=世界エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出見送りの再考を求めます=

2011年度第1次補正予算に関する(特活)アフリカ日本協議会の声明

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<要旨>

政府は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)への当初予算拠出分159億円を100%カットし、これを震災復興のための補正予算に当てることを決定しました。私たちは政府がこの措置を撤回することを求めます。

1. 震災復興への補正予算には最大限の資金を充てるべきです。しかし、世界基金への拠出は、世界の人々の命を感染症から守るための資金です。これをカットして補正予算に当てることは、「命を守るため」の予算を天秤にかけることを意味します。

2. 東日本大震災の教訓とは、人間のいのちのかけがえのなさであり、巨大な破壊に立ち向かう人間の崇高さです。今回の措置は、人間のいのちを守るという崇高な行為に二者択一を持ち込むことに他なりません。政府はこの「最悪の選択」を回避し、正義に基づいた、より公平な予算策定を行うべきです。

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4月25日は世界マラリアデーです。世界で年間100万人以上の命を奪うマラリアとの闘いの決意を誓う日であるはずの、世界マラリアデーを3日後に控えた4月22日、日本政府は驚くべき決定を行いました。世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)への本年度当初予算からの拠出金159億円を100%カットし、東日本大震災の復興のための第1次補正予算の財源の一部にすることを決定したのです。私たちは、政府が世界基金への拠出見送りを再考し、当初予算どおりの資金を世界基金に拠出することを求めます。

私たちは、補正予算に反対しているわけではありません。私たちは、震災復興のための補正予算に、できるだけ多くの資金を充てるべきだと考えています。それは、震災で傷ついた人々の命を守り、生活を支え、一日も早い復興を成し遂げるために必要だからです。実際、多くのNGOが、そのために最大限の協力を行っています。私たちが反対しているのは、世界で感染症に苦しむ幾多の人々の命を救うための予算である世界基金への拠出金を丸々削減し、それを補正予算に転用するという政府のやり方、人の命を天秤にかけるという政府の予算作りの思想のあり方についてです。

エイズ・結核・マラリアの三大感染症は、世界で年間500万人以上の命を奪っています。2000年以降、世界は三大感染症への取り組みを加速しました。世界基金は、人類の三大感染症との闘いにおいて最も有効に機能している機関の一つです。世界基金は2002年に設立されてからこれまで、650万人におよぶ人々の命を、エイズ・結核・マラリアの三大感染症の脅威から救ってきました。2011年に英国が行った「多国間援助レビュー」において、世界基金はその効率性と有効性により、国際機関の中でも最も高く評価されました。米国も4月18日、世界基金に本年度10億ドル以上を拠出することを決定しています。

我が国は、世界基金の「生みの親」といわれています。それは、世界基金の創設が、2000年の沖縄サミットで決定されたからです。近年、我が国は、世界基金への拠出を加速してきました。実際、菅総理は昨年の9月MDGs国連首脳会合で、世界基金に当面(2013年までが目安)8億ドルを拠出することを約束しました。2011年、我が国は本来、約2.8億ドルの資金を世界基金に拠出し、米国、フランスに次ぐ第三位の拠出国になる予定でした。今回の減額措置が実行に移されれば、我が国の世界基金への本年度の拠出は2010年度補正予算による1.1億ドルにとどまります。2008年の福田康夫元総理による「当面(2011年を目安)5.6億ドルを拠出」という誓約も果たせないことになります。

翻って、東日本大震災で、私たちが学んだことは何でしょうか。この震災は、私たちにあまりにも大きな打撃を与え、それは未だに癒えていません。この震災から私たちが汲み取るべきは、喪われたいのちのかけがえのなさ、破壊に直面した人間の魂の痛みの深さ、巨大な喪失に立ち向かい復興を目指す人間の崇高さではなかったでしょうか。その崇高さは、例えばアフリカの地で、エイズ、結核、マラリアによる巨大な喪失に立ち向かっている人間の崇高さと共鳴するものです。私たちは気づかざるを得ません。今回の我が国政府の措置、すなわち、世界基金への拠出を100%減額し、これを震災復興に転用するという措置が、すなわち、喪われるいのちのかけがえのなさ、巨大な破壊に立ち向かう人間の崇高さを天秤にかけ、一方を選び、一方を捨てることを意味するのだということを。私たちは、このような二者択一を強制し、人間のいのちの軽重を天秤にかける今回の政府の措置を認めることは出来ません。

私たちは政府・民主党に対して、今回の閣議決定の再考を求めます。世界基金は、最も効率よく人々の命を救っているとして世界的に評価されています。他の、より非効率、もしくは不要不急の予算項目を洗い出し、それらを減額して補正予算にあてること、もしくは、全ての予算項目を一定割合で一律に減額し、そこから補正予算を捻出することは可能なはずです。「命を救う」ための予算は減らさない。私たちは、このことを東日本大震災からの最大の学びとしなければならないと考えます。(以上)


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