ここは、とある町の喫茶店「Hasta Luego」
 明るい店内には、いつもコーヒーの良い香りが漂っている。

 そして、ここには、「玉猫戦隊 オーブファイブ」の面々が集っている。
 なぜか、ここで彼女らは、私生活も仕事の話もおおっぴらに出来る。
 それは、この店が、あの「おやっさん」の店だから・・・。

 今日も、ドアベルがなり、誰かが扉を開く・・・。


2月23日 夕方 
喫茶店「アスタルエゴ」にて


カオリ「ねぇ!聞いた聞いた? フジコさんの事!」
ミキ 「なになに? 知らないよぉ。」
カオリ「昨日、、秘密倶楽部「オーブ」を急に休んで、慌しくどこかに出かけたって!」
ユウカ「それが、どうかしたの?」
カオリ「もぉ、知らないの?フジコさんが休む事って、殆ど無いの。
    たまに休む時はぁ・・・ご・く・ひ・に・ん・む」
マル 「極秘?!」
カオリ「そう。
    2年前、例のテロ国家が内部クーデタで崩壊した時もお休みしていたし、
    先月の津波で孤立して、救援が絶望されていた村から、奇跡の救出が行なわれた時もお休みだったのよ」
マル 「うっひゃぁ!すげぇだな!」
ミキ 「だって、フジコさんって、CAIの特殊部隊に日本人初、最年少で所属していたんでしょ?」
ユウカ「えっ?そうなの?
    あたしは、内閣調査室にいたって聞いたけど。」
カオリ「何いってるの?
    南米のテロ組織に凄腕のスナイパーとして育てられていたのよ!
    でも、実際にテロに参加する前に、虎ケン指令たちが救出したって噂よ。」
マル 「テロ組織だか?
    おらが聞いたのは、中国奥地の武術集団に育てられたって、きいたぞ。」
チオリ「もう、いったいどれが本当なんですかぁ!」

ミキ 「まあ、どれにしても、フジコさんなら、ありえるかなぁ、と思えちゃうのよねぇ。」
マル 「んだな。
    この前、おらの居合の練習に付き合ってくれただども、全然かなわなかっただ。
    結構、本気出したんだどもな。」
ユウカ「あたしにも、フェンシングの練習中に、アドバイスくれたの。
    これまで、誰も指摘してくれなかった事だから驚いたんだけど。
    確かに技の切れが見違えるようになったの。
    アレに、気付くなんて、凄いって思った。」
チオリ「この前、サーバーのプログラム、思う様に修正できなくて悩んでたらフジコさん、来たんです。
    横から、ちょっと覗いて、
   『あ、これ、構造体が良くないの。MITのライブラリにもっと良い部品があったわよ』
    そう言って、あっという間に書き換えちゃったんですよ。
    それだけで、処理効率、10倍です。」
ミキ 「あたしも、この前の作戦の報告書書いているときに、戦術分析で頭抱えてたら、
   『あ、このタイミングでクローラーを投入したら、もう少し被害が少なくて済んだわよ。』
    って、教えてくれたから、それを戦術コンピューターに登録したんだ。
    するとね、コンピューターも想定外だったみたいで、戦略理論の再構築とか始めちゃって。
    大変だったのよぉ。」
カオリ「あたしだって、あたしだってねぇ。
    最近、彼が冷たいから、どうすれば良いのかしらって悩んでたら、フジコさんが、
   『オトコを落とすのは、なんて言ってもあの時に、一発どぉんと・・・』」
ミキ 「違うでしょ!」
ユウカ「違うよっ!」
マル 「違うって!」
チオリ「違いますっ!」
カオリ「ええっ?そ、そう??
    なんにしても、ミステリアスな女性よねぇ。」
チオリ「過去を知っているのは、虎ケン司令だけなんですねぇ。」
カオリ「そうそう、虎ケン司令なら、今度の作戦もなんなのか知っていると思うのよねぇ。」

