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2014年02月09日

かすかに漂う”渋さ”がラノベではなく小説としている ─ 『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) -栞子さんと繋がりの時』レビュー

biburia5─ ビブリア古書堂の事件手帖 (5) -栞子さんと繋がりの時 ─

ヒロイン・栞子役を剛力彩芽が演じていたTVドラマは微妙でしたが、小説は最初の頃から一応チェックしています。

小説版は派手な展開だけでなく、地味で繊細な心の動きまで描かれていてそのあたりは結構気に入ってます。今思えばTVドラマでは派手なシーンを見せたいのか、そういった細部が時間の関係か端折られていたように思います。蟹の身だけ食べて蟹味噌を捨てた、みたいな。

ちなみに今回は前回で満を持して登場した”ビブリアのラスボス”とも言える、栞子の母親・智恵子の登場でほぼラストにもっていくかと思いきや、まだ続くみたいです。今回はラストエピソードへの序章といったところか。栞子@ルーク・スカイウォーカー VS 智恵子@ダース・ベイダーの戦いはまだまだ続くとww
静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。(BOOKデータベースより)
なお、今回は五浦君が栞子さんに告白した返事を待つというベースになって展開されますが、個人的には前述でもあるように、メインの謎解きや告白の返事よりも、地味で繊細な心の動きの描写のほうがよかったなと感じる部分があり、それが一見ラノベにも思えるこの作品を小説たらしめる理由であるようにも思いました。


─ 微妙な心理描写が心に残る
さて、今回も古書の状態などから相手の生活状況やら心理やらを読み取っていく展開は相変わらずです。

わかりやすいところでは手塚治の『ブラックジャック』にまつわる両親の出会いのエピソードなのですが、個人的にはそこよりも、古書好きだった逃げた夫を探しながら夫の古書を売り買いする女性の話と、道楽息子への遺産として初版本を残した亡き兄の話がよかったなと。

あまり書くとネタバレになるのでちょっとにしておきますが、夫を探す女性の話ではあとがきがあって、それがまたいい。ちょっとした言葉が心の琴線に触れたりする部分がありました。

「失敗してもやり直せるなんてよく言うが、失敗の後でやり直すのがどんなに難しいか・・・、そして一旦逃げちまったら大概のことは取り返しがつかない」

「若い奴らと違って、俺たちのような年寄りにはもう十分な時間がない。くっついたり離れたり、怒ったり笑ったりする時間が」

また、ラストを飾る道楽息子への遺産本の話でもググッと心をつかまれるところがありました。

「誤解されてるくらいがちょうどいいんだよ。ほら、言うだろう?『誤解でしあわせになれるなら、誤解で満足できるなら、僕は誤解を愛する』ってね」

寺山修司の引用らしいのですが、人にはいろんな生き方があって、言葉にはあえて出さなくても、いろんなことを抱えて背負って生きてる人がいるってことを、この会話を入れることで一気にまとめてきたなと。

単に古書の秘密を読み取って推理してどうのとか、ラスボスの母親が出てきて心理合戦を繰り広げるだけの話なら、今回でこのシリーズも読むのを止めようかとも思ってましたが、やっぱりこういった描写があると「なかなか深いな」と単なるラノベ風小説ではない部分もあって読んでしまいます。

次回作も既に執筆中とのことで、第一話から引っ張ってる事件が絡んできますが、それだけでなくやはりこういった「渋い深み」を含んだ地味な部分をしっかり描いてもらいたいなぁと思う作品でした。




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1. 『ビブリア古書堂の事件手帖ァ 三上 延(著)  [ たいむのひとりごと ]   2014年02月13日 14:34
『ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜』読了。今回も予約して買った割には今頃なのだが、読み始めたら数時間で一気読み。あのプロローグを読んだら途中ではやめられないってね。今回は、3つの本に
2. 『ビブリア古書堂の事件手帖5/栞子さんと繋がりの時』 三上延  [ 【徒然なるままに・・・】 ]   2014年02月15日 12:35
新しい事件が起こり、新しい登場人物が出てくる度に、これまでの登場人物、そして全体の物語に大きく関わってくる、その伏線の貼り方には相変わらず唸らされてしまう。今のところ最大の謎は栞子の母・智恵子の真意だが、それも案外身近な所に落ち着くのかも知れない。五浦と

この記事へのコメント

1. Posted by たいむ   2014年02月13日 14:33
こんにちは!
今回私はすっかりキャラ読みになってしまっていて、告白の行方が気になって気になって(笑)
でも、仰るとおり人間の機微がしっかり描かれていて、繊細かつ独特な表現がされている小説なのは良いと思ってます。

感想も書いてませんが、先日ストーリーは凝っててとても面白いのだけれど、文章が稚拙なラノベを読みまして、作家の力量の差を感じるところでした。

機械的なロボットみたいだった栞子がだんだん人間らしくなってきたのは作家の成長かなと思うところ。(エラソーにいってみる)。
テクニックにもやられました。

前回からノリノリではなかったので手に入れても後回しにして今頃読みましたが、私も気持ち的に持ち直しました。
やや変則的な5巻だっただけに、また元に戻らないことを祈りますが、次が楽しみですね。

2. Posted by GAKU   2014年02月15日 08:36
>たいむさん、こんにちは。
たしかにあんなプロローグを書かれたら「え?ええー?そこで切るか!」となりますよねwww
でもあの続きは物語を読んだ後か、読まないでラストエピローグを読むかで想いの重さが違ってくるというか、あの見せ方はうまいなぁと思います。

「ストーリーは凝っててとても面白いのだけれど、文章が稚拙なラノベ」ありますねー。ラノベに限らずちょっとある程度読み進めて「あぁこの作家さん、勢いだけで書いちゃってるのかなぁ」なんて、私もエラソーに言ってしまいますが残念な感じになっちゃうことがあります。

その点、三上さんは今回特にそれぞれの作品の裏話で視点変換のテクニックを使ったものにして物語の深みをつけてくるあたり、「やりおる!」と思わせてくれました。

次回、あの人がどう出てくるか、ダースベイダー智恵子がどう来るかというメインの話だけでなく、微妙な作品の機微やテクニックでも期待してます。

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