2014年08月26日

わたしはかわいい

インデックスをご利用ください。
順番に読めますぜ。

ppppppa at 18:46|PermalinkComments(0)

2014年01月25日

028

「まちかちゃん」
「ちよ」

運転手のちよがウチにとうちゃく。
衣装をみんなで積み込む。

ハナバナしい勝利からひと月たった。

その時の集合写真のわたしはミス本川小のたすきをかけ、プラスチックのおもちゃのティアラを頭にのせて、右手にまつたけ、左手にマホウノステッキというさんざんな姿だ。

『万千香ちゃん!おめでとう!これを差し上げます』
『万千香っ!忘れ物だよ!』

嬢と沙羅に無理やり渡された。
わたしの世界への一歩がコレ(※写真)だと思うと頭がいたーい。

それでもキチョウな一歩なことは間違いない。

「よーし!準備できたけぇ行こうや」

組合長の言葉にみんながオーと応えてそれぞれの車に乗り込む。

今日はそごうの地元物産展にうちの商店街から数店が出店するっていうからエイギョーなの。
わたしが優勝したことにビンジョウして商店街ハンジョウをもくろんだ我らがたがのばし商店街。
わたしは『ミスたがのばし商店街』というひとっつもうれしくない肩書をもらって、今日も駆り出される。

ミス本川小、ミスたがのばし商店街。
このふたつのたすきを巻きつけたわたしはさぞコッケイな見た目であろう。

でもこれでいいんだ。

階段はひとつずつ登るって決めてるし。

『学校』の次は『ここらへん』で一番になることが当面の目的。




「今日は忙しくなるぞお」

組合長の鼻息は荒い。
今日はわたしと、もう一人助っ人が来るから張り切ってるのだ。

「まちかちゃん、ほらほら。凛ちゃんからメール来た」
「えー。何て」

『ふたりの雄姿を見物に行くから★』

「あいつ、絶対面白がってる」
「そうだね・・・」

「あ、また来た」

『ばっちり写真撮ってあげるねっ』

わたしはちよからスマートフォンを取り上げて『あんたもてつだえ!』と入力して凛に返信した。

「・・・」
「何、どうしたの?」

ちよがにこにこしてる。
何か言いたそうにして、それを聞いてほしそうなめんどくさい顔して。

「いやー、なかよくなって良かったーって」
「べっつに」

そういえば3人で話すことが多くなった。
昨日の敵は今日のごにょごにょってやつなんだろうか。

「私たち4人、ずっとなかよしだよね!」
「え、ちよも入ってんの?」
「ま、まちかちゃ~ん」
「じょうだんだって!あーもうひっつくな!」



ちよの言ったこのなにげなーい言葉が本当になってこのくされ縁が続いちゃったり、わたしがまさかの本物の魔法少女に出会ったりすることになっちゃう物語は今はおいといて。

まずは

「よーし、そごう物産展売上一番を目指す!あんたたち気合い入れなさいよ!」
「おうよ!みんなマチちゃんに続けー!」


今日の勝負に、勝つ!



End.

027

「みなさんよく聞いてください。体育館の四隅にタブレットを持った先生がそれぞれ立っていますので、近い場所に1列に並んで投票して下さい。取り消しはできませんので並んでいる間にちゃんと考えておいてくださいね」

