最近、トップジャーナルへの中国本土からの論文の発表が非常に目につく。勿論、中国人が非常に優秀であることは、米国に居る中国人研究者が活躍してきたことからわかっていたことであるが、今は本土からの論文も非常に多く、またそのクオリティも高い。噂によると、NatureCellおよびその姉妹紙のようなトップジャーナルに論文を発表すると一報当り数十万円単位のボーナスをもらえるという話であり、トップジャーナルへの発表はステイタスの向上や研究費の獲得だけでなく、実生活におけるメリットもある。

 

 中国からの論文の増加は、中国政府が科学に対して積極的な投資をしていることを反映している。こうした政策によって、諸外国に滞在し優れた研究成果をあげてきた中国人研究者が本国に戻るようになっている。アポトーシス研究で著名なXiaodong Wang博士(アメリカ科学アカデミー会員、元ハワード・ヒューズ研究所所属)も帰国し、北京生命科学研究所で所長(director)を務めている。余談であるが、中国の科学への投資は、日本の大学の図書委員に最も大きな影響を与えている。それは、論文投稿数の増加に伴い、雑誌社の審査の仕事が増え、またページ数が増加しているので、雑誌の値段が毎年着実に上昇しているためである。限られた予算の中における図書委員の専らの仕事は、どの雑誌の購読を止めるかということである。

 

 そんなことを感じる今日この頃であったが、中国からの論文増加によって日本の科学的な地位がおびやかされつつあるという記事がNature Index 2017に掲載された(http://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8622)。これに関連して山形方人氏のツイッターで「現役工学系教授からみた日本の大学の惨状」http://anond.hatelabo.jp/20170323162129)なる記事が紹介されている。

 

 おそらくこれがほとんどの大学教員の偽らざる感想であろう。研究費の「選択と集中」にも問題があるが、「なによりも重要な「研究時間」の減少がひどすぎて目も当てられない」ということはもっと深刻な問題だ。勿論、まったく時間がないということではない。しかしながら、研究にはゆっくりと思索する時間が必要なのである。講義と大学の用事の間に1時間空いたからといって研究のアイデアをねることなどはできない。ずっと、ずっと考え続けたとしても、多くの場合アイデアは出ない。しかしながら、ふとしたきっかけでアイデアがまとまることがある。アルキメスは風呂の中でその瞬間、「Eureka」と叫んだ(https://ja.wikipedia.org/wiki/Eureka)わけであるが、Eurekaの話は、小保方氏の話(http://www.newyorker.com/magazine/2016/02/29/the-stem-cell-scandal)にも出てくる。風呂だけでなく、寝ている時にもひらめくことがある。この仕組みは大脳生理学的にも解明されつつあり、脳は我々が寝ている間にもさぼらずに昼間の情報を結びつけているということだ。ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹は、枕元にノートを置き、夢でひらめいたアイデアを忘れないように書き留めておいたという話を聞いたことがある。「夢でのひらめき」は研究者なら一度は経験しているだろう。

 

  「現役工学系教授からみた日本の大学の惨状」には以下の記述がある。

 僕よりも、もっと偉い教授陣が集まる教授会で何が議論されているかと思えば、やれ大学改革だ、グローバル化だ、大学院授業の実質化だ、オープンコースウェアだ、アクティブラーニングだ、学位プログラム化だ、単位互換制度だ、デュアルディグリーだと、文科省の顔色をうかがいながら、申請書作成やら制度設計に明け暮れ、めでたく予算が当たった暁には、今度は膨大な業務に押しつぶされ、ホント自分で自分の首を絞めているようにしか見えない。

 

 これが今の大学の偽らざる状況だろう。こんな状況を見て、大学での研究者としての道に魅力を感じなくなる若い人も少なからずいると思われる。教授もぼやきばっかりだ。

 

