タイトル_ピンク

この番組は、キヌサヤフードプロデュースの提供でお送りしています。




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 『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』
 富士樹海の機密発射口から発進した「オーブクローラー」の艦内に、再び緊急ブザーが鳴り響く。
 ただちに、秘書ロボット『タンタン』が状況を伝達する。
『サテライトZ ヨリ 緊急連絡!
 衛星軌道上ニ 重力波ヲ 検出!
 何カ 巨大ナ 物体ガ 亜空間カラ ダイブ・アウト シテキマス!!』


 虎ケン司令が問い返す。
「幻魔城ではないのか?」
『タンタン』が否定する。
『幻魔城ノ 数百倍ノ 質量ガ アリマス。
 侵入物体ノ 実体化ヲ 確認シマシタ。
 サテライトZ 高性能スコープ 展開シマス。
 物体ヲ 映像ニテ 捕捉。
 映像 ハイリマス。
 スクリーンヘ 接続・・・ 出マス!』


 タンタンの声と同時に、スクリーンに映像が出る。
 下の方には、青い地球が写し出されている。
 スクリーンの上方から何かが実像を結びながら映りこんでくる。
 段々と鮮明になるその物体は・・・幅が数十キロあろうかという・・・銀色に輝く・・・巨大な円盤母船!!

「な、なんだこれは!」
 思わず、絶句する虎ケン司令。
 そこにタンタンの声が入る。
『物体ガ コノ通信ニ 介入シテイマス!
 防壁 破ラレマシタ!
 映像 デマス!!』


 画像が突然乱れ、人影のようなものが像を結ぶ。
 そして全く感情が感じられない声が流れ出す。

 「息子ヲ 返シテ モラオウ!」
母船・改





★このgifアニメーションは、YORODUYA.BOXさんの許可を得て借用しています。


「さあて、お嬢ちゃん。
 大人しく、その緑のボウヤと玉をこっちにお渡し。
 そうすれば、あんたたちは見逃してあげるわ。」
 サターンネズーが、チオリに向かって言う。
「見逃してあげる、だなんて、ネズロンにしては、珍しいですね。
 どうせ、ククールと玉を受け取ったら、皆殺しなんでしょ?」
 そう言いながら、チオリはトオルの様子をうかがう。
 そう出血はしていないので、傷は浅いようだがショックで気を失っているようだ。
『なんとか、変身しないと・・・。』
 しかし、敵との間合いが近すぎる。

 そんな、チオリの様子を見透かしたように、サターンネズーが言う。
「余計な事は考えないでヨ。
 あたしは、面倒な事は嫌いなの。
 淑大僧正から、その小僧と玉を傷つけない様に持って来いと言われてるんだから、言う通りにしてくれれば、さっさと引き上げるわ。
 さっきは、この馬鹿なネズロン兵が慌てて撃っちゃうから、玉に傷がついたらってドキドキしちゃたけど、その倒れているボウヤが健気にも守ってくれたので、無事の様だしね。
 さぁ!いい加減にさっさとお渡し!
 これ以上じらすと、本当に容赦しないわよ!」
 その声と共に、銃を構えたネズロン兵が一歩前に踏み出す。
『どうしよう!このままじゃ・・・!』
 チオリが迷ったその時。
サターンネズー
「くくーる!くくくーる!」
 ククールが不意に小屋から飛び出してきた。
「ダメ!ククール、こっちに来ないで!!」
 チオリの制止を振り切って、ククールはトオルの傍に向かう。
「そっちじゃないよ。緑のボウヤ!
 こっちにこないと、今度はそのちっちゃなお嬢ちゃんも倒れる事になるよ!」
 サターンネズーが脅す。
 しかし、既にククールはトオルの傍にしゃがみこみ、手にはいつの間にかあの玉を持っている。
 そして、素早くトオルの傷口に手をかざすと、急に手にした玉が輝き始める。
 それを見て、サターンネズーが苛立つ。
「ええい、何をしている!
 さっさとこっちへ来い!
 ネズロン兵!他の小僧どもから始末しろ!!」
「チュチュー!」
 ネズロン兵が、銃口を小屋の出口に固まっている子供たちに向けたその時!

