自分にとって”写真を撮る”ということとは・・・ノンジャンルの音楽祭はまさにカオス! ─ 6/9 SAWAのカム着火祭

2013年06月08日

人も景色も、闇の部分があるからこそ光の部分はより鮮明に ─ 言の葉の庭 ─

新海誠「言の葉の庭」ポスター─ 新海誠監督 『言の葉の庭』 ─

前作『星を追う子ども』が完全にジブリケチャップ味になっちゃったので、そのジブリの呪縛から解き放たれた新海監督の新作『言の葉の庭』は、キービジュアルが公開されてからというもの、とても気になっていたんです。

それが公開されるやTwitterでもかなりの高評価な感想が!
「おおっ!これは新海監督、やってくれた!」と密かに喜びつつ、観に行くタイミングを計ってはいたものの、公開の週末は夜勤。なぜにっ!!楽天スーパーセールのやつめ(ぼそっw) それでも我慢できず夜勤明けの眠い目で代休の日に観に行ってきました。

いやー、良かったです!ホント良い作品が観れました。最初、チケット買ったときに「特別価格1000円、上映時間 1時間」みたいに書いてあって、「2本上映で1時間ってことは、本編も1時間ないの?大丈夫か?」と心配になったんですが、それはまったくの杞憂でした。

短時間ながら心の機微が丁寧に描かれていて、新海監督の得意な手法、主人公の独白による話の展開と美しすぎる新宿御苑の景色に引き込まれる。そして、この何気ない1カットに主人公とヒロイン(?)の想いが投影されている気がして、映画って”長さ=良さ”じゃないんだと改めて考えさせられた。

ラストで二人の心がはじけた瞬間は思わずうるっとなって、そのままエンディングテーマ「Rain」(歌:秦 基博)までうるうるしたまま「うわわ、せっかくのエンディングの景色もあとがきもちゃんと見えんww」となってしまうほど。いやー徹夜明けに良いものを見せてもらいました。これはDVD買ってしまうくらい心に響く作品です。

靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。(映画.comより)



── リアルに近い世界だからこその感情移入

新海誠「だれかのまなざし」同時上演のショート『だれかのまなざし』。飼い猫”みーさん”の目線で語られる娘と父親、そして家族の話がまた良い。

厳しい日常で生きる中で誰もが経験する寂しさや見栄、そして優しさに溢れた作品で、ラストにはほっこり笑顔になれます。

徹夜明けの眠気も完全に吹っ飛びました。これを見ただけで本編のアタリを確信しましたよ。新海監督は今回、確実にやってくれてると。


そして本編。散々褒めちぎったくせにあえて言います。たぶん、これはあらすじだけ聞くとそれほど中身はないのかもしれません。15歳の少年と27歳の女性の偶然の出会いと、恋(孤悲?)・・・と呼べるかどうかもわからないくらい、とても淡い想いを描いた作品です。

新海誠「言の葉の庭」ただ、その中に描かれているのはアニメーションながら自分たちが暮らしている日常と何も変わらない、心の葛藤だったり、寂しさだったり、不安だったりする。

そんなダークな部分とは裏腹に、雨の庭園、跳ねる雫、雷の鳴る雲、ビル群を飛ぶ鳥の羽ばたきは過ぎるほどに綺麗に映し出される。こういう表現をさせたら新海監督の右にでる人はいないなと改めて思いました。

さらに3Dなのか実写なのか、リアルに近い映像を挟み込み、金麦ビールやMeijiチョコレートなど実名を出した商品を出していたのは、架空の世界ではなく観客側が生きる世界と同じ世界の話であることを印象付けたかったのか。

そんなリアルに近い世界で、誰もが同じような感情を抱いたことがあるからこそ、彼ら二人に感情移入して、その想いがどうなっていくのかを見届けたい気持ちになるのかもしれません。


── 闇の部分があるからこそ光の部分はより鮮明に

新海誠「言の葉の庭」そんなこの作品で私が一番気になったのは、このシンプルな話でなぜここまで心に響いたのかということ。それは主観的な部分が入るので一般論ではないと思って聞いてください。

それはやはりこの作品に含まれる闇の部分にあるのではないかと思うのです。同じ新海監督の作品『秒速5センチメートル』でもそうでしたが、エヴァほどあからさまではないにせよ、アニメーションにしてはかなりネガティブな部分、心の闇や後ろ暗い部分、嘘、鬱などの表現がかなりあります。

そんな闇の部分があるからこそ、光の部分はより鮮明に見える。それは雨の庭園、雨上がりの日差しや雷も同じ。


主人公たちも少なからず闇はあって、靴職人をめざすタカオも学校成績は落第寸前、専門学校に行くお金もなく、空いてる時間はバイト三昧。世間の嫌な部分を知って世界が暗く見え始めてた15歳。

