プロ先生の歯列矯正日記

矯正治療に対して興味のある方、いろいろと疑問をお持ちの方、このブログでは プロ矯正歯科の患者様の協力により私の矯正治療の経過日記を書いていきます。 御協力していただけるモニターの患者様ありがとうございます。矯正専門医の立場からの苦労していること、困っていることなどいろいろと記載する予定です。

2015年09月

みなさまおはようございます。東京のプロ矯正歯科院長 田中憲男です!
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さて、みなさまシルバーウイークはいかがでしたか? 連休中は天候にも恵まえ充実した休日を過ごされた方も多くいらっしゃたと思います。 僕は家族サービス兼勉強会という形で仲間の歯科医師の先生家族数組と2泊旅行にいってきました。 新宿駅に集合し電車での移動でしたので3日間という限られた時間でしたが、家族サービスもでき、かつ先生方といろいろと建設的な議論ができたことはとても有意義でした。

これを機に次回は私が講師をさせていただくという形できちんとした勉強会を兼ねた旅行を企画することになりました。時期は未定ですが、来年の3月頃にできたらと考えております。

さて、本日のテーマは難しい症例は誰が治療しても難しいです

治療が難しい原因はいろいろとあるのですが、まずは読者の皆様に基本的な知識を整理しましょう

1:骨格的な要因 上下のアゴのバランスが前後的、左右的、上下(垂直的)なズレが大きい場合

つまり、歯列矯正治療は漢字のとおり歯列を治すのが目的です、上記の骨格的な要因の場合は歯がずれているのではなく、骨がずれているのです。 骨のズレを歯を並べることで治すという部分で難しさのイメージができると思います。


2:習癖、鼻疾患等の要因
鼻が悪い人はたいていかみ合わせも悪く、それが骨格的に悪影響を及ぼすことが多いと思います。

具体的には 鼻閉の結果、口呼吸になる いつも口をあいている アゴの成長方向が下方になる といった具合です。 結局、歯列だけでなく鼻の疾患をなんとかしないといけません
習癖も同様で、 指しゃぶり 上下の歯列が開いてくる 舌突出癖の出現 異常な嚥下習慣の確率 など、歯科矯正治療を困難にしていきます

3:歯がうごかない
歯がうごかない原因はいろいろとあるのですが、一般的には(八重歯等で)上下の歯が接触しない結果、歯根膜という歯の感覚器が退化してしまうことで動かなくなってしまいます。この場合は全く歯はうごきません

他に、咬筋が非常に発達している人で筋肉の走行が歯列の走行に対して90度の角度で荷重がかかる人などは非常に歯の動きが悪いです。これは矯正検査をすればある程度予測できます。

ほかにもいろいろとあるのですが、今回は3番の歯がうごかないという症例のレポートです。

詳しくはバックナンバー

を見ていただければ幸いです


それでは見る時間もないという方のために復習を兼ねて初診からの画像です

お時間のある人はバックナンバーをどうぞ!




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正面からみるとたいしたことないです。

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まず、左右の奥歯(大臼歯)の位置が非対称です。 これだけで治療期間は通常よりも6〜9か月はかかります。(もちろん説明済み)

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一方で上顎のガタガタも結構な状態ですが、通常は上顎の歯列不正に関してはどんな状況でも対応可能です。したがって、この程度は問題ない範囲です。





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上の歯列は顔面とくっついておりますので、基準は上の歯列を整えていくほうが安全な治療と思います。


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まずは抜歯をせずに歯列をならべていきます。


この時点で抜歯治療をしたくなかったのですが、患者さんが口元をひっこめたいといった要望が強かったので、この後抜歯治療に移行していきます。 現在も同様の症例をいくつか治療中ですが、今はすぐに抜歯をせずに歯を削って小さくする等の処置で対応することが多くなってきました。


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下の歯にも装置を装着です



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かなりガタガタがきびしいですが、抜かないで並べることが不可能といえばそんなことはなく、むしを抜歯した結果治療にはまってしまったでしょう。

しかしながら、抜歯せずに治療したら早く治療が完了したかというとそんなことはなかったと思います。

結局は、どんな方法をとったとしても 難しい症例は誰が治療しても難しいということです。






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このように上の歯列は抜歯した直後は結構な空隙ですが、治療の難易度を増加させるのは下顎の歯列不正です