「イエローボール!!」
 黄色い小さな物体が、ネズロン兵めがけて襲い掛かる。
 バシッ!ガツッ!ボキッ!!
「チュ!」
「チュチュー!」
 小さな物体に弾かれるように、ネズロン兵が吹っ飛ぶ!
「だっ!誰だぁ!どこに居る!!」
 慌てて辺りを見回すサターンネズー。
「ホレホレ、どこ見てるだね?こっちだ、こっち!」
 声はバラック小屋の上の方からしている。
「ええい!明かりだぁ!」
「チュチュー!」
 パシュッ!
 サターンネズーの声に、ネズロン兵が照明弾を打ち上げる。
 空き地が、煌々とした光に照らし出されると、バラック小屋の上に黄色い人影が。
「ていっ!」
 その人影がジャンプして、空中でくるくると回転すると、シュタッ!っとチオリの前に降り立つ。
 その人は!

「人の心の闇を明るく照らす 黄色い太陽! オーブイエロー推参!」
「マルちゃん!」
「ゴメンな、チオリちゃん。ちーとばかし、遅かったダナや。
 もう、大丈夫だで!」
「うん!有難う!」
「変身できるかや?」
「大丈夫!」
 そう答えると、チオリはブレスレッドをした腕を斜めに構える。
 それに答えるかのように、チオリのオーブが紫に輝き始める。
 チオリは、その腕を上に突き上げ叫ぶ!
「チェンジ!パープルオーブ セット オン!」
 まばゆい光が迸り、チオリの体、全体を包み込む。
 そして・・・。

「紫色の頭脳! オーブパープル 参上!
 これ以上のオイタは、許しませんよっ!」
「くそっ!こしゃくな!
 撃てッ!撃て-ッ!!」
 サターンネズーの声と共に、ネズロン兵が発砲を始める。
「オーブバトン!」
 イエロー・マルの声と共に、イエロー・マルの手には一本のバトンが握られている。
 そして、素早くそれを回転させると、ネズロン兵の銃弾が全て跳ね除けられる。
「チオリちゃん!今のうちに子供たちを!」
「解りました!
 さぁ!みんな!今のうちに、逃げて!」
「わぁー!!」
 ネズロンの恐ろしさにバラック小屋で釘付けになっていた子供たちが、一斉に逃げ始める。

 しかし、二つの影が、逃げるみんなとは逆にククールに走りよる。
 ユースケとツヨシだ。
「ユースケくん!ツヨちゃん!逃げて!!」
「馬鹿!トオルやククールを置いて、逃げられるか!!」
 そして二人は、トオルの傍に走り寄ると声をかける。
「トオル!大丈夫か!!」
 返事が無い。
 しかし、ククールはじっと目を閉じて、トオルの傷口に手をかざしたままである。
 その手を通じて、ククールのもつ玉から発せられる光が、トオルの傷に浴びせられている。
 不意に、トオルの腕がピクリと動く。
「おい!トオル!トオル!」
「トオル兄ちゃん!」
 ユースケとツヨシの声に答えるかのように、ゆっくりとトオルが目を開く。
「うっ・・・ううっ?ユースケ?ツヨシ?ククール??」
「おっ!気が付いたか!怪我は、怪我の具合は?」
「えっ?怪我?」
 ククールがとおるの様子に気がつき、傷口にかざした手をどけると、そこは服がちょっと破れて血がついているが、傷は・・・。
「え?何だコレ?血?
 なんで、血なんか・・・?でも・・傷は無いよ???」
「くくー!」
 そのとおるの声を聞いて、ククールが自慢げに答える。

 その様子を見たサターンネズーが、怒り狂う。
「ええい!何をしておる!
 私が始末する!」
 そう言って、一歩前に出ると叫ぶ!
「サターンカッター!」
 その声と共に、サターンネズーの腰のリングが外れ、イエロー・マルとパープル・チオリめがけて唸りを上げて襲い掛かる。
 キューイーーーン!
「あっ、あぶねえぇ!」
 前に飛び出すイエロー・マル。
 ガスッ!
 襲い掛かるリングを、腕をクロスしてオーブの部分でがっちりと受け止める。
 リングとブレスレッドが激しくぶつかって火花が出る。
 徐々に、イエロー・マルが押される。
「くっそー!負けねぇだ!」
 イエロー・マルがぐっと力を込める。
 カキーン!
 鋭い金属音と共に、リングが弾き返される。
 リングは、大きく円弧を描いてサターンネズーの腰に戻る。
「ふふん、やるねぇ。小娘。
 しかし、その壊れたブレスレッドで、次が受けれるのかねぇ?」
「えっ!」