新海誠「言の葉の庭」雨の日の庭園で出会った27歳のユキノは、あることがきっかけで仕事にも行けず、味覚もビールとチョコしか感じない。そしておそらく、職場の妻帯者と不倫していた(風な描き方)とかも。

そんな闇の部分を描きながらも、それぞれが惹かれる理由もきっちりあって、タカオはたぶん兄の独り暮らしを寂しく思って家出するお酒好きの母親が大好きで、そんな母に似た大人なのに少し子供っぽく陰のあるユキノに惹かれたのかな、とか。ユキノは15歳の頃の自分にはあったひたむきさと純粋さを持つタカオに、今の自分には失くしてしまったモノを求めたり。

これが恋とか愛とかに発展するのはまだ先の話で、今はお互いが今の自分に必要な人として意識しているくらいだけど、これから先、二人がどこかで出会うのを楽しみにせずにはいられない。

これは元々の闇の部分があって、それでもお互いが照らしあう日差しになって前に進んでいく話だからこそ、二人の心がはじけた瞬間にぶわっと気持ちが入ってきたのかなと、そんなことを思っていました。

ホントに1時間もない短時間の話なんだけど、これは絶対にお勧めできる作品です。安いし(おいっw)。観た後に「なんかいいもん見ちゃったな」って気持ちにさせてくれる暖かい作品。ぜひ観てみてください。


■『言の葉の庭』予告編 "The Garden of Words" Trailer




■言の葉の庭 エンディングテーマ:「Rain」 秦基博
とあるブログでこの「言の葉の庭」という映画自体、「Rain」のMVとして見るとなんて豪華でピッタリなMVだろう
と言われていました。たしかに!「秒速5センチメートル」も山崎まさよし「One more time,One more chance」
のMVみたいになってましたからね。




■『だれかのまなざし』予告編


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1. 言の葉の庭/入野自由、花澤香菜  [ カノンな日々 ]   2013年06月08日 22:25
名作青春アニメ『秒速5センチメートル』の新海誠監督が手がけたこの最新作は梅雨の季節に出会った靴職人を目指す15歳の少年と不器用な27歳の女性を巡るドラマを描いたラブストーリ ...
2. 孤悲(こい)の余韻がハッピーエンド。〜「言の葉の庭」〜  [ ペパーミントの魔術師 ]   2013年06月08日 23:57
多分、また削除されてしまうとは思いますが、 ハタボーのイメージソングといっしょに 映画のダイジェストが流れていたのでアップしました。(^^; 言ノ葉+GREEN MIND 2012(初回生産限定盤)(DVD付)秦 基博 アリオラジャパン 2013-05-29売り上げランキング : 57Amazonで詳...
3. Rain・大江千里  [ ペパーミントの魔術師 ]   2013年06月08日 23:58
YouTubeですごいの見つけた。 聴き比べてくださいね。 大江千里⇒槇原敬之⇒秦基博で3パターンの「Rain」が流れてました。 「言の葉の庭」の劇場予告を初めて見たときに 新海誠の映画がくる〜〜!で喜んだのはもちろんのことだったんですが まさかここで大江千里のRain..
4. 「言の葉の庭」みた。  [ たいむのひとりごと ]   2013年06月09日 13:09
良い映画だったなぁ〜新海作品では『秒速5センチメートル』がぶっちぎりで好きなのだけど、相手を思い遣る気持ちの強い今作の、少し大人な感じが好きかも。さすがに歳の差ひとまわりともなると、そうそうハッピーエ
5. 言の葉の庭  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2013年06月20日 05:57
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6. 『言の葉の庭』  [ こねたみっくす ]   2013年06月20日 11:15
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風景や、雨・水の描写が、美しい!
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雨の季節にぴったりの映画「言の葉の庭」鑑賞。雨って、こんなに美しいものなのかと、何気ない風景にも感動してしまう、美しい映画でした。 言の葉の庭 あらすじ 六月、高校生のタカオは雨の日の午前は公園で靴のデザインを考える。ある日、公園の東屋で朝からビールを

この記事へのコメント

1. Posted by Ageha   2013年06月08日 23:56
Rainの声違い3パターンがYouTubeに出てました。こちらでのレビューもTBしときますね。

イメージソングとして作られた
秦基博の「言の葉」も
「言の葉の庭」の映像を重ねてみたら
案外映画の凝縮数分バージョンですよ(^-^)

