弁護士の良心 

元金融マンの弁護士が、日々の反省と自らへの戒めをつづるブログ 鈴木英司の弁護士活動日記 ひたすら明るく、ひたすら前向きにがモットーです                     

ゆうちょ貯金・権利消滅でも、あきらめないで

 昔、郵便局に預けた貯金について、時効により払い戻しの権利は消滅したと、払い出しを拒否された方も、多いと思います。
 その理由は、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構が、日本郵政公社から承継した郵政民営化前に預け入れられた定期性の郵便貯金は、なおその効力を有するものとされる郵便貯金法(昭和22年法律第144号)第29条の規定により、預金者の権利が消滅したとすることにあります。
 しかしながら、預金者の権利を一方的に奪うことは、憲法で定められた国民の人権である財産権(憲法29条1項)を侵害するもので、そのような人権制限をせざるを得ない場合には、その必要性や、人権制限が許容できるような合理性が必要とされています。従って、たとえ、旧郵便貯金法29条自体が違憲無効な法律ではなかったとしても、その運用において、憲法に反しない慎重な運用(法律を適用するにあたって、当該事実関係において、法律適用の必要性と合理性を慎重に確認したうえでの対応)が求められている、すなわち、法律の「限定解釈」による「適用違憲にならない限度での運用」が必要と考えます。
 そのような意見も踏まえ、昨日、総務省は、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構(理事長 白山 昭彦)に対し、郵政民営化前に預け入れられた定期性の郵便貯金の払戻しに関する運用について、預金者に一層寄り添う観点から、見直しを検討するよう要請しました。

 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu16_02000066.html

 このような監督官庁からの要請もあることから、お手持ちの「定額郵便貯金証書」等に、既に「権利消滅取消請求不承認」の赤いハンコを押されてしまった方でも、 再度の郵便貯金証書払請求をしてみる価値は十分にあると思います。ご相談をご希望の方は、ご連絡ください。

AT1債の説明(その2)

  既に、この件に関しては多数のご相談を受けていますが、債券の内容も含めて、その対処方法も難しい問題点も含んでいますので、改めて、現状を説明しておきたいと思います。

 まず、今回のAT1債の損害の原因を理解しておく必要があります。なぜいきなり大きな損失となったのか?という原因ですが、ごく簡単に説明すれば、AT1債の本質的な(金融機関が発行する目的そのものに関係する)発行条件として、特別な公的支援(extraordinary government support)を受けたときは、その支援が株主の利益を保護するものであっても、他銀行からの救済買収を容易にするために、AT1債の債権者が犠牲となる、つまり、AT1債の元本が削減(writedown)される条項があったということです。今回、クレディスイスの危機が顕在化し、同銀を救済するために、スイス政府が救済に動いたことが、この条項による破綻トリガーを弾いたようです。その結果、AT1債は、債権にもかかわらず、株価がゼロになる前に、債権価値がゼロになってしまうという、通常の金融商品の知識では考えられない結果となってしまいました。

 報道では、日本でも額面で1000億円以上、そして個人投資家にまで、販売されていたようです。販売した金融機関は、果たして、上記に記載した元本削減リスクを説明して販売し、投資家はそれを十分に理解して購入したのでしょうか?
 上記のような条項は、いわゆる目論見書(Information Memorandum)に、もちろん正確に記載されており、機関投資家であれば、それをチェックできたはずですし、チェックすべきとも言えます。この目論見書は150ページ近くあり、機関投資家といえども、すべてチェックするのは大変かもしれない一方で、この目論見書でのAT1債の正式名称が「Perpetual Tier 1 Contingent Write-down Capital Notes」とされていることから、Contingent(突然)に、Write-down(元本削減)される債権であるという認識は、機関投資家でこの目論見書を交付された投資家であれば、十分に認識できたとされるかもしれません。)。

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 このような予想外の損失に対し、どのような対処方法があり得るのでしょうか? 今回の場合、ある法律事務所は、海外の専門ローハウスと提携して、日本とスイスの経済連携協定(EPA)制度を利用した投資家対国家間紛争解決制度(ISDS)に基づく、スイス政府との協議を始めるとのことです。私にとっては目新しく、チャレンジィングな試みなので、今後の推移を見守っていきたいと思っています(ただ、スイス政府の責任根拠が、公平待遇(EPA86条1項)や資産の収用禁止(同91条1項)など、一般規定に頼らざるを得ないようであれば、難航も予想されるところです。)

 もちろん、このような大掛かりな対応以前に、そもそも日本でAT1債を販売した金融機関が、上記のような元本削減リスクをきちんと説明した上で販売したのか、また、購入した投資家は、そのような特別なリスクを十分に理解することができるような投資家だったのか。。。個別の販売状況や投資家の属性などに問題があれば、日本の裁判所で、販売金融機関の責任を問題にすることができますし、また、その方が、解決が早いともいえるかもしれません。

クレディ・スイスAT1債の相談を受け付けます

 元銀行員・外資系金融機関出身者としては、さすがに、今回のAT1債を、機関投資家以外に販売するのは無理があり、法的にも問題だと思っています。
 
 購入された方で、ご相談をご希望の方は、弊事務所(東京フィールド法律事務所)弁護士鈴木まで電話でお問い合わせください。

1年前のmaneoに対する勝訴判決がやっと掲載

 金融・商事判例2023年05月15日号No.1666に、ソーシャルレンディング業者であるmaneoマーケットらへの勝訴判決文を、ようやく掲載していただきました。

 1 ソーシャルレンディングにおけるウェブサイト上の募集画面中の資金使途について、金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項2号所定の虚偽表示等があったとされた事例
 2 ソーシャルレンディングに係る募集を行う第二種金融商品取引業者が、投資者との関係で、資金需要者において出資金の分別管理が行われていることを確認すべき注意義務を負い、その違反に基づき不法行為責任を負うとされた事例
(東京地判令和4・7・22)

