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ハイパーレクシアの本の内容紹介、続き。
『Reading Too SoonーHow to understand and help the hyperlexic child』by Susan Martins Miller
(読めるようになるのが早すぎるーハイパーレクシアの子どもを理解し、助ける方法)

今回は、ハイパーレクシアの子どものことばを育てる24の活動、後半です。

<ことばで説明する練習>


(14)「ぼくの考えているもの、あてて」ゲーム
どこでもできるゲームであるが、ハイパーレクシアの子にぴったりの遊びだそう。
内容は昔NHKでやっていてた「連想ゲーム」と同じである。
ヒントを出す人が「人参、白い、長い耳、ぴょんぴょん・・・」などと言って解答者に「うさぎ」を言わせるものなど。そのものの名前が含まれたヒントは言ってはいけない。
語彙が増える遊びのひとつである。
親子で順番にやる。
ここでは、最終的には子供に問題を出させるのが目的である。

親が問題を出すときは、子供になじみのある、具体的で目に見えるものをテーマに選ぶ。
たとえば「お誕生日に食べるものです。いちごがのっています。クリームがついています。あまくておいしいです。」答えはケーキ、みたいに。
子供が問題を出す番のときは、最初はぜんぜん関係ないことばを言うかもしれないが、それでもよいという。パターン化できれば、子供は適切な描写ができるようになってくるからだそう。

rensougameしかしものの説明も、娘にはまだ難易度高すぎだと思う。そこでたとえばこんなカードを作ればどうだろう。
こんなのをいくつか作って、まずは裏の単語を見て「うさぎ!」と答えられることをめざす。
(表の絵を見せて「せいかーい!」とやる。)

何度かやったあとなら、「今度は問題出して」といえばここに書かれた単語をひとつかふたつ、言うかもしれない。
パターン化できたところで、カードにないものに挑戦、みたいな。

(15)「これはなにするもの?」ポスター
日用品の写真を切り抜き、紙に貼って下にその説明を書く。
たとえば冷蔵庫だったら「冷蔵庫はものを冷やします」それを実物の冷蔵庫に貼って一緒に読む。
または、写真と説明を別々にカードにして「ものを冷やします」という文と冷蔵庫の写真をマッチさせてもよい。
youto03これは去年作った「用途かるた」に該当するものである。
選ぶことはできる。まだことばでの描写はできないけど。


<問題解決>


(16)どうしたらいい?
よくある、ささいな問題を考える。たとえば「牛乳を台所の床にこぼした」など。
そして「どうしたらいい?」と聞いて答えさせる活動。

これは楽しそうな活動だ。
知能テストなどでも、「おなかがすいたらどうする?」「のどがかわいたらどうする?」みたいなものが出てくる。
娘は「ご飯を食べる」「ジュースをのむ」などと手話でなら答える。(手話で答えるのは、たぶんこういう質問に慣れていなくて自信がないから)

少し複雑な問題になると娘には難しそうだが、「子供が答えられないときは、解決法の選択肢をいくつか書いたものを見せる」とある。
たとえば「こぼれた牛乳をなめる」「となりのいぬをかりてきてなめさせる」「ぞうきんでふく」など。
(正解以外は、かなりばかばかしい答えにするのを忘れずに。変なものも混ぜておいて笑いをとると活動が面白くなるそうだ。)
ダメな解決法は線で消していって、正しいものをひとつ残す。
後にこれをもっと複雑な問題解決に使うことができるという。
(人と分け合うことを学ぶときや、協力して遊ぶこと、など)

この活動はいつかぜひやってみたいと思った。
たとえば「おともだちのおもちゃをこわしちゃった」「おうだんほどうのしんごうがあか」「スーパーでトイレにいきたくなった」・・・などなど、日常生活のパターンや社会のルールを教えることもできそうだから。
しまじろうのこどもチャレンジには、毎回何かしらのマナーとか社会のルールを教えるページがある。
娘は毎回飛ばしていてあまり読んでいないのだが^^;もったいないのでこのあたりのイラストをスキャンして、こんなカードを作ってみたらどうだろう。
dousuru02カードの表に問題をかく。ジュースをこぼしちゃった。どうすればいい?(しまじろうの冊子からスキャン)三択は「だいふきんでふく。」「もっとジュースをこぼす。」「こぼれたジュースをなめる。」

dousuru03カードの裏に答え。だいふきんでふく。(こちらはテキトーに描いた)


こんな、生活マナーやルールを教える絵カードが市販されている。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング。社会のルールを教える訓練)の絵カードにはこんなのがたくさんありそうだが、けっこうお高い。

↓市販品。けっこうお高い。
http://escor.co.jp/products/products_list15.html
使い方の例。
http://escor.co.jp/products/sub/products_item_sub_sst01.html
高いのでこれまでのしまじろうの冊子を使って自作しようかなと思う。

(17)物語のつづきを考える
子供と一緒に本を読んで、途中で物語をとめる。
単純な子供向けの話でも、問題解決的要素が入っている場合がある。子供に、お話の中の問題を見つけさせ、解決するにはどうしたらいいかを話し合う。それから次にどうなったかの続きを読む。
(たとえば、くうぴいの絵本「きをつけなくちゃ!」だったら、知らない人に声をかけられたらどうするか、などのお話がある)
きをつけなくちゃ!―こぐまのくうぴい (ミキハウスの絵本)
きをつけなくちゃ!―こぐまのくうぴい (ミキハウスの絵本) [単行本]


