グローバル・ファンド・アップデート第4号2013年01月02日
<グローバル・ファンド・アップデート第4号 掲載記事>

第28回理事会報告記事
第28回理事会、世界基金の新規資金拠出モデルのデザインを決定
=新体制の下で2013年の第3次増資期間に一歩=



2012年の11月14-15日にスイスのジュネーブで開催された世界基金の第28回理事会から、もう1ヶ月半が経ってしまいました。「グローバル・ファンド・アップデート」では、この理事会でなされた二つの重要な決定のうち、事務局長の選出について「第28回理事会特別号」で扱い、もう一つの「新規資金拠出モデル」については第4号で扱うとしていました。このうち、第4号の発行が「ほぼ月刊」のペースを破って遅れてしまい、どうもすみませんでした。「新規資金拠出モデル」についての詳細です。



(1)第28回理事会:主要課題の克服が絶対命題

まず最初に、ごく簡単におさらいをしましょう。「新規資金拠出モデル」とは、世界基金が各国の三大感染症対策にお金を出す「仕組み」の話です。これまでは、各国が設置した「国別調整メカニズム」(CCM)が案件提案書(プロポーザル)を出し、このプロポーザルの良し悪しを独立した「技術審査パネル」が審査して資金拠出の妥当性を判断し、これを理事会が承認するという「ラウンド制」がとられていました。しかし、この制度はどうしてもプロポーザル作成能力を偏重する形となり、様々な歪みが出てきます。そこで、世界基金設立10年を機に制定された「新戦略」で、これを二段階・対話重視の方式による「新規資金拠出モデル」に抜本的に改革することが提唱されたわけです。

この「新規資金拠出モデル」について、9月に行われた27回理事会では、大きな対立がありました。これは、簡潔に言って、「予測可能性」と「需要主導」のどちらを重視するかということです。この理事会では、「予測可能性」に基づくモデル案と「需要主導」に基づくモデル案およびその折衷案が提示され、結果として、「予測可能性」に基づく資金枠に比重を置きつつ「需要主導」についても資金枠を設ける並立案が採択されました。第28回理事会では、これに基づき、残された具体的な課題について決定していくことが課題となりました。

(第27回理事会の討議についての詳細はこちら)>>>

今回の理事会は、2011年11月の第25回理事会に始まる世界基金の抜本的改革の仕上げとして、新事務局長の選出が行われ、また、来年の増資プロセスに向けた最後の理事会ということで、この「新規資金拠出モデル」に決着が着かないと、「改革後」の世界基金の浮沈に大きな負のインパクトが生じうるということで、「新規資金拠出モデル」の決定について、勝負がかかっていたといえるでしょう。

(2)「新規資金モデル」:決定されたデザインの詳細

結果としては、今回の理事会で、新規資金拠出モデルのうち大きな課題となっていた所については、ほぼ決着を見ることが出来ました。もしくは、潜在的に大きな課題が残っていたとしても、それをより建設的・技術的に解決できる道筋がついたということができます。具体的な決定事項はおおよそ以下の様な形です。

a) 資金配分期間(Allocation period):
資金配分期間は増資期間と同じ3年間とする(つまり、次期資金配分期間は第3次増資期間と同じ2014-16年)。各国は自国の予算スケジュールなどにあわせて資金を申請できる。一案件の期間は3年間を標準とする。

b) 対象国群の設定(Country Band):
「疾病負荷が重く、支払い能力の低い国への重点的配分」など資金の戦略的投資が出来るように、支援対象国を「疾病負荷」(Disease Burden)と「支払い能力」(ability to pay)という二つの基準に従って、4つの「対象国群」(Country Band)に分ける。以下の「対象国群」が出来る。
・「支払い能力が低く、疾病負荷が重い国」(第1国群 Country Band 1)
・「支払い能力が低く、疾病負荷が軽い国」(第2国群 Country Band 2)
・「支払い能力が高く、疾病負荷が重い国」(第3国群 Country Band 3)
・「支払い能力が高く、疾病負荷が軽い国」(第4国群 Country Band 4)
支払い能力については、「一人あたり国民所得」(GNI Per Capita)を使用。一方、疾病負荷については、「資源配分」のための分類であるため、患者・感染者の絶対数を重視する。なお、複数国にまたがる案件、小島嶼国の案件、国別調整メカニズム(CCM)によらない案件、特に感染の可能性にさらされている人口集団(MARPs: Most at risk population)の案件などについては、「支払い能力が高く、疾病負荷が少ない国」(第4国群)に入れる。

