2008年04月30日

パンズ・ラビリンス ─ そんな残酷な面だけが現実世界ではない ─

パンズ・ラビリンス(Pan's Labyrinth)─ そんな残酷な面だけが現実世界ではない ─

ラビリンスと言えば、以前デヴィッド・ボウイとジェニファー・コネリーが共演していた、ミュージカル風のファンタジー映画を思い出しますが、そのダークサイド版とも言えるこの作品『 パンズ・ラビリンス 』(2006年/メキシコ=スペイン=アメリカ)。

作品紹介などである程度はわかっていましたが、CG処理も含めその映像表現はかなりダークで気持ち悪い。虫などがダメな方や子供と一緒に観る作品としてはあまりお勧めできるとは言い難い。

ただ、ファンタジーでありつつも現実世界の残酷さをあからさまに描き、そこから人間としての在り方を問う見せ方には少なからず考えさせられるものがありました。

簡単にあらすじをご紹介します。
舞台は1944年、内戦終決後のスペイン。父を亡くした少女オフィリアは、仏軍のヒダル大佐と再婚した母とともに大佐のいる駐屯地で暮らし始める。そしてそこでは仏軍が手段を問わないゲリラ殲滅にかかっていた。体調の思わしくない母を労わりながらも冷酷なヒダルに馴染めないオフィリア。彼女の前に虫の姿の妖精が現れ彼女を迷宮へと誘う。そこではパン(牧師)が王女の帰還を待っており、彼女は王女としての3つの試練を与えられる…。

オフィリアの試練1 in パンズ・ラビリンス
オフィリアの試練2 in パンズ・ラビリンス
オフィリア&パン in パンズ・ラビリンス
── 世界観はまるで“本当は怖いグリム童話”
さて、作品中でオフィリアはパンの3つの試練を全うするため、虫だらけの穴ぐらで泥だらけになったり、化け物のいる食堂で鍵を探したりと孤軍奮闘します。その世界観はとてもダークでそれでいてどこか煌びやか。特にあの「キュイキュイ〜」とか「グチョ」という音がダークなテイストを一層際立たせていました。それは「本当は怖いグリム童話」を彷彿させます。子供には見せないほうが良いでしょうね。


── そんな残酷な面だけが現実世界ではない
あと一番注目すべきは、ファンタジーの世界観と現実世界の残酷さをあえて同時進行で描き、ダークなファンタジーの世界でも「こんな世界よりマシ」と思えるくらい、現実の戦争が残酷なものであると我々に印象付けていたこと。今度公開される『ナルニア国物語』でも、第一章では少年達が暮らす世界は戦争の真っ只中。戦争時のファンタジーというのは子供が逃げ込む場所としては打ってつけなのかもしれませんね。

ただ、この作品では現実世界の残酷な面が特に強調されているだけに、逆に「いやいや、そんな残酷な面だけが現実世界じゃないよ」という事をオフィリアに言ってあげたい。そして、これから将来がある子供たちにもそのことをしっかり教えてあげたい、そんなことを考えさせられました。

描写としてはややグロテスクな部分もありつつ、ファンタジーと人間としてのあり方を問うドラマを融合させた深い作品に仕上がった作品。興味がある方はぜひ見てみてください。
 

■YouTube「Pan's Labyrinth trailer」




■YouTube「Labyrinth Movie Trailer」
こちらは本家ラビリンスの予告編。この頃のジェニファー・コネリーのキュートさは
かなりヤバイ。成長してからはなんだかぱっとしませんが。。。
製作:ジョージ・ルーカス、出演:ジェニファー・コネリー、デヴィッド・ボウイ


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この記事へのコメント

1. Posted by たいむ   2008年04月30日 18:59
GAKUさん、こんにちは。
ダークファンタジーは嫌いじゃないのだけど、妖精が蟲ってだめですねぇ。鳥肌たっちゃったし。
それに、なんだか現実逃避が強く感じられたこの作品。
まさしく「いやいや、そんな残酷な面だけが現実世界じゃないよ」ですよね。
2. Posted by ミチ   2008年04月30日 23:00
こんばんは♪
私はこの映画の世界観にかなり魅せられました。
スペイン内戦というあまり知らなかった部分を題材にしているのが好みだったのかもしれません。
最後はいろんな解釈ができて面白いですよね。
私は、できれば彼女は現世で幸せになってもらいたかったな・・・。
3. Posted by non   2008年04月30日 23:07
こんばんは♪ TB、コメントありがとうございました☆

確かに今の子供達にも、現実はそんなに悪い物ではないと教えていきたいですね。
しかしオフェリアにはあまりに過酷な状況だったと思います。
幼くて世間を知らない彼女には、その先に幸せを見出すのもかなり難しかったんじゃないかな。

