写会人日記

2021年04月15日

「デジタル西行」その参

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25年前、わたしは西行法師だった。
正確にはデジカメを持ったデジタル西行だった。「デジタル西行」は月刊イメージングジョイに掲載された。われながら読み返しても面白い。編集部内でもただの温泉好きのホームレスなのでは、と"正論"を吐く人はいたが、人気の連載となりその声は小さくなった。その「デジタル西行」3回目。


 デジタル西行 #3
【終焉の地・京都市東山区・双林寺〜鞍馬編】
 TEXT西田行男

祇園で泣いて鞍馬でいやす
湯にも入らず歌を詠める、なのだ


出家遁世宣言ののちも、いまだ都を離れえぬ西行。親戚に預けられた娘の様子を探りに行ってたりしてたというのだから、このときいまだ現世の未練が断ち切れておらず、家出状態のデジ西と同じ。
もっとも西行の現世未練のトーンは生涯通じてのもので、その湿り気が
愛され続けている要因なのだ……


 京都、祇園近く丸山公園音楽堂の横にある西行庵。ここで亡くなったという説もある。河内の弘川寺でに病に倒れ、京に来て入寂というコースなのだが、小生がわかるのは庵内の西行堂が荒れているということくらいで、まあ、りっぱな草庵というの
もなあ、なのだから、いいのである。いいのであるがの荒れている原因が近くの寺との土地問題らしく、西行堂のある士地の所有権が行ったり来たりで、今回お目通りかなわなかったが、中にある西行像がひっくり返ったままらしい。てなことを考えながら詠める。

きょうになく
きのうの夢やかかる世を
庵の君にいかに伝えむ
  DS

京に泣く、なのである。西行の墓石がある近くの双林寺へまわって祇園へ。四条花見小路。目立つのは修学旅行生ばかりで、たまに舞妓のような格好の娘がいるかと思えば、 2時間舞妓コースの観光客のにわか舞妓。ホンマモンと思って一緒に写真を撮ってる気の毒な人もいる。かにかくに祇園は恋しー!と・吉井勇が歌った祇園も今は昔。お茶屋遊びをする粋な文士も少なく、西陣、室町の旦那はんも不景気なようで、さりとて小生出家の身、ひいきの芸妓がいないわけではないが、逢わじに帰る九十九夜くよ、なんて気取って歩く切り通し。

けふもまた
祇園の秋に行き暮れて
枕なきかも川は涙か
  DS

枕の下を水が流れるのが吉井なら、デジ西は鴨川くらいの涙を流すことができる、祇園に流れるのは涙なのだな。出町柳から叡山電鉄で鞍馬駅下車。火祭り、義経、天狗で有名な鞍馬山周辺を西行の庵跡を探して歩くも見つからず、ただ冬の厳しさは容易に想像できる修行の山。西行は出家後初めての冬をこの山で迎えた。

世を遁がれて鞍馬の奥に侍りけるに(詞書)

わりなしや
こほる懸け樋の水ゆえに
思ひ捨ててし春の待たるる

水が凍っただけで花の咲く春を恋しがっているワシ。出家したはずやのに。自分を責めている正直な西行なのである。山深く、 携帯電話がまったくつながらないのをいいことに街道を北へ進んで、鞍馬温泉へたどりつく。原稿とデジタル写真の催促が編集部よりあったはずだが、そう簡単に捕まっては出家者として失格なのだ。温泉といってもここには同名の宿が一軒あるだけで、流行のスパリゾートの類い。本館には大浴場、レストランや宿泊施設。少し離れた小高い丘に露天風呂・峰麓湯がある。秋篠宮様が入っていたという温泉。秋篠は奈良生駒のあたりのこと。西行出家前、義満時代の歌に、

秋篠や外山の里やしぐるらむ
生駒の岳に雲ぞかかれる


 生駒山にかかる雨雲からの時雨なのだなあ。ストレートな歌いっぶり。現代でいえば安室のような感じで、いきなり結婚(出家)というあたり.も似ていて、だとしたら、復帰したらあきません。
 男性のほうの露天風呂に入ったが、旦那衆が10人くらい長湯していて写真撮ることかなわじ。いかに出家者(風)、気高き理念の持ち主とはいえ女湯には入れず、同温泉の女性マネージャーと相談のうえ、さる女人にカメラを持って入浴してもらうこと
に。つまり女湯潜入撮。入浴中の女人たちには了解のうえのこと。外国人女性も入っていたとの報告で、バワーブックで画像を開く。ウーン、.踏み込みが足らんなあ、も少し左に振らんかい、などと好き勝手に叫びながら、レストランでお礼の釜ごはん (1600円ー)。
秋篠宮様、鞍馬の風景をたいそうお気に召されたと聞き、

名も違え身も違えども美しき
鞍馬をめぐる想いかわらず 
 DS

と、即座に詠んで女性マネージャーに差しあげたところ、さすがです住職様(誰がじゃ)、とたいそう喜ばれ、「人目につかぬよう大切に机の奥にしまっておきます」。オイオイ、それはちと大切にしすぎかな、ハハハ。鞍馬だけにすぐ天狗になります、デジタル西行。





psharuky at 23:58 │