『悲夢(ヒム)』ポスター/ オダギリジョー&イ・ナヨン ─ 思わず目を奪われてしまう映画ポスター ─『GOEMON』紀里谷和明監督の最新作、5月公開 ─ ビジュアルアートとしては気になる ─

2009年02月01日

百万円と苦虫女 ─ 人間関係もまんざらでないと思える救い ─

百万円と苦虫女─ 人間関係もまんざらでないと思える救い ─

最近CMなどでもよく目にする蒼井優が主演するこの作品『 百万円と苦虫女 』(2008年/日本)。現代ならではの人間関係の問題を、ドロドロしすぎない程度で、かつブラックユーモアも交えたシニカルな感じに描いているのがとても印象的でした。

”他人と深く関わりたくないから、百万円貯まったら他の土地に引っ越す”という主人公の考え方、そしてその生活スタイルから行き着く葛藤の部分も含めて、かなり考えさせられるものがありました。それは恐らく、”自分が社会とどう関わっていくか…”という誰もが抱える葛藤のような気がします。その意味でかなり深いテーマの作品であり、興味深く観ることができました。

監督は、土屋アンナ演じる花魁をビビッドな色彩で描いた映画『さくらん』で脚本を担当したタナダユキ。出演は蒼井優のほか、森山未來、ピエール瀧、笹野高史、堀部圭亮など。

簡単にあらすじをご紹介します。
短大を卒業後、フリーターをしていた鈴子はバイト仲間からルームシェアを持ちかけられ実家を出ることに。しかし、そのルームシェアが原因で鈴子は刑事事件を起こしてしまう。前科者になった鈴子は近所でも噂になり、家に居づらくなって「百万円貯まったら家を出る」と宣言。やがて、実家を出た鈴子は、まず海の家で働くことになる。しかし、貯金が百万円貯まったらあっさり次の土地へ旅立ち、新しい仕事を探す生活を繰り返すのだった…。


── つい「あるある」と共感してしまう人間関係の問題
百万円と苦虫女 シーン1
百万円と苦虫女 シーン2

さてこの作品、最も印象的だったのは主人公・鈴子がいろんな土地を転々とする中で、最初は上手くいっていても、少し時間が経つと周囲の人との人間関係の間でいろんな面倒や煩わしい問題が発生するというお決まりの展開。

海の家では、かなり本気でナンパしてきた男に誘われたり、次の桃園では村興しのための桃娘として無理やりキャンペーンガールをさせられそうになったり…。そんな彼女に降りかかる人間関係の問題は、「あるある」とつい共感してしまうことばかりでした。

ただ、いろんな人間関係のトラブルで苦笑いをする蒼井優の姿を見ながら、「そりゃ、そんだけ可愛かったらどこでも放っとかんやろっ」とツッコミを入れていたのは私だけではないハズ(苦笑)。芸能人の有名税と同様、ある種の美人税というモノも、世の中には必ず存在するのではないか…などと思ったりもしました(笑)。


── 人間関係も悪いものではないと思わせてくれる救い

百万円と苦虫女 シーン3
百万円と苦虫女 シーン4
そして、この作品に秘められた、”自分が社会とどう関わっていくか…”というテーマについては、作品後半で鈴子自身も向き合わざるをえない状況になります。

それはどんな人でも、どんな場所でも、どんな仕事でも同じ。人は誰かと関わって生きていく限り、人間関係の問題はどうしても付きまとうもの。人に嫌われたくないから、傷つきたくないから、あえて人と深く関わらず孤高の生活を選ぶ。

それはそれでひとつの生き方ですが、本質的な部分で誰もが誰かと関わって生きていくことを望んでいるのではないでしょうか。だからこそ、みんなそんな煩わしい人間関係にも折り合いをつけ、またその状況を乗り越える処世術を身に着けながら、バランスをとって生きているようにも思うのです。

作品のラスト、鈴子は今まで苦手だった人間関係についても少し前向きになって歩き出し、そして彼女を取り巻く社会もそれほど悪いものではないと思わせてくれる”救い”を残して終わります。

どんな救いかは作品を観た人だけのお楽しみとしても、もしかしたら自分も知らないところで、自分のことを思ってくれている人がいるかもしれないなどと、人間関係もまんざらではないんじゃないか…、そんなことを少し期待させてくれる作品でもありました。ぜひ、一度観てみてください。



■Youtube: 百万円と苦虫女 予告



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この記事へのコメント

1. Posted by たいむ   2009年02月01日 20:10
GAKUさん、こんにちは。

>本質的な部分で誰もが誰かと関わって生きていくことを望んでいる
人はひとりでは生きていけない。ってことですね(^^)

良く分からないのは、鈴子がなんであんなになってしまったか。
最初からあんなではなかっただろうになぁーとちょっと思いました。(それとも忘れてるだけかしら?)
それでも、人間には過去も未来もたぶん必要。
そんなことをふと思いました。
2. Posted by GAKU   2009年02月02日 00:02
>たいむさん、こんばんは。
鈴子、たしかに何故ああなっちゃんたんでしょうね。
カフェでバイトしていた時は、バイト仲間とも上手く
やっていたようにも見えたんですけど。。。