人間は幼い頃にあまりに辛い体験をすると、その現実から逃げようと無意識に様々な妄想の世界を作ったりします。
それは今の時代の虐げられている子供も同じ。
そして子供達がそうなるのは、全て周りの大人達が悪いのです。
そんな彼らを救うには、大きな愛で包み込み、どんな恐怖も無いのだと安心させてあげるしかないのですね・・・
4. Posted by GAKU   2008年05月01日 00:21
>たいむさん、こんばんは。
ダークファンタジーは私もそんなに嫌いなほうではないんですが、やはり蟲で引いちゃったのは否めません。パンや食堂の目無し男にはそれほど嫌悪感はなく、パンにおいてはあの優しげな口調の裏にある満面の怪しさなどとても好みだったりします(←悪趣味か…)。

しかし、しかしです。やはりダメなのは蟲君。あの冒頭から出てくるバッタも、泥のなかの団子蟲もアウトです。あんな状況でも王国に行きたがったオフィリアは余程あの世界から逃げたかったんでしょうね。オフィリアの心が救われたなら、悲しいけれどあのラストもまた一つの結末なのでしょうか。。。
5. Posted by GAKU   2008年05月01日 00:28
>ミチさん、こんばんは。
世界観は良くできていましたよね。私もあの蟲さえいなければもっと興味深く見れたように思います。個人的にあのパンの怪しさは好みですし。
ただ、オフィリアがあまりに健気すぎて、パンにいいように言いくるめられたり、泥んこになって怒られたりする姿がもう見てらんないと。。。

>できれば彼女は現世で幸せになってもらいたかった
私もホントにそう思います。戦乱中の極端な現実しか目の当たりにしていないからあんなことになってしまったけど、もっと別の生き方、別の人生があったんじゃないか…、そう願わずにはいられません。
6. Posted by GAKU   2008年05月01日 00:40
>nonさん、こんばんは。
そうですね〜。現実世界から妄想やバーチャルの世界へ逃避するのは、何も戦時中に限ったことではなく、現代でも同様にありますもんね。

そういえば岩井俊二監督の『リリィシュシュのすべて』でも、イジメを受けていた主人公がリリィのサイト上だけでは普通に振舞えるといった、現実からネットに逃避して心の安らぎを得る…という内容もありました。それと同様、現実が辛いからネットや妄想に逃げ込むというのは普通にありえることなのかもしれません。ただ、大人・子供に限らず周囲の人間が現実世界もそんな恐い部分だけではないということを伝えていくことが大事なのでしょう。それはそれでなかなか難しいことなのですけど。。。
7. Posted by latifa   2008年05月01日 08:29
GAKUさん、こんにちは!
私もGAKUさんと同じ感想でした・・・
この映画、凄く評判が良くて、5つ☆つけていらっしゃる方も
多かったのですが、私としては、虫が気持ち悪いのと、
あと、なんだかラストにしても、オフィーリアが可哀想過ぎる
というか・・・、映像とかかぶりものとかは、凝っていたし、
怖さとか政治的な部分とファンタジー部分が上手い具合に
ミックスされていて、映画としてはなかなかだったとは
解ってはいるんですけれどもね・・
8. Posted by シャーロット   2008年05月01日 15:49
こんにちはー。

虫とか子供の頃は大好きだったし、平気でどろんこまみれになったりもしていたけど、いつしかそれがダイキライになっていった自分が、なんか今となってはとても寂しい気分になる時もあります;

どうも過酷な現実からの逃避と思われがちな映画ではありますけど、私は彼女は逃げずに良く頑張ったなって思いましたよ。
全く逆な価値観ですが、就学前の子供はもっとファンタジーの世界で楽しむべきだと私は思うのですよ。ファンタジーの世界は生きる知恵がいっぱいありますしね。グリム童話も恐いけど、アンデルセンの世界よりは何故かとっても惹かれたのでした;

9. Posted by GAKU   2008年05月02日 00:39
>latifaさん、こんばんは。
あのラストはせつな過ぎますよね。クリーチャーの造詣はアングラで好きな類だったのですが、オフィリアがあまりに健気すぎてあのラストはちょっとせつな過ぎました。「それがハッピーエンドなの?」なんて自問自答してみたり…。もしかすると、観る者にそんな自問自答をさせること自体がこの映画を撮った本当の理由だったりして。。。
10. Posted by GAKU   2008年05月02日 00:49
>シャーロットさん、こんばんは。
確かに子供にとってのファンジターはある意味、未来への原動力と言えるかもしれませんよね。安易な話で言えば、空を飛ぶことに憧れた少年が飛行機やロケットを作ってしまったり…(by 遠い空の向こうに)なんて話もあって、そんな好奇心やファンタジーのようなありえない空想力が全く新しいことを生み出す力に変わったりすることもあります。

オフィリアの空想も願わくば、厳しい現実を生き抜いていけるだけの自分の力に変えることができたとすれば、もっと違う人生があったのではないか…などと思ってしまうのですが、観る側にそう考えさせるような作り方をしているとも考えられます。うーん、深い。。。

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