 慌ててブレスレッドを見るイエロー・マル。
 確かに、跳ね返した衝撃で、ブレスレッドの一部が壊れている。
「ああっ!オーブレシーバーが!
 おら、早くパープルを助けねーといけねーと思って、まだこの場所を連絡していねぇだよ。
 チオリちゃん!連絡できっか?」
「ダメです!あたしのレシーバーも、さっき、別の衝撃で・・・。」
 それを見て、サターンネズーが笑う。
「おやおや、助けも呼べないようだねぇ。
 ぢゃあ、遠慮なく、こちらから行かせてもらうよ!。」
 サターンネズーは、恐ろしい表情でにやり、と笑う・・・。


「ソレデハ 本当ニ 知ランノ ダナ!」
 スクリーンの人影は、念を押すように言う。
 虎ケン司令が、毅然として答える。
「申し訳ないが、我々にもわからない。」
「ワカランノカ・・・」
 声に、がっくりした響きが篭る。

 虎ケンは続ける。
「ただ、手がかりはあると思う。」
「手掛カリ?」
「そうだ。あなたヘ送られた通信の発進地点は確認している。
 今、我々の仲間が、そこに向かっている。
 我々の考えが間違っていなければ、そこで息子さんを発見できると思う。」
「ホ、本当ダナ?」
「うむ、あなたの話を聞いていると、そこに息子さんが居るのは、間違いないだろう。
 ただ、近くにネズロンの連中が居た事が気にかかる・・・。」
 虎ケンの話を聞いて、相手の語気が粗くなる。

「ネズロン!ヤハリ 彼奴等ガ 我々ヲ 謀ッタノカ!!
 エエイ!ユルサン!!
 ソノ 場所ヲ 教エテ クレ!
 我々モ 行ッテ ネズロン ヲ 叩キ潰ス!!」

「慌てるな!
 気持ちはわかるが、息子さんの安全が確認されないと、ネズロンが何を仕出かすか、わかったものではない。
 もうすぐ、連絡があるはずだ!
 もう少し、待って欲しい。」
「モウ 少シ トハ ドレ位ナノダ?」
「そっ、それは・・・。」

 虎ケンは言いよどむ。
 本来なら、マルから最初の連絡が入っても良い頃である。
 ところが、チオリだけでなく、マルまでも通信が途絶している。
 他のメンバも現地に急行中であるが、早くともあと数十分はかかるだろう。
「ドウシタ! 何故返答シナイ!
 サテハ ヤハリ 我等ヲ 謀ッテオルノデハ・・・!」

「違う!信じてくれ!」
 虎ケンが、その跡の言葉を継ごうとしたとき、タンタンが報告する。
「ブログエイド ニ 携帯カラ 投稿デス!
 サブ・スクリーンニ 投影シマス」

 その声と共に、メインスクリーンの一部の画面がブログエイドの画面に切り替わる。
 そして、そこには・・・。
『こちらは玉猫町の空き地です。
 僕らのトモダチが、怪物に教われています。
 助けて!
 僕らの、宇宙からのトモダチを助けて!!』


 空き地から逃げ出した子供たちは、逃げながら携帯を打っていた。
『僕らのトモダチが、怪物に教われています。
 早く、誰かに知らせて!!』
『トモダチって・・?』
『僕らのトモダチ、宇宙からのトモダチ!
 画像、送ります!』
『すげえ!今、ブログエイドにトラックバックしました。
 応援してるよ!』
『ブログエイドから、コメント来ました。
 もう、向かっているって。
 でも、少し遅れるらしい。』

