写会人日記

2015年09月09日

流星

 山頂のサービスエリアで出会ったおっちゃんはグイグイ踏み込んでくる。
「どこまで行くの? 何しているの?」
「歌を歌っているんです」
「そうかいおいらは歌は知らねえな。演歌じゃねんだろそのなりじゃな」
ひとしきり身の上話。
「たまには親にも電話してやんな」そう言っておっちゃんはスプリングスティーンを口笛で歌いながら、埃まみれのトラックを南へ走らせた。(中島みゆき「流星」超約)

 20年前、震災直後、カメラマン仲間のSくんに大阪から神戸によく送ってもらっていた。長い時間をかけて宝塚有馬を経由して帰る車中でよく聴いたのが中島みゆきのこの歌だ。歌の途中「香川新潟大阪宮城姫路山口袖ヶ浦…」とナンバープレートの地名が出てくる。よどみなく歌えるころには電車が復旧した。この歌に出てくるようなおっちゃんになりたいなと思ったものだ。出会ったばかりの娘さんに「便りのないのがよい便り。体壊さずがんばってみなよ。たまには親にも電話してやんな」とサラッと言えて、演歌だと思っているブルース・スプリングスティーンを口笛で吹きながらトラックを走らせるおっちゃん。そんな流れる星に憧れる。おっちゃんはどこにたどり着いたのだろうか。

psharuky at 23:57 │