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2006年03月25日

運命じゃない人 〜 複数のストーリーが同時展開する 〜

運命じゃない人〜 複数のストーリーが同時展開する 〜

監督は今作で長編デビューを果たした内田けんじ。一般公募作品のコンペティションが中心の映画製作者たちの“登竜門”的映画祭「ぴあフィルムフェスティバル」で入賞を果たし、さらにはカンヌ国際映画祭・批評家週間に正式正体されたという折り紙つきの監督です。

ではこのキャスト、スタッフともにほぼ無名に近いこの作品がなぜそれ程評価されたのか。それは練りこまれた脚本にあります。

主人公はいわゆる”いいひと”。別れた恋人のために無理して買った高級マンションのローンを払い、合コンでも女性から電話番号すら聞くことができない30男である。冒頭は一見、彼のほのかな恋の話のように見える。しかし、実はこれはそんな単純な話ではありません。

主人公のほのぼのした恋のエピソードとほぼ同時刻、同じ場所で、彼の知らない全く別の話が展開されているという、セカンドストーリーがあるのです。

主人公に女性と知り合うきっかけを与えた探偵でもある親友の神田。
神田は主人公を捨てて出て行った元カノが実は詐欺師で、今はヤクザの女であることを突き止めていたが、何も知らずに彼女を心配する主人公にはそのことを知られまいとしている。そして、その神田のところにヤクザから金を持ち出してきた詐欺師の女が転がり込んできて、神田までもがヤクザに追われるハメとなるのである。

主人公の恋のエピソードと同時進行で展開される神田と詐欺師女とヤクザのやりとりが、後から「ああ、あれはここに関連する布石だったのか」という意外な発見があって、とても気持ちがいい。手法的には映画「パルプフィクション」に近いでしょうか。微妙にシュールな笑いのセンスと絶妙な脚本は「THE 有頂天ホテル」でウハウハの三谷幸喜氏の脚本を彷彿させます。

最初、知り合った女性に対して勇気を出して電話番号を聞く主人公にエールを贈りたくなるファーストストーリー。そして同じ場面でも、視点が全く切り替わって、ヤクザに追われる神田、詐欺師女、そして面子を気にするヤクザの攻防戦の間に、何も知らない主人公が絡んでくるというセカンドストーリーの2本が同時に走っています。

この視点の転換というのは、普段の生活でも見る視点によって全く違った印象になるという良い例かもしれません。自分視点だけでは最悪な展開でも他者視点に置き換えたとき、実は大爆笑できる笑い話になったりするものです。

いろんな視点をもって普段から生活できれば、もっといろんな事に様々な感受性をもって人生楽しめるんじゃないか」と思える作品でした。作品こそそれほど大きくありませんが、将来が楽しみな作品です。ぜひ観てみてくださいね。




Story
2005年カンヌ国際映画祭批評家週間で4賞を受賞し話題を集めた、新鋭・内田けんじ監督による異色コメディ。どこにでもいる平凡なサラリーマンが体験する一夜の物語が、彼を取り巻く複数の人物の視点からパラレルに描(詳細こちら


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評価:85点{/fuki_love/} 運命じゃない人 いいです、この映画。 観にいった映画館・ユーロスペースのトイレはちょっと臭いし、スクリーンは小さいしで、どうなることかと思いましたが、予想をいい意味で裏切る出来でした。 私が、今年観た邦画の中では一番、全体の中で...
2. 『運命じゃない人』  [ アンディの日記 ]   2006年03月25日 12:00
『運命じゃない人』 ★★★★ 【監督】内田けんじ 【出演】中村靖
3. 運命じゃない人  [ ネタバレ映画館 ]   2006年03月25日 14:16
 宮田・・・高価なマンション買ったんだから、防犯にも気をつかえよ。
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映画館にて「運命じゃない人」 ★★★★☆ ストーリー:素朴なサラリーマン宮田(中村靖日)、私立探偵をしている友人・神田(山中聡)、婚約破棄で傷心の真紀(霧島れいか)、宮田の元カノ・あゆみ(板谷由夏)、ヤクザの組長(山下規介)がそれぞれの思惑と事情で過ごす...
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映画[ 運命じゃない人 ]@渋谷で鑑賞。 日本では珍しいスタイルの映画。でかつ面白い。 時間の交差と、人の交差。[ パルプフィクション ]に展開は似ている。あの映画の場合は、メインの主人公の設定はされておらず、次々に人物が登場し、それぞれが何かしら関連し...
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運命じゃない人 (2004/日) A Stranger of Mine ほんとになにげなく、予備知識もなく、かけて見たらば。 面白いっ!!こんな内容スタイルの映画だとは全然知らなかった・・・。 探偵の友達が、真面目なサラリーマンの友??
7. 運命じゃない人  [ Addicted to the Movie and Reading! ]   2006年10月22日 14:14
■ WOWOWにて鑑賞 運命じゃない人 監督: 内田けんじ 出演: 中村靖日/霧島れいか/山中聡/山下規介/板谷由夏 公式サイト DVD情報はコチラ 奥手で優柔不断なサラリーマン宮田武は、半年前に、恋人倉田あゆみが突然同棲していたマンションを出ていってしまって....
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 2004年/日本  監督/内田けんじ  出演/中村靖日      霧島れいか      板谷由夏  ぴあフィルムフェスティバルコンペ部門”PFFアワード2002”で企画賞、ブリリアント賞を受賞した内田けんじが監督・脚本をつとめた作品。2005年カンヌ映画祭で4賞受賞...
9. 運命じゃない人:フフフと笑えて心が暖かくなる ユーロスペース  [ 気ままに映画日記☆ ]   2006年10月23日 00:01
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12. 「運命じゃない人」  [ こだわりの館blog版 ]   2006年10月25日 14:25
8/7 ユーロスペース にて これはおもしろい! 良く練られた脚本に、小気味よいテンポの演出。 ちょっと自主製作映画っぽい雰囲気もありますが、存分に楽しめます。 監督・脚本:内田けんじ 出演:中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏、他 気弱
13. 映画「運命じゃない人」観ました。  [ ふるふる好楽 ]   2006年10月27日 00:34
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14. 『運命じゃない人』  [ めでぃあみっくす ]   2009年05月10日 17:40
何の情報もなしにこんな面白い映画を見せられたら、そりゃカンヌで4冠を受賞するのも納得。小さな違和感をネタふりとして3話構成で見せておきながら、全くややこしくならない脚本は本当にお見事。さらによく考えてみたら誰も大きな得はしてないけど損もしていない展開も本....

