「これは、貴女が生まれた年のワインなんだよ」とお父さん。
 「えー」と、20歳になった娘が、家族のテーブルに出されたワインのラベル、確かに誕生年19☓☓とある、を眺める、「シャトー・・・らとーる・・・、これって高いんじゃない!?」
 「そう、今、買おうとすればネットで探しても10万円では買えないよ、ましてやレストランで頼めば、20万円かな」と自慢げ。
 「ええっ・・・」(そんな高いワインよりも、同じ金額をもらった方が嬉しかったんだけどと思いつつ)心優しい娘は、「うれしい!飲むのがもったいないね、でも、どうしてそんな高いワインを?」
 「貴女が、生まれた年は、当たり年と言われる年だったんだよ、貴女が生まれた記念にと買ったときは、1万円ぐらいだったんだけど、その後、中国の人とか今までワインを飲まなかった人たちも買うようになる一方で、その年のワインはそれ以上供給されないだろ、減る一方だから・・・(しまった「1万円」なんて正直に言わない方が良かったかな)」
 「なんだ、でも、ありがとう、1万円でも高いよね!」
 「貴女が、生まれたときは、お父さんも駐在先のロンドンでバリバリ働いていたけど、まだ若くて安月給だったから、それでも随分思い切って買ったのよ」と、お母さんのフォローが入って、その当時の若い夫婦と幼かった娘の昔話で、成人式のお祝いの夕食は盛り上がった。

 こんな成人式のお祝いも、ビットコインだとこうなるかも。
 「成人式、おめでとう、これが両親からのお祝いだよ。」と、1枚のカードを息子に渡す。
 「何?」と期待しながらも、たった1枚のカード?と、いぶかしく思う。
 開けてみると、そこには、URLとID、そして(息子の名前と誕生日を連想させる英数字で構成された)パスワード。
 「ありがとう。あっ、時間だから。」それだけ言って、息子は、自室に戻る。
 自室に戻った息子が、さっそく該当するページを開いてみると、それはデジタル・アセット(仮想通貨)会社のHPだった。
 おそるおそる内容を見てみると、たった1枚のビットコイン。
 取引履歴を確認すると、毎年の誕生日に少しづつ、20年にもわたって積み立てられている。
 ここからは、いくつかのシナリオが考えられる。
 ①ベストシナリオ
 「えっ?あのビットコイン!?、やったぁ、これで念願の留学ができる!」狂喜した息子が、さっそくリビングに戻って、改めて、両親に感謝する。
 「昔は、自分も疑心暗鬼だったけど、みんなが買わない頃から、無理のない金額ですこしづつ買っていたら、こうなったんだよ、今では、みんな買うようになったからね」と自慢する父。
 ②あまり良くないシナリオ
 「なんだ?量子コンピューターの発達や政府の規制でもう時代遅れなのに。。。相変わらずのオヤジだな、これでは、1回飲みに行って終わりだな」と、さっそく、アニメを見始める息子。
 「昔は可愛かったのに」「でも、毎年、彼の誕生日を忘れずに、残した取引記録がプレゼントなんだよ」と、しみじみとする夫婦。
 ③もっと良くないシナリオ
 「ええっ、これって・・・家が買えるじゃん!?」と息子。
 「あんな高額のもの、いきなり与えていいんですか?かえって人生を誤らせないかしら」と心配する母親。「あいつもそんなバカじゃないだろ・・・、いずれにしても、我々がそんな高額な出費をしたわけないのだから、それも彼の幸運だよ」と父親。

 成人式のお祝いとしては、やっぱり、ワインの方が、素敵ですね