 教員の時間は、何の見識もない学長によっても奪われている。岡山大学における森田学長と森山教授の争いを見れば明らかだろう。研究ができない人間が、世界的に活躍する研究者を潰しにかかるのである。文科省が大学を「トップダウン」型の組織に変えることによって生じて来た問題である。「全国国公私立大学の事件情報」サイト(http://university.main.jp/blog/)を見ると、多くの大学でトラブルが発生していることがわかる。

 

 悲惨な状況を回避するために「米国へ行く」という選択肢も今まではあったが、トランプ政権では科学予算が大きく削られ、NIHの予算も約20%カットされるとの話(http://science.sciencemag.org/content/355/6331/1246.full)。米国における研究も不安定要素が高い。残された道は、文科省を解体して日本の大学と科学行政を転換させることぐらいか。


 失うものはない。全国の大学教員よ立ち上がれ、そして団結せよ。

 小保方氏への名誉毀損を認めたBPOの決定に対してNHKは反論し、いくつかのブログ記事では、小保方氏の主張は「大半が退けられている」、「多くが問題無しとされている」や、「名誉毀損とまでは言えない」という少数意見の方が強調して取り上げられている。また、何人ものサイエンスライターが疑問を呈している。これらに対して論評したい。

 

 「結論ありき」ブログ(http://blog.livedoor.jp/peter_cetera/)については、前の記事のコメント欄でかなり書いたがもう一度その問題点を指摘しておきたい。彼らは、小保方氏の7つの主張の内の2つが認められた事について、「小保方氏の主張は大半が退けられている」と述べ、「ゼロイチの判断で言ったら、ゼロではなかったので『勧告』ということでしょう」と結論している。これはあたかも「ほとんど問題がなかった」ということを指摘していることになるが、このような捉え方はおかしい。

 

 例を出せばわかるだろう。石井委員会では、小保方論文の6つの疑惑(研究不正)が検討された(www3.riken.jp/stap/j/f1document1.pdf)。

 

1.Obokata et al., Nature 505:641-647(2014) 論文

1Figure 1f d2 及びd3 の矢印で示された色付きの細胞部分が不自然に見える点。

2Figure 1i の電気泳動像においてレーン3 が挿入されているように見える点。

3Methods の核型解析に関する記載部分が他の論文からの盗用であるとの疑い。

4Methods の核型解析の記述の一部に実際の実験手順とは異なる記述があった点。

5Figure 2d, 2e において画像の取り違えがあった点。また、これらの画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する点。

6)2.Obokata et al., Nature 505:676-680(2014) Figure 1b(右端パネル)の胎盤の蛍光画像とFig. 2g(下パネル)の胎盤の蛍光画像が極めて類似している点。

 

 これら6つの点に関して、(1)「不正行為はなかったと判断される」、(2)「改ざんに当たる研究不正と判断した」、(3)と(4)は、「過失によって引き起こされたものであって、研究不正とは認められない」、(5)「捏造に当たる研究不正と判断した」、(6「研究不正であるとは認められない」という結論であった。もし「結論ありき」氏らの論理を使えば、「疑惑の大半(2/7と2/6の違いはあるが)が退けられており、ゼロイチの判断で言ったら、ゼロではなかったので『研究不正』ということでしょう」となるが、このような結論がおかしいことは誰にでもわかるだろう。要は「ダブルスタンダード」なんである。BPOの勧告に対する見解を「大半が退けられている」というならば、小保方氏の不正についても「大半が退けられている」と述べるべきであり、そうでないと論理が一貫しない。

 

 次に「ため息^2ばかりのブログ」氏であるが、同氏は211日の記事で以下の表を示している(http://seigi.accsnet.ne.jp/sigh/blog/?paged=2)。

 

審議事項

審査結果

小保方側の反応

NHKの反応

タイトルでの「不正」という表現の与える印象

問題なし

了承

了承

専門家の指摘の与える印象

問題なし*

了承

了承

CGやナレーション、その他演出の与える印象

独立して評価しない

了承

了承

申立人が若山研究室のES細胞を盗んだという印象を与えるか

人権侵害あり**

了承

了承できない

実験ノートの引用方法とその放送に著作権法違反があったか

問題なし

了承

了承

申立人と笹井氏との間の電子メールの放送に問題があったか

品位がないが問題なし

了承

了承

取材方法に問題があったか

問題あり

了承

お詫びした

 