この記事へのコメント

1. Posted by こーいち   2006年03月25日 11:59
こんにちは!TBありがとうございます。
僕もこの映画の脚本にやられました。
最初は主人公の恋物語を見せられ「いいやつだよなぁ」
なんて微笑ましく見ていたら、実はその裏ですごいことになってて。
とても楽しめた作品でした♪
他の記事にもTBさせてもらいますね!
2. Posted by ミチ   2006年03月25日 14:23
こんにちは♪
TBありがとうございました。
何の宣伝もされていなかったのですが、面白そうな「匂い」を感じたので観に行ったら、「当たり!」でした。
視点の転換というのは面白いドラマを作り出しますね〜。
当のご本人がまったく気がついていないところがイイです。
3. Posted by GAKU   2006年03月26日 09:21
> こーいちさん
こちらこそコメントありがとうございます。
有名俳優が出ていなくても良い映画ができるという
見本のような作品だったと思います。
内田監督のこれからに期待!


> ミチさん
確かに宣伝なかったですね。
私もほかの人のブログ記事で知りましたし。。。

視点転換の脚本もさることながら
主人公が電話番号をもらって小躍りしている横を
やくざの車が走っていくシーンなど、笑いのシュールさも
作品の魅力のひとつですね。
4. Posted by latifa   2006年08月29日 16:49
こんにちは!前回、及川リン・ゲド戦記で、お話させて頂いた者です^^
私もこの映画、とても面白く見ました!
こんな風に誰も死んだりしないで、ほのぼのと??して、でも面白い映画って、なかなか無いですよね〜
TB貼ったのですが、表示されないみたいかな・・・
5. Posted by GAKU   2006年08月30日 05:58
> latifaさん
コメントありがとうございます。
あまり有名な俳優が出ていないだけに、脚本が光った作品でしたね。
イメージは、日本版「ロックストック&ツースモーキングバレルズ」
といったところでしょうか。
主人公の何も気づいていない天然具合が、何だか物語全体のほのぼの感
を作っていて良かったと思います。

TBはなぜか貼れていないようですね。ライブドアの不具合でしょうか。
お手数ですが、再度貼っていただけると助かります。
よろしくお願いしますm(__)m
6. Posted by やまさん   2006年10月23日 23:35
5 TB有難うございます。

劇場では10日間ほどの上映でしたが、見に行ってほんとに
良かったでした。
話がよく出来ているので、感心しましたし、小粒ながら輝きがある
映画ですね。
次回作が楽しみな監督です。

また、宜しくお願いします。
7. Posted by GAKU   2006年10月24日 00:47
> やまさん
コメントありがとうございます。
私もDVDになってから知ったのですが、
時間軸の使い方など意外な切り口と、主人公のバカ正直加減に
「くすっ」と笑えるノリなどが楽しい作品でした。
ほんとに次回作が楽しみですね。
8. Posted by にゃむばなな   2009年05月10日 17:36
お人好しの宮田が最後まで自分が損をしていると思っていないところがいいですよね。
これだけ彼の周りであれこれやっていて、何人もの人間が彼の部屋に上がりこんでいるのに、あの笑顔。

でもこれも宮田を演じた中村靖日さんの魅力なんでしょう。
脚本だけでなく、キャスティングもお見事でしたね。
9. Posted by GAKU   2009年05月11日 07:01
>にゃむばななさん、こんばんは。
宮田のキャラクターは天然でとても良かったですね。
あのバカ真面目な感じが物語の見面性をより強調して
エッジをきかせていたのだと思います。

このときは中村さんもそれほど有名でなかったにもかかわらず
キャスティングはお見事でしたね。

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