それは地獄の黙示録だった
ペレストロイカが打ち出されるまで
ソ連社会のリストラと西ヨーロッパ革命をめざして

ゴルバチョフの秘密は妻ライーサの人脈/反アルコール・キャンペーンの顛末/ペレストロイカとは実はリストラのことだった/「地頭」のいいレーガンにしてやられたゴルビー/ソ連にもある黒人差別/ソ連崩壊後は政治的チェルノブイリ/ゴルバチョフはソ連史上初めての大卒書記長
掘.撻譽好肇蹈ぅの本格的展開
[概略と問題意識]/宮崎学
状況対応的に変質していくペレストロイカの過程/佐藤優
大衆消費社会へ―“火を噴かない”テレビが欲しい―/「丸くて白いケーキ」は存在しない?/地回り行為を容認するロシア人のメンタリティ/左側通行と右側通行を混合したシステムがうまくゆくはずがない/カナダのウクライナ人がソ連崩壊に果たした役割/ソ連崩壊の画を描いた男――アレクサンドル・ヤコヴレフ/ゴルバチョフはクリスチャンだった!/スターリン時代以来数十年ぶりの全党協議会の狙い/共産主義から社会民主主義へ/ロシア共和国にはなぜ共産党がなかったのか/選挙で守旧派を落選させた小泉流ゴルバチョフ/異常に盛り上がったソ連初の自由選挙/炭鉱労働組合を敵にした政権は必ず潰れる
検―民族のパンドラの箱
[概略と問題意識]/宮崎学
ソ連を解体に追い込んだ複雑怪奇、非合理きわまりない民族対立の真相/佐藤優
宗教か民族か――アゼルバイジャンとイランの複雑な関係/ナゴルノ=カラバフアゼルバイジャン人とアルメニア人、もとは同じ民族/他民族が一人もいなくなれば民族問題は「解決」する/テロリストが跋扈するアルメニア・麻薬を生業にするレズギン人/生の民族対立より人工的民族対立のほうがずっと怖い/「トルキスタン」を五分割したスターリンの狙い/ウズベク語をろくに話せないウズベク大統領/アタッシュケースを持ったアルカイダがやって来る/世界一の独裁国家トルクメニスタン共和国/形式において民族的、本質において社会主義的?/一七、八世紀のオランダ語を話すドイツ人の存在/チェチェン人には七代に渡る「血の報復の掟」がある/ヨルダンの親衛隊・秘密警察はなぜチェチェン人なのか?/チェチェンの大統領はソ連空軍少将/チェチェン戦争の裏にはクレムリンへの政治資金還流があった/東欧では若者が決起し、ロシアでは中年が決起した/旧東ドイツにはナチ党があった!/ソ連の各国の秘密資金はルーマニア経由だった
后〔汰するペレストロイカ
[概略と問題意識]/宮崎学
混乱期の民衆と政治家群像/佐藤優
あいまいさを大切にするロシア人バルト三国の独立は瓢箪から駒/エリツィンの手法はポピュリズムボナパルティズム/乱立したミニ政党はほとんどがペテン師か詐欺師の集まり/ゴルバチョフが党事務所からクレムリンに移った意味/ソ連末期には三種類のエリートがいた/確実に育ってきた未来のエリート/プーチン政権のネックはチェチェン戦争/笑える物不足パニックの背景/政治的に一度死んだ男・エリツィン/ソ連では社会主義経済学が「近経」、資本主義経済学が「マル経」?/恐怖のハイリスク・ノーリターンの世界/子どもの目標、男子「マフィア」、女子「売春婦」/ソ連にはタバコのマルボロ本位制の時期があった/農地の私有化だけは絶対許さないロシア人の精神/はしっこいヤツは、すぐに経済ゲームがうまくなる/黒い大佐――革新将校たちのソ連版維新運動/大東亜共栄圏に似ているソ連復活構想
八月クーデターソ連邦崩壊
[概略と問題意識]/宮崎学
疾風怒涛の一九九一年/佐藤優
極限状況のバリケードの中で行われていたこと/社会秩序の乱れは交通警官を見ればわかる/権力の暴力性をよく知っているロシア人/なぜアゼルバイジャンが情報戦の要だったのか/クーデター失敗は司令塔になるはずのゴルバチョフの裏切り/エリツィンの評価を読み違えたクーデター派/修羅場に弱いエリツィン/八月クーデターの時、なぜファクスが遮断されなかったのか/エリツィンが仕組んだ「ジャンパー姿のゴルバチョフ」/クーデター失敗後のエリツィンの手際は見事だった/エリツィンとソルジェニーツィンの一致点/側近集団の対立を煽るエリツィンの手法
察ー匆饉腟舛了猖汗觜
[概略と問題意識]/宮崎学
破滅的状況の中の人間ドラマ/佐藤優
インフレ率2600パーセントの社会/資本家になった人間の影に夥しい死者の群れ/ソ連崩壊直後、幸福な無政府状態があった/知的世界は百家争鳴状態だった/スポーツ担当省とスポーツ組マフィア/特別の利権が与えられたスポーツ組と教会/ゴルバチョフの啓蒙政策とエリツィンの愚民政策/バッタ品をロシアに流して大儲けした日本人/市民主義か民族主義か――ロシア連邦の形成を巡って/民族ナショナリズムを越えられなかったソヴィエト連邦/ロシア版「議員ほどいい商売はない」/影響力=権力者との物理的距離/政治的近親者の抗争の恐怖――モスクワ騒櫌事件/エリツィンの逆鱗に触れた“アル中”発言/軍が突入して数百人が死んだ――モスクワ騒櫌事件/「神は僕を許してくれるだろうか」とブルブリスは訊いた/ロシア権力者の宿命=独裁者/スターリンは生きている――プーチン指名の意味するもの
次〆鯑のソ連と今日のロシア
[概略と問題意識]/宮崎学
新たなアイデンティティを模索するロシア/佐藤優
プーチンは大統領候補のダークホースだった/伝統に回帰するロシア/否定を通して確立されるロシアのアイデンティティ/ルースキーとロシヤーニン――ロシア人の意識の二重性/国家から個人へ、「我々」から「私」へ/防衛戦争に強く、侵略戦争に弱いロシア人/ロシアの底流――ユーラシア主義の復活/ロシアのインテリにとってナロード(人民)は常に謎であり真理だった/「ソ連・マイナス・共産主義」とは何か/プーシキンブームの意味するもの/顕教としてのマルクス主義密教としてのユーラシア主義/なぜロシアではトロツキズムが根づかなかったのか/ロシア人はやっぱりスターリンが好き/スターリン・プレジネフ・プーチンの強さの秘密/スターリン時代とプーチン時代は「密教」で連続/日本のとるべき道
国家が崩壊するとき――まとめに代えて/宮崎学
リーダーがアホだと国家が壊れる/亡国のリーダー?――ゴルバチョフと小泉純一郎/エリツィンを見くびってはいけない/次はアメリカ一極支配の番かもしれない
付・参考年表 ペレストロイカからソ連崩壊まで


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本「大和ごころ入門――日本の善によって現代の悪を斬る」村上正邦、佐藤優5

ブログネタ
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大和ごころ入門――日本の善によって現代の悪を斬る

○著者: 村上正邦佐藤優
○出版: 扶桑社 (2008/4,単行本 284ページ)
○価格: 1,680円
≫Amazon



ぼくには、神経質に几帳面にすぎる部分があって、ついつい深追いしすぎてしまう。そのあたりのバランス感覚の悪さは、どうにもならない!?
佐藤優 (1960- )”を知りたくて、その著作を読みつづけて、最新著作を除いてすべて読了した気になっていたのに、うっかり1作品読み漏れていたことが判明して、大慌てで手配した。なにもすべてを読まなくともいいのに、と思いつつも、どうにも落ち着かない。性格とはいえ、得することよりも、損することの方が多いような気がする。労力や時間を考えるに、適度に費やして、ほどほどで切り上げる術を見に付ける必要性を感じるときは少なくない。

佐藤優”と“村上正邦”の、“吉野”をめぐる対談の書籍化。
吉野朝廷(南朝)南北朝時代後醍醐天皇太平記、、、日本の歴史を勉強しないと、、、


[村上] ・・・では、裁判というものは一体何だ。司法というものは本当の正義なのか、公平なのかと、そこでまた憤りが出てくるわけです。正義とか真実が即、無罪につながらないが、現実の司法なんです。 (P.30)

[佐藤] ・・・文章に書かれて法律にしてそれを押しつけるというような形になると、これは逆に拒否することもできるということになるので、やぱりまずいと思うんですよね。
それから、法律で決めることができるならば、逆に法律で変えることができるようになる。 (P.81)

[村上] 言葉は言霊です。近代は人間が生活して生存するために自然を征服して、万物の霊長たる人間の当たり前の権利だと。こう思ってきたわけね。人間至上主義の思いあがりですね。 (P.226)
  


≪目次: ≫
まえがき/佐藤優
第一章 国家権力とは何か?

差し入れのリンゴがふたりの距離を縮めるきっかけ/黒い縁がある畳、ない畳、東京拘置所には二種類の部屋がある/丸刈りになるのは罪を認めた証。間接話法で教えてくれた刑務官/正義が即、無罪にはつながらない。現在の司法の現実/狭い世界で生きている検察官は視野を広げることが大切/検事も取調室の中で〈崩れる誘惑〉にかられる/事務官、刑務官に感謝すれど、憎しみの感情はない/葦津珍彦の国体観に学べば、行政官にも仕事の矜持が生まれる/逮捕の日の早朝、靖国神社に参拝。英霊に祈りを捧げる/昭和天皇の嘆き、政治家の邪な行為は、朕の不徳が成せる業
第二章 吉野の山で国体について考える
「法」と「掟」が矛盾するとき、どちらを取るか/検事は狭い検事村の「掟」だけで動いている/座敷わらしに出会うとツキを呼んで幸せになる/「現場」を知ること。人知を超えたものを信じること/知らず知らずのうちに近代的左翼思想が入ってきている/鬼気迫る権現像。その内側に微笑みを見る/吉野は多元性と寛容の世界、再出発ができる場所である/地獄を知った政治家こそ、本当に国民を幸せにできる/「南朝が正統」国体の本質を吉野で再認識する/「人知でなんでもできる」そこから非寛容な発想が生まれる/根本的な議論なしの改憲は大いに危険/反米でも親米でもなく、社稷を国家とどう結び付けていくか/見落とされている三種の神器の意味するもの/皇室が果たしてきた役割「神皇正統記から現代を読み解く」
第三章 思想の力、表現法、そして涵養法
「神道の奥義というのはなかなかその姿を現さず」/本当に優れている人間は、左右という枠を超えて影響を与える/国民が選んだから正しいとは限らない/『古事記』をひもとくと、順番の後先、秩序の乱れが理解できる/改憲は必要か?/九条だけでなく皇室典範をどうするか/天皇制という言葉による、危険な刷り込み/皇室典範と成文憲法を合わせた、その背後の見えないところにあるのが、本当の憲法/日本の思想は世界に通じる。そのためにも「通じる言葉」にしなくてはいけない/武士道に一致する日本的キリスト教を/台湾との不思議なご縁/一期一会 陰徳を積むことの大切さ/国体が危機に瀕したことを忘れないための「昭和の日」/言葉を大切にしない、いまの政治家/人間の価値は銭金だけでははかれない/金に負けないための、しっかりとした教育が大切/家族、疑似家族、掟の延長にある国家、そして目に見えない憲法/小泉改革は手順を間違えた水蛭子改革
第四章 我々の死に場所
対談の最後を吉野で締める/南北朝と同じことが、いまの日本で起こっている/経験の乏しさは思想を勉強することで補える/経済優先に走りすぎて、幸福追求権を忘れていないか/地域、歴史認識という横軸、所得格差という縦軸、どちらからも、同胞という意識が希薄になっている/政治家を継ぐのであれば、財産を放棄して、選挙区も替える心構えがほしい/吉野に来て、私を捨てることを学ぶ/畏敬の念、感謝の気持ち、生かされていると感じる想い、それが大切/「拉致問題の解決」この言葉にあるレトリック/拉致問題は解決不能な問題ではない。大切なのは北朝鮮を知ること/閉塞感のなかでうごめいているから、政治の英知が出てこない憂うべき状況/大幅改造しないでなぜ福田内閣なのか。おかしいと感じないのはなぜ?/お金を貯め込んで預金通帳の残高を見る、悪趣味な政治家/天皇の名前を使って集金活動と言われた屈辱。これは絶対に許せない/こんにちの政治の中で大政奉還を考える。いまこそ平成維新、平成の中興を/出発点として、吉野、賀名生を拠点にシンポジウムを開いていく/革命は歴史の断絶を生む。連続した日本を守ることの意義/外国のモデルを持ってくるのではなく自国の歴史に学べ/最後に吉野で思うこと
あとがき/村上正邦