つまり


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この左右非対称の奥歯が一番の原因であり、 次に 咬筋が非常に発達している咬合状態だったことです。



治療の後半は結構シビアな状況でもがき苦しみました。


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この時点での問題は



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〇しるしで記載されている部分です。まったくかみ合っておりません。




歯が動かないとどうしても強い力を加えたくなります。
強い力を加えた結果、動いてほしくない部分の歯が動きだしてしまいます。

こうなってくると、初心にもどって自分を信じてじっくり治療に取り組み、変化を待つということも重要になってきます。


結果的には治療期間3年を過ぎた時点で患者さんから終わりにしてくださいとのことで、装置を撤去することになりました。

少々残念な結果でした

それでは最終状態です



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時間があれば上下の正中線も合わせられたと思います。




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上下の歯のかみ合わせは問題ありません



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左方向のかみ合わせは非常に良好と思います。



一方で右方向は



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ややかみ合わせが不十分です





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さて、上顎はどうでしょうか?


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さきほどもお話いたしましたが、上顎の歯列は相当な不正歯列でもなんとかなります。



下顎歯列はどうでしょうか?


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残念なことに隙間が残ってしまいました。


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この部分は自然に閉鎖するのを期待しつつ、どうしても閉鎖しない場合は詰め物を入れる形で対応することになりました。



あと、6ヵ月治療期間をいただければと思いましたが、3年ワイヤー装着していたので仕方ないかなと

ただし、診断の時点で治療期間の説明は早くても2年6ヵ月、場合によっては3年と説明していたので、説明よりは長かったものの、著しく治療期間が長期だったわけではありませんでした。



初診状況が

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下の歯列が


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の状況が
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今後も治療期間と仕上がりのバランスを向上させていきたいと思います。
それでは今日も1日がんばりましょう

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昨日の大雨大変でしたね。
じつは、昨日の僕は年に4回おこなわれる歯科医師会の親睦ゴルフコンペでした。

親睦ゴルフコンペですから、通常は朝1番に錦糸町駅前に集合して貸切バスでゴルフ場に移動です。
ところが、昨日は自分の45歳の誕生日だったこともあり、家族との約束もあったことから自家用車にて現地に向かいました。

現地とは茨城県の某ゴルフ場でした(泣)

普通のお付き合いなら絶対にキャンセルするところですし、当日のキャンセルも結構いたそうですが、僕は年に4回の開催ですし、次回は12月なのですが手術で参加できないこともわかっていたこともあり、相当無理して現地に向かいました。

道中あやうく、自家用車が道路に水没するところでした。

まさに人生の修行というのにふさわしい悪天候の中のゴルフでしたが、無事に自宅にかえってきました。
往復の運転時間が7時間、ゴルフプレイ時間が5時間 合計12時間とてもとてもくたびれましたが、参加者の誰も怪我等なく、なんとか終わったというところです。


ゴルフはその人の性格が出ると言われますが、僕の場合は非常に安全なゴルフをします。
矯正治療も同様ですが、基本的にギャンブルが嫌いです。10回に1回成功することよりも、10回に9回成功することを選択します。
木曜日のゴルフもそうでしたが、到着して練習なしのスタート、数か月ぶりのラウンド、おまけに悪天候ですから、テイーショットは6番アイアンでした。 普通ならドライバーを持つところでしたが、スタート3ホールはすべてアイアンを使用してのテイーショットで大けがをしないようにリズムをつくりながらゲームを壊さないようにおこないました。
矯正治療もゴルフ以上に安全な治療をこころがけていきたいと思います。

さて、本日のテーマは小児期の歯列矯正の目的は完璧になおすことではありません

というテーマです。

われわれがおこなう、歯列矯正治療の対象は上顎と下顎です。

ちなみに、頭の構成は 頭蓋と上顎と下顎です。 矯正治療を対象とする場所は上顎と下顎です。

顎には上と下があるのはみなさん御理解していることと思います。

それぞれの顎の違いを簡単に説明すると

上顎: 骨がとてもやわらかい。おおよそ8歳くらいで成長が完成する。
下顎: 上と比較すると骨が硬い。 成長は身長がのびている間は大きくなる。


両者を比較すると上顎は骨がやわらかいことで、アゴを拡大することが容易です。
また、8歳くらいで成長がストップしてしまうので、矯正装置をもちいないと拡大困難(つまり、自然に大きくなることは不可能)と患者さんにも説明できます。

一方で、下顎は 骨が硬いためアゴの拡大は困難です。また、16〜18歳くらいまで成長することからもしかしたら自然に広がることがあります。また、大きくなりすぎて受け口になってしまうことも可能性としてはあります。


結論としては、小児期の歯列矯正治療の場合は下顎歯列に関しては上顎と比較すると慎重な判断が必要になるといえます。

それでは上顎はどの程度まで拡大できるのでしょうか?