体育館の中から聞こえてくる会長の声。

「うーーキンチョウするっ!」

音々がわたしの手をがっちりにぎって何度目かの弱音を吐いた。

「あっちでやってよ音々。耳元でうるさい」
「あんたキンチョウしてないのっ?うそっ」

テンションMAXだ。

「凛はそんなのしないって顔よね」
「そうでもないけど」

自分の髪の毛を指差して笑う凛。

「さっそくこの後呼び出し。どうやってごまかそうかそっちのが大問題だ」

音々と凛が見合って笑った。

体育館裏にはわたしたち以外だれもいない。
ちよ以外でクラスメイトとこんなにしゃべったのは、そういえばはじめてかも。

「あ、そーうだ!」

音々がスマートフォンを取りだす。

「写真撮ろ。みんなで」
「え?」
「いーね」

音々がわたしの背中に手をまわす。
凛が反対側からも手をまわしてきた。

「ちょっとちょっと」
「何よ万千香。はずかしいとか言わないでよ」

はずかしい?
自分でも何でハンコウしたのかよくわからなかった。

「わたしがまんなかでいいの?既に優勝したみたいになってるけど」
「だってあんたが真ん中じゃないとバランス最悪だよ?」

ぐ。
背の高い音々と凛に挟まれたちっこいわたし。

「撮るよー。変な顔してても撮りなおさないから」

写真映りならかんぺき。
練習はひたすらやってある。

「おーいいじゃんいいじゃん」

どれどれって、わたしと凛がのぞきこむ。

「わざわざウィンドブレーカこれ脱いで水着になったのって、ブログアクセス数UP狙ってるな」

凛が茶化して言うと、図星だったのか音々がぎゃあぎゃあわめいた。

「友達アピってんのかも」

わたしも面白そうだからビンジョウした。

「違うから!もう絶対のせてやんない!」

なんとなく3人の関係性が決まったしゅんかんだった。


「3人ともー!」

ちよが向こうから手を振って呼んだ。

「入ってきてー。結果出たみたいー」

言葉がとぎれてすずめがチュンと鳴いた。

凛が手を差し出した。

わたしはそれをにぎり返して、反対の手で音々と手をつないだ。

わたしたちは三角形を作って「いこっか」それぞれの決戦の地へ向かった。








全部のカーテンが引かれて体育館はまっくらだった。

唯一明るいステージに3人並んだ。

音々が何か話しかけてきたけどよくわかんなかった。

音々の声だけじゃない、会長がマイク通して言ってることも頭に入ってこない。

あーわたし、キンチョウしてるなーって、やっと気付いた。

勝つ。

勝つってことは、こういうことをくぐりぬけないとダメなんだって思うと胸の奥が痛んだ。

ここから逃げたい、家に帰ってお風呂入って、パパママお兄とバカ話して。

わたしは世界一への最大のコンナンは眠気だと思ってた。

まだ寝ていたいって本気で思っている自分をいかに立ち上がらせるか。

それさえできれば世界一への道は開けるって。

でもこれはダメだ。

こんな空間にあと何度・・・何度立てば。

「万千香っ!」
「え」

音々がわたしの肩を両手でつかんで思い切りゆすった。

「音々?」

音々が指差す。

そっちを見るとステージの下の観客がわたしを見て手を叩いてた。

「負けちゃった」

音々が涙をためて、でも笑ってわたしを正面から抱きしめる。

「あたしも」

今度は凛がわたしの頭をぽんって叩く。

「正直あたしに勝てるやつがいるとは思わなかった。万千香」

勝った?
わたし。

勝った・・・!

「以上の得票数から、ミス本川小学校コンテスト優勝は!向、万千香ちゃんに決まりました――――っ!!」

2014年01月24日

026

「わたし、一番になりたい」

それだけ言った。
他に付けたすことはない。
わたしの望みはひとつ。

「頑張れー」「応援してるぞー」「まちかー」「かわいい」

いろんな声が温かな音色で届く。

ちょっと、気に食わなかった。

だから前方一点を見つめて、たっぷり1分だまってやった。

最初はわたしを受け入れる声。
次に、声を出せないようすのわたしをはげます声。
そしてわたしの顔がキンチョウともコンワクともちがうことにやっと気づいて、歓声が止んだ。
そこまで30秒。
それでも続く無言の時間。
場の空気がおかしくなってきたのをマズイと思った副が「―――」わたしをフォローしようとマイクに顔を近づけて、それをいつの間にかステージに上がってきたちよが首を強く振って止めた。












「世界で」




静かに、強く言った。

「幼稚園の時にそうケツイした。何でだったかは正直言って覚えてない。なぜだかただ、そう思ったの。先生とかまわりの子からほめられてうれしかったのかもしれないよくわかんない。でもそれは今でも続いてる。今日ここで勝って学校で1番になるの。そしたら次はこの辺で1番になる。次はこの地域で1番になって広島で1番になる。日本で!アジアで!北半球で!世界でっ!」