≪著者: ≫ 村上正邦 (むらかみ・まさくに) 昭和7(1932)年、福岡県生まれ。31年、拓殖大学政経学部卒業。40年、玉置和郎参議院議員秘書を経て、55年、参議院全国区で初当選し、以来4選を果たす。59年、防衛政務次官、平成4(1992)年、労働大臣、7年、参議院自由民主党幹事長、11年、志帥会会長、同年、参議院自由民主党議員会長、12年、参議院憲法調査会初代会長に就任。13年、KSD事件を巡る受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕される。一、二審で有罪。現在、上告中。主な著書に『汗にむくいる』『政治にスジを通す』『混迷の東欧を探る』、共著に『参議院なんかいらない』『自民党はなぜ潰れないのか』などがある。
≪著者: ≫ 佐藤優 (さとう・まさる) 昭和35(1960)年、埼玉県生まれ。60年、同志社大学大学院神学研究科修了。同年、外務省入省。平成7(1995)年までに在英国日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、外務本省国際情報局分析第一課に勤務。主任分析官として活躍したが、14年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕される。一、二審で有罪。現在、上告中。外交官として勤務するかたわら、モスクワ国立大学哲学部客員講師(神学・宗教哲学)、東京大学教養学部非常勤講師(ユーラシア地域変動論)を務めた。主な著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞)『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅荘一ノンフィクション賞)『国家の自縛』『日米開戦の真実』『獄中記』『国家論』『野蛮人のテーブルマナー』『私のマルクス』『地球を斬る』『国家と神とマルクス』、共著に『インテリジェンス 武器なき戦争』『反省』『ナショナリズムという迷宮』『国家の崩壊』などがある。



鳥居を見上げ・・・
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本「正義の正体」田中森一×佐藤優5


正義の正体
著者: 田中森一×佐藤優
単行本: 256ページ
出版社: 集英社 (2008/3/26)




もうホントにくそったれ!?、としか言いようがないんだけれども、桜木町(横浜)から電車を4本乗り継いで自室に帰り着く頃には、すでに1時間半以上の時間が経過していて、日付けも変わっていて、恩義を感じている方の内輪だけの送別会だから、さすがに気乗りはしなくたって、やっぱり参加しないわけにはいかないから、何とか奮い立たせて久しぶりに飲み会の集まりに参加したんだけれども、かといって元来飲酒が嫌いなわけじゃないから、参加したら参加したでついつい調子に乗って飲みすぎて、ジョッキが次々と空になるも、それでもやっぱりどんなに飲んでも酔えない。中途で辞去して帰路に向かう電車内は、絶好(?!)の読書タイム♪
何にも知らずに能天気に無関心に過ごせるのならば、それがいちばんの幸せ!?、知らなければ何ら言及することだってないけれど、仮にも知ってしまったら、ついつい余計なことに口出しだってしたくなっちゃう。不平不満や文句だって、つい調子づいて、反体制的な批判のひとつだって、口が滑るってことだってある。アルコールの勢いで開放的になれば、ますます虚言に拍車がかかる、酒の席での無礼講なんてまやかしで、どんな時でも本音と建前はキッチリと使い分けなきゃいけない、二枚舌は最低限の思いやり、マナー!?
くそったれを口にするぼくは、自らに問う、「そう言うおまえは、なんぼのもんだ?!」、なんぼの者でもなく、そのぼくがまずはいちばんのくそったれで、他者に対してくそったれを言及すべきではなく、その資格を有しない。資格を有しない者が口にする他者に対する言及とは、果たして有効なのであろうか?、仮に有効であるとしたところで、その言説は、まともに取扱うに値するのであろうか?

『正義の正体』と銘打たれた本書は、「PLAYBOY」2007年10月号から2008年2月号に連載した対談・田中森一 (1943- )×佐藤優 (1960- )を再編成し、大幅に加筆して書籍化。


≪目次: ≫
 序章 『反転』が暴露した「正義の正体」
 第1章 国策捜査はこうして作られる
 第2章 検察庁と外務省 −その実態とは
 第3章 拘置所暮らしが教えてくれたこと
 第4章 検事の情報術、外交官の情報術
 第5章 裏社会を語る −カネと暴力
 第6章 わが体験的 勉強法を明かす
 終章 対談を終えて
 緊急対談 上告棄却決定 −田中森一氏に訊く


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本「ナショナリズムという迷宮 −ラスプーチンかく語りき」佐藤優、魚住昭5


ナショナリズムという迷宮 −ラスプーチンかく語りき
著者: 佐藤優、魚住昭
単行本: 253ページ
出版社: 朝日新聞社 (2006/12)




ジャーナリスト“魚住昭 (1951- )”が、「ロジック(理論)のとてつもない力を知っ」て、相談した編集者に、「魚住さんと佐藤さんは、国家や民族に対するスタンスが違う。その相違点について議論したらどうか」と言われて、「新たなケミストリー(化学反応)が生まれるかもしれない」と考えて“佐藤優 (1960- )”に打診したところ、「やりましょう」で実現した対談の書籍化。

唐突に始まる対談は、
[魚住] まず議論の前提として思想とは何かという話から始めましょう。私の中にはとても浅薄だけど拭いがたい疑念があります。それはいくら思想、思想と言っても、戦前の左翼のように苛烈な弾圧にあえばすぐ転向しちゃうのじゃないかということです。特に私のように憶病な人間がいくら思想をうんぬんしたところで仕方がないじゃないかと。
[佐藤] 魚住さんがおっしゃる「思想」というのは、正確には「対抗思想」なんです。
[魚住] どういうこと?
[佐藤] いま、コーヒーを飲んでますよね。いくらでしたか? 200円払いましたよね。この、コイン2枚でコーヒーが買えることに疑念を持たないことが「思想」なんです。そんなもの思想だなんて考えてもいない、当たり前だと思っていることこそ、「思想」で、ふだん私たちが思想、思想と口にしているのは「対抗思想」です。護憲運動や反戦運動にしても、それらは全部「対抗思想」なんです。 (P.23-P.24)
最後まで、このインパクトから逃れられない!?

[佐藤] ・・・国家の目的は何かというと、自己保存なんです。そのためには国民から富や労働力を収奪しなければならない。国民に対して福祉という優しさを示すのも、ある程度、国民に優しくないと国民が疲弊して収奪できなくなるからなんです。金融面での規制を緩和して起業を促したのも、新たな収奪の対象をつくりだすという側面があったといっていいでしょう。小泉政権における新自由主義的な経済政策も、新たな富める者をつくりだして、収奪するためだといえます。 (p.127)

[佐藤] ・・・私の理解から言うと、30年代というのは、平和な時代と考えていいと思うんです。日本が行った直近の戦争が1905年に終結した日露戦争です。太平洋戦争が勃発する41年まで、36年間、本格的な戦争をしていません。 (P.162)

[佐藤] そもそも私は、日本人の集団主義という“定説”を信じていないんですよ。私が外交官として国際社会を見てきた経験からすると、むしろヨーロッパ諸国の方が共同体意識、集団主義的な傾向が強いと思いますよ。身近な例で言えば、ドイツ人の団体旅行、イギリス人のボーイスカウト、パブリックスクールの寄宿生活。アジアに目を転じますと、例えばインド。かつてはギリシャ哲学と対話し、イスラムの影響を受け、イギリス文明とも接触していて、知的な水準も高いし、人間の内在理論をとらえる力もある。ところがイギリスの植民地から脱却するのに非常に時間がかかりましたね。いま、インドはIT大国だと言われてますが、約10億の人口のうち、IT産業に関係する人口は、2、3%の枠から拡大していきませんね。その根っこは何かというと、カーストという身分制度の形をとった集団主義ですよ。 (P.227)

[魚住] ・・・“個の確立”と言ったときにイメージするのは、血筋の否定、家父長的な権威の否定、出身階層や地域に縛られることのない個の自由ですね。これこそ最も大切なんだという価値観から、イデオロギー的な要素を削ぎ落とすと、これまで私たちが批判してきた新自由主義社会のなかのアトム的な“個”のイメージに重なってきますよね。産業社会の発展により果てしなく流動化し、孤立してゆく“個”。
[佐藤] おっしゃるとおりです。
[魚住] すると、新自由主義のもたらす“個”と同じイメージを私は、理想的なモデルとして描いていたということになるんですよ。つまり、この対話の1回目の冒頭で佐藤さんがおっしゃった、「200円払ってコーヒーが買えることに疑念をもたないことが『思想』」なんだ、ということですね。
[佐藤] そのとおりです。
[魚住] 自分のもっていた「思想」は32年テーゼの思想で、そこにある欠陥に気付かされたということになります。
 (P.233)


文献解題/佐藤優


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本「ロシア 闇と魂の国家 (文春新書)」亀山郁夫+佐藤優5


ロシア 闇と魂の国家 (文春新書)
著者: 亀山郁夫+佐藤優
新書: 248ページ
出版社: 文藝春秋 (2008/04)




いずれ読みたい著作の筆頭に挙げられる、『カラマーゾフの兄弟 (Братья Карамазовы,1880)』、著者フョードル・ドストエフスキー (Фёдор Михайлович Достоевский,1821-1881)ロシアの文豪の最高傑作と謳われる。
新潮社の季刊誌「考える人 2008年春号」の特集“海外の長篇小説ベスト100”では、堂々の第三位。

やっぱり、新訳(光文社古典新訳文庫)の“亀山郁夫 (1949- )”にて愉しみたいと目論む。まだまだ早すぎると躊躇する気持ちもある。
読んで読めないことはないのだろうけれども、深い理解を得るには、知識も情報も不足している。一読して理解が得られるものでもなく、何度か精読すべきものでもあろうけれども、であればこそ、ますます今読むべきか迷うところで、今回がその一歩前進となるのかどうか?!


当時 同志社大学神学部の学生だった“佐藤優 (1960- )”と、当時 天理大学の助教授をしていて、非常勤で同志社に来ていた亀山先生とは、ロシア文学者たちの集まりで面識があった。23年ぶりの議論を重ねる二人の「ロシア」をめぐる対談の書籍化。

[佐藤] ・・・根源的に亀山先生の中にいいかげんなところがあるからかもしれない。こういう言い方をすると誤解を招くので、言葉をつけ足しますが、亀山先生はかなり本気で宗教の勉強をした。それだから、ロシア正教にある根源的ないいかげんさに気づいたのだと思います。だから、ドストエフスキーのテキストの中の宗教性に惑わされない。
[亀山] なるほどね(笑)。 (中略) ぼくは最近、ドストエフスキーかぶれが高じて、徐々にロシア正教とはなにか、わかってきたような気がしています。だからといって決して自分のなかに神の存在を信じているわけではない。ただ、神が存在すれば、少しは楽になれるのじゃないか、と思うことがあるんですね。つよい不安と恐怖にかられた瞬間です。加賀さんとの対談でとてもためになったのは、信と不信の間を揺れ動くことこそが進行だ、という一言です。その意味で、ドストエフスキーはやはりキリスト者だったのかな、と思うわけですが、この点についても、機会をみて佐藤さんのお話をうかがいたいと思っています。 (P.43)


[亀山] ・・・そこで佐藤さんにお聞きしたいのは、ロシアはいま、精神と物質、魂と闇の終末戦争を繰り広げているか、という問題なんです。
[佐藤] その勝負は既に思想の上ではついていると思います。カネですべての価値を測る新自由主義を既にロシアは拒否しました。物質に対しては、基本的に精神が勝利したのだと思います。この精神力によって、ロシア経済は復活したのです。
私の理解では、魂と闇は二項対立を作らないのだと思います。魂が闇を吸い込み、また闇の中に魂が偏在するというイメージを私はもっています。ロシアにとって苦難は今後も続くでしょう。そして、この苦難を積極的に引き受けることによって、いつか到来する千年王国を待ち望むというメシアにズムを、プーチン=メドヴェージェフ二重王朝のロシアは静かな形で待ち続けるのだと思います。 (P.248)