 複雑な事案で大部の判決書なので、編集者も大変だったと思います。

 それにしても、長かった。掲載までの期間もそうですが、そもそも裁判が始まったのが(令和に改元直前)の平成31年3月(2019年)、それから3年以上かけて判決、その判決も完全勝訴でなかったため、現在、東京高裁で、これまた時間をかけて(普通の控訴棄却であれば、高裁はそんなに時間をかけない)審理中です。その間に、複数の被告らのうち、被告の会社や経営者が破産手続きに移行したこともあり、それらの裁判は分離されて中断、そして破産管財人への債権確定訴訟に移行したり、経営者の免責不許可決定(破産しても借金はチャラにしない裁判所の決定)を受けての裁判の再開(破産手続きで免責されれば、損害賠償請求の訴訟は、訴えの利益がなくなり終了するが、免責されなかれば、勝訴判決により破産者でも取り立てられる!)等、訴訟提起時には一つの裁判も、三つ四つに分解されてしまいました。時間がかかるだけでなく、複雑極まりない状況になってしまいました。

 もちろん、ご依頼者様からの受任に際しては「時間はかかる」「数年はかかる」ことは説明していました。そのため、今でも「先生、時間がかかってもとことんやってください」と励ましていただける依頼者の方も多いのですが、中には「こんなに時間がかかるとは思わなかった」と嘆かれる方も少なくありません。そのお気持ちは痛いほど分かります。
 そうは言っても、ここまで来た以上、最後まで、それこそトコトンやり抜く以外ありません。これからも、依頼者の方々と力を合わせて、やり抜いていこうと思っています。

春がきた

 暖かさに誘われて、自宅の近所をぶらぶら歩いていたら、そこらかしこに春の到来を告げる花々が❣

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 最初に目に映えたのがハク木蓮。
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 その横で、昔から春の訪れを教えてくれるとされている三椏(ミツマタ)、そうお札にも使われている高級和紙の原材料です。 
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 春されば まず三枝(サキクサ)の幸くあれば 後にも逢はむ な恋ひそ吾妹
(万葉集10巻ー1895番)

 このサキクサが三椏(ミツマタ)のことらしいのですが、昔の人は、とってもロマンテックでしたね

 でも、現代でも、そして何度も春を迎えた年齢を重ねる人でも、何か新しいことにドキドキ、ワクワクする季節です 

 

Z世代

 Z世代と言われる1990年代後半以降に生まれた若者たちがいる。

 「どんな時、そんな気持ちの変化になりましたか?」
 16歳の少年に対する裁判官のねちっこい質問が続く(成人の形式的な刑事裁判とは異なり、少年の実質的な更生を目指す手続きだから、裁判官は30分、40分、少年との対話を行う。)。その少年は、公園に仲間の後輩を呼び出して殴った暴行事件で、警察に逮捕された。その後、約1か月にわたる少年鑑別所での生活を経て、今日の少年審判となった。
 「鑑別所で、いろいろ考えて。。。」
 「両親をはじめ、みんなが心配してくれているのに。。。」
 「自分の勝手な考えだけで。。。」
 「鑑別所でも、皆さんが親切にしてくれて、年末のクリスマスにも、ケーキを差し入れてくれるボランテアの人がいて。。。自分のために、こんなことをしてくれるなんて。。。」
 少年のとぎれとぎれで、つたない言葉、しかし、それだからこそ、少年が自分の頭で一生懸命に考えてきた様子が、裁判官にも伝わるのだろう。
 私も、逮捕時からずっと、警察署や鑑別所で少年と話しをしてきた。最初は「十分な理由があって、あの程度殴っただけで、なんで逮捕までされるのか?」「退屈だから、早く出たい」などと言っていた少年だが、友達のこと、家族のこと、将来のこと、いろいろ話を続けるうちに、少年が会うたびに、変わっていくのを実感できた。それは、大人からのお説教の結果ではなく、少年自らがいろいろ考えて変化していく過程だった。少年と会ったときから、彼が素直な性格で柔軟な気持ちをもっており、悪い仲間たちだけでなく、周囲の大人たちからも、いろいろ吸収していく能力のある少年であるとは思っていた。しかし、毎回会うごとに、これほど自分で考え、成長していくとは、うれしい驚きだった。

 「もし興味あるんだったら、今度までに、これ解いてみて」
 私が、24歳という若い修習生に、出した演習問題は、一定の収益率と標準偏差を持ついくつかの資産を組み合わせた(ポートフォリオを組んだ)場合の、ポートフォリオ全体の収益率や標準偏差(つまり、リスク・リターン)を、一定の相関係数を前提に求めるものだった。
 研修所で、裁判官の任官へのリクルートを受けていたその修習生は、直接、法律とは関係しない私のチャレンジを喜んで受け入れてくれた。そして、そのレポートは完璧だった。
 現在、裁判所には多くの裁判官がいるが、本当に基礎の基礎にすぎないこの問題を解けるどころか、この演習の意味を理解できる裁判官はほとんどいないだろう。それどころか、興味すら持ってくれないと思う。だから、金融に関する裁判において、私が、いくら、ファイナンス理論に基づく主張をあれやこれや準備書面で提出しても、結局、「原告は縷々述べているが、畢竟、原告の自己責任というべきである」で終わってしまう。自分の身の程をわきまえないことは十分承知のうえで、本当に、せめて一週間ぐらいの裁判官研修で、現役裁判官を相手に、このような演習に集中的に取り組んでもらえるような機会があればとさえ思ってしまう。
 だから、今回の研修生のような若い裁判官候補が、ファイナンスの基礎理論を、砂漠が水をしみこませるように、どんどん吸収していってくれることは、本当にうれしく頼もしい。

 上記の両君ともに、いわゆるZ世代だ。一般に、生まれたときからネット環境のある、デジタルネイティブ、スマホネイティブ、SNSネイティブ世代だ。彼ら、彼女らは、X,Y世代の私から見ると、若さゆえの羨ましいほどの柔軟性と成長性があることは勿論な一方で、意外に堅実な一面も併せ持っているように思える。恥ずかしながら、私は、若い時から、将来の経済的不安等はあまり真剣に考えたことはなかった。決して、家が裕福というわけではなく、私に限らず、X、Y世代の多くが感じていた、社会や経済は発展するもの。。。という根拠のない漠然として思い込みのせいだったと思う。それに対し、Z世代は、シビア―だ。X、Y世代の年寄りから見れば、若いうちから、そこまで将来の経済的要素を悲観的に考えなくても良いのにと思ってしまう。しかし、それはバブル世代の能天気に過ぎないのかもしれない。

