89日の記事で、朝日新聞Web論座編集部の湯之上隆氏の論考に対するえげつない対応について書いた。STAPに関連して編集部トップの意に添わない記事を掲載した湯之上に対して、それまで小保方氏を目の敵にし、科学を理解していないサイエンスライターである粥川氏を起用して同じWeb論座で湯之上氏への批判記事を書かせのだ。

 これならばまだ理解できる。
Web論座編集長は自分の意に反した行為を行った湯之上氏へ嫌がらせをしただけである。単に人間がゲスであれば無理のない行動であろう。しかしながら、驚いたのは朝日新聞の「科学誌サイエンティフィック・レポーツ」(http://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84.html)なる欄で粥川氏の非科学的なWeb論座の論考をリンクしてあるのである。他の記事は皆、科学誌サイエンティフィック・レポーツに発表されている論文の紹介なのでその異常さは一目瞭然であろう。

 これは科学に対する冒とくと言っても過言ではない。科学誌の記事を紹介する欄で科学論文とは関係なく、しかも自分たちの主張を支持する非科学的な提灯論考をリンクさせたのである。
 
 朝日新聞は従軍慰安婦問題、福島原発報道において捏造に近い記事を掲載してきた。そして今回は科学に対する冒とくを行った。この新聞社は自分の主張を貫くためなら事実を捏造し、異を唱える主張に対しては嫌がらせをする新聞社なのである。

 小保方氏は捏造をして理研を追われた。個人では許されず、巨大組織さらにマスコミならば許されるという理由はない。捏造者に対する論理を適応し、朝日新聞はマスコミから追い出すべきであろう。


 微細加工研究所長所長の湯之上隆氏がBusiness Journalに「朝日新聞、「海外STAP細胞論文発表」記事の掲載を一旦拒否…何度も執筆者に修正要求」なる論考を載せた事に対して、反・小保方派から批判が噴出している。

 

 事の起こりは、同氏が朝日新聞のWeb論座に「米国とドイツでSTAP細胞関連の論文発表-不都合な事実を無視するマスメディア」なる論考を寄稿しようとしたことに始まる。ここで「米国」とは、テキサス大学のVojnitsらのiMuSC細胞」作製の報告を指す。昨年1217日の記事で紹介したが、Vojnitsはマウスに物理的損傷を与えることによって、筋から幹細胞様の細胞が誘導されることを発見した。「ドイツ」とはハイデルベルグ大学のKimらの報告のことであり、ある種の培養免疫細胞を小保方氏らの酸処理よりももっと低いpHpH3.3)で処理すると、アルカリホスファターゼという多能性のマーカーの一つが発現するようになったという報告である。小保方氏らがマーカーとして用いたのはOct4(この遺伝子が活性化されると細胞が緑に光る)という遺伝子であったが、Kimらの処理ではOct4遺伝子は活性化しておらず、キメラは勿論のことテラトーマ形成能の有無も調べていないので、彼らの結果は「多能性を示した」とは言えない。

 

 湯之上氏はWeb論座編集部から何度も寄稿文の修正を要求され、最終的に3点の変更を飲んで修正原稿は発表されたが、その後の朝日新聞のやり方がえげつなかった。湯之上氏の記事の批判記事をすぐにサイエンスライターを名乗る粥川準二氏によって書かせ、同サイトに掲載したのである。Business Journalの寄稿では、Web論座への寄稿の内幕と編集部および粥川氏への怒りがぶちまけられている。

 

 湯之上氏のBusiness Journalの記事に対して、国立情報学研究所の松本啓史氏は「修正してアレだったんか。。。専門の半導体産業の記事は大丈夫なんだろうか?」と専門の資質自身をも疑問視するツイートをし、ハーバード大の山形方人氏も「その根拠とする点はめちゃくちゃ」とツイートしている。このサイトにも愛好家がいる「世界三大不正STAP事件の正しい理解を社会に広める会」は「正直「残念」という気持ちさえある」とのこと。

 

 湯之上氏はBusiness Journalの論考で最初に断っておくが、私は「反・小保方派」でもないし、「親・小保方派」でもない」と述べているが、「反・小保方派」はそうは見ない。私もこのサイトで何度も同じことを書いたが、中立的に書いていても「反・小保方派」側から「小保方氏寄り」と烙印を押されてしまう。湯之上氏の疑問は「あれだけ大騒ぎした重要な科学上の発見であったはずなのに、なぜそれに関連した発表についてマスコミはまったく報道しないのか」というある面極めて「素朴」な疑問であり、それは「STAP細胞はあったのか、なかったのか」あるいは「あるのか、ないのか」という疑問を持つ一般の人の気持ちに通じるものだろう。ところが素直にその疑問は受け取られない。