 走って逃げていたシュウヘイが、ふと立ち止まる。
 そして、一緒に逃げるシュウヘイの友達を振り返って言う。
「おい!戻るぞ!」
「ええっ!だって、怪物が暴れているんだよ!
 僕達に何が出来るんだよぉ!」
「うう、わからない!
 だけど、ククールをほおって置けないよ!
 ユースケも、トオルも、あのちびのツヨシも残ってるんだぞ!」
「・・・よし。じゃあ、もっと、仲間を集めよう。
 たくさん居れば、何とかなるかも・・・。」
「そうだな。」
 シュウヘイ達は、また携帯に向かう。
『集まれ。
 玉猫町の空き地に集まれ!
 僕達のトモダチ、宇宙から来たトモダチが危ない!』


「うわぁぁっ!」
 何度目かのサターンリングの攻撃に耐えかね、イエロー・マルが弾き飛ばされて倒れこむ。
 イエロー・マルの体中は、サターンリングを受けた傷で血が滲んでいる。
「大丈夫ですか?!
 マルちゃん!!」
 パープル・チオリがイエロー・マルに走り寄る。
 そういうパープル・チオリの体も、傷だらけになっている。
 イエロー・マルを援護して、オーブブラスターで、ネズロン兵を倒し、リングの軌道をそらしてきたのだが、もう、ブラスターのエネルギーも残り僅かだ。
「お、おら、大丈夫だ!
 それより、チオリちゃんや、みんなは?」
「大丈夫です!
 でも、もうブラスターのエネルギーの残りが・・・。」
「くそっ、もう少し、もう少し頑張れば、きっとミキちゃんやユウカちゃんが・・・。」
 その時、ユースケ、トオル、ツヨシと一緒に、ククールがイエロー・マルの傍に走ってくる。
「ツヨちゃん!危ないよ!」
 チオリが叫ぶが、ツヨシが言う。
「ククールが、さっきみたいに輪になってって!」
「え!?」
「ククールを中心に輪になってって言ってるんだ!
 お姉ちゃん、早く!」
「で、でも・・・」
「チオリちゃん!言う通りやってみっぺ!」
 イエロー・マルも、気力を振り絞って立ち上がり、みんなでククールを取り囲む輪になる。
「ククールの心を感じて!」
 ツヨシが叫ぶ。
 ククールから、イメージがみんなの心に届く。
 光り輝く盾のイメージ・・・。

「くっくっくっ!緑の小僧を盾代わりにしようなど、甘いわ!
 私のサターンリングは、自由自在に操れるのだ!
 そろそろ、あの世に行ってもらおう!」
 そう叫ぶと、サターンネズーは、再びサターンリングを放った。
 ものすごい勢いで接近するサターンリング。
 それは、まっすぐにパープルを狙っている!
 チオリは、心の中で叫ぶ。
『オーブ、守って!みんなを!』
 次の瞬間、ククールの持つ玉と、パープルの腕の玉、イエローの腕の玉が物凄い輝きを発して、光の盾が現れた。
 バシッ!
 あっさりと弾き返されるサターンリング。
「な、なにぃ!」
 わが目を疑うサターンネズー。
「ええい、そんな盾ごと、吹き飛ばしてくれるわ!
 デュアル・サターンリング!!」
 そう叫ぶと、腰のリングだけではなく、頭のリングも飛び出して、両方のリングがみんなを襲う。
 バシッ! バシッ!
 今度も、リングを跳ね返す光の盾。
「くそう!これでどうだぁ!!」
 更に繰り返し、リングを発射するサターンネズー。
 バシッ! バシッ!
 バシッ! バシッ!
 その攻撃を全て跳ね返す光の盾・・・であったが、跳ね返す位置が、徐々にみんなに近づいている。
 少しずつであるが、みんなのパワーを消耗しているのだ。
 段々、みんなの顔も、苦痛に歪み始める。
「頑張って!ククール!みんな!」
 パープル・チオリが、自分も苦しいのだが気丈に声をかける。
「もう少し・・・もう少しで・・・ミキちゃんたちが・・・。」
 イエロー・マルが苦しげに、そう呟いたとき。