≪目次: ≫
 魂のロシア  亀山郁夫
 ロシアの闇  佐藤優
 第一章 スターリンの復活
 第二章 ロシアは大審問官を欲する
 第三章 霊と魂の回復


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[亀山] 居心地のよさを権力が感じているときに芸術に金を出すという構造が、これだけ二極化した日本では機能しないから困ってしまいます。文化に対してダイナミックな態度ができるところに、ロシアの魂の力を感じます。
[佐藤] 確かにこれは「ロシアの魂」の力だと思います。亀山先生が追究している「政治と文学」は古臭いどころか、今の新自由主義の堕落が蔓延する世の中だからこそ必要とされる、極めて現代的なテーマです。今の日本の政治家は、官僚になるのが夢という、どうもスケールが小さい学校秀才みたいな奴が多い。「総理になりたい」というだけで、志が高いと言われる。政治家ならばそんな小さな夢ではなく、「全世界から貧困を一掃する」とか、「戦争を絶滅し、恒久的平和を実現する」というぐらいの「不可能の可能性」に挑む大きな夢を持ってほしい。そのためには、国民から信託された権力を使わせてもらうという、「大審問官」型の政治家が出てくることが日本にとって重要なのだとぼくは考えるのです。
[亀山] 大審問官型の政治家、というのをもう少し説明していただけませんか。非常に重要な示唆を含んでいるように思えるのですが、きっと読者は理解できないでしょう。
[佐藤] 読者に理解していただける言葉を見いだす自信はありませんが、試みてみます。政治家が、自己の政策なり理念なりを実現するためには権力を必要とします。しかし、権力というものがくせ者で、そこには魔物が潜んでいるのです。潜んでいるというよりも、自分の内部にこの魔物を飼っていかなくては、政治家になれないということなのだと思います。そして、この魔物を飼っている人たちが独自の磁場を作り出すのです。ここでは永遠に戦いが続きます。 (中略)
・・・キリストは基本的に大審問官のあり方を認めます。キリストを通じて神が大審問官と共犯関係に入るのです。
私はほんものの政治家とは、大審問官の道だと思うのです。ときに暴力を行使してでも、人類が生き残ることができるようにするために、自らの優しさを殺すことができる人間がほんものの政治家なのです。愛と平和を実現するために、常に人々を騙し続けるのが政治家の業なのです。私は日本では、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗という三人の内閣総理大臣、ロシアではエリツィンとプーチンという二人の大統領を目の当たりにしました。この五人にはいずれも大審問官と共通するところがありました。大審問官になって、有象無象の阿修羅を力で押さえつけるのが自らの歴史的責務であると考えていました。ただし、これらの政治家は、そのため自分の魂は地獄に堕ちることになる。政治家にはその覚悟をもってもらわなくてはなりません。
[亀山] 一種の自己犠牲の上に成り立った最大幸福のための決断とでもいうのでしょうか。ここでもほんものの「決断」が試される……。 (P.224-P.227)


[亀山] ・・・50代半ばにきて、『カラマーゾフの兄弟』の翻訳を思い立ち、何冊か新書を書いているうちに、はっきりと見えてきたものがあるんです。結局、文学というのは、幸福の一形式なのであって、幸福のさまざまな形を人に伝えるのが、その使命なのだ、ということです。要するに、生きる力を与えるのが文学なんですね。
でも、生きる力を与える、というのは、自分から死なない力を与えるか、というとそうじゃない。それぞれの人間が、人生の果実を味わいつくすための宣伝活動だ、といったら叱られるでしょうか。佐藤さんはどうお考えになりますか。文学って何だとお思いになりますか。
[佐藤] 私は、文学とはインテリになるための方便だと考えています。これは私の考えではなく、日本の傑出したマルクス経済学者だった宇野弘蔵の見解を踏襲しています。宇野は、インテリとは、自らが置かれた状況をリアルに認識している人と考えました。私は、認識してるだけでは不十分で、その認識を自分の言葉で表現することができるということをこれに付け加えるべきだと思います。
宇野は、インテリになる一つの方法を、体系知(科学)である経済学を体得することと考えました。もう一つの方法は、小説を読むことで、心情によって、自分の置かれた位置のリアリティーを認識するることと考えました。この意味で、インテリにとって文学は不可欠と考えます。
[亀山] ぼくはいま、学長という立場でいろいろな仕事をしていますが、法人化、少子高齢化という厳しい状況のなかで、いかに大学のプレゼンスを高めるか、というのがもっとも大きな課題です。それを実現できれば、人文・社会系の小規模大学でも生き残れると思います。また、文学者がこうした立場に立つということを、少なからず危惧する人がいるわけですが、この半年の間に、ぼくはとても重要なことを発見したんですよ。
文学的な想像力を持っている人間と持っていない人間というのは、決定的に違うということです。
結局、自分が、大学人として、あるいは研究者、教育者としてやっていることにいかに批判的であるか、という一点にすべてはかかっているということです。ぼくは、ドストエフスキーから出発しているわけですが、ドストエフスキーをとおして何を学んだか、というと、人生は何か、ということを学んだ、としかいいようがない。でも、文学よりも人生からのほうが、はるかにたくさん学んできたように感じます。そして人生から多くを学ぶには、やはり、文学から多くを学ぶための力が欠かせないのです。教養です。
[佐藤] 外交官にとっても、難しい交渉をまとめあげる上で、教養はとても重要です。また、私が会った優れたインテリジェンス・オフィサー(情報機関員)は、一人の例外もなく、優れた教養人でした。 (P.233-P.235)

本「反省 私たちはなぜ失敗したのか?」鈴木宗男、佐藤優5


反省 私たちはなぜ失敗したのか?
著者: 鈴木宗男、佐藤優
単行本: 293ページ
出版社: アスコム (2007/6/15)




やっぱり、『反省』なんてするものじゃない!
佐藤優(1960- )”が「はじめに」の冒頭から、
「国民に対する説明責任を果たさないで、本当にすみませんでした。深く反省しています」
これが現時点における私の率直な気持ちである。共著者の鈴木宗男氏に尋ねてみたところ、鈴木氏もまったく同じ気持ちということだ。 (P.9)
と書き記せば、巻末の「おわりに」に“鈴木宗男(1948- )”も負けじと書き記す、
・・・日増しに募っていったのは、国民の皆さまへの、心からの反省である。
大騒動に巻き込まれることで、私は大きな政治不信の種を社会に植えつけてしまった。このことは政治家として深く反省している。また、結果として私たちは対ロシア外交や北方領土交渉をストップさせてしまい、日本の国益を大きく損ねてしまった。元島民のことを考えると、これまた悔んでも悔やみきれないことだ。過去に私たちが、外務官僚の大きな逸脱を黙認し、社会にとって守るべきでない人や組織を守りすぎてしまったことも、皆さまにお詫びしなければならない。(中略)
・・・この本には、反省しなくてはならない事実を正確に伝えるために、多くの外務官僚、検察官、政治家たちが実名で登場するが、私は彼らを恨んでなどいない。私たちの真剣な反省を伝える本書は、誰かを告発する本ではなく、誰かに役立ててほしい本なのだ。 (P.285-P.287)
確かに、「国会議員と政策決定にかかわる高級官僚は、個人情報保護法の保護の対象から除くべきで、隠れ蓑とすることなく、みずからがその透明性を示すべきである」との両著者の考えに正当性は満たされているのであろう。その考えに基づいて展開される対談は、残念ながらぼくには愉しいものとは思えなくて、哀しみばかりが募る。
嫉妬、私利私欲に塗れたエゴイズム、、、


基本的に、“言葉”って、そのままに受け容れられるものではない。
だからと言って、すべてを疑ってかかるというわけでもないけれども、あまりにも無責任に、不用心に使われる“言葉”が少なくない。
既に第三者に対して口外された言葉は、その責任のすべてを、言葉を発した本人が負うべきであろう。どんなに小さな事柄でも、口外した言葉の責任は逃れられない。むしろ、小さな事柄(約束)が、忘れずに怠らずに完遂できるか否かに、その人間性は表れよう。
簡単に約束したかと思えば、これまた簡単に反故にする。問い質すと、さらに簡単に謝る。どんなに謝ったところで、反故にされてしまった約束が無効になるわけではないのに、まるで、謝ったことによって遡って取り消されたような顔をして平気でいる。「こっちは謝っている(下げたくない頭を下げてる)のに!?、何故に許さないの?!」と言わんばかりの態度を取ってみたり、また一方では、いかにも「反省しています」と言わんばかりに肩を落として小さくなっている姿を見せつける。どちらも根底にある考えに相違はなく、そんな姿を見るにつけ、ぼくはどうにも哀しくて哀しくて堪らなくなる。何よりも誰よりも、ぼくがかつてそうだったから。
本人の問題もあるけれど、簡単に「反省しろ!」とか「謝れ!」と求める社会の傾向や風潮にも大きな問題があろう。往々にして、求められる反省や謝意は、立場が強い目上(上席)の相手(もしくは、そう在りたいと画策する者)からのものであり、そこに説明責任が求められることは、決して多くはない。反省や謝罪に至った事柄の、本質的な根源にかかわる問題の追及が行われなければ、本来、まったくその意味をもたないのだけれども、とことんまで追求しちゃうと、上席にある者であれば自らの責任に行き着くことにもなりかねない(教育責任であり、管理責任を逃れられない)し、何よりも反省や謝意を求める者の自らの立場の優位性が担保されることにより、その目的の多くは達成される(!?)のであって、反省や謝意を求められている立場が低い者から述べられる説明が理論的で正当性が高かった場合には、下手をすると自らの立場を危うくすることにもなりかねない!?、そう考えるに、一切の反論を許さず、説明責任を求めることなく、「まぁ、今回は許してやるから、とにかく謝れ」などという、何だかわけのわからない、まったく筋の通らない物言いをする上司に、一定の理解を示さないわけにもいかない?!、組織の中間に位置する(最終的な責任を負わない)上司に要求されるのは、残念ながら(?!)高い能力ではないとも考えざるを得ないのであったりもする。


≪目次: ≫
 第1章 国策捜査のカラクリ
  反省1 まさか検察があそこまでやるとは思いませんでした
  反省2 検察の杜撰さは、まったく予想外でした
  反省3 裁判所がここまで検察ベッタリの偏向姿勢だとは、理解不足でした
  反省4 国家権力のメディア操作に、すっかり乗せられてしまいました
  反省5 メディアと外務省の黒い友情を、黙認していました
 第2章 権力の罠
  反省6 権力のそばにいて、前しか見えませんでした
  反省7 男の嫉妬、ヤキモチに鈍感すぎました
  反省8 自分の力を過小評価して、声を上げなさすぎました
  反省9 歴代首相や組織トップから、重用されすぎました
 第3章 外務省の嘘
  反省10 外務省の一部にある反ユダヤ主義に、足もとをすくわれました
  反省11 外務官僚の無能さが、私たちの理解を超えていました
  反省12 外務官僚のカネの汚さは、想像を絶するものでした
  反省13 非常識な賭け麻雀に、見て見ぬふりをしていました
  反省14 外務省の官僚たちのたかり行為に、素直に応じすぎました
  反省15 外務省が仕掛けた田中眞紀子さんとのケンカに、乗せられました
  反省16 共産党に外交秘密を流すほどの謀略能力は、予想していませんでした
  反省17 外務省にはびこる自己保身・無責任体制を見逃しました
  反省18 外務省を大いに応援し、不必要に守りすぎました
 第4章 「死んだ麦」から芽生えるもの
  反省19 超大国アメリカという存在に、鈍感すぎました
  反省20 「二元外交」批判に、もっと毅然として反撃すべきでした
  反省21 日本外交の停滞を招き、国益を大きく損ねてしまいました
  反省22 これまで外務省改革の処方箋を、提示できませんでした
  反省23 日本外交の将来像について、あまりに語ってきませんでした
 第5章 見えてきたこと
  反省24 支持者、同僚、部下たちに多大な迷惑をかけました
  反省25 かけがえのない友に心配をかけてしまいました
  反省26 信じ続けてくれた家族に大変な苦労をかけました


ヒメシャリンバイ♪
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本「佐藤優 国家を斬る」佐藤優、宮崎学、連帯運動 編5


佐藤優 国家を斬る
著者: 佐藤優、宮崎学、連帯運動 編
単行本: 194ページ
出版社: 同時代社 (2007/10)




