東京高等裁判所(第22民事部)の裁判官である加藤新太郎氏の講演の内容が、「銀行法務21、No.729(2011年4月号)」に掲載されています。
 銀行とのデリバティブ商品に関する紛争を扱っている私にとっては、大変興味深いところもたくさんありましたので、ご紹介したいと思います。

 加藤裁判官は、まず、過去、銀行に対する訴訟が起こりにくかった原因として、1金融機関の従業員の資質・能力が高いこと、2執務規律がしっかりしていること、3無理をしなくても収益があがる・稼げる、ことがあったと指摘しています。
 その上で、最近は、その環境・構造が変化しつつあるとしています。

 私の関心事であるデリバティブ商品の違法な販売は、正に、この第3(及び第2)の点に係わるものです(本年2月2日付記事「違法販売が誘発される仕組み債」に、無理な利益追求を求められている銀行支店長・支社長の現状を書きました。)。
 私の銀行に対する訴訟でも、デリバティブ販売の収益の巨大さ→収益を追求したいという販売動機→不招請勧誘など強引な販売・説明義務に反するメリットのみを強調した違法な販売、というストーリーを描くことを成功させて、裁判官の心証を、こちら側にぐっと傾むけることができればと考えています。

 また、加藤裁判官は、適合性原則と説明義務違反の関係について、次のように説明しています。
 即ち、金融商品取引法40条1号で定められているような狭義の適合性原則は、業者の禁止行為を定めている禁止規範である一方、顧客が自己決定をするために銀行がどういう説明をしなければいけないかという説明義務の問題も、広い意味での適合性原則に含まれる銀行への命令規範なのだと。
 そして、この広義の適合性原則に関わる説明義務に関する事実については、「個別具体的にきちんと吟味していかなければいけない」と。
 要するに、銀行相手のデリバティブ訴訟においては、銀行のデリバティブ商品の販売時における説明方法・内容を細かく挙げて、丁寧に主張立証していくことが不可欠なのです。

 最後に、加藤裁判官は、私どもに、実に大胆なアドバイスを与えて下さっています。
 「メガバンクの中には、担当者はまず保身を図り、他からミスだと指摘されないことに重きをおくのが、基本の執務スタイルではないかと感じることがあります。・・・(中略)・・・保身に走る気持ちもわからなくはないのですが、法務担当者として、それでよいのかどうかということになると、問題もあるように思います。」
 これは、法務担当者に限りません。営業担当者、支店長・支社長、本部の担当者、責任者、みんなそうです。みんなサラリーマンですから。
 しかし、これをどう利用するのか・・・
 は、私の企業秘密ですので、私の依頼者だけにしか教えません。悪しからず。