いい時もあれば、悪い時もある

 「(相場は)いい時もあれば、悪い時もあるから。。。」
 かつて、私の先輩がなにげなく言った言葉が、今でも強く残っている。
 その先輩は、私が新入行員だったころ、ロンドン支店の為替ディ―ラーとして名をあげ、外資系金融機関に引き抜かれてからも、トレーディングで実績を重ねて、ニューヨーク本社のボードメンバーにもなっていた。私が、その外資系に移ってから、いろいろお世話になった、仕事上も人生上も、尊敬する先輩だ。
 その時の話は、相場がいい時は、価値のあるリスクを大胆にとって儲けることもできるが、相場が悪い時には、価値のない(チープ・リスク)を慎重に避け、早めの損切りの勇気が必要みたいなアドバイスをいただいたような思い出がある。

 その後、人生を重ねるうちに、よくこの言葉を思い出すようになった。
 人間だから、上手くいっている時には、有頂天になって、何もかもできそうな気がして、しかもそれが永遠に続くような錯覚に陥る。しかし、それは長くは続かないのが人生だ。「(人生)いい時もあれば、悪い時もある。」
 一旦、悪いことが続いてしまうと、何をやってもうまくいかず、やる気をなくし、絶望すらしてしまう。しかし、努力していれば、そのうち「(人生)悪い時もあれば、いいときもある。」。人生、捨てたものじゃないと思える時も来る。

 成功するトレダーや投資家は、損をしないことではなく、損を経験としながら、利益を最大化できる人
 いい人生とは、成功だらけの人生ではなく、失敗から学び、次のステップへ前向きに進める人生だと思う。
 

JCサービス管財人に意見書を提出

 現在、ネット上で大々的にファンドを募集していたグリーンインフラレンディング社のソーシャルレンディングによる貸付先であるJCサービスの破産手続き(令和3年(フ)第6085号)が行われています。
 ところが、現在までの債権者集会での報告を聞く限り、管財人による処理が十分ではないように思われます。
 そこで、今回、私の依頼者である65名の債権者の代理人として、当該管財人に対し、65枚の「要望書」とともに、「①破産者が全国の出資者から集めた総額150億円を超える資金の流出先の徹底追及、及び②それら資金が破産者を通じて元経営者に流出した諸事実を構成要件とする刑事罰・行政罰に関する告訴・告発を求める。」との意見書を管財人及び裁判所に提出しました。

 もし、この動きに同調していただける債権者代理人弁護士の先生等いらっしゃいましたら、下記にご連絡いただければ、上記意見書の写しを提供いたします。

 東京フィールド法律事務所 弁護士 鈴木英司

「詐欺的」金融取引の被害者「バイアス」と弁護士の葛藤

 今回の記事は、複雑な内容を含む長文のため、一読しただけでは分かりにくいかもしれません。場合によっては、作成者が絶対に避けてほしいと願う誤解を招いてしまう危険を恐れます。そこで、論旨を理解し易くするために、大げさな章番号を付して整理し、また、一般的な使用方法とは異なる特別な意味を持たせたい用語を使う場合には、「 」付きで表示することにします。みなさんが、誤解ないように読んでいただけることを期待します。