何だか不思議な緊張感が漂う、“佐藤優 (1960- )”の講演と対談の書籍化。
コーディネータの“宮崎学 (1945- )”であり、編者の“警察・検察の不法・横暴を許さない連帯運動”であり、同時代社であり。
収録される2本の講演は、1本目が2007年2月27日、東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)本部会議室で行われた講演〔「時代のけじめ」としての「国策捜査」〕。
そして、2本目が2007年6月29日、日本教育会館で行われた講演会〔演題「国策捜査 −佐藤優の官僚階級論」〕、司会は山崎耕一郎(社会主義協議会代表代行)と宮崎学で、前半は講演、後半は参加者を含めた「やりとり」を対談という形でまとめられている。

暴露話が盛り込まれて、軽快な口調で時に笑いを誘う話し(講演)ぶりは、状況を鑑みてその必要を感じているからであり、何でもぺろぺろっと話しちゃっているように見せ掛けておきながら、慎重に言葉を選んで発している様子が端々に窺える。
リップサービスして、気を遣って、それなのに頑なまでに無報酬での講演にこだわると笑いとばす。 講演料と原稿料との、資本主義理論と商品経済理論と、そして自らの思想の腐敗を懸念して。

問題は、なぜ国策捜査が起きるかなんです。なぜ、私と鈴木さんが捕まったか。国民が捕まえてほしいと思ったんですよ。だから国策捜査を起こす一番の根っこというのは、僕らに言わせると、国民だと思いますね。ですから、その国民の望みをかなえる、白馬の騎士ですね。これがその検索官僚と、そういうことなんでしょうね。
ただそれがですね、白馬の騎士なのか、ただのマヌケ親爺なのか、そのへんの実際の姿というのをちゃんと明らかにすると、こういうようなところで検察官を笑いとばすぐらいしかないと思うんですね。 (P.175)


≪目次: ≫
 反権力自由主義者としての佐藤優/宮崎学
 「国策捜査」と時代の「けじめ」
 現代日本の官僚階級
 対談 官僚階級の相貌/佐藤優×宮崎学
 「右派国家主義者」と「懲りない左翼」−まとめにかえて/樋口篤三


Tulipa.
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本「国家の罠 −外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」佐藤優5


国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
著者: 佐藤優
文庫: 550ページ
出版社: 新潮社 (2007/10,単行本 2005/3)




【2002年】
5月14日 東京地検特捜部に背任容疑で逮捕。東京拘置所に収監される
16日 東京地裁にて勾留決定
17日 取り調べで西村尚芳検事との攻防始まる
6月4日 背任罪で起訴。勾留延長
19日 鈴木宗男衆議院議員斡旋収賄容疑で逮捕に抗議して48時間のハンスト決行
7月3日 偽計業務妨害容疑で再逮捕
24日 偽計業務妨害罪で起訴。勾留再延長
9月17日 第一回公判
【2003年】
8月29日 鈴木宗男氏保釈
10月6日 ゴロデツキー教授来日し、公判で証言
8日 東京拘置所から保釈される(勾留日数512日)
【2004年】
10月12日 検察側論告求刑(懲役2年6カ月)
11月10日 弁護人最終弁論・被告人最終陳述
【2005年】
2月17日 第一審判決(懲役2年6カ月執行猶予4年)。即日控訴  (P.453より一部抜粋)

ご存じ、あの事件の内幕や背景を綴った手記、ベストセラー作。
本来であれば最初に読んでおくべき著作なのであろうけれど、ぼくにとっては“佐藤優 (1960- )”第15作目にして、文庫版。だからこそ、深まる理解があったり、うわっと浮かび上がる記憶に、全550ページの長大さを少しも感じさせない愉しみを得る。
専門家以外の人にとって、イスラエルとロシアが特別な関係にあることはなかなかピンとこないにちがいない。(中略)ユダヤ人に問題に興味を持たない人々にとってはなかなか理解しづらいことなのだ。そこで、まず、ロシア・イスラエル関係についての説明から始めることにする。
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツにより六百万人のユダヤ人が殺された。アウシュビッツ収容所の悲劇については誰もが知っている。戦後、多くのユダヤ人がこの悲劇を繰り返さないためには、ユダヤ人国家を再建することが不可欠だと考えた。既に19世紀から、エルサレムのシオンの丘に帰って、もう一度ユダヤ人国家を作ろうという運動が始まっていた。これがシオニズムで、イスラエルの建国理念になった。
(中略)
1948年にイスラエルが建国されたが、それを世界で最初に承認したのがスターリンのソ連だった。もちろんソ連はシオニズムに共感をもってイスラエルを承認したのではなく、当時、反帝国主義・反植民地主義の観点から、イギリスからイスラエルが独立することを支援したに過ぎない。その後、(中略)67年に勃発した第三次中東戦争(六日戦争)の後、ソ連はイスラエルと国交を断絶。国交が回復するのは91年である。
91年12月、ソ連が崩壊し、新生ロシアは反イスラエル政策を根本から改めた。イスラエルは中東で自由、民主主義、市場経済という基本的価値を共有する友好国となった。(中略)
80年代末から200年までに旧ソ連諸国からイスラエルに移住した人々は「新移民」と呼ばれ、その数は百万人を超えた。イスラエルの人口は六百万人であるが、その内、アラブ系が百万人なので、ユダヤ人の内20パーセントがロシア系の人々である。(中略)
「新移民」は、ロシアに住んでいたときはユダヤ人としてのアイデンティティーを強くもち、リスクを冒してイスラエルに移住したのだが、イスラエルではかえってロシア人としてのアイデンティティーを確認するという複合アイデンティティーをもっている。
ロシアでは伝統的に大学、科学アカデミーなどの学者、ジャーナリスト、作家にはユダヤ人が多かったが、ソ連崩壊後は経済界、政界にもユダヤ人が多く進出した。これらのユダヤ人とイスラエルの「新移民」は緊密な関係をもっている。ロシアのビジネスマン、政治家が、モスクワでは人目があるので、機微にふれる話はテルアビブに来て行うこともめずらしくない。そのため、情報専門家の間では、イスラエルはロシア情報を得るのに絶好の場なのである。しかし、これまで日本政府関係者で、イスラエルのもつロシア情報に目をつけた人はいなかった。  (P.159-P.163)

≪目次: ≫
 序章 「わが家」にて
 第1章 逮捕前夜
 第2章 田中眞紀子と鈴木宗男の闘い
 第3章 作られた疑惑
 第4章 「国策捜査」開始
 第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」
 第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ









本「国家論 −日本社会をどう強化するか (NHKブックス)」佐藤優5


国家論 −日本社会をどう強化するか (NHKブックス)
著者: 佐藤優
単行本: 315ページ
出版社: 日本放送出版協会 (2007/12)




佐藤優”が、2007年夏に十数名の編集者や研究者の前で行った八回の講義をもとに書き上げた書籍化は、まさに、特別講義を受けているかの臨場感。
活字を通じて真摯な対話をした、カール・マルクス (Karl Heinrich Marx,1818.5.5-1883.3.14)宇野弘蔵 (1897.11.12-1977.2.22)アーネスト・ゲルナー (Ernest Gellner,1925.12.9-1995.11.5)柄谷行人 (1941.8.6- )カール・バルト (Karl Barth,1886.5.10-1968.12.10)といった、知の巨人から生み出された、佐藤優イズム、国家論。

大きな夢をもつことです。会社の社長になりたい、中央官庁の事務次官になりたい、あるいは、内閣総理大臣になりたいなどの夢はスケールが小さすぎます。貧困がまったく存在しない社会、絶対に戦争がない世界、これが私のいう大きな夢、すなわち「究極的なもの」です。こういう夢を実現することに満足を感じる、言い換えるならば、大きな、とてつもなく大きな夢がエゴとなるような人間が増えれば社会は強化されると私は考えます。 (P.310)
大真面目に考えて、ホントにこれは大きな夢で、なかなか万人に理解されることはないであろうけれども、まさに究極的というに相応しい。


さてバルトは、〈われわれはわれわれの信仰を他人に要求しない 『ローマ書講解』〉と言っていますが、これは非常に重要な一節です。日本では一神教に関する誤解があります。一神教は単一の世界観に基づくため、自らの信仰を人に強要する傾向があるという議論がありますが、それは嘘です。一神教世界の人の関心は(神との関係における)自分自身の救いですから、人の救いなどはどうでもいい。他人の救いに関心がるのはイエスぐらいで、他の人は基本的に自分のことで手一杯なのです。これが一神教の標準的な感覚です。
ですから、エルサレムに行くと、キリスト教徒とユダヤ教徒、ムスリムの人たちが併存、共存している。キリスト教の中でもヤコブ派とかコプト教会、アルメニアの人々などのまったく異なる宗派の教会が、それこそ文字どおり併存しているわけです。お互いの教義については何も知りません。関心がないのです。自分にとっての救済にしか関心がないから、他人がどういう道筋を通って救済されるかというのはどうでもいいのです。他者に対する大いなる無関心から宗教的な寛容が出てきて、結果として併存することになる。こういう構成です。だから、中東キリスト教と中東イスラームの間の紛争は、かつてはほとんどなかった。ああいうかたちで宗教紛争が大規模かつ恒常的に起きるようになったのは、近代以降の現象です。 (P.277)


「“寛容”に在りたい」と強く思うぼくは、前提として「寛容ではない」自らに思い悩んでいる。その思いが強ければ強いほど、そう思うに至らしめる「不寛容な」自分自身を嫌悪して、自らの不寛容さを恥じて隠し、意識して無理矢理にも「寛容」を装い演じる。ところが、無理をしても続かない。破綻する。ますます、不寛容さに苦しむ。
無関心でいられるのならば、決して思い悩むことなどないであろう。
歴然と関心が在る、抱かずにいられないのである。過剰なまでに示す反応を、自らがコントロールできるのであれば、、、


≪目次: ≫
 序章 国家と社会 −区別はされても分離せず
   1 五世紀にまで遡る
   2 創られた民族 −中央アジアの民族境界線画定問題
   3 国家の暴走にどう対抗するか
 第一章 社会 −『資本論』で読み解く「日本社会の構造」
   1 マルクスの二つの魂
   2 価値形態論と国家論
   3 国家登場! −原理論から段階論へ
 第二章 社会への介入 −「宇野経済学」で読み解く「社会のスキマ」
   1 日本資本主義論争
   2 貨幣が鋳貨に変わるとき
   3 国家介入の四つの契機
 第三章 国家 −「民族」で読み解く「ナショナリズムの本質」
   1 スターリンの民族定義
   2 暴力独占機関としての国家
   3 ナショナリズムとは何か
   4 国家と社会の起源はどこにあるのか
   5 ファシズムとボナパルティズム)
 第四章 国家と神 −『聖書』で読み解く「国家との付き合いかた」
   1 国家とは距離を置け! −バルトの革命観
   2 国家という偶像
   3 歴史は複数の真実をもつ
 終章 社会を強化する −「不可能の可能性」に挑め!
   1 良心は心の外にある
   2 結語 −「究極以前のもの」を通して「究極的なもの」に至る
 引用・参考文献


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本「地球を斬る」佐藤優5


地球を斬る
著者: 佐藤優
単行本: 283ページ
出版社: 角川学芸出版 (2007/06)




日刊経済紙『フジサンケイ ビジネスアイ』に連載された「地球を斬る」第1回〜第60回(2006年1月19日〜2007年3月8日。毎週木曜日掲載)を単行本化。
「原稿を書く場合、常に想定される読者の顔を思い浮かべることにしている」と、“あとがき”に明かす“佐藤優 (1960- )”は、「30代後半から40代を中心とするビジネスパーソンの顔を思い浮かべ、これらの人々にとって仕事の上で実用性を持つ記述をするように心がけた (P.266)」と。
そう、ぼくは最近特に“佐藤優”の著作を好んで手にしているのだけれども、話題とされるインテリジェンスやら外交問題など、一見してぼくたちには無関係。日本国内から海外に渡航することもなく、日常生活において外国人との交流もなく、日本語しか話さない(話せない)ぼくたち個人の生活レベルでは、外国を意識しないことの方が多い。そうは言っても、ガソリンの値段が高いの安いの、食の安全やら、すぐに日本国内だけでは処理できない事実に思い当たる。
さらには、読書に愉しみを覚えたぼくの興味や探究心を日本国内に限定しておくことは困難で、今のところはまだ日本語しか読めないのだけれど、仮に翻訳された海外の著作であったとしても読めば読むほどに、同じ地球上に存在して何らの言語を有してコミュニケーションを深める“人間 (ヒト, Homo sapiens sapiens)”として、国家や民族や文化や宗教やらを超越した先人たちの叡智に触れないなんて、もったいない。