「ユースケ!トオル!大丈夫か!」
 みんなのところに飛び込んで来た人影がある。
「シュ、シュウヘイ!」
「へっへー。戻ってきちゃったよ。」
「馬鹿!危ないだろ!」
「そんな事言ってる時じゃないだろ!俺も輪に入れろ!
 ほら、お前らも入れよ!」
 見ると、シュウヘイと一緒に、逃げた筈の数人が戻ってきていて、シュウヘイの声と共に輪に加わる。

「なんだぁ?雑魚供が戻ってきたのか!
 ええい、一緒に片付けてやるわ!」
 サターンネズーが叫ぶ!
「ほら!来るぞ!!」
 ユースケが叫ぶと、シュウヘイや他の子供も一斉に念じ始める。
 一旦しぼみつつあった輝きが、急速に元に戻る。
 バシッ! バシッ!
 衝撃はくるが、さっきよりも楽に受ける事が出来る。
「くそっ!これでどうだ!」
 再び、執拗に攻撃が始まる。
 が、しかし・・・。

「来たよ!」
「僕も来た!」
「入れて!!」
「頑張って!私も応援する!!」
 どこからとも無く、何人もの子供が沸いてくる。
 そして、子供が加わるごとに盾は広がりと輝きを増す。

「ええい!鬱陶しい!雑魚から片付けてやるわ!」
 逆上したサターンネズーが、走り寄る子供を狙って攻撃をしかける。
 しかし、ククールの目が素早く動くと、光の盾がすっと移動し、近づく子供の前で子供を守る。
「くっそぉ!!!」
 サターンネズーは更に逆上し、攻撃は激しさを増す。
 が、いつの間にか集まった子供の輪は、数百人を超え、光の盾はびくともしない。
 流石のネズーモンスターも、これだけ攻撃を繰り返していると疲弊してくる。
「こっ、これでぇぇぇぇぇどうだぁぁぁぁぁ!」
 最後の気力を振り絞り、気合を貯めに貯めて、サターンネズーが再度、攻撃を仕掛けた。
 バシッ!!
 しかし、強大になった光の盾は、その攻撃をあっさりと弾いた。
 が、その時・・・ピキッ!ピキピキッ!!
「ああっ!ククールの玉がぁ!」
 ツヨシが叫び声を上げた。
 パキーン!
 ククールの玉が、散り散りに砕け散る。
「く、くくーる・・・!」
「やっぱり・・・ガシャポンでつくったんじゃ・・・。」
 みんなの目に、絶望が走る。

「ふぅ、ふぅ、やっと、やっと出てきたわね!
 玉が砕け散った今!小僧にもあなたたちにも、何の用も無いわ!」
 サターンネズーがにやりと笑う。
「死になさい・・・」


 と、その時!
「待ちなさぁい!」
 突然、辺りに声が響き渡る!
「なに?!」
 慌てて辺りを見回す、サターンネズー。
 ふと気付くと、バラック小屋の上に、住宅街の淡い光が逆光となってマントをなびかせて立つ黒い影がある。
「誰だ!」

「この世に悪のある限り、赤い刃が悪を切る。とうっ!」
 黒い影はジャンプして、立ち竦むみんなの前に着地する。
「赤い流星! オーブレッド 見参!」
 その声とともに、バッとマンとを跳ね除けて、オーブレッドが決めのポーズをとる。

「くそっ!ネズロン兵!」
 サターンネズーが新たなネズロン兵を呼ぼうとしたその時!
 ばきっ!ぼくっ!
「チュ〜!!」
 既に延ばされているネズロン兵。
 そちらから、青い影が現れる。
「蒼い稲妻! オーブブルー 参上!
 悪は何人とたりとも、許しはしない!」

 同時にもう一人、ピンクの影がイエローの前に現れる。
「桃色の疾風! オーブピンク 参上!
 悪のハートも 一撃よっ!
 はい!マルちゃん。
 とりあえずは、これ、飲んどいて。
 あ、おこちゃまにはこっちよぉ。」
「おこちゃまって、言わないで下さい!」
 パープルがむくれる。

「き、貴様らぁ!馬鹿にしおって!
 まとめて始末してやるから、観念せい!!」

「観念するのはそっちの方よ!」
 レッド・ミキの声とともに、5人全員が横に並ぶ。

オーブブルー 「地球の平和を乱すものを」
オーブイエロー「私たちは決して許さない」
オーブピンク 「宇宙からの人質を取り」
オーブパープル「子供たちまで巻き込むなんて」
オーブレッド 「あなたの横暴はそこまでよ!」
全員「玉猫戦隊 オーブファイブ!」

