◎ 『「見沼の笛」伝説について』 《治蝶の俳句の散歩道(ちょっといい話 その三百五十四》

● 平成三十年六月二十五日 月曜日  
○ 五月日々折々 その十六 紫陽花

葉桜の木漏れ日浴びて公園へ
初夏の旅歴史の道を二人して
初夏の旅公園路傍に説明板
初夏の旅板に見沼の伝説が
初夏の旅板に「見沼の笛」伝説
妻連れて初夏の日を浴び公園へ
新緑の見沼通船堀公園
新緑の公園内を二人して
通船堀公園内に咲く紫陽花                                   飯島 治蝶

(五月下旬 見沼散策 その四)


 『「見沼の笛」伝説について』
 

 見沼村の周辺では、夕暮れ時になると、どこからか美しい笛の音が聞こえてくる。その笛の音を聞いた村の若い男は、音色に誘われふらふらと歩き出し、見沼で姿を消してしまった。笛の主は笛を吹きながら見沼を彷徨い歩く美しい女であった。夜の見沼は暗く、足元は広大な沼地である、一度迷い込めば昼間とてぬけ出すのは難しいところ、そこをもって夜中のこと、いかに屈強な男子であっても美しい笛の音にかどわかされ、さまよえば一度に行方がわからなくなっても不思議はない。さてもその笛の音は美しいことこの上なく、なんとも言えぬ妙なる調べであったという。
 かすかな笛の音を聞きつけた若い男は魅せられてしまい、音のするほうへと吸い寄せられるように彷徨い歩き、やがて一人も戻ってこなかった。数十人のむらの男が消えてしまった村では、見沼の主が何か怨みを持ったために若い男を連れ去るのだと思い、見沼のほとりに塔をたて供養を行った。
 見沼の笛伝説には異伝があって、笛の妖怪の話は都にまで聞こえ、腕に覚えのある武人が正体を確かめようと見沼の辺りを訪れると、なるほど噂に聞こえた美女が姿を現したのをたちどころに切りつけ、手応えを感じたがその場に残されていたのは竹笛一管のみであったため、この笛を大和田の鷲神社に納めた。
 後日、鷲神社に老女が現れ、神官に願い込み竹笛を演奏したところ、周囲の男はたちどころに眠ってしまい、目を覚ました時には老女も笛も姿を消していた。付近の農民がその時の事を「美しい霧が立ち上っていき、そこから妙に優しい笛の音が聞こえた」と称したことからその老女は見沼の竜の化身ではなかったのかと伝えられている。
 まとめ
 伝承はいくつかあるものの、全て美女と笛が登場すること、その笛の音を聞いた男子は多くが行方不明となり戻ってこなかったこと、やがて武士によって退散させられ、後に笛を取り戻しに来るという点は一致している。
 見沼の干拓事業と符号する点も多いことから、干拓事業前は沼地で、人の侵入を拒むほどの広大さを誇った見沼だが、やがて人の手によって開発が進むことで抵抗を見せていた自然の力も徐々に人の前に後退を余儀なくされるという事を現した伝記ではないかと思われる。(くまのお役立ちブログより転載)