何やってんだろって冷えたわたしが言う。
身体のまんなかの熱がそのわたしに逆らう。

「昔テレビでね、1番を目指す人に『2番じゃダメなんですか』って言う人を見たの。わたし部活入ってないしわかんないけど、スポーツをやってる人は、てかやろうと思った人はその時から1番目指すんでしょ?チームでエースとか大会優勝とか甲子園とかオリンピックとか。全国せーはとか金メダルとか目指してわざわざ体いじめてるんでしょ?好きで始めたものをきらいになりそうなほど練習して、練習して、練習して、練習してそれでも甲子園行けないんだよ?金メダルどころかオリンピックも出れない人居るんだよ?血を吐いて地を這って1番目指しても1番になれないのに、最初から2番目指してたら何にもなれないしどこにも行けるわけないよ!そうでしょ?だから1番なの。だからわたしは、凛がどれだけすごいことやってのけても、音々がわたしの知らないところでどれだけ涙をがまんしてても、それでも目指さなきゃダメなの。どんな勝てそうにないやつにだってどうにかして勝たないとダメなの」

凛の時のコウフンとか音々の時の感動の声とかそんなのちっともない体育館。
温かくてもダメ。ムシされてもダメ。
わたしの時は、こうでないと。

「だから、勝つ」

今日勝って、その先の世界を手に入れる。

「勝つから。わたし」




025

「音々さん、落ち着いた?」
「はい。大丈夫です」

流れ落ちる汗をタオルでぬぐってステージ中央のマイクへ向かう。

じゃんけんの熱気はまだ残ってる。
それは凛に対してだけじゃなく、戦い抜いた音々にも向けられてる。
なんか。
なんかすごい子たちを敵にまわしちゃったな、って思う。
こんな子たちが同じ学校で。
たまたま2人ともクラスメイトで。
世界がわたしを遠ざけてるとしか思えないんだけど。



「まずはお礼を言わせて下さい」

音々が正面へ向き合う。

「ブログに応援コメント下さった方。今朝学校までわざわざ来てはげましてくださった方。今聴いて下さってるみなさんにも!本当にありがとうございます」

拍手。
そうか、生徒だけじゃなくて親とか全然関係ないとこの人たちまで来てるのか。

「私がコンテストに参加を決めたのには理由があります。知ってる方もいると思いますが私、某雑誌で読者モデルをやらせてもらっています。モデルとは違うんです。スナップとかで人気が出た女の子が定期的に参加できるようになってそれが読モです。私実は、この雑誌のモデルオーディションに3回落ちてるんです」

初耳だった。
わたしは毎月欠かさず読んでるけど、ブログでも誌面でもそんなことは聞いたことがなかった。

「昔からファッションが好きでかわいい服も好きで、モデルになりたいと思ってました。両親も応援してくれてモデルを目指しました。オーディションの3回目に落ちた時、編集者さんから声をかけられて読モでいいならやってみないかって言われました。夢に近付けるならそれでもいい!って私、読モになりました」

いち読者であるわたしの目から見ても、音々はその雑誌のモデルに引けは取らない。

かわいいだけじゃダメ。

それは正しいんだろーけど、本ミス戦ってみて音々はそれだけじゃないってわたしは知ってる。

それでも

「ブログには私のファンですって言ってくれる人も居て、学校のみんなも応援してくれて・・・。でも私、モデルになりたいんです!」

だんだんと声にくやしさが宿る。
歓声は止んで、音々を見守っている。

「あきらめたくない!んです・・・。このままで十分幸せって思う。思うんですけど、やっぱりモデルになりたい。夢、叶えたいです・・・」

涙がぼろぼろ流れてた。
声がうわずるのを必死で押さえて、声を届けようと音々が戦う。

「私、勝負に勝ったことがなかった。3戦全敗。だからこのコンテストに出て、勝ち残って自信にしたかったんです!いち小学校の小さなイベントかもしれないけど、私はどうしても勝ちが欲しいんです!私の夢の為に。だからちゃんと1位になって、絶対モデルに」

手を叩くのが聞こえ始めてる。
音々の名を呼ぶどこかのだれか。

「モデルになってみせます!みなさんが私に投票したことを自慢できるくらいにっ!ちゃんとしたモデルに、なります!」

音々が深く頭を下げた。
一番前にじんどった音々のファンらしい人たちは泣いてた。
音々と何の関係もない人も手を叩いて音々の背中を押していたと思う。

うーんと。

どうしよ・・・。

わたしの言いたいこと、いっこしかないんだけど。

コレの後にそれをやれっての?

「じゃあ最後はっ、ま、万千香ちゃん、です~」会長。涙ボロボロでちゃんとしゃべれてないし。

てきとうにコールされたわたしは、よし、ってムリに気合いを入れてマイクの前に立った。