*:冒頭に持ってきたのはフェアでないという委員がいた

**:9名の委員中2名が問題なし(「人権侵害があったとまでは言えない」「委員会があえて名誉毀損とするべきものではない」

 

 「ため息」氏は「審査結果(勧告)」を、基本的には「問題あり」と「問題なし」の2つに分類している。しかしながら、「勧告」はこのように単純化して述べられていない。例えば「タイトルでの「不正」という表現の与える印象」については、同氏は「問題なし」と分類しているが、勧告では「こうした表現の使用が申立人に対する否定的な印象を与えることは確かであるが、論評として許されないとは言えない」である。「論評として許される」とは書かれていないのだ。この「勧告」を読めばわかるが、ほとんどの表現が「----とまでは言えない」となっており、「問題はない」などとは書かかれていない。そして「勧告」の「結論」では、「人権侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えないが、科学報道番組にふさわしくない演出や、申立人に対する印象を殊更に悪化させるような箇所も見られる」と、指摘された2つの問題以外にも多々不適切な箇所があったことを指摘している。「問題あり」と「問題なし」に単純化して、「問題なし」という項目を多く見せているのは「小保方憎し」のためであろうが、「問題なし」と「問題があるとまでは言えない」では意味が大きく異なるのだ。

 

 詫摩氏についても前の記事のコメントでも少し触れたが、BPO批判の第二弾が出たようなので、彼女の論点の問題を指摘しておく。

 

  まず最初の「STAP細胞をめぐるNHKスペシャル BPO判断に問題はないか?(1)」(https://news.yahoo.co.jp/byline/takumamasako/20170228-00068084/)では、「視聴者が同判断したか」をBPOの委員が「主観」によって判断しているという点に対して、以下のように疑問を投げかけている。

 

BPOの会見を通しての私の違和感の1つは「委員が想定する視聴者がどう受け止めたか」という二重に主観的な内容が判断材料になる点だ。そうならざるを得ないことは理解できるが、放送当時や放送直後のSNSでの反応や個人ブログでの記事、NHKに寄せられた声など、何らかの委員の主観だけに頼らない根拠が出てくると思っていたのだ(もちろん、この方法にも限界はあるし、調べ方によっては偏ったデータになる可能性は否定しない)。もっと突っ込んだ表現をすれば「委員の主観を裏づける客観的なデータが何も添えられていない」ことに疑問を感じる。

 

 そして、「テレビ朝日ダイオキシン報道事件」においては「報道された地域を産地とする野菜の価格暴落といった「視聴者がどう受け止めたか」を裏づける客観的なデータがあった」と述べている。

 

  一読すると「なるほど」と思えなくもないが、「客観的データがあった」から報道側が敗訴したという詫摩氏の認識は誤っているのではないかと思われる。少なくとも、ネット上で検索する限りでは、最高裁が東京高裁の判決を覆して差し戻した理由は「摘示(=具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げること)された事実とは、当該報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、判断すべきである」との見解の下、「(報道が)真実であることの証明があったか否かについては、環境総合研究所の調査結果からも、所沢産の白菜わずか一検体からも「真実であるとの証明があるとはいえない」」と結論したからであるhttp://www.maroon.dti.ne.jp/mamos/tv/dioxin.html)。つまり上にも述べたが、「結論ありき」氏らや「ため息」氏のような、小保方氏の個々の主張が認められたか、認められなかったのかを議論することは的外れで、「放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮」すべきなのである。

 