不意に扉が開く。

ハルキ「いらっしゃい。」
虎ケン「ハルキくん。ブレンド。」
マル 「あーっ!」
チオリ「噂をすれば、です!」
虎ケン「な、なんだ、お前たち。みんないたのか?」
カオリ「司令!フジコさんの今度の秘密作戦、何なんですか?」
虎ケン「え。。。ええっ?秘密作戦?」
カオリ「そうです!まあ、立場上言えないのかもしれないですけどぉ。
    教えてっ。」
ミキ 「もしかすると、オーブも出撃準備が必要かもしれないし。」
虎ケン「い。。いやっ、俺は聞いとらんぞ。」
チオリ「あのっ、余計な事かもしれないですけど。
    私たちも、フジコさんの力になれればいいなって。」
マル 「んだな。司令。おらたちのできること有れば、言ってけれ。」
虎ケン「だから、知らんといっとるだろうが。」
カオリ「えーっ、司令のケチ」
虎ケン「け、ケチぃ?」
カオリ「じゃ、じゃ、昔のフジコさんのこと、教えてくださいよ。」
ユウカ「。。。あのぅ、どこかの組織で訓練されていたという噂は、本当なんですか?」
虎ケン「ユウカまで!」
カオリ「司令、なんでそう、意固地になってフジコさんの事は口をつぐむんですか?
    もしかして・・・?」
虎ケン「ばっ、バカ。何を言うんだ!兎に角、俺は何も知らんぞぉ!」
一同 「えーっ」
ハルキ「ほらほら、みんな、今度はフジコさんが来たみたいだよ。」
一同 「ええっ?」

フジコ「こんばんはー。
    あらぁ、皆さんも、おそろい?」
ハルキ「もう、さっきから、フジコさんの噂で、大変ですよ。
    何か飲みます?」
フジコ「えーっ?そうなの?
    飲み物はいらないわ。
    それより、ちょっと預かって欲しいものがあるんだけど、いい?」
ハルキ「いいですけど。何を?」
フジコ「ありがとー♪
    みんな!持ってきて!」

 フジコの声に、ドアが開き、倶楽部オーブの黒服達がぞろぞろと入ってくる。
 その手には、みんな、抱えきれぬほどの黄色いバラが。

カオリ「うわっ!凄い量の薔薇・・・。」
フジコ「そうなのよぉ。
    あたしがうっかり、プレゼントは黄色い薔薇ね。なんていっちゃったもんだから。
    もう、昨日から黄色い薔薇ばかり山の様に届いちゃって。」
ミキ 「プレゼント?」
フジコ「そう。昨日は、あたしの誕生日だったのよ。」
ユウカ「誕生日・・・。」
フジコ「そうよ。あたしにも一応、有るのよ。
    さて、これで全部かしら?」
ハルキ「全部・・・って、お店の半分、薔薇で埋まっちゃいましたけどぉ!」
フジコ「いいじゃない。
    これでも、貰った分の三分の一よ。
    残りは、頑張ってお店に飾ったんだから。
    ハルキくんも、ケンちゃんもお店に見にこない?」
ハルキ「いやっ・・・そのっ・・・」
虎ケン「俺は・・・いい。」
フジコ「ケンちゃん、相変わらずねぇ。
    じゃ、ハルキくんだけでも、よってね♪。
    あ、みんなはお店には無理だけど、ここから薔薇、好きなだけ持っていって良いからね。
    じゃね♪」

カオリ「あっ、あ、あの!フジコさん!」
フジコ「えっ?なぁに?カオリン。」
カオリ「きっ、昨日はお店をお休みして、どちらに・・・。」
フジコ「んもう、そんなの、彼氏と一緒に良い所に決まってるでしょ。
    じゃね。」

 ぱちっとウインクして、フジコは店を出る。
 呆然として見送る一同。

ミキ 「フジコさん・・・可愛い・・・。」
虎ケン「・・・昔は、もっと可愛かったぞ。」
一同 「えっ!」
虎ケン「(ぽっ)」
ミキ 「司令!一体、昔フジコさんと、何があったんですか!」
カオリ「白状しないとぉ!!」
マル 「わーっ、おさねぇでけろ!」
チオリ「コーヒーが、こぼれますぅ!!」
ユウカ「・・・おなか、すいた。」

ハルキ「どうでもいいけど、この薔薇、どうするんだ・・・」

・・・かくして、今日も喫茶店「アスタルエゴ」の夜はふけてゆく・・・。

(この物語は、フィクションです。)



 遅ればせながら、お誕生日、おめでとうございます。
 これからも、よろしくお願いしますね。フジコママ。 (^-^)
kiiron


 【TB】自分勝手な女 フジコの黄色い部屋