◎「お銚子と徳利の違い」 《治蝶の俳句の散歩道(ちょっといい話 その五十五)》
● 平成二十七年二月一日 日曜日 熱燗
○ 十二月日々折々 その十八
忘年会お銚子を手に酒を注ぐ
熱燗の徳利を手に酒を注ぐ
忘年会お銚子二本追加して 飯島 治蝶
(十二月中旬 忘年会②)
お銚子と徳利 2つの違い、ご存じですか?
お銚子と徳利は、普段同じようなものとして扱われることが多いのですが、実は、全くの別モノなんです。
たとえば、酒場で「お銚子2本ね」と言ったときに出てくるのは徳利。その昔、人々が水筒代わりにひょうたんを使っていたことから、ひょうたんの形をモデルにして作られた陶器の器です。いわゆる燗徳利は、江戸時代の終わり頃に登場しました。
ちなみに、徳利の語源は、「『トクトク』と注ぐことから」、ではなく、「朝鮮語の容器=トックルが徳利になったから」とのこと。
一方、銚子はその字面から見ても分かるように、金物の器のことを指します。もともとは長い柄と注ぎ口のついた鉄製の酒器で、分かりやすく言えば、おひなさまの三人官女の一人が持っているアレ。昔は銚子を使って直火でお燗をしていましたが、湯せんでのお燗のほうが風味が良いと徳利が普及するようになり、いつの間にか混同したようです。
今ではすっかり徳利の独壇場になってしまったため、銚子は、その姿はほとんど見かけられず、「名前だけが一人歩きしている状態」なのです。
とは言ってもまぁ、今さら酒場で「徳利2本追加ね」なんて言うのもしっくりこないもの。2つが別モノだという事実はさておき、酒場ではやっぱり、「お銚子2本…」でいきたいものですネ。(酒の雑学大事典より転載)