自分とこでも書いたのですが
3人目の主人公ともいうべき「雨」
水の表現にとことんこだわってましたね。
あと、心も風景も雨で幾分どんよりしているからこそ、
このひとお得意の「光」の表現がさらに生きてくる、そんな気がしました。
2. Posted by Ageha   2013年06月09日 00:15
TBをしようとして自分の記事をあけたら
なぜかレイアウトが崩れて
書いた文章が全部つながってしまいました。
読みにくくてすいません。
YouTubeの「言の葉」はフルPVだったので
削除されてしまいました。(^^;
TBが2重になってますので
このコメント共々あとで削除お願いします。
m(_ _)m
3. Posted by GAKU   2013年06月09日 09:35
>Agehaさん、こんにちは。
秦基博の「言の葉」のMV、ググったら見つかったので見てみました!
いやー良いですねこれは。映画が思いっきり凝縮されていた。
「秒速」の第三話みたいにラストの話として使ってもいいんじゃないかってくらい凝縮されてましたね。

雨と光の表現は本当にお見事としか言えません。
光を扱わせたら新海監督の右に出る人はいないんじゃないかな。さすがです。
浜離宮公園には行ったことあるんですが新宿御苑には行ったことなくて行ってみたくなりましたよ。
行く機会があれば写真撮ってきますね。雨だと雰囲気も近くなるんだろうけど。
4. Posted by GAKU   2013年06月09日 09:39
>Agehaさん
TB開いてみましたが特に読みづらくはなかったですよ。問題なしです。
秦さんの言の葉のMVはググったらでてきました。
でもやはりすぐ消されちゃうのかな。もっといろんな人に見てもらえると良いのに・・・まぁ映画凝縮版ですし仕方ないか。
※二重のTBは削除しておきました。
5. Posted by たいむ   2013年06月09日 13:16
GAKUさん、こんにちは。
なんだかGAKUさんの気持ちも溢れてるなぁ〜って文章に感じます(^^)。
でもでも解りますよ、いいもの見ちゃったって時の高揚感。

私も、都会の森をこんなにも優しく美しく表現できる監督さんはほかに居ないんじゃないかなぁ〜って、反芻するたびにどんどん美化されちゃってますし(笑)

とにかく良かったし好きです!
6. Posted by GAKU   2013年06月10日 23:34
>たいむさん、こんばんは。
ついつい気持ちがこもって長文になってしまいました。
これは新海監督のファンとしても「やったー!これぞ新海ワールド」
というのを見せてくれたという意味で嬉しかったんだと思います。

別の方のブログを見ると皆が皆、絶賛でもなくて
「物足りなかった。内容が薄すぎた。」
などの厳しい意見もありましたがいいんですこれで。

シンプルな内容だからこそ中に詰まった想いがしっかり見えて
映像美も生きた気がします。
個人的なひいき目はかなりありますが好きなんだから仕方なし
(なんだこの強引な締めはww)
7. Posted by にゃむばなな   2013年06月20日 11:08
この作品って凄く繊細で壊れやすいような危うさを含みつつも、それを感じさせないほど映像も物語も美しいんですよね。
特に雨の使い方が上手いこと。
さすが新海監督ですよ。
8. Posted by GAKU   2013年06月23日 06:46
> にゃむばななさん
たしかに繊細で壊れそうな微妙なラインを描いていますよね。下手したら青臭い少女漫画になってしまいそうなどこにでもありそうな話。

ただ、そんな話の中に新海誠テイストが要所に入ることでいろんな感情表現が現れてきて、ある意味でワンシーンごとに何かのメタファーではないかと考えてしまうほど奥深い内容に仕上げて来たと思います。
9. Posted by latifa   2014年04月23日 14:02
GAKUさん、ちょっとお久しぶりです^^
これ、いまさらですが見ました!
いやーホントに素晴らしい映像美でした。
でも、私、、内容について、色々言っちゃったので、心苦しいのですが・・。

それと、この上の記事、新宿御苑の公園訪問写真も、凄く楽しく拝見しました。
この映画見ると、行きたくなりますよね。
私も今年の初夏に、行くぞーと思っているところです。
10. Posted by GAKU   2014年04月27日 17:45
>latifaさん
お久しぶりです!お元気でしたか?
こちらはブログがかなりご無沙汰になってしまい、
レスも遅くなりましたスイマセン。。m(__)m

内容はたしかに・・・いろいろツッコミどころはありますね。
奥さんの感想を聞いても色々ツッコンでましたww
まぁ何となく新海監督の作品って個人的に好きなんですよね。

ひとり語りが多いとか、センチメンタリズムに浸ってるのか、
とかとか、いろいろとあるんですけど、映像美と相反する
闇の部分が心に突き刺さる部分があるのです。

新宿御苑、良かったですよ。
この時は一人でふらっと行きましたが、次は家族で行って
木陰でゆっくり日向ぼっこでもしたいなぁと思わせてくれる
優雅な時間が流れる場所でした。ぜひに。

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