<グローバル・ファンド・アップデート第1号 掲載記事>

「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」とは?そして私たち
=グローバル・ファンド・アップデート創刊にあたって=

(特活)アフリカ日本協議会 
代表理事 林 達雄

私たち(特活)アフリカ日本協議会は、2002年の「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)発足時から、世界基金の活動へのサポートを行ってきました。世界基金は現在、大きな改革の途上にあります。私たちは、メールマガジン「グローバル・ファンド・アップデート」を創刊し、世界基金に関する最新情報を、日本で世界基金に関心をお持ちの皆さまに提供することで、私たちの世界基金への支援の新たなステップとしたいと考えています。

なぜ「世界基金」ができたのか



世界基金の現状と課題を考えるにあたり、まず設立の経緯を振り返ってみましょう。世界基金のアイデアは、2000年のG8沖縄サミットの際の日本の提案から生まれました。翌2001年のジェノバG8サミットを契機に、三大感染症に資金を出す大型国際基金として設立準備が進められ、2002年1月1日をもって発足しました。異例とも言うべきスピードで世界基金が設立されたのはなぜでしょうか。それは、グローバル化ともに人の移動が活発になり、病気もまた国境を超えて広がる中、ことに多くの人の命を奪う病気であるエイズ、結核、マラリアに関しては巨額な対策費を必要とし、そのニーズに応えるために世界基金という新しい形の機関が必要とされたからです。

20世紀は数々の感染症を克服した世紀と言われています。しかし、1980年代から急激に感染が拡大したエイズに関しては、1996年に有効な治療法として三剤併用療法が確立したものの、治療薬の値段が高価なため貧しい国々のHIV陽性者のもとには治療が届きませんでした。南部アフリカでは、成人の5人に1人がHIVに感染している国も現れました。21世紀に入っても、母子感染で生まれてきた子供たちが、必要な薬を得ることが出来ず、ホスピスで座して死を待つような状況が続いていたのです。こうした状況を変えたのは、勇気ある陽性者自身が先頭に立って取り組んだ「世界の誰もが治療薬にアクセスできる」ための運動の力です。その結果、世界のルールも変わり、薬の値段は格段に安くなりました。

しかし、それだけでは、年間平均所得が500ドルに満たない最も貧しい国々のHIV陽性者のもとに薬は届きません。HIV/エイズに関する情報を、医療を、ケア・サポートを、それらを必要とするHIV陽性者やHIVの影響を受けた人々、結核やマラリアの影響を受けた人々に届けるために国際的な資金を動かす機関として世界基金が発足したのです。

2世界基金の仕組み



こうした設立の理念・経緯から、世界基金は当事者であるHIV陽性者や三大感染症の影響を受けた人々、また、先進国と途上国の三大感染症に取り組むNGOなどを、各国政府や民間セクターと同様の決定権のある理事に加えた、「全員参加型」のユニークな組織となっています。また、感染症対策の実施においては、政府や国際機関だけでなく、NGOや民間企業も、主要資金受託団体(Principal Recipient)となって国レベルの感染症対策のリーダーシップをとることができるような仕組みになっています。感染症対策の現場では、このような形で拠出された世界基金の資金が、HIV陽性者自身が行う相互扶助や、エイズ遺児に対する活動のような小規模なプロジェクトにも活用されてきました。エイズに関わる市民運動は、「世界基金に資金を」を合言葉に、世界基金が必要な資金を確保できるように、また、それによって、感染症対策をきちんとした計画に基づいて行おうとする国々や、現場で取り組む団体が、十分な資金を得て活動できるように様々な努力を重ねてきました。世界基金設立を契機とする国際的なエイズ対策の転換により、貧しい国々の人々にとって、死を待つしかなかったエイズという病気は、生き延びることのできる病気へと変わってきました。

現在、世界基金は途上国のエイズ対策のための国際資金の21%、結核・マラリアについてはそれぞれ82%、50%を拠出し、これまでに、以下のような成果を上げています。(発足以来2012年6月までの実績)

 ◎ 151ヶ国、1000のプログラムに合計229億ドルの資金を拠出承認済み
 ◎ HIV陽性者360万人に抗HIV治療を提供
 ◎ 結核患者930万人を新規に発見し治療
 ◎ 2億6000万人にマラリア治療を提供

※世界基金の仕組みについては、以下のウェブサイトが役に立ちます。
・世界基金支援日本委員会 >こちら 
・外務省 世界基金ページ >こちら 
・エイズ&ソサエティ研究会議 プロジェクトRING >こちら 

3世界基金の危機と「グローバル・ファンド・アップデート」発行



このように国際的な感染症対策に大きく寄与している世界基金が、2011年、財政的な危機に直面しました。また、設立10年を経て、組織のあり方を大々的に見直す改革に着手しています。その理由や、どのような改革を行っているかについて、市民社会の立場から伝えるため、私たちはメールマガジンおよびウェブサイト「グローバル・ファンド・アップデート」を創刊しました。

世界基金を再び強化し、HIV陽性者はじめとする影響を受けるコミュニティの支援につながる資金拠出を求めることは、私たちが世界の貧しい人々とともに生きることを意味しています。このメールマガジンを通して一人でも多くの皆さんが世界の感染症に関わる取り組みの現状と世界基金の果たしてきた役割を知り、その抱える課題について共に考えていくことを希望します。


projectring at 23:00│ グローバル・ファンド・アップデート第1号 

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