花言葉「円熟の美、子孫の守護」♪
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本「野蛮人のテーブルマナー −ビジネスを勝ち抜く情報戦術」佐藤優5


野蛮人のテーブルマナー
著者: 佐藤優
単行本: 205ページ
出版社: 講談社 (2007/12/7)




週の始まりの月曜日の朝に雨など降ろうものならば、都心へと向かう交通機関は軒並み遅延遅延遅延のオンパレードで、始業30分前の出社(それでも遅い?!)を心掛けるぼくは、ちょっとあわてちゃう、定時7分前着。如何なる理由があろうとも、どんなに些細なものであったとしても、約束は約束としてキッチリと守りたい!、そんなことばかりに拘るのもどうかと思わない節もないわけじゃないけれど、仮に相手が簡単に約束を反故にしようとも、ぼくは頑なに守りたい!、相手には、何ら求めることも言い咎めることも一切なく、笑って赦して、そう、他者に“寛容”に在りたい、、、
にしてもさぁ、ヒドイと思うなぁ、何でこんなに少ないの?!、さも当たり前のように、後から後からノコノコノノコノコと。気のない朝礼(上席が不在時は、ぼくにお鉢が廻ってくる)を、ますますヤル気が失せる!?、だからって、小さくなってヘコヘコしてたら、最悪にナンセンス!、仕方がないよね、不可抗力、じゃなくって、既に遣ってしまったことだから。どう間違っても不可抗力なんかじゃないでしょ、朝の通勤電車が定刻通りに運行されるだなんて、、、これ以上は言及しないけれども。
ところで、既に遣ってしまったことは、どう逆立ちしても取り返しがつかない。時間を巻き戻すことは、現実的に不可能だから。そんな取り返しがつかないことに対して、ぼくたちがすべきは、そこから学習をして同じ過ちを繰り返さないこと。ただそれだけ。何ごとも、最初からすべてが上手くいくなんて、そんなことは誰も期待していないのであって、最初は誰でも失敗するのが当たり前。だから、当たり前である失敗を責めたところで、責められた当事者はただただ困って途方に暮れるだけ、それこそ不可抗力。まさか、反省なんてどうにもしようがない。
ところで、往々にして世の中で求められる“反省”は、どうにも立場が上の人間の、下の人間に対する単なる“イジメ”の様相を呈す。立場の違いをあからさまに示して、振りかざされるエゴイズム。押し付け(イジメ)て満足し、押し付け(イジメ)られて小さくなる姿に、さらに満足を得る。そして、イジメられて小さくなって、やがて鬱鬱と歪みを積もらせた人間は、そのうちに自らの小ささや歪みをひた隠し、さらには自らがイジメ得る対象を本能的に探し出し、新たに執拗なイジメを自らの下位に対して展開する、負の連鎖。巷ではたまに(実は少なからず)、親が自らの子どもに対してこの対応(いつも自らがいじめられていると思しきいじめられ方で自らの下位に対するいじめに走る)をしちゃってる光景を見るにつけ、何とも言えない悲しい気分に陥り、堪らずに黙ってその場を立ち去ったこと数知れず。当然に、会社における社会生活においては日常茶飯事的光景。何を隠そう、ぼく自身がそんな負の感情に長く苛まれ続けた。
だからこそ、せめてぼくの周囲では、そんな悲しい負の連鎖(イジメ)が展開されて欲しくないから、見たくないから、ぼくは黙っていられない。そう考えるぼくは、きっと“不寛容”に過ぎる。
一方で、そう考えるからこそ、何も言えない、何ら手を出せない。干渉と不干渉。あえて無関心を装い、あえて干渉することを避ける。とどのつまりは、他者はあくまでも他者であり、他者の干渉には常に本人の育成を妨げる危険が含まれる。干渉する他者の行動の、その根源にあるものは、きっと優しさに相違ないのであろうけれども、その優しさは果たして誰のためであろう?、ぼくは極論に過ぎるのであろう、どう考えても考えても考えてもその干渉が自らのためにしか思えない。
こればっかりは、ぼくはそう思い至ったとしか言いようがない。

何だかんだと語っておきながらも、話を巻き戻して、朝の通勤時間に遅延遅延と長く電車内に止まるということは、それだけ読書の時間が確保されることになるわけで、「もう少し空いているといいんだけど」などと思わなくはないけれども、程良い緊張感と無力感が漂う不思議な静寂(お詫びのアナウンスと停止ブレーキのたびに洩れる溜息!?)のなかで、進む進む読み進む♪、気が付けば、一気に全205ページの3分の2程度まで。残りはランチタイムのお楽しみで呆気なくも読了。
なんだろう、佐藤優らしからぬこのサクサク感は?!
雑誌「KING」が対象とする読者が若い(20代半ばから30代の男性)ビジネスマンだから?!
と、ふと目に留まった裏表紙の「定価:本体1000円(税別)」
なるほど“テーブルマナー”。


≪目次: ≫
 まえがき
 第1章 野蛮人のテーブルマナー
     〜情報戦を勝ち抜くテクニック〜
    第1回 インテリジェンス式接待
    第2回 情報源(ソース)の見つけ方
    第3回 酒、賭博、セックスの使い方
    第4回 赤ワインの2つの顔
    第5回 ロシア式懲罰
    第6回 暗殺工作のテーブルマナー
    第7回 インテリジェンスの記憶術
    第8回 組織の中での生き残り方
    第9回 相手の知識水準の見抜き方
    第10回 AV(アダルト・ビデオ)業界に学ぶ組織論
    第11回 ロシア流飲酒術
 第2章 外交は究極のビジネススクール
     過酷な外交の世界に学ぶビジネスマナー
     特別対談 鈴木宗男(衆議院議員)× 佐藤優
 第3章 インテリジェンス対談
     佐藤優 × 河合洋一郎(国際ジャーナリスト)
    対談1 映画以上に恐ろしいインテリジェンスの世界
    対談2 安倍政権樹立後の日本外交 〜2006年9月27日
    対談3 6ヵ国協議直後のパワーゲーム 〜2007年2月15日
    対談4 10年後の核情勢 〜2007年6月22日
 解説 河合洋一郎
 あとがき


カナール
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本「国家情報戦略 (講談社+α新書)」佐藤優、高永5


国家情報戦略 (講談社+α新書)
著者: 佐藤優、高永
新書: 204ページ
出版社: 講談社 (2007/7/20)




現在(刊行当時)、拓殖大学大学院の安全保障専攻博士課程に籍を置く、と語る“高永 (Koh Young Choul,1953- )”は、元韓国海軍少佐。1989年から、国防省海外情報部日本担当官、北朝鮮担当官を務めた。当時、アメリカ国家安全保障局(NSA)から、特別情報官(SI)の身分を受けていて、通信傍受情報などの技術部門に精しい。しかし、1993年に金泳三政権の軍部粛清により、11カ月の勾留の後に禁固4年の実刑を受け、3年間の受刑生活を送っている。

一方、1年5カ月(512日)の勾留の後に保釈になり、懲役2年6カ月の執行猶予付き判決を受け、刑務所には行かないで済んだ、と語る“佐藤優 (1960- )”は、外務省国際情報局分析第一課主任分析官を務めた。

そんな日本と韓国の、国際情報(インテリジェンス)にただただ精しいだけじゃない、あまりにも精しく知りすぎちゃった二人が語る、対談の書籍化。

二人に共通する「愛国心」。何よりも自国のこと、そして周辺国、関係国の文化や歴史の情報に精しい。身に付いた精しい知識があるからこそ、精しく知れば知るほどに、その文化や歴史に学ぶ古人の叡智。その叡智に触れればこそ、叡智を讃え、愛おしくも敬う心。
それでもやっぱり、もっとも愛すべくは“自国”。自国を愛する心を有して、初めて他国をも愛することができよう。
そんな自国を愛する心が、愛するが故の行為や行動の結果なのにもかかわらず、巻き込まれてしまった“国策捜査”。ある日突然に、身に覚えもない疑惑を被せられるのは、何ともこれまで自らが愛し尽くしてきた国家から、そんな国家の非情とも言える仕打ち。
何をどうして、それでもやっぱり愛すべき“国家”!?

〔佐藤〕  ところで、共産主義というのはプロレタリア革命によって国家を廃絶するのですから、共産主義国家の原点は「本来、共産主義体制に国家は必要ない」となります。しかし、「現時点では定刻主義国家に囲まれているから、過渡期ということで国家は必要なのだ」というロジックを使っていたので、ソ連という国家は、国家を廃絶するために必要な特殊な「国家」ということになります。
「国家は悪いものだけど、われわれは国家を廃絶するための特殊な国家なのだから、悪い要素は一切ないのだ」という理屈ですね。でも、そういう国家がいちばん悪い国家なんです(笑)。
これと同じ例が、タリバーンのアフガニスタンです。タリバーンが考えているのは、世界イスラッム革命です。世界イスラム革命によって世界に単一のカリフ帝国ができると、世界の中から国家はなくなります。ところが、「いまはその段階に来ていないから、世界イスラム革命の拠点国家、過渡期国家としてアフガニスタンが存在する」という論理なんですね。
国家というのは本来「悪」を持っているが、アフガニスタンはそういう国家を廃絶していくために神に選ばれた国家だから、タリバーンに関するかぎり「悪」はないという発想なんです。 (P.160-P.161)

≪目次: ≫
 第一章 フジテレビ秘密情報漏洩事件
 第二章 韓国と日本のインテリジェンス
 第三章 友好国とのインテリジェンス協力
 第四章 日本人の情報DNA −陸軍中野学校の驚異
 第五章 北朝鮮はどうなる
 終章 核の帝国主義


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本「国家の自縛」佐藤優5


国家の自縛
著者: 佐藤優、聞き手 斎藤勉
単行本: 239ページ
出版社: 産経新聞出版 (2005/09)




気が付くと手にしている“佐藤優”、やっと10作目!
そう簡単に読み切れる類いの著作じゃないから、しかも、とてもとてもぼくなんかの理解が及ばない、はるかに高度で難解な論説が展開されるから、切々と思い知らされる自らの無知、不勉強。今さら過去の不勉強を悔いたところでどうにもしようがないのだけれども、それでも自らの無知で不勉強を思い知らされてしまったぼくは、そこで選択を迫られる。無理をしなければ、何をも望むこともなく、無知で不勉強のままに生きる生き方だって、それはそれでひとつの有意な選択。無理に知ったかぶりをしてみたところで、薄っぺらな表面だけの取り繕いなど、簡単に見破られちゃうものだし、ばれた時には余計に恥ずかしい、そんなところからは良好な信頼関係など築き得ない。ところが、今さらながら基礎的な知識の習得に励むのも、決してラクな作業ではない。励めば励むほどに、ますます今さらに何ら成し得ない、何らの可能性をも見出せない、自らの将来に思い至るばかり。それでも、止めるわけにはいかない、止めたくない。何のためでもなく。

そう、佐藤優が、2005年2月の一審判決の後に著した「国家の罠 −外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮社,2005.3、文庫版 2007.10)」に次ぐ第二弾として刊行された著作が本書。
佐藤優が現役外交官時代から親交があった、産経新聞正論調査室長(元モスクワ支局長)“斎藤勉”を聞き手として、語る語る語るインタビュー形式を書籍化。本来であればもっともっと沢山あったであろう聞き手の質問部分を限りなく削減して、佐藤優の「頭の中身」をあらん限り丸ごと取り出して読者に提示したい!、という聞き手の意欲の程が窺える。話し言葉で語られる佐藤優の論考は、雑漠とした話題がどこまでも果てしなく広範に及ぶために、また推敲を重ねた文章ではなく、口頭で語るという方式を採用しているだけに、どうしても時に浅く広く展開される感を否めないが故に、それでなくても難解なのに、ますますぼくの理解を妨げる一方、そこにはその後の著作の原形を垣間見ることができる。ある意味で、その後に佐藤優が量産する著作たちは、本作において“斎藤勉”によって引き出され、本書に著された数多の元ネタの効用!?、とも。