 第1章 事件の始まり~被害者「バイアス」その1
 「社長! なぜ、そんな軽率なことをしたんですか!?」長年にわたってお世話になっているにもかかわらず、私は、反射的に強い口調で社長を責めた。顧問先の社長が相談に来て、会社の実印が押印された白紙委任状と、それに関連する重要な書類を易々と、新規取引先に渡してしまったと聞いたときだ。社長の経緯説明は断片的なものであったが、「そんな取引はまともな取引ではありません!『詐欺です』!」と断定的に述べざるを得ない内容で、「すぐに対応しましょう」と強引に言わなくてはいけない切迫した状況と判断した。
 ところが、社長の返事は意外なものだった。「先生、ちょっと待ってください。ここで先生に騒がれては、せっかくの取引がダメになってしまいます。相手は、とても紳士的な方です。『もう少し待ってくれ、なんとかする』とお願いされている以上、もうしばらく待ってみます。」
 そんな悠長な状況ではないことを、いくつかの例を挙げて、すぐに対応が必要なことを社長に強い口調で説明した。しかし、社長は、その一つ一つに、まるで加害者である詐欺師たちを代弁するかのように、詐欺師の言い訳論理で、迷うことなく反論してきた。
 なぜ長年付き合ってきた弁護士よりも新たな仕事相手を信頼できるのか、私としては理解できなかったが、それが今回の記事でいう「詐欺的」金融取引の被害者「バイアス」その1だ。いずれにしても、「依頼者の意向に沿って動く」のが弁護士だ。「分かりました。しばらく様子を見ましょう。」一旦は、そう言って帰ってもらうしかなかった。あまり強引に説得すると、このような長い付き合いの社長にすら「この弁護士は、報酬のため事件を作り出そうとしているのでは?」等のとんでもない不信感を与える危険性すらあり、一層の事態悪化を招いてしまうからだ。
 第2章 事件の認識~被害者「バイアス」その2
 実は、「依頼者の意向に沿って動く」と言いながら、これも社長を騙したことになるかもしれないと思いつつ、社長が帰ってからすぐに、様々な調査を開始した。1時間ほどの調査を進めれば進めるほど、「詐欺」であることの確信が深まった。そこで、迷わず、社長から聞いた新規取引の関係者に連絡を取り始めた。私が社長に言った「しばらく」とは、ほんの1,2時間を意味していたから、私も社長を騙していたこになるかもしれない。
 しかし、事件の深刻さを考えれば、顧問弁護士として、やるべき時にやるべきことをやっておかなければならいのは当然だ。その日のうちに、何人もの関係者から事情を確認し、間に合う限りにおいて、状況を示す客観的証拠を集め続けた。たぶん、東京の弁護士から連絡のあった関係者から、詐欺師たちに連絡がいって、詐欺師たちから社長のもとへ、強いクレームが入っているころだろう。そんなことを気にしている余裕はない。
 翌朝早く、私は、社長の携帯に連絡を入れた。案の定、普段は穏やかな社長が憤慨していた 「先生、あれほどお願いしていたのに、なんてことをしてくれたんですか!!」。それに対し、昨日とは違って、私は冷静に、しかし粘り強く、現在社長がおかれている客観的状況の一つ一つを説明していった。そして、被害者「バイアス」その1にかかっている社長の反論一つ一つに答えていった。そのような説明する事項は10以上あったが、その一つ一つを説明し続けた、5つ目か6つ目ぐらいに、突然、社長の方から「これは『詐欺だ!』」と言い始めた。被害者「バイアス」その1の呪縛から解き放されたい一瞬だ。
 ようやく事態を理解してくれたかとほっとしたとたん、社長に被害者「バイアス」その2がかかり始める。「さっそく、対処方針を決めて対処を始めましょう」という私に、「そんな必要はない。警察に行って詐欺犯人たちを捕まえてもらえば、すべて解決でしょ!?」と。社長の心理を察するに、「自分は被害であり、何も悪いことをしていないのだから慌てる必要もないし、自然に、何もなかった以前に戻る」と素朴に信じているかのようだ。しかし、「現実はそんなに甘くはない」。そんな私の説明にも、社長は納得いかないようだった。
 第3章 事件の終結~被害者「バイアス」その3
 「先生、私は何も悪いことをしていないのに、なんで、こんなに譲歩した和解をしなければならないのですか?」「絶対に納得がいきません」・・・被害者「バイアス」その3だ。事件の発覚から半年後、心配していた様々な状況が顕在化し、思わぬところから思わぬ訴訟も提起されてしまったのだ。「しかし、今の法制度では、こういう結果は仕方ありません。」「社長が『詐欺』の被害者であることはみんな認めていますが、これが現実なのです。」。詐欺の被害者である社長をなんとか助けるために一生懸命に頑張ってきたが、後味の悪い事件終結なっては、弁護士としてやるせない。なんとか、社長の納得いく解決にしないと。でもそれも限界があるから、後は、社長と徹底的に話し合うしかない。
 第4章 弁護士の葛藤その1~依頼者との関係
 以上のような事件の経緯を読んで頂いた本ブログの読者の方々には、すんなり納得しながらすーっと読めた方々がいらっしゃる一方で、何かしらの違和感を持たれた方々も少なからずいらっしゃると思います。冒頭で「本ブログの複雑な内容」と言いましたが、第1章から第3章にいたる内容には、実は、私にも解決しきっていない、様々な問題点を含んでいるからです。
 その一つは、弁護士と依頼者との関係です。もう一つは、弁護士の社会的な役割との関係です。
 本記事は、被害者「バイアス」との表現を用いました。そして、現に、この「バイアス」が、被害者の現状認識を歪ませ、その適切な対応を誤らせる事実を述べました。その事実から導きだせる弁護士と依頼者の関係は、弁護士は、これら被害者の「バイアス」を第三者である専門家の目で矯正することにあるともいえそうですし、現に、この事件では、正に私の役割はそこにあったと今でも確信しています。
 それにもかかわらず、「後味の悪い事件終結」なる危険性があったのはなぜでしょうか?
 それは、「被害者になってみないと分からない被害者としての立場や感情」を、私がどこまで共有しながら、依頼者に寄り添った弁護士活動になっていなかった危険性があったからだと思っています。
  第5章 弁護士の葛藤その2~社会的役割
 本ブログで昔から表明しているとおり、私の弁護士としてのライフワークは、「詐欺的」金融取引の被害に対する最高裁を頂点とする司法の無理解を少しでも矯正することです。このような司法の無理解を前提に、「詐欺的」金融取引の被害者の方の法の無知を矯正することでは、絶対にありません。今回の事件は、対等な立場の当事者間での「詐欺的」金融取引でした。私が、一番問題と思う「詐欺的」金融取引は、巨大金融機関対個人投資家という対等でない当事者間の事件ですが、でも、いずれにしても最高裁を頂点とする司法の無理解が存在することは明らかです。
 その意味で、私が実際に行っている弁護士の活動は、裁判所や検察に向かっては「被害者の立場になれば、その論理はオカシイ」と主張する一方で、同時に、依頼者に対しては「そのような司法制度である現実を直視して、できるだけ被害を少なくする解決方法を選択することがベストです」と言わざるを得ないという、すっきりしないものになっています。従って、このような状況を知る読者とっては、本ブログに違和感を覚えるのも仕方ないかもしれません。
 しかし、このような活動を地道に継続する以外に、依頼者の利益擁護と投資家保護の司法促進を両立させていく方法はないと思っています。

正解のない投資

 投資に関係した事件のご依頼を、長年受けていますと、ご依頼人から質問を受けることもあります。
「今回の失敗を教訓に、改めて、投資方法を見直そうと思います。アドバイスをお願いします。」とか。また、ご依頼人でなくとも、年齢や男女に関係なく、「投資」にご興味のある方は非常に多く、皆さん、いろいろ考えておられるようです。今は弁護士をしている私も、金融マンをやっていた時期も長く、失敗も数多く経験しました。だから、弁護士としてのアドバイスというよりも、私の個人的経験と弁護士としてかかわってきた多数の事例から、私なりに考えている最善の投資判断や方法について述べてみます。

 この問題で、最初に言えることは、「最善の投資方法」とか「最もお勧めの投資」等、具体的な投資に正解はありません。しかし、「間違った投資」、「絶対に失敗する投資」は、存在するということです。
 結果的にせよ投資に成功するためには、①投資商品の選択、②投資のタイミングの選択の二つの要素をクリアーする必要があります。

