グローバル・ファンド・アップデート第4号2013年01月02日
<グローバル・ファンド・アップデート第4号 掲載記事>

連載記事
<連載第4回>ポスト「ミレニアム開発目標」時代の国際保健への資金拠出機関を目指して 第4回:改革の「仕上げの始まり」 



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 世界エイズ・結核・マラリア対策基金で2011年末から進行している「大改革」。前回は、一年間の改革でいったい何が起こったのかを見つめました。今回は、この改革が世界基金に何をもたらしたのか、また、この改革の真価はどのように問われるのかについて見ていきたいと思います。



1.第28回理事会で改革は終幕?

=2012年11月の第28回理事会で、新規資金拠出モデルの枠組みがほぼ固まり、新しい事務局長も選出されましたね。これで改革は完成といえるのでしょうか。

稲場:第28回理事会が世界基金の一連の改革の「総仕上げ」、より正確に言えば「総仕上げの始まり」を刻印するものであったことは確かです。この1年、世界基金は、事務局長ではなく「事務局総括代表」(General Manager)をトップとする変則的な体制の下で改革に打ち込んできたわけですが、晴れてマーク・ダイブル氏という、国際保健に大きな、なおかつ独自のビジョンを描く能力のある人物を頂くことになりました。

また、「予測可能性」か「需要主導」かという、「新規資金拠出モデル」をめぐる激しい対立についても、一応、「足してニで割る」案に近い形でなんとか収まりを付け、来年の「増資会議」に向けて、改革を成功裏に終えた新生世界基金の雄姿をドナーの前に登場させることが出来るようになったわけです。今回の理事会は、そういう意味では「成功」と言えるでしょう。

しかし、実際に「総仕上げ」が出来、世界基金が真に三大感染症を克服するための資金メカニズムとして再生できるかどうかは、結局、「増資会議」で資金がいくら集まるかにかかっています。ボールはドナー側に投げ返されたわけです。

=「新規資金拠出モデル」については、予想外に議論がスムーズに進んだという感想があります。

稲場:そうですね。私は今回の理事会については、ちょうど西アフリカのブルキナ・ファソで開かれていたTICAD(アフリカ開発会議)の高級実務者会合と日程が重なっていたので、TICADの方を優先したのですが、この課題について、初日であらかた決まったという話を聞いて、少し拍子抜けしたことを思い出します。

これについては、前回(9月)の理事会で、計算式を用いて各国に割り当てる資金枠(表示的資金枠:indicative funding)と、各国が自らの需要に基づいて積極的に対策を打つことに割り当てる資金枠(需要誘導的資金枠:incentive funding)を両立させるという「統合案」が出て、ではその上でどちらにどの程度のお金をつけるのかという議論が白熱するものと思われました。しかし、結果として出てきたのは、この点については、実際に増資会議などを経て資金配分をする段階で決める、という、いわば「先送り」の結論でした。さらに、文書を見ると、結局、コアなおカネは「表示的資金枠」の方で、需要誘導的資金枠の方はあくまで追加的なものという位置づけになっています。私としては、これでよく決まったものだという感じがします。

もちろん、市民社会は、世界基金はあくまで「需要主導」(demand driven)であるべきだ、という原則を崩していません。これは当然のことです。実際、もし、世界基金が世界の感染症対策に関して、治療と予防、マラリアに関してはベクター・コントロールといった多様なニーズの総量をしっかりと拾い、そこにお金をあてがう「需要主導」の原則を崩してしまったら、結局、ドナーに「出せる金を出してもらい、その範囲でやっていけば良い」という話に収斂してしまいます。その行き着くところは、「とにかく最低限、今治療につながっている人を治療しておけばよい」というところになってしまい、三大感染症の克服、ミレニアム開発目標の達成どころか、後ろ向きな話になりかねません。市民社会が「需要主導」原則にこだわるのは、こうした後退の道を今の段階で塞いでおかなければならないからです。

2.世界は、改革を終え新生する世界基金のニーズに応える必要がある

=実際、今回の改革は、大きな犠牲を払って行われたわけですからね。

稲場:そうです。今回の改革の出発点は、「ラウンド11」の中止という衝撃的な決定です。これは、関係者に、「不退転の決意で改革する」という覚悟を作る上では意味がありましたが、現場では大きなマイナスを生みました。「国境なき医師団」や結核の「アクション・プロジェクト」など、多くのNGOが、この「ラウンド11」の負のインパクトについて報告書を出しています。「国境なき師団」は、ラウンド11が中止になったせいで、コンゴ民主共和国では、本来治療アクセスが可能になるはずだった58000人の人々がアクセスの機会を失った、と述べています。他のいくつかの国でも類似の事態が生じています。また、WHOが推奨している新たな治療薬の組み合わせや、早期の治療開始といったことについても、ラウンド11の中止は大きな負のインパクトを残しています。ことは人の命にかかわることで、極めて大きな犠牲を払ったことになります。

また、今回の改革は、世界基金の創設時のコンセプトのうち幾つかの重要なものについて手を付ける形で進行しました。具体的には、先程も言った「需要主導」原則と、「全員参加型」の原則です。また、「新規資金拠出モデル」において、途上国のうち幾つかのブロック、特に下層・上層の中所得国(middle income countries)が「表示的資金枠」重視に舵を切ったのは、「もしお金が来なくなったらどうするか」という恐怖感からでした。こうしたあり方が果たして適切か、疑問が残ります。いずれにせよ、これだけの犠牲を払った改革なのですから、これを経て新生を迎えた世界基金に対して、世界はそれ相応の適切な処遇をする必要があります。つまり、「三大感染症の克服」という世界基金のアジェンダを果たさせるべく、需要にあっただけの資金をしっかりと供給する必要があるということです。

<次号は本連載の最後ということで、改革を終える世界基金の今後の見通しと、この改革が何故「ポストMDGs時代の国際機関のあり方を先取りした」改革だといえるのかについて触れていきたいと思います。>


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