世界エイズ・結核・マラリア対策基金第 3次増資期間会議で総額118億米ドルの財源を確保

=MDGs・普遍的アクセス達成に向けた必要資金額200億ドルには程遠く=

10月4日・5日にニューヨークで世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)第3次増資期間会議が開かれ、日本の菅直人総理がMDGs国連首脳会合での演説で表明した「菅コミットメント」で日本が誓約した8億ドルの拠出を含む総額118億ドル(2011年~2013年の3年間)の拠出がドナー国によって誓約されました。

各国ドナーの財政貢献は、市民社会が要求していた金額を下回るものです。実際、世界基金がミレニアム開発目標の達成やHIV予防・治療・ケアへの普遍的アクセスといった国際目標を達成するうえで有効な役割をはたすために必要な金額は、2011-13年で200億ドルと推計されていました。米国の40億米ドル(注1)、フランスの14.8億米ドル(米国、フランスともに2011年から2013年)は評価できるものの、総額118億ドルの財源では、エイズ・結核・マラリアの影響を受ける、また治療を受けている人々への治療、ケア、サポートを履行するために実施されている現行のプログラムを継続できる程度であり、新規の案件承認は難しい状況です。スウェーデン(注2) 、イタリア(注3) 、スペインといった、世界基金の旧来の援助国の一部は、今回の増資会議では具体的な拠出額の誓約は行ないませんでした。南アフリカ共和国のNGO、治療行動キャンペーンTreatment Action Campaign(TAC) (注4)は、南アフリカのような世界基金の受益国が、220万米ドルの拠出を表明したことは、HIV、結核の罹患率の高さや人口を考慮すると評価できる 、としています。

118億米ドルという拠出額は12月に行われる予定の世界基金理事会で資金の配分、案件提出の条件に関する議論にも影響すると考えられます。ドナー国の拠出誓約額が、世界基金事務局が提示したどのシナリオ(注5)をも下回ったのを受けて、世界基金理事会の「三大感染症の当事者コミュニティ」代表団(注6)は声明を発表し、は新興国やG20の国々が受益国としてだけでなく、財源確保に向けた取り組みを実施するといった積極的な役割を果たすように、新たな方法を模索する時期である 、と旧来の援助国(先進国、高所得国)だけでなく中所得国にも拠出を求めるよう提案しています。

世界基金の財源不足を背景に、旧来の援助国からは、自国の財源で三大感染症対策、特にエイズ対策をすべきという声が大きくなっています。一方、ブラジル、インド、中国などG20の国々の多くや、東欧・中南米の中所得国では、HIV感染に特に直面しているのは薬物使用者、男性とセックスをする男性(MSM)、セックスワーカー、移住労働者・移民・少数民族といった、社会的な迫害や差別を受け、政府からも差別的取り扱いや人権侵害を受け続けてきた人々です。その結果、これらの政府の多くは、こうしたHIV感染に最も直面している人口層のHIV予防・治療に向けて、自国の予算を配分して積極的な対策を取りたがらない傾向があり、旧来、中所得国の多くでは、こうした人々へのHIV/AIDS対策は、世界基金の資金に依存していました。また、世界基金が、HIV感染に最も直面している人々の予防・治療対策に資金を拠出することは、こうした人々の存在を無視してはならないという国際社会のメッセージとなり、これら当事国政府も、世界基金の資金があることによって、これらの人々へのHIV対策に重い腰を上げてきたという経過もあります。こうしたことから考えれば、世界基金は、中所得国における、HIV感染に最も直面している人々へのHIV予防・治療などの対策に、今後も資金を拠出していく必要があります。

今回の拠出金額を受けて、多くのNGOが失望感を表明しています。国境なき医療団 Medecins Sans Frontieres は、増資会議の数週間前の9月20-22日にニューヨークで開催された「国連ミレニアム開発目標レビュー・サミット」で国際保健の状況改善への意欲を誓った矢先に、こうした失敗があったことは、世界の指導者たちにとって恥ずべきことである 、と発表しました。また、先述の「治療行動キャンペーン」は、先進国ドナーは金融機関の救済に何千億ドルという巨額の資金を拠出した一方で、3大感染症にさらされている人々への対策に必要な200億ドルのうち、残った80億ドルの拠出もできずにいる、と述べ、各ドナー国に、資金拠出の透明性への疑問を表明しました。

世界基金への拠出は今回の会議で終わったわけではありません。他の国際会議等の機会で、すでに誓約済みのドナー国にはさらなる増額を、まだ誓約していない国々には拠出をするように働きかけていく必要があります。また今まで働きかけをしてこなかった国々、新興国や石油産出国にも積極的に働きかけ、市民社会は世界基金の財源が目標額に達するように各国に協力、努力を求めます。

==============================

(注1)米国はこれまで1年ごとの拠出だったが、今回初めて3年間の拠出を表明
(注2)スウェーデンはこれまで国際目標である「GNIの0.7%」以上の資金をODAとして拠出してきた
(注3)イタリアは2009年、2010年の2年間誓約した財源を拠出しておらず、今回の増資会議には出席しなかった
(注4)HIV 予防、治療へ平等なアクセス提供のための医療制度を整備のために活動する南アフリカ共和国のNGO、治療行動キャンペーン Treatment Action Campaign(TAC) ホームページhttp://www.tac.org.za/community/node/2949
(注5)3通りの資金シナリオ、130億ドル、170億ドル、200億ドルが想定されていた。詳しくはhttp://www.ajf.gr.jp/lang_ja/activities/gf20100422.htmlを参照
(注6)三大感染症の当事者コミュニティ」代表団National AIDS Committee Jamaica ホームページhttp://www.nacjamaica.org/content/global-fund-replenishment-press-statement


projectring at 11:00│

Copyright© Japan AIDS & Society Association. All Rights Reserved.