 レッド・ミキがイエロー・マルとパープル・チオリを見て言う。
「ゴメンね、二人とも。遅くなっちゃって。」
 ピンク・カオリがボソッと言う。
「途中で、腹ごしらえとか言うからよ。」
「ショウガナイでしょ!今日はお昼も抜きだったんだから!
 そんな事より、一気に決めるわよ!」
「ラジャー。」
「ミキさん!奴の弱点は、あの大きな胸です!」
 パープル・チオリが、さっきククールの光の盾の中で敵をスキャンした結果を報告する。
「わかったわ。有難う、チオリちゃん!」
 レッド・ミキはにっこりとチオリに笑いかけると、キッとした顔で隣のブルー・ユウカを見て言う。
「行くわよ。」
「どれで決めるの?」
 ブルー・ユウカが、得意なオーブ・ソードをかざして聞く。
「いえ、こっちで!」
 ミキがブラスターを構える。
「ラジャー!怒り心頭・・・てことね。」
「当然。子供を人質にするようなやつは、許さない!」

「ええい!何をごちゃごちゃと!
 これでも喰らえ!!」
 痺れを切らしたサターンネズーが、再びサターンリングで攻撃を仕掛ける。
「オーブ・ソード!!」
 ブルー・ユウカのソードがサターンリングを弾き飛ばす。
「オーブ・キック!!」
 いつの間にサターンネズーに近づいたのか、ピンク・カオリの踵落しが炸裂する。
「ぐえっ!」
 サターンネズーがすっ飛ぶ。
 その間に、再び5人がミキを中心に集まる。
「行くわよ!」
「ラジャー!」
 5人が、それぞれのオーブブラスターを重ね合わせる。
 5人のオーブから5色のエネルギーがブラスターに流れ込む。
 そのエネルギーを受けて、重ねたブラスターの正面に、光り輝く光球が出現する。
 そして、5人が声を合わせて叫ぶ!
『マキシマム・オーブ・ストリーム!!』
 光球が、更に明るく輝き、巨大化する。
 よろよろと立ち上がろうとする、サターンネズー。
「フィニッシュ!!」
 ミキが叫ぶ!

 ズシューーーーーン
 巨大化した光球が、物凄いスピードでサターンネズーを直撃する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!邪魔皇帝陛下ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ちゅどーーん!!

「やったぁ!」
 子供たちからの歓声が上がる。
 しかし、次の瞬間、夜空から眩い光がみんなを照らし出す。
「ネズロンの新手??」
 身構えるオーブファイブの面々。
 しかし、そこに現れたのは・・・。
「な・・・何?これは・・・!」
 いつの間に現れたのか、彼らの頭上には巨大な円盤母船が浮かんでいた!
母船・改






 とっさに、オーブブラスターを身構える、ユウカとミキ。
 が。
「やめて!」
 ツヨシの声が響く。
「ツヨちゃん?」
 チオリが振り向くと、ツヨシがククールとともに前に出てきた。
「くくー、くくるー!」
 嬉しげにククールが叫ぶ。
「ククールを迎えに来たんだ。敵じゃないよ。」
『その通りだ。
 その円盤は、敵ではない。』
 ミキのオーブシーバーから虎ケン司令の声がした。
「司令!」
『その子の両親が、心配している。
 急いで、その子を両親のもとに返してあげてくれ。』
 虎ケン司令の声にあわせるかのように、母船から一際輝きながら、一つのカプセルが下りてきて、地面に到着するとドアが開く。
 どうやら、これに乗せろと言う事らしい。