 まず①投資商品の選択を誤ると、②に関係なく必ず、失敗します。
 間違った①投資商品の選択とは、例えば、宝くじやパチンコ、公営ギャンブルなど、全体として胴元が必ず儲かり残りを顧客で分け合うようなマイナス・サムの投資商品は、必ず失敗します。もちろん、たった一度だけ挑戦し、その一回限りで勝てば、必ず負けるとは言えないように気もします。また、競馬のオッズ決定の不合理をつくソフトも開発可能かもしれません。しかし、それは投資ではありません。投資は、継続的・長期的に資産を増やしていくことを目的にするものです。ギャンブルとの違いは、やはり投資先とのウィン・ウィン関係を目指すプラス・サムの経済活動ということにあります。だからこそ、政府も「貯蓄から投資へ」と堂々と政策にできるのです。
 一見、まともな商品に見える金融商品にもマイナス・サムの投資商品は多数紛れています。大手銀行・大手証券の取扱う投資信託や仕組債などはその好例です。マイナス・サムになってしまう理由は、販売金融機関の手数料を含む商品設計や販売コストがあまりにも大きくなると、市場(プラス・サムの世界)でのリスク・リターンの均衡から大きく離れて、投資家に極端に不利な条件になってしまうからです。このブログでも何回もとりあげているソーシャルレンディングも、「詐欺的」という中身は、ウィン・ウィン関係を目指すプラス・サムの金融商品ではなく、投資家の一方的な犠牲に必然的な理由が最初からある商品なのです。
 では、まともな金融商品とそうでない金融商品とをどう見分ければ良いのでしょうか。答えは、意外と簡単です。一つは、営業マンが一生懸命売込みを図る商品は、必ず、買ってはならない金融商品です。まともな、またそれ以上良い商品は、営業マンが一生懸命売込みを図る必要はありません。かえって、顧客が金融会社に積極的に働きかけて交渉しなければ手に入らないものです(好況期のIPO銘柄のように)。良い不動産案件を探し出すには、大変苦労がいることを考えてみれば想像がつくと思います。悪い不動産案件だから、営業電話が必要なのです(かぼちゃの馬車等、事例はいくらでもあります。)。善良な投資家が気をつけなくてならないのは、営業マンは、会社が儲けたいから、自分の成績をあげたいから、熱心に過ぎないにもかかわらず、「顧客のことを考える良い担当者」と誤解してしまうケースが多くみられることです。いざ裁判になれば、営業マンは手のひらを返します。裁判官も「善良な顧客と悪い担当者」との図式を理解してくれることはありません。
 もう一つは、やはり、「一見、好条件」です。好配当はもちろん、キャッシュバックや優待等、いかにも販売したくてたまらないからこそ、投資家に露骨にぶら下げるエサ(業界では、「スウィートナー」と呼ばれる甘いワナ)がある商品です。理由は、営業マンの熱心な勧誘と同様、金融機関にとって儲けが大きいから売りたいけれどなかなか売れない商品だからです。

 次に、まともな①投資商品の選択を前提にして、②投資のタイミングは、投資結果を180度変える投資の本質になります。まともな投資は、このタイミングこそがすべてです。
 ここを詳しく述べると長くなり過ぎますので、結論だけ簡潔に述べます。
 まず、投資の成功例等として、雑誌やネットで紹介されるようになってからでは遅すぎるケースがほとんどです。投資に失敗する典型的なパターンが、書店で、「投資成功事例」を見てそれを真似するケースです。また、自分の投資商品が、「将来有望」等新聞や雑誌で紹介されると気分が良くなって買い増したリ、逆に、悪いコメントがあると不安になって売却したり、失敗事例に暇はありません。もっとも、この②投資のタイミングは、サイクリカルに繰り返します。外国為替相場や石油相場等、何十年単位で波があります。不動産相場もそうです。周回遅れで成功するパターン、何十年×何回という超長期投資で最終的な利益を得るのが、一番良いのかもしれません。安いときに買って高いときに売ると、結果だけ見れば簡単な投資は、これほど難しいものはありません。

 私の育ってきた昭和・平成・令和の現在までで、結果だけをみれば、日本人にとって一番良かった投資は、日本の高度成長期の不動産投資であり、その後の低成長期には米国株式をじっと持ち続けることでした。その理由は、いろいろ解説できます。しかし、それは結果論に過ぎません。なにが、これからのベストの投資なのか、その正解はありません。
 このような経験から、私個人の投資方針は、「お金に稼いでもらう投資」をほどほどに、「自分自身が稼ぐための知識やスキルへの投資、自分や家族の充実した生活のための投資」を中心に、です。

 
 

 

ペンギンの憂鬱

 ある弁護士のツイッターが目に留まった。 (;'∀')
 
「消費者事件、特に投資被害なんかは、訴状の段階では裁判官の、ああん?こんな無理筋受けて訴訟提起しやがって…、という冷たい視線をヒシヒシと感じる…。
 その土俵際から押し返していくのです。」

 私は、この分野を弁護士としてのライフワークにしているから、そんなことを気にしている余裕もないけれど、ある時期を境に、多くの、というか、ほとんどの弁護士が感じていることだろう。
 ある時期とは、平成25年の最高裁判例からだと思っている。

 そのころは、すでに説明義務違反などの訴訟提起も活発で、私も、先輩弁護士や研究している学者の方々に交じって、いろいろ勉強させていただいていた。ところが、その後、この種の事件の裁判所での風向きがどうも、アゲンストばかりと感じさせられる機会が多くなるにつれ、この種の事件を扱う弁護士の方々も少なくなっていった。

 もっとも、根っからの楽観主義の私としては、頑張って、あらゆる機会をとらえて、従来の考えた方に疑問を呈するような論稿を掲載してもらったり、裁判で具体的に主張していけば、いつかは、この流れ、投資家に冷たい裁判所にも変化がでてくるだろうと信じている。

