犬は「しつけ」で育てるな！ −群れの観察と動物行動学からわかったイヌの生態 Discipline isn't the way to raise your dog！
- 堀 明
- 築地書館(2007/1/22,単行本 240ページ)
- 1,575円
書評/サイエンス
築地書館が、かつて”本が好き！ＰＪ”経由の献本を自腹(?!)参画！
僕は戌(イヌ)年なんだけど、ホントのところ”イヌ”は得意じゃない。というよりも、ちょっと怖いから苦手かなぁ。
会話が成立する人間(ヒト)との関係にだって難儀しているのに、イヌには人間の言語なんか通じないんだよ!?、力だって強いし、引っ搔かれたり噛まれたり、吠えられたり、「うぅ〜」なんて凄まれたり、、、
あぁ〜、考えただけでも怖い怖い〜。
そんな訳で、著者”堀明”が実際に八ヶ岳「犬の牧場」で500日近く(約一年半弱)ものイヌ(ゴールデンレトリバー)たちとの密着取材(共同生活による観察?!)を経て、動物行動学から解き明かされる生態に迫る内容に、正直ホッと胸をなでおろした。
とどのつまりが、同じ社会的動物である”イヌ”を、”ヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)”と置き換えても、この本はほぼ違和感なく成立する。
だから、イヌにもヒトと同様に、精神的な機能障害を抱えるケースがある。として、刷り込み期(４〜７齢週)の重要性を説く。社会化期(８〜12齢週)の前に位置する、基本的な行動が現れ始める時期に、規範となる親もしくは同種の仲間と過ごしたか否か。そう、『生後何日目に母イヌから引き離されたか？』が大きなカギを握る、と論じる。『30日齢前後で親兄弟から引き離されたイヌには共通して、過剰反応などによる接触困難な傾向が見られる』とも。
だから、著者は”イヌの流通”に問題を提起する。
ブリーダー(繁殖家)らによる近親交配などによる遺伝子疾患。また、訓練士(訓練所)やカウンセラーなどによる、動物行動学を無視した”しつけ”、体罰、虐待。本来、社会的動物であるはずなのに、そこで重要とされる「刷り込み」であり「社会化」、何よりも社会性の著しい欠如。
そして、決して良好とは言えない環境のペットショップに陳列される”子イヌ”たちは、生後すぐに母イヌから引き離され、狭いケージに何週間も押し込めらて販売される。
そう言われてみれば、「犬はきらい？ わたしを変えたダメ犬サーシャの物語 (早川書房)」(2007.10.16 読了)にあったけど、アメリカでは確かに愛犬をウェブで検索するものの、ブリーダーやシェルター(保護施設)から、しかも何度もの面談を経て入手していた。
≪目次:≫
１章 「犬の常識」のウソ
〜イヌは「支配」と「服従」では理解できない！
２章 ほんとうのイヌに出会う
３章 イヌの問題行動は「しつけ」のせいではない
≪著者: 堀明≫ 1959年、京都府生まれ。法政大学法学部卒業。ジャーナリスト、作家、写真家。動物行動学の研究家。
文筆家・写真家 堀明公式Webサイト『Akira Hori Finder/堀明』
http://www.es-project.net/panthera/