 

 「世界三大不正」ブログ氏は、「回答は単純で、「政府レベルでもSTAP細胞論文はねつ造および研究不正と認定されたから」とのことだが、これはまったくの的外れ。山形氏は「こういう変な話がいつまでもでたりするのは、やはり権威のある研究者が「意味なし」と明確に言わないからです。世の中の人が言葉を信じるのは、やはり有力大学のその道の偉い専門家の言葉でしょう。そういう人が全く無言なので、狂言みたいなものがいつまでも広がったりする」とツイートしているが、私はこれにも同意できない。勿論、木星氏らの「STAP現象が再現された」という主張にはそれ以上に同意できない。科学的に最も適切な言い方は「米国のVojnitsら、およびドイツのKimらの結果は、小保方氏らの仮説と関係がある可能性があるが、再現性も含めて今後もっと詳細に調べないとわからない」ということであろう。

 

 このブログで何度も指摘しているが、非科学的な議論に対抗するために非科学的な議論をすべきではない。粥川氏の論考では、Vojnitsの結果と小保方氏らの研究の違いを意図的に強調しているが、STAP論文に書かれた文章をよく読めば粥川氏の認識は誤りであることがわかるだろう。論文のDiscussionの冒頭で笹井氏は以下のように述べた。

 

This study has revealed that somatic cells latently possess a surprising plasticity. This dynamic plasticity—the ability to become pluripotent cells—emerges when cells are transiently exposed to strong stimuli that they would not normally experience in their living environments.”

 

 つまり、この論文の主張は「細胞が通常の生活環境で経験しないような強いストレスに一時的にさらされると細胞の初期化が起こる」ということなのである。「強いストレス」が何かは特に指定されてはいない。「通常の生活環境で経験しない」ものであれば何でも起こり得るということを「帰納」したのだ。ただし、帰納の根拠となった「現実」の再現性がなかった、あるいはねつ造されていたので「完全なる(結果に基づかない)仮説」となっているということである。「空想」に近いが、それでも「仮説」としては残っている。

 

 小保方氏は最初STAP細胞のことを「動物カルス」と名付けたが、笹井氏はSTAPに変更した。STAPとはstimulus-triggered acquisition of pluripotencyの略である。これは単なる名前の変更ではなく「概念」の確立でもあったのであろう。「酸性」、ATP」、「(細胞膜に孔をあける)ストレプトリジンO」の処理を、笹井氏は帰納して「経験しないような強い刺激」という概念にしたということだ。それゆえ、粥川氏が一生懸命その違いを述べれば述べるほど、「概念」を理解できていないことを自ら露呈している事になる。

 岡山大学で起こっている問題については昨年の922日、127日、110日で取り上げた。

 

 医学部の論文に改ざんの疑いがあるとして薬学部の森山、榎本教授が内部告発を行ったが、それは認められず、逆に教員へのハラスメントを行ったとして、一昨年の925日付で停職8ヶ月の懲戒処分を受けた。この懲戒処分は、医学部出身の森田学長による報復処分である疑いが指摘されている。懲戒処分は昨年の525日に終了したが、その直前の520日に森田学長から「別の非違行為の疑いがあるので自宅待機」という命令を受け、その後ずっと自宅待機処分が続いたあげく、昨年末に「教員としての適性を欠く」という理由で教育研究評議会によって解雇が決定された。

 

 両氏は仮地位の確認と賃金相当の仮払いを求めて岡山地方裁判所に仮処分の提訴をしていたが、その判決が66日に言い渡された。仮地位の確認は認められなかったが、「解雇は解雇権の濫用であり無効」との判決が下され、賃金の仮払いは認められた。森山氏に対する判決文がネット上に示されているのでhttp://warbler.hatenablog.com/entry/2016/06/06/234958、森山氏について岡山大学教育研究評議会と森田学長がいかにデタラメな審議を行ったかを検証したい。

 

 岡山大学は森山氏の解雇理由として以下の9項目を挙げていた。

(1)森田学長と許理事を被告とする告訴状を岡山地方検察庁に提出した。
(2)(1)の刑事告訴に係る記者会見をした。
(3)フリーライターに論文不正に関する情報を提供した。
(4)A准教授を被告とする告訴状を岡山地方検察庁に提出した。
(5)B准教授を被告とする告訴状を岡山地方検察庁に提出した。
(6)森田学長に対する訴訟提起に係る記者会見を行った。
(7)森田学長とX理事を被告とする告訴状を岡山地方検察庁に提出した。
(8)停職中に学内にメールを発信した。
(9)調査及び人事審査委員会への出席命令に違反した。