 今回も、とても優秀でこの種の事件に理解のある裁判官に恵まれて、内容のある判決をいただくことができた。騙された投資家の方々にとっては、当たり前とも思える判決に見えるかもしれないが、私にとってだけでなく、これからの司法や金融業界にとっても大切な判決だ。

英語が苦手 ~ 60の手習い

 昔から英語が苦手だった。
 外資系の金融機関で働いていたこともあったにもかかわらず。

 自衛隊の米国教官による訓練風景
 米国教官が自衛官にイライラしながら言う「Turn the heat off!」(1分40秒あたり)
 自衛官はとまどいながら「ON ?」
 米国教官が叫ぶ「NO!O!F ! F! OFF!」

 ジェット戦闘機のパイロットとは比較にならないプライベートパイロット訓練生でもある私も、面白いけど、全く笑えない 
 自衛隊の戸惑いは痛いほど分かるし、キレた米国教官も目に浮かぶ。
 趣味でお金を出しての訓練なら、管制塔(ATC)から何と思われようとも、「Say again!」を繰り返せばすむし、安全のために繰り返さなくてはならない。
 第二次世界大戦が終わり、日本の航空会社が、初めて定期便の乗り入れを開始したとき、米国管制空域に入った日本人機長が、「何度言ったら分かるんだ! 英語が分からない奴は、さっさと日本に帰れ!」と怒鳴られた話も本で読んだことがある。

 英語は苦手ではあるが、BBCのニュースやNational Geographicの解説などは、比較的聞き取れる。
 問題は、米国ドラマや映画の一般会話だ。
 何度聞き返しても、私には「アーユーリポーティング... ?」としか聞き取れない。
 しかし、実際は「On your report...」と言っている。それは、その後に「card where...」と続くからそう聞き取るべきなのだ。なんとか単語ごとに正確に聞き取ろうとしても無理なのだ。BBCニュースは、単語ごとに正確に発音してくれるから、なんとか聞き取れるが、重要でない子音や冠詞、そして前置詞などをすっとばす一般会話に、到底ついていけない。

 でも、無理と諦めるのは、嫌だ。
 コロナで無期延期となっていた米国出張にも、行きたい。
 最近は、手軽な英会話アプリもたくさんあるから、空いた時間で少しづつでも挑戦できる。
 それはそれで、楽しいレッスンだ。

ランチもとれない修習

 今日は月曜日、修習生が来所した朝一番から、とたんに私とのミーティング。
 一通り、起案した準備書面についてデスカッションした後、その結果を書面に反映させ、引用した証拠を作成して、今日中に裁判所に提出するように指示した。
 優秀で真面目な研修生君は、頑張る。
 ただ、ちゃんとやる分、午後1時2時近くなっても終わらない。
 私からの本日中の裁判所提出は絶対指示。
 見かねた事務所の同僚弁護士が、「お弁当買ってきてあげようか?」とフォローしてくれた。
 「お願いします」嬉しそうな声から、若い彼はお腹すくなか頑張ってる様子がありあり。
 ちょっと、頑張らせ過ぎかなとも思いつつ、弁護士にとっては日常業務。その一端を味わってもらうことも、彼にとって有意義な経験になるとの確信犯だ。
 だって、今朝のデスカッションは、私のこの週末土日の仕事の結果だから、全体として、裁判における弁護士の仕事が、質的にも量的にも、どんなに大変かを実感できるチャンスになるから。

後日談(12月24日)
その彼から、嬉しい報告がありました。
無事、裁判官に任官できたようです。
良かったね。
彼なら、立派な裁判官になってくれるでしょう

修習生

 このブログでも、過去に何回かとりあげたこともある司法修習制度、今回、私の事務所でも、75期の若い修習生をお預かりすることになりました。私にとっては、二人目の修習生です。
 私は、63期として修習をうけました。その時は、修習受け入れ先の裁判官・検事弁護士のみなさんはとても親切に接していただいて、楽しかった思い出しかなく、本当に一生の思い出です。いわば、その恩返しのつもりで、指導担当をお引き受けしました。

 私が受けたような充実した修習を今度の修習生にも提供できるのか、今、受け入れ態勢を考えているところです。できれば、実務に入ると使わなければすぐに忘れてしまいそうな、逆に必要であればすぐに習得できるような技術的な法律知識やノウハウよりも、今後、社会に出たときに、「そういえば、その時、修習先の弁護士はこんなことを言っていたな、やっていたな」と参考になるようなアドバイスや経験を提供できればと思っています。
 とはいっても、私の弟子を育てるわけではなく、最高裁判所・弁護士会からお預かりした修習生ですから、あまり偏った修習生活になっても困ります。
 でも大丈夫、私の事務所には、教えたがりの様々な弁護士がいますから、バランスよく何人かの弁護士にくっついて指導を受ければ、バランスのとれた充実した修習になるものと考えています。

 そういえば、私が社会人として第一歩を踏みだしたのは、東京銀行、その前身は横浜正金銀行という古くからの銀行、でした。私が、まだ若手銀行員だったころ、転勤の際に、支店長に呼ばれました。何かと思っておずおずと支店長室に入ると、「転勤おめでとう」との祝辞とともに、「転勤の前、必ず、転勤先の支店長に、自筆の挨拶状(もちろん、封書で)を書くように!」との指導を受けたことをよく覚えています。
 今となっては、「昭和の日本の会社」らしい組織上のマナー指導だったんだな・・・と懐かしく思い出します。現在でも、そのような指導が社会人のマナーとして指導されているのかどうかは知りませんが、例えば、服装にしても、日本の銀行では「どんなに暑くても、営業である以上、スーツにネクタイは必須」とか、派手な外資系に行ったら行ったで「鈴木!そんな安物のスーツやネクタイをするな。特に、米国人は服装で人間を評価する傾向があるから気をつけろ!」なんて・・・
 業界や時代が変われば、先輩の指導内容も大きく変わります。ただ、自分の長い社会生活を振り返るとき、その都度、上司や先輩から、良し悪しは別として、いろんなアドバイスを受けたことを有難く感じます。