 ミキは、ククールの方を振り返っていった。
「さあ、あれに乗って。お父さんとお母さんが待っているわ。」
「くくー!」
 ククールは、嬉しそうに一声鳴くとカプセルに向かって歩き始めようとした。
 その時。
「ククール!」
「ククール。」
 ユースケが、トオルが、そして集まっていた子供たち全てが、ククールに駆け寄ってくる。
「良かったな!ククール!」
「元気でね。」
 口々にそう言いながら、ククールの手を握ったり、肩を叩いたりしている。
 ククールも、嬉しそうにそれに答える。
「もう、迷子になるんぢゃ無いぞ!」
 偉そうにトオルが言う。
「迷子じゃないよ。攫われたんだよ。」
「あれっ?そうだっけ??」
 その時。
「おーい!ちょっと前、空けてくれよ!」
 ユースケの声がして、人ごみが割れる。
 ユースケが、ツヨシをつれて来る。
 ツヨシの顔は、もう、涙でぼろぼろになっている。

「ほら、お前もちゃんとお別れを言えよ。」
 そう言って、ユースケがククールの前にツヨシをそっと押し出す。
 ツヨシは、懸命に涙をこらえて、ククールに話し掛けようとするが、なかなか言葉が出てこない。
「くくー?」
 ククールも、心配げにツヨシを見つめている。
 見かねたトオルが声を荒げる。
「ほらぁ!ツヨシ、早く言わないと・・・!」
 そのトオルをそっと、押し留めて、チオリが優しくツヨシに言う。
「ツヨちゃん。
 ククールが、どんなに遠くに行ってしまっても、ククールとツヨちゃんの心は繋がっていると思うよ。
 そうじゃなければ、あんなにククールの言葉がわかるはず、ないもの。
 ククールとツヨちゃんは、もう、本当のトモダチだよ。」
「ほ、本当のトモダチ?」
 ツヨシは泣きじゃくりながら、チオリを見る。
「そう、だから、ニッコリ笑ってククールを送ってあげよ。
 ツヨちゃんが悲しそうだと、ククールも心配で、おうちに帰れないよ。
 ね?」
 チオリはそう言って、ツヨシの顔を見る。
 一瞬の間を置いて、うんと頷くツヨシ。
 そして、改めてククールの方を見て、もう一度涙を拭くと言う。
「ククール、元気でね。そして、僕のことを忘れないで。
 僕も、僕もククールのこと、忘れないよ。
 だって、だって僕達は・・・、本当の、本当のトモダチだからね。」
「くくー。くくーる!」
 わかっているよ、という仕種でククールが鳴く。
「ククールっ!」
 ツヨシが、こらえ切れずにククールに飛びつく。
 周りの子供たちからも、すすり泣く声がしている。
 そして・・・。

「ミキさん。リーダーがこんな事で泣いていては、困ります。」
「なっ、なによぉ。良いでしょ?ちょっとぐらいは。」
「へへっ、そういうユウカちゃんの、目に光っているのは何だべ?」
「えっ、いや、これは・・・。」
「全く、素直じゃないんだから。ユウカは。」
「そういうカオリちゃんも、あまり泣くとマスカラ取れますよ?」
「うっ、うるさい!子供は黙ってないさい!」
 ミキは、涙をぬぐうとククールとツヨシの方に向き直った。

「さあ、そろそろ、行きましょ?」
 ツヨシもククールから離れて、涙を拭う。
「わかったよ。元気でね。ククール。」
「くく、くーる!」
 ククールも一声鳴いて、もう一度、ぎゅっとツヨシを抱きしめると、カプセルに向かって歩き出した。
「さよなら、ククール!」
「元気でね!」
 また、子供たちの声が大きくなる。
 ククールがカプセルに乗り込んで、大きくてを振る。
「さよなら!忘れないでね!くくーる。僕も絶対忘れない!
 本当の、本当のトモダチの事を!!」
 ツヨシが大きく叫んだ。
 みんながちぎれるように手を振る中、カプセルのドアが閉まり、カプセルは円盤に吸い込まれた。
 そして、現れたときと同じように、円盤母船は物凄いスピードで、しかも、物音一つ立てずに飛び去っていった。

「いっちゃったなぁ・・・。」
 ユースケが言う。
「ククールぅ。」
 心細げにツヨシが呟く。
 チオリは、そんなツヨシのほうを振り返って、にっこり笑って言った。
「大丈夫、ツヨちゃんとククールの心は繋がっているよ。
 本当のトモダチなら、どんなことがあっても、どんなに距離が離れていても、ね。」

<第9話 遊星から来たお友達だぞ! 完>