2005年09月10日

「かくやのこうこ」の粋。

20b61d81.JPGなつかしい言葉の響きが、林家正蔵師のインタビューで蘇った。「かくやのこうこ=覚弥の香々」。
古典落語好きなら何度か耳にしている言葉であろうが、別に江戸時代の代物ではない。
古漬(古い漬け物)を水で洗い、生姜と共にこまかく刻んで醤油などをかけたもの。私の母もこれをよく作っていた。温かなご飯の上に乗せ茶漬けにして食べるとたまらない。
この言葉、徳川家康の料理人、岩下覚弥が考案したという説と、高野山で隔夜堂(一定期間神仏へ一晩ずつ参詣する修行のためのお堂)を守る僧侶が作り始めたという説の2つが語源として挙げられている。
古典落語「酢豆腐」に、銭のない若い者が集まってこの「かくやのこうこ」で一杯やろうという相談が持ち上がる下りがあるが、亡くなった古今亭志ん朝師の話すこの場面が好きだった。ちっともリッチでないのに、とてつもなく粋なのだ。艶っぽい江戸の情緒が伝わってくるのに、この「かくやのこうこ」という言葉の響きも一役買っていたと思う。
朝夕に秋の足音が聞こえ始めた季節だが、クーラーなぞという野暮な機器をひとまず消して、自然の風を入れながら「かくやのこうこ」で茶漬けでも食らって、江戸の庶民の息づかいを体験してみるのはいかが? 夏に寒い思いをするのが人類の身体によい作用をもたらすわけがないのである。

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この記事へのコメント
日本の言葉。
風情があって素敵ですよね。
見るだけで、風景が浮かんできます。
漢字、ひらがな、カタカナ.....
文字は色々ですが、同じ言葉でも、違う意味をたくさん持っていたり、奥が深いですね。
秋といっても、まだまだ暑いです。
縁側で、かくやのこうこのお茶漬け。
夏のなごりを惜しみながら味わってみたいですね。
Posted by そ at 2005年09月10日 23:14
そさん、コメントありがとう。
「かくやのこうこ」って言葉、何とも好きなんです。
落語をやっていた高校時代から気になっていた言葉だった。
ほんと、おいしいですよ。
Posted by 川中紀行 at 2005年09月11日 12:21