昨日の裁判がこれでした。
 私の弁護した被告人は、コンビニでカップラーメン1個(販売価格105円)を盗んだ罪で起訴されました。
 検察官は、「厳罰を科し、長期間矯正施設に収容」することが必要と論告して、懲役3年を求刑したのです。
 私は、「被告人に必要なのは、厳罰ではなく、被告人の心を開かせる周囲の環境である」と弁論して(新64期の修習生が5人も傍聴していたので、1期先輩の私としては、恥をかかないように、ちょっと緊張しました)、判決を待つことになりました。

 これだけだと、なぜ?ですよね。
 実は、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」という法律があって、
 第三条【常習累犯強窃盗】常習トシテ・・(窃盗を)犯シタル者ニシテ・・(過去10年内に3回以上同様の窃盗した場合には)・・(三年以上)ノ有期懲役ニ処ス
 ということなのです。今や珍しいカタカナの法律であることからも分かるとおり、昭和5年に制定され、今まで何の改正等なく続いている罰則なのです。

 つまり、私の被告人は、窃盗「常習」者と論告されたわけです。
 ちなみに、裁判所法では、短期一年以上の重罪については、合議制(裁判官3人)で裁判することが原則になっています。しかし、この「盗犯等」については、例外として単独(一人の裁判官)で裁判できます。
 また、常習犯人により重い処罰があるのは、常習賭博罪とこの常習累犯窃盗等の二つだけです。

 いずれにしても、このような常習窃盗犯は、一つ一つの犯罪は軽くとも、その刑罰は重いのです。しかし、よく考えてみるとこのような法律がなくとも、窃盗罪は最大10年まで懲役刑を科すことができますし、窃盗に限らず懲りずに犯罪を繰り返した場合の刑を加重規定(累犯加重といいます)もありますから、わざわざこのような法律上の加重規定が必要なのか、私としては大いに疑問に思っています。

 裁判長は、優しそうな女性の方で、私の(被告人の生い立ちから、家族関係・人間関係・孤独感孤立感等々を聞いた)長々とした被告人質問にも耳を傾けてくれましたし、最後には、自ら一生懸命しかし優しく、被告人に対して諭してくれました。
 どのような判決になるのでしょうか。