本日の症例です

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正面ですと前歯がみえません



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下顎はそれほど問題なさそうです







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上顎は左右にガタガタが生じております。









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CT画像でみると大人の歯のポジションも悪そうです。





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上顎に拡大装置をセットしました




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ワイヤー装置もセット中です







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1年と少しでこの程度まで改善してきました。




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この段階ですべての歯が永久歯です




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下の歯列は何もしておりません。






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横方向からみてもまあまあです。






これで安心と言いたいところですが、この患者さんはまだ小学5年生です


これから身長が伸び、それにあわせて下顎も成長していきます。


仮に、少々かみ合わせが変化したとしても、この状況まで改善しておけば、最終状態は抜歯等おこなわなくても十分改善可能な状況になりそうです。


しかしながら、



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このままの状況で放置して大人になっていったとしたらどのようになっていたか想像がつくと思います。




小児矯正の目的は 完璧に治すのではなく、

その人のもっている成長を引き出してあげること

本来のその人の成長の軌道修正をしてあげること

です。


ですから、もともとの修正しても軌道が悪い場合の人(遺伝的要因や鼻が悪い、口呼吸、指しゃぶり)など

ある人はそういった部分も改善してあげないといけません。

いろいろと改善しても遺伝的要因はどうしようもありません。




それでは、本日も1日がんばりましょう!


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みなさまおはようございます!
歯列矯正・外科矯正でおなじみのプロ矯正歯科院長 田中憲男です

きもちのいい朝が続きますね 台風さえこなければ最高の季節です。

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お願いいたします。

私が大学を卒業した約20年以上前は、歯列矯正治療といえば歯に銀色のブラケットを装着してワイヤーぐるぐる巻きといった治療がメインでした。 また、抜歯治療の割合も多く、成人矯正治療は少数でした。

それが、近年は 裏側矯正やマウスピース矯正などといった治療方法のバリエーションも増えたことに加え、
治療を担当する歯科医師の先生も矯正治療を専門としない一般歯科の先生が担当する機会も増加してきたとおもいます。

実際、歯科医師会の集まりでも歯列矯正治療の話題等はなしに上がることが多々ありますし、外勤先の院長が自分で歯列矯正をおこなったり、同級生や同窓生の先生から治療の相談をうけることも多くなりました。

自分の人生を振り返ってみると、研修医時代の生活は今よりも過酷な勤務状況でした。
朝7時には医局に出勤し、医局の共用スペースの掃除からはじまり、コーヒーをいれ、お茶をわかす。最後にゴミ捨てです。 その後、1日中診療の見学や学生授業の手伝い、試験監督などをおこない、ようやく自分の時間が作れるのが夕方18時からでした。
だいたい夕方18時から25時(25時を過ぎると病院の出入りができなくなり、泊まることになってしまいます。)まで仕事をおこない、徒歩10分程度のアパートに帰宅するのが25時30分とかといった生活でした。

そんな歯科矯正学という学問を学ぶために必死に勉強していたのにもかかわらず、歯列矯正治療は結果が出てくるのに時間がかかることもあり、卒業1年目の時は将来の展望が見えず、暗闇のトンネルをひたすら掘り続けるといった鉱員のような生活でした。幸い、同級生に留学生の陳先生がいたこともあり、陳先生は5年間台湾で歯科矯正学を学んでの留学だったこともあり、僕にとっては良きパートナーとしてまた、良き先輩として助けてくれたこと、わざわざ日本に留学に来る彼のハングリー精神にも影響を受け、挫折しそうになりつつも、卒業2年目くらいからは歯科矯正学の面白さにどっぷりとはまっていきました。

