もとファンド・マネージャーだった弁護士として、もっと活用されてもいいと思う制度の一つに、反対株主の株式買取請求の制度があります。この株式買取請求権は、上場されている株式だけでなく、多くの中小企業のような非公開・譲渡制限付株式についても利用可能です。このような請求は、結局最後は、株価の問題になるのですが、会社と協議しても話し合いがつかない場合には、裁判所に「公正な価格」の決定を求めることができます。

 手続きの概略だけ述べておきますと、

 例えば、上場会社の株式交換の場合には、
・株式交換を承認する株主総会前に、株式交換に反対を通知
・株主総会で反対
・株式を保管している証券会社に個別株主通知の手続き(株主であることの証明をもらう)
・株式交換の効力発生日の20日前から効力発行日の前日までに、会社に買取請求を出す
・会社と買取価格の協議
・30日以内に協議が整わない場合、裁判所に「価格決の定の申立て」を行う

 また、非上場・譲渡制限付株式の場合には、
・会社へ譲渡承認請求
・会社から不承認通知が来た場合に、会社に買取請求
・会社が供託し、供託証明書を請求者に交付
・会社と買取価格の協議
・会社が買取又は指定買取人による買取の通知をしてから20日以内に裁判所に「売買価格の決定申立て」を行う
(ちなみに、自由国民社 「同族会社・中小企業のための会社経営をめぐる実務一切」 著 東京弁護士会 のこの手続きを解説した第2編第1・2章は、私が担当しました。)

といった流れになります。

 本当に、より有利な買取価格で売却できるのかは、ケース・バイ・ケースです。
 しかし、現行会社法において、発行株式の過半数に足りない少数株主が自らの意見や主張を通せる機会は、現実問題としてほとんどありません。現実は、大株主の「やりたい放題」です。少数株主が黙っていると、「会社全体が大株主の物」となってしまいがちです。
 ですから、少数株主であっても、物言わぬ株主ではなく、どんどん自らの権利を主張していくことが大切だと考えます。