c) 資金配分の方法
・疾病別の配分:当該資金配分期間に配分できる資金について、まず、エイズ・結核・マラリアの疾病別に配分する。配分の方法は2013年9月までに検討。
・対象国群別の配分:次に、資金を4つの対象国群に分ける。資金配分の方法は、各国ごとの資金配分に使われる公式で算出した金額の総和をベースに、他ドナーの資金拠出動向などを含めて調整する。
・資金配分期間中に、活用できる新たな資金が出来た場合には、i)対象国群への割り当ての増額、ii)資金がついていない「待機案件」への拠出、iii)特定のテーマに基づく拠出、に活用する。

d) 表示的資金枠と需要誘導的資金枠
・各対象国群に配分された資金を、表示的資金枠(indicative funding)と需要誘導的資金枠(incentive funding)に分ける。表示的資金枠は、公式によって導かれる、予測可能性に基づいた資金枠で、各国で不可欠な対策や優先化された対策に充てる。需要誘導的資金枠は、各国の質の高い資金の総需要を導き出し、そこに充てるもので、国家計画に基づく形で、よりインパクトの高い事業などに活用される。二つの資金枠への配分方法については、まず、各国の優先的な需要を算出し、それを満たす額を表示的資金枠に配分し、追加的な資金を需要誘導的資金枠に配分するのが基本。しかし、配分に必要な指標等については、第29回理事会にて検討・決定する。

e) 各国への資金配分
表示的資金枠の各国への配分は、まず公式(formula)により、その上で、各国への他ドナーの資金拠出、対策に最低限必要な金額、各国の対策予算額、援助吸収能力や過去の資金使用状況、資金監理リスク、等によって補正する。

f) 待機案件への対応
技術審査パネルが資金拠出妥当と判断しながら、資金がないために拠出されていない案件については、「待機案件」(unfunded quality demand)として登録し、追加的資金を優先的に充てることによって実施に移す。

(3)結局、「増資会議でのいくら資金が集まるか」が大事

いわゆる「予測可能性」と「需要主導」の対立については、上記d)で二つの資金枠を設けることになりました。これによって対立は潜在化し、今後の検討の中で建設的・具体的に対処できる形となりましたが、実際には問題はまだ残っています。上記の決定の仕方ですと、実際には、増資会議でそれほど多くの資金が集まらなかった場合、ほとんどの資金は「表示的資金枠」に行き、対策の総需要を反映した、よりインパクトの高い事業などを対象とする「需要誘導的資金枠」には、あまりお金がつかないことになってしまいます。

これについて、実際、理事会では最初の提案が表決にかけられることとなり、先進国NGO代表団など5つの実施国と1つのドナー国の代表団がこの提案に反対の意思表示をしました。サイモン・ブランド理事会議長は、各代表団から示された懸念を踏まえて改善案を示すことを約束、提案は採択されました。実施側ブロックでは、今後、具体的に資金モデルが動き出すにあたって、a) 需要誘導的資金枠にしっかりお金を付ける、b)待機案件にたいして適切なケアを行う、という点についてしっかりと求めて行く事になっています。

「新規資金拠出モデル」については、大筋で決着を見ましたが、結局、すべては「増資期間」=「資金配分期間」にいくらの資金を使えるかにかかっているということです。増資会議で拠出が約束された金額が少なければ、世界基金のモデルは、結局、三大感染症に必要な「最低限の対策」にお金を配分するだけに終わり、感染症の克服に向けた道筋を切り開くことはできなくなってしまいます。制度の細部をどう構築するかというところと、「資金をいかに集めるか」という二つの点に、今後、より強い目配りが必要となります。


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