「友達いないからケータイ持ってない」とか言ってるし、
元々あまり人付き合いはニガテな上に、前科者事件が
トドメを刺したのかも。

でも、ルームシェアの件にしても、桃娘の件にしても
鈴子はもうちょっとはっきりYes/Noを意思表示すべき
というのはあえて言いたい部分。彼女のハンパな意思が
問題を大きくしている可能性も高く、それは反面教師
として受け止める部分もあったようにも思います(苦笑)
3. Posted by ミチ   2009年02月02日 12:50
GAKUさん、先日はお祝いコメントをありがとうございました。
とっても嬉しかったです♪
これからもよろしくお願いいたします。

かき氷の作り方とか桃のもぎ方とか、そんな些細な事でも褒められた事がなかった鈴子という女の子がちょっと不憫になってしまいました。
人と関係する事は嫌な面も見ちゃいますが、悪い事ばかりではないはず。
いろんな経験をして鈴子がちょっぴり変わったのを見れてホッとしました。
4. Posted by GAKU   2009年02月03日 00:07
>ミチさん、こんばんは。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

鈴子って、ホントにどこにでもいる普通の女の子だと
思うんですよね〜。器用貧乏なところも含めて(苦笑)。
だから鈴子に自分の一部を重ねる人も、結構いるのではないか
と思いました。

私もあそこまで極端ではないですが、ホームセンターの
店長の叱り方や、飲み会のエピソードなどはたしかに
似たような状況があったなぁ、なーんて。
でも、そんな経験を経て鈴子が少しずつ得ているものは
少なからず鈴子の成長に繋がっているようにも思えて、
なんだか勇気付けられました。
5. Posted by latifa   2009年02月05日 16:31
GAKUさん、こんにちは〜!
はははは!GAKUさんのここの部分で爆笑!
>「そりゃ、そんだけ可愛かったらどこでも放っとかんやろっ」とツッコミを入れていたのは私だけではないハズ(苦笑)
 ほんとほんと。私もそれ何度も思いながら見ました。

それと、私も鈴子は、もうちょっと、イエス・ノーをはっきり言った方が良いのにな・・と思いました。桃の宣伝の時も最初に村長とカフェの店長がやって来た時に「無理です、イヤです」ってハッキリ断っておけば・・・と思っちゃったな。

私も人並みに、お母さんもしてバイトも円満にしてなんとか生きていますが、それでも時々、ふらりとどこか誰も知らない場所にたった一人で行ってみたいな〜って思う事がよくありますんで、この映画の設定には少し共感してしまう部分がありましたw
6. Posted by GAKU   2009年02月06日 08:52
>latifaさん、こんにちは。
イエス・ノーをはっきりさせないのは、外国よりも日本人にありがちな特徴ですよね。日本語そのものが、意図を微妙な感じ濁すものが多いためか、はたまた日本の美徳文化か。。。

関西ではビジネス会話の「考えとくわ」はノーのサインなんですが、それもなかなか伝わらないですよね。外国人から見れば「はっきりしろよ」なんでしょうけど、日本的な思いやりも含んでいたりするから面倒くさい(苦笑)

>ふらりとどこか誰も知らない場所に
行きたくなるときはありますね〜。人間関係やしがらみと付き合っていかなければいけないことはわかっていながら、ついそこから開放されたいと思う根源的欲求なのかも。。。誰かと関わりたいという欲求とは相反しますけどね。矛盾だらけ(笑)
7. Posted by メル   2009年02月08日 22:07
TBかけ逃げ状態だったのに(^_^;) コメントまでいただいてどうもありがとうございました♪

人間誰しも、一所にしばらくいれば何かしらの人間関係ができちゃいますよね〜。でも、そこがまた面白かったりもするんですが、苦痛な人には
苦痛だろうし、自分も煩わしいなって思うこともあるし
鈴子の気持ちもわかるなぁ〜って思いました。
が、仰るとおり、彼女くらい可愛かったら、放っておいて
もらいたくても放っておいてもらえませんよね〜^^

それに

>本質的な部分で誰もが誰かと関わって生きていくことを望んでいるのではないでしょうか

というGAKUさんの書いてらっしゃる部分。
すごく納得。
多分みんなそうなんじゃないかって、私も思います。
やっぱりなんだかんだ言っても、人間、完全に一人じゃ生きられないなぁって思いますし。

ラストもなかなか良い感じで終わってて、”こらから”が期待できる
終わり方で、とても好きでした♪
8. Posted by GAKU   2009年02月09日 00:14
>メルさん、こんばんは。
こちらこそ、ありがとうございます。
コメント、とても嬉しいです。

いろんな人間関係から逃げ続ける鈴子の気持ちは
私もよくわかります。あわせるのが正直しんどい時って
ありますもんね。会社とか、飲み会とか。。。

でも特に鈴子のような美人だと、特に周り放っておかないから
逃げ技というか、上手くかわす処世術を身に着けておかないと
生きていくうえでいろいろ大変でしょうね(苦笑)

>”これから”が期待できる終わり方
そうですね〜。
ラストにドーナツをほうばりながら旅立つ鈴子の姿には
なんだか頼もしさすら感じられて、こちらも勇気をもらった
感じがしました。良い作品だったと思います。

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