2019年08月26日

独立は目的ではなく手段 (PF781)

DSC_0382先日20代の金融マンのT君と話をする機会があった。いろいろ話をしてゆくうちに、T君が「自分も吉村さんのように将来独立して仕事をしたい」と言う。「日本の会社員は大変だね」というようなことを筆者が思わず口走った直後のことだった。

日本の会社員が大変だと思う理由はいくつもある。会社本位の生活、上司との窮屈な関係、有給休暇の取りにくさ、残業の多さ。「会社はビジネスをするための組織に過ぎない」というような割り切った言動をしようものなら、まず反発を免れない。人生イコール会社みたいな生活をしている社員が、少なくとも表面的には模範社員とされる。会社を離れて振り返ると、「なんでそんな言動をしていたのだろう」と不思議に思うところはひとつやふたつではない。

外国の企業に勤務する外国人を観ていて思うのは、日本の企業に勤務する日本人よりも遥かに人間的に思える点である。外国人の多くは、会社本位の生活は良くないと思っている。上司は部下を人として尊重することに多く意を用いている。有給休暇は皆で取ろうとしている。残業はできるだけなくそうとしている。要は「会社員である前に人である」という意識や考え方がかなり浸透している。

一方で、外国の企業の営業部門で働く者は、収益への貢献が期待を大幅に下回ると居場所がなくなる。筆者が所属していた部署では2-3年の間に社員の10-20%程度が入れ替わっていた。業績を上げている割にはボーナスが良くないと不平を言って退職する大物もいるが、たいがいは期待を下回る業績しか上げられず退職を勧告されて辞める者や退職の勧告を予期して勧告前に自ら辞める者である。筆者が勤務していた外資系企業は米系ではなかったせいか、退職勧告の出る頻度はさほど多くはなかった。しかし、業績が上げられないから退職余儀なくされるというような現象は、日本の大手企業ではまずほとんど起こらないであろう。これは終身雇用を旨とする日本企業の良いところでもある。しかし、パフォーマンスの良くない社員でも社内に温存されるという点は悪いところでもある。

筆者は冒頭のT君に訊いてみた。「どうして独立して仕事がしたいんですか」
そうすると、T君は筆者が上に記したような日本の会社員の芳しくない点を列挙する。筆者が20代の頃は、T君の世代に比べると甚だ初心(うぶ)で、「将来独立して仕事をする」ということ自体考えたことがなかった。独立して仕事をするのは医者や弁護士くらいであろうという程度の認識しか当時は持っていなかった。

T君は実は筆者の子供たちと同世代である。そのせいかT君と話をしているうちに、つい親のような心境になってしまう。親のような心境になってしまったためかT君には次のような話をした。
「まだ20代なので、まずは仕事をしっかり身につけ、スキルを高めるのが先決」
「独立はその先にあるもの」
「独立してどんな仕事がやりたいのかがもっと重要」
「将来どんな仕事がやりたいのか徐々に見極めてゆこう」
「でも独立は目的ではない。独立は手段に過ぎない。自分がやりたい仕事をやりたいようにやるための手段に過ぎない」
  

Posted by projectfinance at 00:47Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック プロジェクトファイナンス