などとつらつらと書き記しながらも、やっぱりぼくが佐藤優に注目しちゃうところは、、
神学は天の邪鬼な学問です。例えば、「汝の敵を愛せ」っていう言葉が『聖書』にあるんですが、汝の敵っていうのはみんな憎いんですよ。敵を憎んで憎しみの心があると正確な判断ができますか。判断を間違えるんです。判断を間違えるとおかしな行動をとるんです。憎しみは人の目を曇らせます。だから自分のために汝の敵を愛さないといけないんです。
汝の敵を愛するっていうぐらいの気分でいるとちょうどバランスがとれ、物事が見えると。そこで判断したほうが得ですよということを『聖書』の中では言っているんですね。私たち神学をやった人間っていうのは物事をそういうふうに考えるんです。ですから一見冷静に見えてる『国家の罠』という本の背後には、私の中の大変な哀しみがあるんです。 (P.32)


≪目次: ≫
 第一章 日本という国家
 第二章 対露外交
 第三章 外交と国益
 第四章 ネオコン
 第五章 これから
 インタビューを終えて
    −産経新聞正論調査室長(元モスクワ支局長) 斎藤勉


イエローマジック♪
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その名もズバリ、“ジシバリ (Ixeris stronifera)”♪



本「インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)」手嶋龍一、佐藤優5


インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)
著者: 手嶋龍一、佐藤優
新書: 230ページ
出版社: 幻冬舎 (2006/11)




佐藤優”をして「外交ジャーナリストとして世界的規模で認知され」「尊敬していた」と言わしめる“手嶋龍一”との間に交わされる論説は、“対外インテリジェンス”を豊富な事例を具体的に取り上げて読み解く“対談”の書籍化、なるほど“インテリジェンスの入門書”と呼ぶに相応しい、至極分かり易い情報満載、手軽な新書ならでは。

そこは互いにインテリジェンスの分野に止まらず、著作業でも成功しているプロフェッショナル同士、気前良くポンポンと飛び出す、誰もが記憶にある様な、あの事件この話題の真相や舞台の裏側の事情が、その背景や前段であり、その事柄が導く次の次の展開まで、惜しみなく語り明かされる。またそれが、分かり易い表現で端的にズバリと描かれ、世界の情勢の理解を助ける。
それは、インテリジェンスに精通していない多くの一般人のある意味では自然な対応(マスメディアや政治家や官僚も多く含まれる、残念ながら)と、一方では、そのような民意を計算に入れた上での有効な戦略を練るインテリジェンスのプロフェッショナルとしての物事の捉え方とその対応、双方の視点からそれぞれを対比して解き明かすことによって、ふと考えさせられる。果たして自らの立ち位置であり、在り方であり、たとえインテリジェンスのプロフェッショナルを目指すことがなくとも、社会生活にあっても持ち合わせたい能力。

ところで、インテリジェンスのプロフェッショナルの彼等が説き明かす論説にもまた、簡単に語り明かせる表面的な多くの情報と、一方では簡単に口外することが憚られる重大なインテリジェンスだって含まれていて、その語られた言葉を素直に単純にそのまんまの言葉として捉えるだけでは、これまた能がない。
どんなに貴重な情報だって、雑多な情報の渦の中からまずは見分けて、理解をして、更にはそれを活かす能力までを有しなければ、
猫に小判、豚に真珠!?


≪目次: ≫
 序章 インテリジェンス・オフィサーの誕生
 第一章 インテリジェンス大国の条件
 第二章 ニッポン・インテリジェンスその三大事件
 第三章 日本は外交大国たりえるか
 第四章 ニッポン・インテリジェンス大国への道


朝の幸福、黄色い花♪
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本「国家と人生 −寛容と多元主義が世界を変える」竹村健一、佐藤優5


国家と人生 −寛容と多元主義が世界を変える
著者: 竹村健一、佐藤優
単行本: 287ページ
出版社: 太陽企画出版 (2007/11)




1930年生まれの“竹村健一”の箱根の別荘に、1960年生まれの“佐藤優”を招いての、三日間に亘る対談の書籍化。
歴然と在る30年の人生の経験の差をどこかには感じさせながらも、竹村健一にして『特異な「知の巨人」』と言わしめた佐藤優が、ホントに気持ち好さそうに語る語る語る、ここまで語らせる竹村健一の懐の深さに感服するとともに、ここまで語れる佐藤優に、やっぱり敬服。
これぞ対談の醍醐味。佐藤優にしても『決して予定調和的なものではない』と言わせるほどに、あっけなくも素直に語ってしまった、むしろ、語らされてしまった、のではあるまいか。
そう、佐藤優を数えること第八作目のぼくにとって、正直、これまでに読了した著作のすべてを理解できているとは言い難い。むしろ、どちらかといえば、かなり無理をして背伸びをして、何とか読み切った、と言うのが本音。それでも、ロシアであり、キリスト教であり、マルクスであり、国家であり、、、、佐藤優が語るひとつひとつに抱かれる興味、それなのに分からないから、分からないからこそ知りたい理解したい欲求は、ますます高まるばかり。だからこれまで、とりあえず文字を追うことによって刻み込んで詰め込んできた知識を、第三者の竹村健一の問いによって導き出される新たな側面からの語りが、多角的な情報が、ぼくの知識を体系的な構築へと導く。また、第三者に相対して語る言葉は、それを書籍として編集するにあたり、まさに突発的に飛び出した、まるでハプニングのような興味深い事柄や、歴史的な事実に対する注釈が補足されて、さらに無知なぼくの理解を助ける。例えば、単独執筆の著作では、筆が乗ってきて勢い込んで書き記したハプニング的な事柄や記述は、その後には冷静にハプニングとして削除されてしまって、どうしても無難な表現や記述となってしまうのであろうし、また、ぼく(きっとぼくだけではないとも思うが)はその安定性やら安心感の方を好む。著者により、編集者により、出版社により、何度も何度も冷静に客観的に校正された書籍としての完成度は、絶対的に必要とされよう。その一方で、対談によって構成される書籍にだって、その存在の意義があろう。じっくり推敲を重ねられた著作では、切り落とされてしまうようなネタ、出来事が、著者の中でプスプスとくすぶっていたものが、その場のノリで第三者の援護を受けてムクムクと浮かび上がって、興味深い語りとして表出することだってあろう。じっくり考えるからこそ浮かび上がる事柄と、簡単に口外しちゃったことによって浮かび上がる事柄は、日常的にじっくりと考えることを習慣付けている著述家たちの深く本質に迫り、意外な側面をも垣間見ることができる貴重な体験。
これ(対談本)だけをして、著者を語ることなど決してできないけれども、これ(対談本)もまたぼくのような愛読者にとっては必要不可欠な著作とも言えよう。
[佐藤] 寛容な人というのは、じつは気難しいし、怒りっぽいのです。なぜかというと、自分にはっきりした考えがないと、他人に寛容になれないからです。ですから、相手の考え方が間違っていると、烈火のごとく怒ったりする。じつは寛容という精神は、三十年戦争など、ヨーロッパで徹底的な殺し合いが繰り広げられた結果、出てくるわけですから。
[竹村] そうですね、日本でも南北朝の戦乱のなかで寛容の精神が誕生したということですからね。寛容の精神というのが戦争という混乱から生まれるとね。
[佐藤] 自分の考えを押しつけるのはよくない、結局、悲劇を生む。お互いに妥協して共存共栄を図るのがお互いのためという思想が生まれて、ようやく折り合いをつけた結果、生まれたのが寛容です。
余談になりますが、私は最近の社会情勢を見て、異分子を排除する精神が高まってきつつあるように感じます。これは危険です。いじめも非寛容な発想の産物です。また、自分たちの知恵だけで理想的な社会ができるという発想も危ないと思うのです。
[竹村] いくら人間の知恵だけで組み立てようとしても、宇宙の摂理、自然の摂理というものがありますからね。
 (P.112-P.113)

≪目次: ≫
 第1章 沖縄から日本が見えてくる
 第2章 遠い日のルーツをたどる
 第3章 知識と情報の蓄積が知恵になる
 第4章 知力を高める読書術、記憶術
 第5章 脱共産主義ロシアとのつき合い方
 第6章 官僚の真実と国家の行方
 第7章 日本の歴史と伝統を守る


眩しい〜! 蒲公英の黄色♪
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本「日米開戦の真実 −大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く」佐藤優5


日米開戦の真実 −大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く
著者: 佐藤優
単行本: 304ページ
出版社: 小学館 (2006/4/22)




戦前の思想家“大川周明 (1886.12.6-1957.12.24)”が、1941(昭和16)年12月14日から同25日までの12日間に行った、ラジオ放送の速記に、きわめて僅少の補訂を加えて翌1942年に書籍化、ベストセラーともなった『米英東亜侵略史』の全文の掲載、佐藤優が読み解く論考。
1941年12月8日午前11時40分に発表された、天皇による開戦の宣言(宣戦の詔勅)によって“大東亜戦争”が開戦し、その第7日目に行われたラジオ放送は、大東亜戦争を始めなきゃならなかった世界史的意義、日本が戦争を仕掛けなきゃならなかった世界史的使命であり、そう“開戦の理由(真実)”を日本政府を代弁して、軍人でもない一民間人が説く。しかも、大川周明は、1932(昭和7)年5月15日に起きた反乱事件“五・一五事件”に関与したとして、禁固5年の有罪判決を受けて服役している、にもかかわらず必要とされた叡智。
なるほど、これによって日本政府の開戦の説明責任は十二分に果たすに値する、現代にも通用する水準の論説は、客観的かつ実証的に分析され、まさに「当時最高水準の知性」に相応しい。


何となくぼくのなかにも、その昔(60年以上も前)、日本は戦争でアメリカに負けちゃって、「あ〜、何で日本は戦争なんかしちゃったんだろうか?」と後ろめたいような、スッキリしない気持ちがあって、だからか「やっぱり、アメリカには敵わないのかなぁ?!」などと、今もって卑屈になっている部分もあったりして、『わがまま勝手なアメリカの言いなりになってる、お人好しの日本』みたいな印象に苛立ちを感じながらも、どこかで「仕方がないんだろうなぁ」などとも感じていた。

開戦時の状況に、イギリスの植民地となり、ボロボロにされてしまったインド、阿片に翻弄された中国。日本が、かつては大きな影響を受けてきた中国とインドの危機は、東洋(アジア)の危機。このままでは、帝国主義の米英に、いいように遣られてしまう。そりゃ、力のある日本が黙って指をくわえて見てる、ってわけにはいかないでしょう!

戦争が「相対する両国の思想が、どんな平和的手段で以てするも一致しえない場合、遂に武力に訴えて相手国の意思を転換せしめようとする手段」であることは、現在のアメリカ対アフガニスタン戦争、対イラク戦争を見ても明白である。「戦争は政治の延長」(クラウゼヴィッツ)であり、政治もその本質は思想の戦いなのである。 (第四部、P.227)

そして現在、1991年12月のソ連崩壊による冷戦終結を経て、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件の後の「ポスト冷戦後」の世界は、唯一超大国のアメリカ帝国、EU連合帝国、アル・カーイダに代表する潜在的イスラーム帝国、帝国に発展し得る中国、帝国復活を目論むロシア、なるほど帝国主義時代に近い構造とも言えるかも。
その中にあって、いい形、位置での生き残りを図りたい、我が日本。

大川にとって、学問とは書斎の中や大学の研究室での知的遊戯ではない。学問とは日本国家と日本人が生き残っていくために必要な知的武器なのである。国家と民族が必要とする研究を行うことが大川は知識人としての責務と考え、他の人々には見えないイスラームの力を日本人に理解させるために不可欠の作業としてコーランの全訳を学生時代から何度も考えていたが挫折した。夢の中でのムハンマドとの「出会い」を生かして大川はコーランの全訳にとりかかり、これを完成させる(『古蘭』岩崎書店、1950年)。 (第二部、P.95)


≪目次: ≫
 第一部 米国東亜侵略史(大川周明
   米英東亜侵略史 序
   第一日 ペリー来朝
   第二日 シュワード政策
   第三日 鉄道王ハリマン
   第四日 アメリカ人の気性と流儀
   第五日 日本が屈服した日
   第六日 敵、東より来たれば東条
 第二部 「国民は騙されていた」という虚構(佐藤優
   第一章 アメリカ、ソ連双方が危険視した思想家
   第二章 アメリカによる日本人洗脳工作
   第三章 アメリカ対日戦略への冷静な分析
 第三部 英国東亜侵略史(大川周明
   第一日 「偉大にして好戦なる国民」
   第二日 東印度会社
   第三日 印度征服の立役者R・クライヴ
   第四日 イギリス人歴史家の記録
   第五日 阿片戦争
   第六日 我らはなぜ大東亜戦争を戦うのか
 第四部 21世紀日本への遺産(佐藤優
   第四章 歴史は繰り返す
   第五章 大東亜共栄圏と東アジア共同体
   第六章 性善説という病
   第七章 現代に生きる大川周明