研修医時代は一切、歯科医師としてのアルバイトは禁止でした。

つまり、歯科矯正学を学ぶ時間は24時間あったも少ないくらいということ、教育を受けるために経済的に余裕がない人はわざわざ来る必要はないといった場所でした。

実際は矯正科の先輩方は女性の先生は比較的裕福な方が多かったですが、男性の先生はどちらかというと貧困な方が多かったです。つまり、純粋に学問として学ぶことを志ている人が多かったです。指導医の先生、同期の先生にも本当に恵まれてとても充実した研修医をさせてもらいました。

その後の自分の経歴はHPを参照してください。


研修医時代から現在まで21年間ずうっと矯正歯科の技術の向上のために学びつづけておりますが、本当に歯列矯正治療は難しいです。

材料や技術の進歩は多少ありますが、基本的な操作はかわりません。

自動車に例えれば、マニュアルギアのシフトからATになったという程度です。

つまり、くりかえしますが、歯列矯正治療をマスターするためには基礎的なトレーニングをしっかりとおこなわないとまったく話にならないということです。

スポーツに例えれば、野球やサッカーは初めてやってもそこそこ楽しいですが、ゴルフやテニスはどうでしょうか? 特に、ゴルフに関してはやったことがある人ならわかりますが、楽しいというゾーンにいけるまでは相当なトレーニングが必要だと思います。

しかしながら、ゴルフ場にも結構いますが、基礎的なトレーニングをまったくやらないで、いきなりコースにてプレイをしてしまう人が非常に多くなってしまいました。

昔はそういう人はゴルフできなかったのですが、近年の不景気によってコース側も仕方ないといったところです。

歯列矯正治療もゴルフと同様といったら失礼ですが、基礎的なトレーニングをまったく受けずにいきなり本物の患者さんを治療してしまうといった先生が増加してしまいました。

なぜ、増加したと断言できるかといえば、先ほどの話にもどりますが、歯科医師会、大学同窓会、外勤先の院長先生、多くの先生が歯列矯正治療をおこなっている割合が高くなっているからです。

なぜなら、歯科医学を勉強すれば勉強するほど、歯列矯正治療の必要性が理解できるのです、

だれだって。条件の良い歯列にしてから、ブリッジやインプラントをおこなったほうが、その後の経過がよいことはわかると思います。 つまり、患者さんのことを思って歯列矯正治療をおこなっているのです。

それらの先生は基礎的なトレーニングをしっかりとおこなっている人もおりますが、多くはまったくの素人です。

そんな中、知り合いの先生が患者さんを紹介したいといって、連絡をいただきました。

話を聞いてみると、自分で矯正治療をおこなっているのだが、どうしても最後の仕上げがうまくいないので仕上げだけやってほしいとのことでした。

正直、面倒な仕事だなあと思いつつ、仕上げがうまくいかないなら、2、3回治療すれば終わる程度かな?と思いました。

ところが、来院された時の状況です


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正面からみるとこのような状況でした。

no title

とても2、3回で終了できる状況ではないですが、素人の人がみたら歯が並んでいるだけいいのでは?と思う人もいるでしょう。


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横方向はどうでしょうか?






なんと、奥歯には矯正装置をつけた形跡がありません。




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反対側もです





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そもそも、前歯だけの部分矯正治療ならわかりますが、

よくみると、奥歯のかみ合わせはまったくかみあっていません。

上下の歯列横幅も著しくことなっておりました。




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下の歯列です



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結局、この状態で僕が担当医変更になった場合、きちんとした形に仕上げることが可能かどうか?

ということを考えました。



患者さんの了承を得て、レントゲン等の資料もとり、自分なりに分析をしました。


結論からいうと、 きちんとした形に仕上げることは可能です。


ただし、大幅に治療計画も変更すること、

また、治療期間も最低追加で2年はかかること

装置はすべて新規にやりなおしすること

といった状況でした。


患者さんにうかがったら、プロ矯正歯科に2〜3回通えば終了するからといった説明を受けてきたとのこと


僕がだした結論は 自分の技量では治療を引き受けることができないです

といったことでした。

つまり

歯列矯正治療は技術的なことだけではなく、治療期間が長期にわたるので、人間関係も重要になってきます。

治療の中では時にはおもったとおりにならないことも多々あります。

転医患者さんというのは本当に難しいです

これから歯列矯正治療を検討している患者さんたち

本当に情報収集は徹底してください

それでは本日も1日がんばりましょう!



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