 詫摩氏は、「STAP細胞をめぐるNHKスペシャル BPO判断に問題はないか?(2)」(https://news.yahoo.co.jp:443/byline/takumamasako/20170306-00068097/)では、「判断にはSTAP研究に対するある程度の知識は必要となる。委員会に誤解はなかったか」と、専門的知識の不十分な理解から委員会が結論したと批判している。

 

BPOの委員会はSTAP研究が行われていた時期と元留学生のES細胞が発見された時期に、2年以上の差があることを問題視していた。だが、それはおかしいとわかるだろう。勧告書の12ページには「STAP研究から2年以上経過した時点における元留学生作製のES細胞の保管状況」という文言があり、STAP研究が201111月に終了したと考えていたようにも読めてしまう。そうであったとすればそれは明らかに事実誤認だ。

 

 そして、「勧告書は「STAP研究から2年以上経過した時点の保管状況に疑問を呈する部分が放送されたのか、その主旨を理解するのが困難である」としているが、「STAP研究が行われている真っ最中」の保管状況を問題にしていたわけだ」と批判しているが、これも的外れである。Li氏の細胞についてあのように報道するならば、NHK側がLi氏の細胞を利用してSTAP細胞が作製されたという根拠(「真実性」)を示す必要があったのである。


 「勧告」14ページには、「しかし、これらの事情を超えて、若山氏や遠藤氏の解析対象となったSTAP細胞が、元留学生の作製したES細胞である可能性を裏付ける資料は示されていない。NHKは「留学生のES細胞が、STAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という遠藤氏の指摘を引用しているが、可能性が否定しきれないという程度では、摘示事実c」の真実性が証明されたとは言えない。また、摘示事実c」について真実であると信じるについて相当性があることを示す資料も示されていないから、相当性も認められない。」と述べられている。ここでは「可能性が否定しきれない」ではなく、「可能性がある」という事を提示する必要があったのだ。

 

 詫摩氏は「科学者に意見を求めたのか?」という最後のパラグラフで「論文が投稿された後も、受理されるまでは追加の実験をするのはよくあることだ。このことは、現役の生命科学の研究者であればおそらく誰もが普通に知っているだろう。」と述べているが、これは議論のすり替えであろう。STAP細胞の実験が終了していようがいまいが、そのようなことは関係なく、「報道側がポジティブなエビデンスを示していないことが問題」とBPOは結論しているのだ。それが示されていなければ、番組の演出から、多くの視聴者は「アクロシン入りのES細胞」と「Li氏の細胞」は同じ思い、それが放送倫理に違反して名誉毀損をしているということになるのだ。

 

 体調を少し崩したこともあり、ブログ記事を書かない状態が続いてしまった。最後の記事は昨年の1114日なので、もう3ヶ月近く記事を更新していないことになる。その間に文科省の天下り問題が発覚した。文科省行政の問題点については後日しっかりとした記事を書きたいと思っているが、簡単に触れておく。問題の本質は、国立大学の運営交付金や私立大学の経常費補助金の減少と、それに対応して増加している競争的研究資金と大学教育改革推進のための補助金にある。国立・私立を問わず、大学とすれば競争的資金や教育改革補助金は喉から手が出るほど欲しい。ではどうすればよいか?研究および教育の競争的資金には審査があり、審査員は主に大学教員(場合によっては企業人も入る)であるから、文科省のさじ加減でこれらを左右することは基本的にはできない。しかしながら、申請書類をどう書いたら審査員からの評価がよくなるかといった点については、文科省の役人は熟知している。また、今後どのようなプロジェクトが立ち上がるのかについても文科省出身者ならいち早く情報を得る、あるいは予測することができる。評価される申請書を書くには、大学内での改革(私は改悪だと思うが)をある程度進めておく必要があり、それゆえどれだけ早く情報を取れるかは、申請書作りには非常に大きなポイントとなる。それゆえ大学は文科省から天下りを受け入れる。12,000万円の投資(人件費)で数千万〜数億円のプロジェクト資金を獲得できれば安い「買い物」ということだ。

 

