――生命と非生命を分かつものは?――
生命を最も特徴づけるものは「進化」である。著者は試験管内で生命を模したシステムを構築することで生物の起源と進化を研究している。
生命とは“やっかい”なもので、「勝手に増えてどんどん変わっていく」のだと著者は説明する。ただ、進化が起きるのはある条件があった。40億年にわたる生命の歴史において、「協力」と「裏切り」がなければ単細胞生物からヒトへとつながる進化は起きなかったのだ――。
進化生物学の最新研究による「私たちの起源」と「複雑化の過程」。
≪目次: ≫
まえがき
第1章 生命とはなにか
地球は生命であふれている/生命活動の節度のなさ/生命と非生命/区別する特徴/「‘阿」/「∩殖する」/「B綣佞鬚垢襦廖真焚修箸蓮真焚修生命と非生命を分かつ/10年で0.5%変異する/細胞とDNAは生物固有/生命と非生命を区別する必要性/地球外生命体にもあてはまる生命の定義/ダーウィンが提唱した進化/進化するための3つの条件/シュピーゲルマンモンスター/進化で遺伝子が消失/進化する能力と質/生命は徐々に複雑化する/被生命は単純な状態を維持/進化により複雑化し続ける生命
第2章 ヒトへと至る協力の歴史
細菌は最も原始的な生命/細胞におけるタンパク質のはたらき/細胞膜という袋/適材適所な分子たち/細菌の起源という謎/RNAワールド仮説/RNAワールド仮説の問題点/タンパク質ワールド仮説、脂質ワールド仮説/分子が融合して細菌へと進化/細菌のすごさ/細菌は大きくなれない/細胞壁は細胞の拘束具/高機能化を阻むもの/殻を破った細菌/細胞のエネルギー革命/真核生命の誕生/ストレスに強い酵母/「賢い」真核生物/今も進行する細胞内共生/単細胞真核生物の限界/限界を突破した多細胞生物/細胞の分化と専門化/さらに専門化した組織へ/再び殻を破る/環境認識を広げた感覚器/協力を可能にする脳/大型化の弊害/協力で多細胞生物の限界を超える/社会性の進化/昆虫の社会性/社会性を持った集団のすごさ/昆虫の高性能な脳/アリの限界/ライオンの社会性/オオカミの社会性/ヒトの社会性/ヒトとチンパンジーの違い/助け合いを可能にしたヒトの心/生命進化に共通したパターン
第3章 協力を維持するしくみ
ヒトの社会の裏切り者/罰で裏切りを抑える/公平さを好むヒトの心/裏切りを憎む心の獲得/最強のしっぺ返し戦略/アリの社会における裏切り者/怠け者、裏切り者を抑えるしくみ/がん細胞も裏切り者/がん細胞を排除するしくみ/なぜがんはなくならないのか?/細胞内共生における裏切り者/相互依存で裏切り者を生まない/裏切り者の役割/進化的軍拡競争/裏切り者は進化の起爆剤/今日呂価値を問い直す
第4章 私たちは何ものなのか
地球上の個体数を見積もる/単純で利己的なものが優勢/進化は複雑さを好まない/なぜ協力が進化するのか/複雑化した生物が生き残った理由/限界まで単純化した細菌/原始生命体はどこへ行った?/生物のせいで絶滅した/生きられる環境がなくなった/見つかっているけど気づいていない/地球の生物は地球外からやってきた/新発見された謎の細菌/生物のように進化する非生命はできるのか/ヒトは最も過激な生物/ヒトを継ぐのは誰だ?
あとがき (平成31年2月 市橋伯一)
≪著者: ≫ 市橋伯一(いちはし のりかず) 1978年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科先進科学研究機構教授。専門は進化生物学。2006年、東京大学大学院博士課程修了(薬学)、JST ERATO研究員、大阪大学大学院情報科学研究科准教授を経て、2019年より現職。試験管内で生命を模した分子システムを構築することにより、生命の起源と進化を理解しようとしている。遺伝情報を持ち、進化する分子複製システムを世界で初めて構築した。