 もちろん、今回の平成・令和世代の修習生に、昭和の臭いのするような指導をする気は全くありませんが、良きにせよ・悪しきにせよ、これからの長い人生で、時々思い出してもらえるような指導ができればと思っています。逆に、私の方も、修習生の平成・令和世代のクールなマインドに触発されればいいなと期待しています。

クリスマスの日に

 「今年も頑張りました」 

 今年最後の金曜日になるイブの日(来週の金曜日は大晦日😅)日ごろから我々弁護士を支えてくださっている事務の方々に、感謝のメッセージ・カード
 
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 そして、それなりに頑張った私にもご褒美のワイン

白ワイン


 来年は、ここ数年間、頑張ってきた大型事件の判決が続く予定
 その中には、金融に関する最高裁での判断の可能性も(但し、頭の固い、昨年は2392件の受理事件のうち28件しか判断を示さなかった、最高裁だから、あまり期待もしていないけど )

 来年もがんばるぞ 
 予定している米国出張も行けます様に 

長い裁判の最後のハードル 証人尋問

 長い裁判だ。訴状提出は平成31年(2019年)3月8日だけれども、それ以前の証拠保全等の司法手続きも考えると4年近く取り組んでる事件となる。
 そんな長い裁判も、最終段階の証人尋問を経ると、後は、最終準備書面の陳述で結審し判決となる。

 最終コーナーを回った後の最後の勝負となる証人尋問。
 前回は入院を理由に延期を申し出ていたN氏もようやく法廷に立ってくれた。
 「ファンド募集時に、『本ファンドの出資金は、事業者が当該事業に対して過去に投資した資金の回収に充てる』との説明が必要とは知らなかった」「我々は事業者なので金商法等には詳しくなく、ファンドを募集するM社が金融のプロなので、M社に相談して説明する必要ないとした。。。」
 それでは、金融庁の検査で行政処分になるのも当たり前だ。
 
 しかし、最終的に、ファンドの責任者からこんな単純な証言を得るため、私は、ファンドの対象となったとされる開発用地の現状を確認するべく、北は北海道日高・室蘭、南は鹿児島徳之島まで、日本全国を巡って調査することになってしまった。それはそれで、楽しかったけれど。。。

 尋問が終わって事務所に帰る途中、前から情報交換して、今回も傍聴取材に来てくれたN新聞の記者が追いかけてきた。
 「なかなか取材のできなかったN氏に、初めて接触できる機会だったので、尋問終了後、取材を申し込んだけど、弁護士二人にはばまれてしまいましたよ(笑い」

 判決は、来年3月の予定。

ある秋の日に ~ 虎ノ門・六本木・赤坂・青山

 夏のまぶしい青い光線とは違う、柔らかな黄金色の淡い陽がさす秋の一日
 仕事や読書、ましてやネットしているには、余りにも、もったいない
 テニスやゴルフにはうってつけの環境でも、それも、もったいないほどの素晴らしい秋晴れ
 これは、もう、散歩しかない

 事務所のある虎ノ門を出て外堀通りを歩く
 大通りは、その名のとおり、その昔、江戸城の外堀があった場所
 私が事務所を出て、外堀通りを抜けて、東京地方・高等裁判所に行くのは、世が世なら、庶民がお濠を渡ってお大名屋敷にご参上するようなものだった(笑い

 最近、新築された虎ノ門病院やホテルオークラの真新しいビルを見ながら、へえ~と驚きながら、先には米国大使館
 プライベート・パイロット資格のためにとった米国M1ビザの期限は、確か5年だったよな、それまでに、また行けるかしら・・・ とか思いながら、

 スペイン大使館、スウェーデン大使館を過ぎて、サウジアラビア大使館へ
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 そして、六本木ミッドタウンの裏手の檜町公園で一休み
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 その後、乃木坂方面に出て、乃木坂46が撮影で使ったお馬さんの飼育場(これを真に受ける方はいないとは思いますが、念のため、質の悪い冗談です)を横目に、青山に向かう。
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 その結果、今週初めて、やっと1万歩超えた
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 そして快眠
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ショパンコンクール

 ご存じの5年に1回開かれる有名なピアノコンクールです(もっとも、今年は、コロナの影響で6年ぶりの開催だったようです。) 私の好きな国の一つ、ポーランドでの開催です。実話をもとにした映画「戦場のピアニスト」でもテーマ曲となるノクターンなんかの、あのショパンです。
 
 そのコンクールで、日本人も、3名がセミファイナルに残り、そのうち2名がファイナリストの仲間入りをしたようです(最近は、いわゆる東洋系、中国、台湾、韓国の参加者が増えている傾向のようです)。

 音楽については、ほとんど知見も感性もない私ですが、でもやっぱり、素直に感動できる音楽は大好きです。
 今回のショパンコンクールのセミファイナルも、同じマズルカでも、3名の日本人それぞれのマズルカでとても感動しました。
 音楽的な感性も乏しく、ましてや技術的なことなど全く分からない私でも、やっぱり伝わる・・・何かを伝えてもらえる音楽、そしてそれを演奏するプレイヤーは、とっても素晴らしいと、改めて思いました。
 
 コロナ禍で、なかなかライブで音楽を楽しむ機会も減ってしまいましたが、何か素晴らしいものを伝えようとする感性と技術をもった音楽家のメッセージは、直接、私に届けられると、鈍感な私でも、やはり本当に感動させられます。
 
 上記2名のファイナリストから日本人初の優勝者も出る期待もあります。今年は、マスターズの松山選手や、MLBの大谷選手など、日本人が頑張っています。日本人だから。。。というのも今更という気もしますが、同じ日本人としては、素直に誇りに思えます。

2010年10月21日追記
ファイナルでは、反田恭平さんが第2位、小林愛美さんが第4位に入賞なさったそうです。
おめでとうございます!

