2019年10月15日

塩野七生著『ローマ人の物語』その4 (PF788)

DSC_0464塩野氏の『ローマ人の物語』から引用しながら、書き綴る。その第4回目。

【エリート養成】
ローマ人は中国の科挙のような制度は作らなかった。エリート養成機関の役割を果たしたのは元老院である(第9巻)。
元老院はラテン語でsenatusと記す。王政ローマ時代は王の助言機関であり、共和政ローマ時代は統治機関であり、後のローマ帝国皇帝時代は皇帝の諮問機関でもある。ラテン語のsenatusは、英語ではsenatorである。現在では多くの国が上院の呼称に用いる語の語源でもある。

【エジプトのピラミッド】
ただ一人の人間の死後のための工事か(エジプトのピラミッド)、より多くの人間の現世の生活に役立つための工事か(ローマ人のインフラ作り)。エジプト人とローマ人の違いである(第10巻)。「ピラミッドは無用で馬鹿げた権力の誇示に過ぎない」(大プリニウス著『博物誌』)(第10巻)
エジプトのピラミッドをこういう切り口で観ると、また違った景色が見えてくる。思えば、エジプトを含めた四大文明の発祥地(エジプト、メソポタミア、インド、中国)は、いずれも近代化に後れを取った。

【裸体とキリスト教】
ローマの公衆浴場は紀元4世紀末にもなると利用者が減少した。キリスト教が広まり、他人に裸を見せることは悪とする考え方が広まったためである。公衆浴場に飾られていた裸体の彫像もほとんど遺棄された(第10巻)。当時のキリスト教は裸体を人目にさらすことを禁じていた。ところがギリシャ人やローマ人は人間の裸体を美の極致と考え、多くの裸体の彫像を残している。当時のキリスト教関係者はこれらの彫像を排除しようとしていた(第14巻)。
古代ローマ人と日本人には共通点がある。それはいずれも入浴好きだという点。上記の通り、キリスト教が広まると、ローマ人の公衆浴場は減少してしまった。また、キリスト教の影響で多くの裸体の彫像が処分された。彫像の処分は後世の人間からみると甚だ残念でならない。

【バイリンガル】
マルクス・アウレリウスの『自省録』は全編ギリシャ語で書かれている。ローマ人のエリートはラテン語とギリシャ語のバイリンガル。皇帝としての仕事はラテン語で、思索はギリシャ語で、と考えたのだろう。キケロのようにラテン語で思索することも十分可能ではあった(第11巻)。
古代ローマ人の使用していた言語は主にラテン語である。しかし、教育のある者はラテン語に加えギリシャ語も解し、バイリンガルだったという。筆者は学生時代ひとりで北米をバックパッカーとして周遊したことがある。そのときに、英語をほとんど理解しない20代のドイツ人旅行者や片言の英語でなんとかやりくりする20代のスイス人旅行者と出会った。それぞれ数日間旅を共にした。ヨーロッパ人でも複数言語を流暢に使いこなす人は必ずしも大多数というわけではない。プロのテニスプレーヤーでスイス人のロジャー・フェデラーやセルビア人のノバク・ジョコビッチがインタビューなどで流暢に英語で話しているのを見ると、見事だと思う。同じプロのテニスプレーヤーでも、スペイン人のラファエル・ナダルは前述の二人に比べると、少し英語に不自由を感じているように見える。



  
Posted by projectfinance at 00:19Comments(0) プロジェクトファイナンス