靖国神社 拝殿
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本「国家と神とマルクス −「自由主義的保守主義者」かく語りき」佐藤優5


国家と神とマルクス −「自由主義的保守主義者」かく語りき
著者: 佐藤優
単行本: 254ページ
出版社: 太陽企画出版 (2007/04)




そうか、国家、神(キリスト教)、マルクス(主義)。
佐藤優が一度様々なメディアに発した論考、インタビューなどを再編成して書籍化。一見して雑然としていながら、なるほど♪、通して読み終えれば、「ストント腑に落ちる」などと簡単に言える代物じゃなくて、正直言葉を繰り出すことすら躊躇われるほどの深い溜息、ただただぼくは途方に暮れる!?、「分からない」と口外することさえも憚られる。そう、「何も言わずに、とにかく善い本をたくさん読め!」と。「然るべき書籍を読んでから語るべし、読まずに語るべからず」とまで言及しているかどうかは別としても、ぼくは勝手に肝に銘じた。

本書においても度々語られる“寛容”。
佐藤優が洗礼を受けたキリスト教だって、「その寛容に惹かれて入信しているのであって、敬虔な信者には成り得ない」と語る。
直近に読了した「不倫の惑星 −世界各国、情事のマナー (パメラ・ドラッカーマン 著,早川書房,2008.1)」において、特筆されるフランス人の“寛容さ”が頭から離れないから?!
ところで、“寛容”を語るぼくは、明確に“寛容さ”を有していない。ぼく自身にあっては、寛容さを自らが有していない、という歴然とした現実が、その自負が“寛容”という言葉に反応を示させる。
そう、正しいものは正しいのであって、正しくないものは何がどうあっても正しくないことに、絶対的に変わりはない。どんな事情があろうとなかろうと、そんなことはぼくには知ったことではない。何故に、ぼくがその事情を鑑みる必要があるのであろうか?
[佐藤] スターリンの強さは権力を死ぬまで保持していたことです。官僚の論理からすると、権力を長く握っているほうが正しいから、官僚的視点から物事を見る惰性がついてしまった私には、スターリンが正しいように見えてくる。結果として成功しているから、成功している人はみな正しいんですよ。その意味でも金日成も正しいし、日本では小泉純一郎さんも権力の座に5年もいるのは正しいんですよ(笑)。もっとも私は正しさにあまり価値を認めません。正しいことと正しくないことが混在しているのが人間の世界と考えるからです。
 (P.237)

≪目次: ≫
  それでも私は戦う
   国民にお詫びし、最後まで戦う
   獄中で何を読み、何を思ったか
   時代の観察者として踏みとどまる覚悟
  国家の意思とは何か
   新自由主義に歯止めをかけたホリエモン逮捕
   「やさしさ」は「国家権力」に対抗できるか
  私は何を読んできたか
   「深く考える」訓練をしてくれた堀江六郎先生
   “現実世界”を照らし出す小説の機微
     −『人間の条件』五味川順平
   グローバリゼーションにぶんがくは対抗できるか
     −『近代文学の終わり』柄谷行人
   ガンに斃れた(たおれた)希代の読書家が遺した書評と闘病記
     −『打ちのめされるようなすごい本』米原万里
   二人のカール結んだ純粋資本主義の視座
     −『経済原論』宇野弘蔵
   独房で染みた名翻訳 理性がもたらす癒し
     −『歴史哲学講座』上・下、G・ヘーゲル/長谷川宏 訳
   獄中生活五百十二日の救済
     −『太平記』
   一神教と多神教を同格と考える塩野史観の意味
     −『キリストの勝利 ローマ人の物語将検抉野七生
  日本の歴史を取り戻せ
  国家という名の妖怪
   インタビュアー 白井聡氏(一橋大学大学院社会研究科博士課程)
  絶対的なるもの −あるいは長いあとがき








本「私のマルクス」佐藤優5


私のマルクス
著者: 佐藤優
単行本: 333ページ
出版社: 文藝春秋 (2007/12)




う〜ん、ぼくにはちと難しい。
佐藤優が“マルクス主義”と“キリスト教”と、どうやら(?!ぼくにはまだまだ理解不足!?)相反する信仰思想に揺れ、だからこそ神学、そして哲学経済学を究める道程を、埼玉県立浦和高等学校入学から、夏休みのソ連・東欧への共産圏の刺激的な一人旅、そして一浪の後に同志社大学神学部への入学、19歳にしてキリスト教の洗礼を受け(沖縄出身で、戦後すぐに洗礼を受けた母親の影響!?)、学生運動にもまれながら、大学院での神学の研究にいそしむまでに見る。そこには、大きく横たわる思想家マルクスの存在、そしてマルクスと真剣に取り組んだ知識人たちとの、書籍を通じての対話(読書)。
文學界」2006年8月号〜2007年9月号に掲載分(現在も連載中)の書籍化。

ドイツ経済学者哲学者、革命家で、20世紀において最も影響力があったとされる思想 “カール・ハインリヒ・マルクス (Karl Heinrich Marx,1818.5.5-1883.3.14,)”を、名前しか知らないぼくは、分からなくて分からなくて、随分と丁寧に読んだつもりだけど、外国のカタカナの名前や地名、知らない言葉(これが度々出現する!?)が出てくる度に、「うぅ〜、分からない〜♪」と読むスピードを落としながら、それでもやっぱり嬉しくて嬉しくって、分からないままにとりあえず頭に放り込む。たいせつな言葉は何度か出てくるし、残念ながらすべてを理解して記憶することは、脳の機能的にも不可能だから、とにかく頭に放り込んで刻み付けるしかない。ほんとうにたいせつな事柄は、然るべきときに然るべき形で浮かび上がる。
ぼくは“知らない”から「でもだって、知りたかったんだよねぇ〜♪」と、フィロ・ソフィア(知を愛する、愛知)の歓び♪♪

そうそう、松岡正剛「17歳のための世界と日本の見方 −セイゴオ先生の人間文化講義 (文藝春秋,2006.12)」に、体系的に関連づけられて編集された知識が役に立った。
ぼくは、“キリスト教”を“マルクス主義”をもっともっと知って、自分の言葉で語りたい!
学生大会が無事終了したので、室町今出川の「はやし」という居酒屋に大山君、滝田君、米岡君、宇野君たちと飲みに行った。滝田君が「佐藤、俺はマルクスをきちんと読んでみたい。『共産党宣言』や『空想から化学へ』を読んでみたが、意味がさっぱりわからない。『資本論』については、難解な序文を見るだけで読む気がなくなる。果たしてマルクスはほんとうに意味がある思想家なのだろうか。きちんと読んでみて自分で判断したい」という。宇野君は「そんなことをする暇があるならば、デモや集会を組織した方がいい。理屈ばかりこねていても世の中は変わらない」という。米岡君は「世の中なんか変わらなくてもいいじゃないか。世の中が変わるときは、悪い方向にしか変わらない。とにかくマルクスはきちんと読んでみたい。なんでマルクス主義が人々の心をつかむのか、その秘密を知りたい」という。最後に大山君が「なにも義務づけるんじゃなくて、来たい者だけがくればいいんだよ。佐藤、とにかく一緒に本を読もう」という。私は「わかった。どうせやるのなら、体系的にきちんと勉強した方がいいと思う。マルクスだけじゃなくて、ドイツ古典哲学や現代思想、それから神学にも幅を広げよう」と答えた。大山、滝田、米岡の三君は積極的に賛成した。
私は二、三日考えて、次のラインナップを作った。
マルクスエンゲルス『共産党宣言』、
エンゲルス『空想から科学へ』、
マルクス『経済学・哲学草稿』、
ルカーチ『歴史と階級意識』、
ヘーゲル『キリスト教の精神とその運命』、
宇野弘蔵『経済原論』、
宇野弘蔵『経済政策論』、
鎌倉孝夫『スタグフレーション』、
廣松渉『唯物史観の原像』、
廣松渉『マルクス主義の地平』、
バクーニン『連合主義・社会主義および反神学主義』、
ベルジャーエフ『ロシア共産主義の歴史と意味』、
オルテガ『大衆の反逆』
  (P.164-P.165)
ヨセフ・ルクル・フロマートカ (チェコ,1889〜1969)


≪目次: ≫
 1 ユダヤ教の刻印
 2 ブダペシュト
 3 やぶにらみのマルクス像
 4 労農派マルクス主義
 5 同志社大学神学部
 6 組織神学教授・緒方純雄
 7 ロシアレストラン「キエフ」
 8 黒旗の上に描いた魚の絵
 9 極めつけの嫌がらせ
 10 『美学の破壊』
 11 思想家・渡邉雅司
 12 襲撃
 13 『なぜ私は生きているか』
 14 天性の牧師・野本真也










本「インテリジェンス人間論」佐藤優5


インテリジェンス人間論
著者: 佐藤優
単行本: 269ページ
出版社: 新潮社 (2007/12)




ぼくが“ロシア”に抱かれる興味。
対外的に(?!)ひと言で纏めるならば(誰もそんなことを求めはしないであろうが、時に一見軽薄を装って相手の様子を窺う、準備を整える姑息!?)、「今さら、脳天気に明るい南国って柄じゃないでしょ」、そう、「暗く冷たく古臭い♪」、かつて、キリスト教ロシア正教会国教に掲げ、広大な領土に支配を拡げたロシア帝国(1721-1917)であり、その後に現在の覇権国家アメリカ(西側資本主義陣営)との、二極化体制(東西冷戦)の一極(東側共産主義陣営)を担ったソビエト社会主義共和国連邦(1922-91)、で、ソ連崩壊(『自壊する帝国(佐藤優,新潮社,2006.5)』)を受けて、ロシア連邦として立て直しを図りつつ、それでも超大国然として世界情勢の大きな鍵を握っている。
『地図で読む世界情勢(草思社,2007.7)』
計画経済の破綻などから生じた矛盾やらで自壊しちゃった共産主義だけど、かといって他方の資本主義が健全に機能しているとも思えない。現在覇権国家たり得るアメリカだって、いつ破綻してもおかしくないボロボロの状態。
『ボロボロになった覇権国家アメリカ(北野幸伯,風雲舎,2005/01)』
『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日(北野幸伯,草思社,2007.9)』
ぼくは残念ながら、共産主義の思想の根っこの重要な部分の理解が得られていないのだけれども、思想(イデオロギー)のひとつとして、興味を抱いている。それは、宗教についても同じであり、これだけ科学技術が発達してしまって、結果的に存在が証明されなくなってしまった神さまや仏さまを、今さら崇める気にはなれないのだけれども、歴史的にもひとつの文化であることに相違はない。

私は、今回の事件に巻き込まれた結果、非政治的になったのではなく、そもそも非政治的な人間であったのに、どこかで運命の歯車が狂って、政治の渦に巻き込まれてしまったのだということに気づいた。それを軌道修正することによって、現実の政治から距離を置き、過去に退却し、埃にまみれた書物の中から日本国家と日本人が生き残る知恵を見出し、読書界に提示することが、私の役割分担なのだと思っている。 (P.31)
と書き記す佐藤優の言葉を、そのまま額面通りに捉える訳にはいかないけれども、私を含めて“平和ボケ”(平和を否定しないし、ボケだって時に必要で、皆がピリピリ研ぎ澄まされちゃったら生き辛い!?)してしまった多くの日本人には、軽薄なマスメディアに煽られた短絡的でピントが外れた噂ネタじゃない、信頼に足る多角的、客観的で正確な情報が必要だ!
死を内包する戦争を意識するところから思想は生まれるのだ。裏返して言うならば、戦争を意識しないような思想は、偽物とはいえないにしても「思想の抜け殻」にすぎないのだと私は考えている。
敗戦から62年を経て平均的日本人にとって戦争という形態で迫ってくる死は遠くなってしまった。宗教戦争や民族対立で命を奪ったり奪われたりするということも日本人の皮膚感覚で理解しづらい。日本人は死を意識することが不得手になってしまったのだ。死を意識しなくなるということは、死の対概念である生を意識しないことでもある。この辺に日本の現代思想がヤワになってしまった根本原因があると私は思っている。 (P.258)