 

弁護士の苦労を解説していただける学者さん

 「こんなの、詐欺に決まってる」と一般の人が思われるような事件でも、いざ裁判になるとそんなに簡単にはいかないのが現実です。特に、詐欺をする人が一人の人間ならともかく、会社組織を利用して大掛かりになされると、誰(被告)を、どのような法律を持ち出して、どのような事実(具体的な詐欺行為)をその法律にあてはめて、お金を取り戻す判決を引き出すか。。。法曹関係者なら想像はつくと思いますが、とても大変です。

 そんな弁護士の苦労や判決を出す裁判所の論理を解説していただいたのが、京都大学法学部・法学研究科の准教授をされている西内康人先生です。金融法務事情「金融判例研究」第31号(2021年9月10日号NO.2169)において「ソーシャルレンディングにおいて詐欺不法行為と共同不法行為責任が認められた事案」のタイトルで、私が担当した事件の判決を分析していただいています。

 この事件で、我々が詐欺行為だと主張した被告らの行為を、西内先生は、(ア)「分散投資」との虚偽、(イ)担保の虚偽表示、(ウ)自転車操業の虚偽表示、(エ)ファンド資金の流用、(オ)経営者の使い込み、(カ)グループ会社の増資に利用、(キ)財務状況悪化の不開示、に分類して、裁判所が、このうち特に(ア)を重視した理由を解説していただいています。

 我々弁護士は、様々な不正や虚偽・誤解を生ぜしめる表示の事実を1つ1つ確認し、その証拠を収集しながら裁判を進めていました。それら事実は、相互に関連しながら一連の詐欺行為を構成していたものですが、証拠の明白性にはばらつきがあり、ましてや詐欺の主観的な要素となる行為者の故意をどう立証するかなど、検討し、主張をまとめるために大変な苦労がありました。
 しかし、裁判の進行にともない、主張の明確性・立証の明白性等々から、裁判所が判決書にもっともまとめやすいのではないかと考えた(ア)「分散投資」との虚偽を中心に、主張・立証を組み立てていきました。もちろん、最終段階の証人尋問でも、このポイントに確認に重点をおきました。
 その結果、西内先生に「裁判所は、(上記)(イ)や(ウ)は使わず、(ア)の分散投資の点だけに注目して故意不法行為を認定」しており、この不法行為が被告ら全員の不法行為責任とできた理由を、解説していただいています。
 我々弁護士が、もっとも苦労した点、そして裁判所の判決の合理性について、本当に的確に分析・解説していただいて、たいへんうれしく思うと同時に、我々が気が付かなかったようなポイントも示唆していただいているため、非常に勉強になる論考でした。
 
 現在も、例えば、詐欺グループの会社の役員の責任を追及するときに持ち出す法律は、民法719条でよいのか、それとも会社法429条、430条がよいのか等々、裁判所と話しながら検討すべき問題はいくつもあります。
 依頼者の大切なお金を取り戻す結果こそが、我々弁護士の最大・唯一の目的ですが、そのためにも、裁判所と話しながら裁判所が少しでも認めやすい法律構成と重点をおくべき事実の主張及び証拠を、日々、検討していることを、ご依頼者の皆様にもご理解いただけたらと思います。

映画の中の美人さん

 やっぱり、美人さんに出会うと、なんだかモチベーションがあがります。すくなくとも、ぼくの場合は。
 といっても、どのような方が美人なのか、ぼくの場合に聞かれたら、3人あげられます。

 まず、映画ドクトル・ジバゴのラーラ(ジュリー・クリステー) アカデミー賞で作曲賞となったララのテーマ曲とともに、その青い瞳は、ぼくの中で圧倒的です。
 次は、同時期(というか、同じ年にアカデミー賞を争った)のサウンドオブミュージックの中の長女リーズル(シャーミアン・カー) Sixteen Going On Seventeen との曲とともに、まぶしいくらいの若さで、ぼくを魅了し続けました。
 日本人なら、君の名はの三葉、もっともアニメだけに、この三葉・四葉姉妹と、トトロのサツキ・メイ姉妹と、どれだけ違うのか良く分からないけど  でも、RADWIMPSの軽快な主題歌とともに、日本のアニメらしい美人さん。

 前のお二人は、まだ、ぼくが子供のころ、初めて、テレビの映画放映で観て、子供心ながらも心を動かされました。そして、大人になってから、空間を飛び超えるべく海外への飛行機便での映画鑑賞でした。三葉さんも、飛行機のなかで、「へえ、最近流行ってるらしいな」と観たものでした。
 映画の中での美人さんは、その映像での強い印象は勿論ですが、やはり、時間と空間を超えた異次元体験の中での存在だからか、やはり印象的です。
 ラーラは、日本が無謀だったかもしれない大国ロシア相手の戦争を始めた1905年当時のロシアの美人さんの設定です。その映像は、テーマ曲とともに、ぼくを100年以上も前の、モスクワやシベリアでの異次元時空での体験に引き込みます。
 その美しさを何ら損なうものではないにしても、もし、ドクトル・ジバゴの原作者であるボリス・パステルナークが生きていて(その映画上映の数年前に亡くなっている)その画像を見たのなら、ぼくの想像に過ぎないのですが、小説で次のように語らせたでしょう。
 革命前からトルストイ主義や革命思想を超えて先に進むことをやめなかったニコライ・ニコラーエヴィッチだったが、隣を歩くヴォスコボイニコフ・イワン・イワーノヴィッチにつぶやいた。「それにしても、最近の大衆迎合的な映画とやらは、見ておれませんな。」二人が歩を進めるにつれてほぼ等間隔で、同じくらいの数の雀の群れがぱっと舞い立った。「我々が目指したのは、歴史的な精神の高揚であって、軽薄なリリシズムではないのですよ。」

 でも、そんなことを言ってると、サウンドオブミュージックのジュリーから、日本人に対し、ドレミのレは、♪ Ray,a drop of golden sun で、Lemon の L なんてありえな~い なんて言われそう(笑い
 もっとも日本人にとっては、ドレミファソラシドのシは幸せのシであって、Tea, I drink with jam and bread ♪ のTではないんです(笑い
 


 
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pruaclaweishis

ひたすら明るく、ひたすら前向きに、がモットーの元金融マン弁護士です。

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