 それにしても、「また早稲田か」である。120日の記者会見で、鎌田総長が文科省の吉田前局長の早稲田大学への天下りに関して「違法なあっせん行為を止められなかったことは反省している」との謝罪。しかしながら、早稲田は、天下り監視委員会の調査に対して、「事前に文科省から想定問答を渡され、「形式的な調査のため、この通り答えてもらえれば調査は終わる」と説明されたため、事実と異なる供述を行った」とのこと。これは「捏造」でしょう。小保方氏の博士論文のコピペよりももっと悪質な行為だ。彼女の場合は知らなかった面があるが、「事実と異なる供述を行った」人は、嘘を言っていることを自覚していたはずである。小保方氏の学位を剥奪したという懲罰を鑑みれば、「事実と異なる供述」を行った人は懲戒免職ものだろう。この大学の伝統なのか鎌田総長だからなのかはわからないが、早稲田には「倫理」などという言葉は存在しないのだろうか。早稲田生命理工の有志の先生方も、再度、大学にしっかり意見を言っていただきたいものだ。ところで、小保方氏のTissue論文の捏造疑惑については、その後、大学の研究不正告発窓口に訴えたのであろうか?

 

 さて、小保方氏が訴えていたNHKスペシャル「不正の深層」に対するBPOの委員会決定が昨日示された。ほぼ予想どおりと言えよう。2014729http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/2014-07-29.html)と82日(http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/2014-08-02.html)の記事を参照されたい。729日では「これは「放送倫理・番組向上機構」に通報した方がよいほど悪質な話ではないだろうか」と書いたがまさにそのとおりになった。また、82日の記事では「STAP論文」と「NHKスペシャル」の類似性を示した表を掲載したが、それも的確であった。表の「捏造の疑い」では、STAP論文では「STAP細胞による多能性(テラトーマ形成)を示す実験において、脾臓由来と記載しておきながら、実際は骨髄由来の結果(小保方さんの博士論文由来の図)を示す」であり、一方、NHKスペシャルでは「小保方さんのフリーザーに保存してあったSTAP実験とはまったく関係のないES細胞を画面全体に示すことによって、小保方さん捏造の印象を強める」であり、まさにこの点がBPOから「名誉毀損の人権侵害が認められる」という判断の根拠となった。男女の声で語らせた小保方氏と笹井氏のメールのやりとりは、729日の記事では「嫌らしい」と書いたが、BPOは「品位を欠く」という表現であった。

 

 理解できなかった点は、NHKヒアリング等で、遺伝子解析を行った遠藤氏の「元留学生のES細胞(前記のz)がSTAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という指摘を使って弁明をしたということである。遠藤氏はLi氏の細胞については解析を行っていないはずなので、そのような指摘をしたとは考えにくい。科学者として発言するならば、少なくともSTAP細胞とLi氏の細胞の比較解析を行い、その上で「両者に顕著な差がなかった」という結論を得ない限り上のようなコメントはできないはずだ。遠藤氏が科学者特有の「可能性は除去できない」という「一般的」表現を、NHKが「科学的にはできない」と悪用したのではないだろうか。BPOの決定にNHKが反論したとのことであるが、「品位」がないどころか、常軌を逸しているとしか思えない。

 

 さて、「結論ありき」の科学者陣であるが、相変わらずとしか言いようがない。委員会決定文を読んで「申立人の主張の大半は退けられていることが分かります」とのこと。この表現を使えるのは、大半が「放送倫理上問題がない」と判定された場合であろう。少数意見の二人(奥委員と市川委員)も「放送倫理上は問題があった」と認めている。日本語がよく理解できないのか、あるいは「結論ありき」なのかはわからないが、いずれにしても文章をねじ曲げて伝えることは本当の科学者ならばやめるべきだろう。BPOのすべての委員が放送倫理上の問題があったことを認め、多数は「名誉毀損による人権侵害」の一線を超えたと考え、少数は一線は超えていないが、その近くまで行っているというのが結論なのだ。

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