2006年10月05日

「なぜ、この人は次々といいアイデアが出せるのか」ロバート・サットン著 (PF116)

098ff0af.JPG本書の英語書名は”Weird Ideas That Work”という。2002年に出版された。直訳は「役に立つ奇妙なアイデア」となるが、日本語訳の書名の方がインパクトがある。

映画の題名も書籍の題名も直訳はたいがい役に立たない。短いフレーズはそれぞれの言語の持つ妙味が試される。この点で、例えば、”Intel Inside”の日本語訳「インテル入ってる」は、意味を離れず音韻を踏んで見事である。

さて、本書の著者ロバート・サットン氏はスタンフォード大学の経営学の教授。翻訳者米倉誠一郎氏はイノベーションの研究を専門とする一橋大学の教授。本書は企業のイノベーションに関する本である。

いくつか興味深い点を採り上げる。

1)「ブジャデ」の発想 (p23)
これはフランス語Deja Vueを逆さにした。フランス語の「デジャブ」とは「既視体験」のことで、「初めて見るのに、かつて見たことがあるような気がすること」。ここから、「ブジャデ」は、「何回も経験したり見たりしているのに、初めてのことのように新鮮に感じること」を指す。

本書は「ブジャデ」の具体的な例として、ビタミンCの分離に成功した科学者アルバート・ジョルジュの言葉を引用する。「発見とは、他の皆と同じものを見ながら、違うことを考えることだ」 つまり、イノベーションにはこのような「ブジャデ」の発想が重要だと。

2)「単純接触効果」(p33)
これは、「人間は接する機会が多いものに対しより肯定的になり、接触する機会が少ないものにより否定的になる」という仮説。対象として、図形、数字、文字、音、飲食物、におい、色、人物など幅広く当てはまるという。そして、この効果は、あらゆる文化のあらゆる人に見られるという。
もっとも、本書ではこの「単純接触効果」はイノベーションを阻害する要因の1つとして紹介している。

3)AES社の事例 (p188)
米国AES社といえば、いまや発展途上国等での海外電力事業(IPP事業)の老舗である。同社は資金調達手段として、プロジェクトファイナンスをよく利用することでも有名で、同社ファイナンス部門の者は海外プロジェクトファイナンスの知識・経験が豊かである。

この会社の事例が本書に紹介されていたのは、同社が大幅な権限委譲を行っているという文脈の中である。本書には、チリでの10億ドルの発電所買収案件の件を南米責任者に一切任せ、外部で報道されるまで同社のCEOが知らなかったというエピソードが出てくる。

当社が社内で大胆に権限委譲を行っているという話は、実は筆者も関係者から聞いたことがあり、本書でその事実を改め確認したことになる。

さて最後に、本書の翻訳者米倉誠一郎氏のあとがきに触れたい。あとがきの最後を次のように締めくくっている。学者らしくなくていい。
「つまらない常識やルールなどぶっとばす。やりたいことは今日やる。人と違うことを喜ぶ。(中略)もっとエキサイティングに生きようではないか。」





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