≪目次: ≫
 第一話 鈴木宗男の哀しみ
 第二話 橋本龍太郎と日露外交
 第三話 私が見た「人間・橋本龍太郎
 第四話 小渕恵三の“招き猫”
 第五話 新キングメイカー「森喜朗」秘話
 第六話 死神プーチンの仮面を剥げ
 第七話 プーチン後継争いに見る凄まじき「男の嫉妬」
 第八話 日露対抗「権力と男の物語」
 第九話 「異能の論客」蓑田胸喜の生涯
 第十話 怪僧ラスプーチンとロシアン・セックス
 第十一話 スパイゾルゲ「愛のかたち」
 第十二話 金正日レシピー
 第十三話 有末精三のサンドイッチ
 第十四話 「アジアの闇」トルクメニスタンの行方
 第十五話 インテリジェンスで読み解く「ボロニウム210」暗殺事件
 第十六話 不良少年「イエス・キリスト
 第十七話 ニ十一世紀最大の発見「ユダ福音書
 第十八話 ラスプーチン、南朝の里を訪ねる
 第十九話 ティリッヒ神学とアドルノ









本「自壊する帝国」佐藤優5


自壊する帝国
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書評/社会・政治



ロシアへの興味から。
佐藤優との出会いは、鈴木宗男との共著「北方領土 特命交渉(講談社,2006.9)」を”本が好き!PJ”経由の献本から、そして、「獄中記(岩波書店,2006.12)」に次いで三作目。この著作も”本が好き!PJ”経由の献本が、かつて。
気合いを入れて読了、ふぅ〜っ
自らの不勉強から、ぼくは基本的な世界情勢にも疎い。この著作に描かれる1991年8月19日から21日までの3日間に発生した、当時まだソ連だった現在のロシアでのクーデター未遂事件、その時ぼくは21歳だから理解して然るべき歴史的事件なんだけど、興味がなかったから薄っすらとした記憶しかない。


そう、かつて帝国だったロシア
なるほど、自壊しちゃったソビエト社会主義共和国連邦
その歴史的な事件を、何よりその複雑な政治的、社会的背景まで、現地の外交官として身近に目の当たりにしちゃった佐藤優が、じっくり語る歴史的な記録、ノンフィクションの物語。

同志社大学大学院まで神学を修めた信心深いキリスト教徒が、何の因果か外務省に入省しちゃった必然。そして、敬虔なキリスト教信者としての行動規範が確立されていて、さらに宗教であり民族やら国家やら文化やら歴史に対する学術的な深い造詣と更なる探究心から、何よりノンキャリアで出世欲に駆られることがなかった(?!)から、時に外交官として求められる以上の働きをして、だからこそ、重要なポジションにある要人との深く良好な関係を構築し、歴史的事件の重大な局面に立ち会う。

まぁ、正直なところ、クーデター事件の顛末は、あくまでも史実の記録だから「なるほど、そういうことだったのね。」でしかないんだけれど、描かれる物語に魅せられる。
第六章をまるまる費やして描かれる「怪僧ポローシン」であり、モスクワ大学哲学部で知り合い、その後も大きな影響を受けた「サーシャ」。サーシャとの男の友情と現実の厳しさは、物語の最後を締め括るに相応しい。
崩壊するのは国家だけじゃなく、人間だって容易く崩壊しちゃう。自らの内に潜む自己破壊の衝動。もっとも分かり易い例を挙げるならば、アルコールに溺れて身を滅ぼす者やら、女性とのスキャンダルやら、、、
そう、佐藤優だって、国策捜査による『罠』であったとしても、ある意味での『崩壊』を経験した!?
しかしそれはまた、崩壊がその必然に導かれて起こるべくして起こるものでもあり、その崩壊による過去との決別によって拓かれる新たな道、その経験に生み出されるものも、またある意味での必然であったりもする。
2002年5月14日の背任容疑での逮捕があって、512日間もの勾留があって、著作業と神学の探究に勤しめる「起訴休職外務事務官」を得た。


≪目次:≫
 序章 「改革」と「自壊」
 第一章 インテリジェンス・マスター
 第二章 サーシャとの出会い
 第三章 情報分析官、佐藤優の誕生
 第四章 リガへの旅
 第五章 反逆者たち
 第六章 怪僧ポローシン
 第七章 終わりの始まり
 第八章 亡国の罠
 第九章 運命の朝

第38回大宅ノンフィクション賞受賞
第5回新潮ドキュメント賞受賞








「獄中記 -佐藤優」読みました。5


獄中記
著者: 佐藤優
単行本: 508ページ
出版社: 岩波書店 (2006/12)



国策捜査とは、いわゆる冤罪事件とは異なる。冤罪事件とは、捜査当局が犯罪を摘発する過程で無理や過ちが生じ、無実の人を犯人としてしまったにもかかわらず、捜査当局の組織保全や面子のためにそれを認めず、犯罪として処理することを強行することだ。
これに対して、国策捜査とは、私の理解では、国家がいわば「自己保存の本能」に基づいて、検察を道具にして政治事件を作り出していくのである。初めから特定の人物を断罪することが想定された上で捜査が始まるのである。・・・

本件は国策捜査である。
普通の捜査は、犯罪を摘発するために行う。
これに対して国策捜査とは、政治的思惑から、まず特定の人物がターゲットに設定される。そしてターゲットに設定された人物に何としても、検察はそれこそ念力でも眼力でも犯罪を見出そうとするか、見出せない場合には犯罪を作ることになると私は理解している。


なるほど、国策捜査とは、そういうことだったのか。知らなかった。

以前(2007年2月)に”本が好き!PJ”から献本を受けた「北方領土 特命交渉 -鈴木宗男・佐藤優」の記憶から、何かを感じて手にした。

外務省の元主任分析官”佐藤優”が、2002年5月に背任容疑で逮捕され、東京拘置所にて512日間の勾留。2007年1月、東京高等裁判所は地裁判決(懲役2年6ヶ月 執行猶予4年)を支持し控訴を棄却。
鈴木宗男代議士との深い関係。
キリスト教徒

本書は、東京拘置所での521日間の拘留中に書き記した日記、同僚や友人、弁護士らに綴った書簡を収録する、500ページ超の生々しい記録の大作。
これでも、五分の一に圧縮したという。

国策捜査の意義については”佐藤優”が語る通り、その必要があって引き起こされ、結果的には歳月を経た後に自然な流れに落ち着くことから、善悪を問うことに意義を感じない。
何らかの国家的、政治的、社会的必要であり、必然に導かれて引き起こされた”国策捜査”。

ある意味では、必然に導かれた、今回の”国策捜査”は、既に然るべき方向へと歩みを進めている。
歴史に”もしも”は無い。
”佐藤優”は、外務省という閉ざされた空間から飛躍して、日本のみならず世界のための幅広い活躍の場を得た!?
これだけ優秀な情報分析能力を有する”佐藤優”が、琉球大学ではなく、同志社大学神学部に進学し、同大学院神学研究科修了後、外務省に入省し、海外を巡り、主にロシア外交の情報分析のプロフェッショナルとして名を馳せる。様々な人脈を構築し、様々な経験を積み重ね、同時に大学で教鞭を振るう。そして、鈴木宗男との出会い。
そして何より、ある意味では特殊な”獄中”(東京拘置所)での時間。勾留期間が短ければ、ここまでの考察は得られなかった。それは、本書における記述からも垣間見える。時間を経るごとに深まりをみせる記述。展開される論理構成、理論展開に、正直、後半は理解し得なかった。

どうやら、国策捜査は、旧くから日常的に行われていた。
旧くは、キリストであり、近くは戦後まで、治安維持を目的とした、言論や思想の自由の制限。
著名な記述書の多くが獄中で執筆された歴史的事実。









「北方領土 特命交渉 -鈴木宗男・佐藤優」読みました。5


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書評/ルポルタージュ




これ、面白いです。
まぁ、これもある意味、ひとつの側面から捉えた数ある意見のうちのひとつとして、冷静な対応が私達には求められる訳ですが。


物語は、2006年8月16日未明に北海道根室市のカニかご漁船「第31吉進丸」が、北方領土と北海道の中間ライン付近でロシア連邦保安庁国境警備庁の警備艇に銃撃・拿捕され、森田光広さんが死亡、坂下登船長ら三人が連行された、事件から始まる。
北方領土問題に明るい方や、地元住民にとっては、非常に衝撃的な事件だった。
何故なら、それまで永く続いた良好な日本とロシアの均衡が破られたから。
その伏線となる歴史的事実が、遡って明らかにされる。
橋本、小渕、森政権において日露間には良好な関係が築かれ、本のオビにある『島は返還寸前だった!』のに。
出身の地元北海道を愛し、日ロ交渉に携わり続け、その情熱と猛勉強によって歴代の総理大臣から「極秘指令」を受け続けた政治家”鈴木宗男”と、外務省の主任分析官として、その高い分析能力をもって日本国の全体の利益のために尽くした”佐藤 優”が、その強い使命感から対談形式をとって公開することとなった真実の数々。
日本国を愛するが故に、私欲の一切を捨て、その使命感に燃えた二人の熱い男から、溢れ出る秘話の数々は、歴史的事実の理解に乏しくても充分に楽しめる。
北方領土問題はもちろん、社会主義国家ソビエト連邦共和国の成り立ちと崩壊、中国、北朝鮮、沖縄、チェチェン、イスラム原理主義、アルカイダ、9・11同時多発テロなどなどの国際的事件も、その歴史的国際的背景までもが明らかにされる。

一方では、外務大臣、政治家、外務省官僚による不作為によって、犯される過ちの数々も明らかにされる。
正に、人間とは過ちを犯す動物である。
人間の本質的な部分で、誰もが必ず内に含有する欲求、欲望。
日本国憲法によって拘束を受ける国家公務員という身分でありながら、私利私欲に走り、自己の利益を追求するという、本来の”公共の全体の奉仕者”としての立場からして有るまじき言動。 言語道断、許されない、と言いたいところですが、だって人間だもん、だから世の中は面白い、といったところなのでしょうか?!
私には、その辺の心理的事実が、最も興味深かった。


実は、政治問題に疎い私としては、この本を手にすることを躊躇していました。 だって、理解できなかったら恥ずかしいでしょ(笑)!
それでも、マスコミに面白可笑しく取り上げられたり、国家権力に叩かれて逮捕までされちゃった政治家”鈴木 宗男”と、外務省元主任分析官”佐藤 優”が書き記す、北方領土の「特命交渉」がテーマの著作ですから、どんなに困難な理論構成が為されているのか、怖いもの見たさの野次馬根性もあった訳です。
ところがどっこい何をどうして、オビにある『驚愕のインサイド・ストーリー』が満載で、なるほどなるほど、そういうことだったのね〜、という私でも知り得る歴史的事実の裏付けが為される。 その心理的背景や心理作戦がとにかく面白い。 世の中にはいろんな種類のいろんな考え方をする人々がいて、それは当然に政治家や官僚の世界でも同じであり、周りの迷惑を一切顧みず自己の欲求や都合のみを押し付けてくる輩がどこにでもいるものです。

どんな世界でも成功するためには、何か強烈なものがないと生き残ってはいけない。 特に政治の世界は、有権者の投票によって選出されるというシステムから考えても、より一層のカリスマ性やらオーラやらエゴやら、色々な強烈で特殊な才能が要求される。

一方、そのような悪い輩によって、誤った方向に進み始めてしまった事実も、それはそれで事実でしかありえなくて、残念ながらこの世の中には『もしも』ということは有り得ない。 ある意味、それすら必然に基づいていると確信する。
悪いことをする奴は、いつの世の中にもどこにも必ずいて、いずれその身に天罰(?!)は下されて、長い目で見ればバランスは取れている。
そして、世の中は上手くできていて、誤った方向に進んでいくことによって、救世主が現れる。 救世主は、正しい道を進んでいるときには現れないし、現れてもその役を果たし得ない?!
誰が正しくて、誰が間違っているのか、そんなことは分からないし、そのとき間違ったことをしていた人が、もしかしたらその後に救世主にも成り得ちゃう可能性だって否定できない。
何だか訳の分からない理論展開になってきちゃったけど、人間は必ず過ちを犯すものであり、人間は変化する生き物であり、長い目でみればそれなりに公平に上手くバランスがとれている。
だから、この世の中、人間って面白い!?!








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