<言語表出をのばす活動>


(18)わざとばかばかしいことを言って本当のことを聞き出す
今日学校であったことを子供が話してくれないときは、ばかばかしいことを言ってあげる。
たとえば「今日は保育園でなにをしてきたの?わかった!今日一日中、逆立ちしてたんでしょう!」こうすれば普通はなんらかのリアクションを引き出せる。
そうして本当の情報をくれることがある。

(19)わざととぼける。(笑)
こどもに何か要求されたら、すぐにはわからないふりをして、子供に説明するように仕向けるワザである。
たとえば・・・
子供が棚の上にあるパズルがほしいときは、ぜんぜん違う方向に歩いていってみる。
こどもは「ちがうちがう、そっちそっち」というかもしれない。
「そっちってどこ?」とまた別の方向に歩いてみる。
子供が本当にパズルがほしいなら、なんとかわからせようとして「棚の上」など指示をし続けるだろう。

・・・なるほど。PECS絵カードをはじめた頃、おもちゃをわざと手の届かないところに置いて要求させたが、それの進化形のようなものだな。
しかしあまりイライラさせないように、ほどほどに。(^^)

<聴覚処理を鍛える>


(20)1、2、3、スタート!(指示出しゲーム)
子供に、一度に複数の指示に従うようにさせるゲームである。2つか3つの指示を出す。
(電気をつけて、めがねをもってきて、扇風機を消して、など)
口頭でもよいし、書いてもよい。子供に復唱させ、あるいは読ませる。
それから「1、2、3、スタート!」といって指示されたことをやらせる。
最初は2つの指示から始め、できるようになったら3つに増やす。

うちは今、2つくらいの指示なら従えるかな。

上は文章だが、4歳の頃のSTでは単語による簡易バージョンの活動、「お買いものゲーム」をした。
食べ物の絵をいくつも壁に貼っておいて、離れたところから「牛乳と、きゅうりと、りんごを買ってきて」とお願いする。
子どもはそれを覚えて、歩いていって、指示通りのものをとってくるのである。
その頃お買いものゲーム用の手作りおもちゃも作った。(未発表)
またいずれ紹介できたらと思う。

(21)よく聞けました(2つの属性を聞き取る)

いくつかのことばを含んだ単純な指示を出す。
「小さくてしましまのボールを見つけて」など。
最初は指示を書いてやるが、徐々に口頭のみで指示を出すようにする。口頭で指示する前に、「いい、いくよ?よくきいて?」など、子供によく注意して聞くように言う。

これは、以前トイレの壁に赤くて小さい傘、黄色くて大きい傘・・・四角くて大きいクッキー、三角の小さいクッキー、ハート形の小さいクッキー・・・などの絵を貼って「いっぽんゆび」の手遊び歌であてっこゲームをやったりした。2つの属性を聞き分ける遊びである。
詳しくは↓過去記事の真ん中あたり。
http://blog.livedoor.jp/pumpkin1205/archives/50798799.html

(22)どこにある?ゲーム(場所の表現を聞き取る)
子どもの好きなおもちゃや小さいものをいろんな場所に隠す。そして口頭で(必要なら視覚的なヒントも加えて)おもちゃのありかを指示する。
(いすのうしろ、テーブルの上、机のとなり、など)
最初は、おもちゃがあるかもしれないところにラベルを貼っておく。「下」と書いてテーブルの下にはる、など。

これは家でもよくやった。
あらかじめ小さなぬいぐるみをあちこちに隠しておいて、「もういいかい、まーだだよ」といってかくれんぼを始める。
紙に「テーブルのした」「おばあちゃんのいすのうしろ」「テレビのしたの、うえから3ばんめのひきだし」など書いておいて指示する。
または、おやつを小分けにしてラップにつつみ、家のあちこちに隠して「おやつ探しゲーム」をやったこともある。
娘は喜んで探しに行った。
場所を表す表現については、また別途記事にしたいとは思っている。

(23)スぺリングの聞き取り
子供がある単語のつづりを聞いてきたら、文字をひとつずつ言ってあげる。それを徐々に2文字、3文字ずつ一度に言うようにしていく。これができるようになると、複雑な指示に従うスキルもアップする。
(日本語は発音と表記が同じなので、この活動は不向きかも)

(24)クッキング

料理も、指示を読んで理解するという点で、ことばの学習になるようだ。
英語でクッキングなんていう教材もあるくらいだから。(料理を通して英語を学ぶ教材)

単純なレシピを見つけ、子供と一緒に料理をする。子供に材料を読ませ、全部あるか確認させる。そして子供にレシピの指示を読ませ、その順番にやるようにする。
「今度はなにをしたらいいの?」「これはどうやって料理したらいいの?」といった質問をして子供に答えてもらい、読んだものが理解できているか確認しながら進める。

レシピを読みながら料理を作るのは、小学校以降かな。
将来、娘用のレシピを作ってやりたいと思っている。
単純な指示、わかりやすいイラストを入れ、レシピカードを作ってラミネートしてリングで閉じて、料理を作るときにそれを立ててみながらできるようなもの。

*      *      *

ことばを育てる24の活動紹介はこれでおしまい。
これらは小学校になっても楽しめそうな活動である。いや、難易度からいったら、小学校以降が適齢な活動が多いかな。
しかしやりようによっては簡単にアレンジすることができる。
はじめは親が見本を見せてオウム返しさせたり、答えをいくつか用意して見せ、選ばせれば簡単になる。
部分的に答えの出だしを言ってやって、その続きを子供に埋めさせることもできる。
パターン化ができれば、やがてひとりでできるようになるということだ。
子どもにとって難しい課題には、質問を答えを文字で書いてみせてやることも大事だそうだ。
また、次に進む前に、必ず子供に質問と答えを読ませることとある。

こういう活動は、のちにより抽象的な思考をするための基礎になるということだ。