 

 森山氏は「(1)、(4)、(5)、(7)については告訴状を岡山地方検察庁に提出していないのであるから、明らかに事実誤認」と主張していたが、判決は森山氏の主張を完全に認め、「当該告訴状を岡山地方検察庁に提出しておらず、解雇事由の(1)、(4)、(5)、(7)の事実は、いずれも不存在である」と結論している。

 

 (2)の刑事告訴に係る記者会見についても、記者会見を行った事実は認めるが、解雇事由(1)の告訴についての会見ではなく、解雇事由(2)も不存在と結論されている。これは少し事情が複雑なので説明を加えると、森山氏が告訴したのは「森田学長や許理事」ではなく、「森山氏の研究論文にねつ造・改ざんがあるとする旨が記載された文書を岡山市内の新聞各社に送付した人間」である。差出人が不明なので、森山氏は「被告訴人不詳」として名誉棄損で告訴し、その会見を開催したということである。

 

 フリーライターへの情報提供(解雇事由(3))については認めるが、そのこと自体が「教授としての適性に欠ける」という解雇事由に該当しないと裁判所は判断した。森田学長らが森山氏らに論文不正の隠蔽を要求するなどのパワーハラスメントを行ったとして起こした森田学長らへの訴訟提起に係る記者会見(解雇事由(6))については、「言論・表現の事由として保護されるべき正当な行為」であると認定されている(この訴訟は岡山地方裁判所で棄却されている)。

 

 解雇事由(8)のメール送信は、森山氏が停職中に学内に向けて送信したものである。この停職処分は、森山氏が教員へハラスメントを行ったということで受けたものであるが、これについても仮処分で「懲戒権の濫用」が認められ給与の仮払いが命じられている。森山氏は「この停職処分は、不正論文の告発に端を発している」などと記載したメールや他のメールを薬学系教職員等に送信している。これについて裁判所は「停職処分中もメールを送信することは禁止されておらず、メール内容も相当なものであった」として解雇事由に該当しないと結論している。

 

 事由(9)の調査及び人事審査委員会への出席命令違反については、調査委員会の了承を得て書面で応じているので、出席命令違反ではないと認定された。この委員会は、上記の(1)~(8)に対する行為に対する処分を検討する委員会であり、森山氏が求められた出席は「弁明の機会」であり、その機会を単に放棄したに過ぎないと結論されている。ちなみに、この調査委員会の報告書に基づいて開催された教員懲戒等審査委員会は「停職6ヶ月が妥当」と判断する報告書を昨年の911日に森田学長に提出している。前の停職が525日で終了しているので、この処分が行われたとしても1124日で終了していたはずである。それより20日遅れた1214日付けで、森山氏は「教員としての適性を欠く」という理由で、教育研究評議会において「普通解雇」が決定されている。

 

 訴訟合戦となり、泥仕合的な感は否めないが、それにしても岡山大学の解雇理由のデタラメさは尋常ではない。「訴訟の事実が無いものを訴訟が有った」と認定し、「言論・表現の事由として保護されるべき正当な行為」ですら解雇事由にしてしまうのだ。北朝鮮のことを批判できないほどの人権無視である。教育研究評議会には法学部出身者が3名(理事・副学長の荒木勝氏、大学院法務研究科長の神例康博氏、法学部長の波多野敏氏)いるが、彼らはいったい何をしていたのだろうか?このようなことが法治国家とされる我が国で行われていることは驚愕に値する。

 

 この岡山大学問題に対しては、研究者コミュニティは極めて冷淡である。小保方氏の研究不正に対しては嬉々として粗捜しをするのとは極めて対照的である。

 

 我々は科学者である前に一市民であることを自覚すべきだろう。岡山大学が行った行為は「事実のねつ造」であり、私たちは「研究のねつ造」への怒りを持つのと同様に、一人の市民として「事実のねつ造」に怒りを持つべきなのだ。文科省も少しは何とかしたらどうなのか。このような「ねつ造」をする人たちがトップにいて「教育」ができると思っているのだろうか。

 

 心配なのは地位保全がされていないので、森山、榎本両氏の研究室の後任教授人事が進められているということである。薬学部の教授は、森山・榎本氏らは「ねつ造」によって解雇されたことを十分に認識し、人事の停止を求めるべきだろう。そして、教授選に応募した研究者も辞退すべきだろう。今回の仮処分の結論の明白さからすれば、本裁判も同様の結果となることはほぼ間違いない。教授になりたいと思う気持ちは理解できるが、まず人間としての矜持を持つべきだ。

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