予想どおり、小保方さんの不服申し立ては、理研の調査委員会によって却下され、これで小保方さんの研究不正認定は確定した。懲戒委員会が設置されたとのことで、通常だと1ヶ月程度で処分が下されることになるらしい。理研の規程では、「研究不正」に対しては原則、諭旨退職か懲戒免職とのこと。

 

 調査委員会の結論が出される直前に、弁護士によって小保方さんの実験ノートの一部が公開された。多くの研究者(おそらく研究者でなくても)の感想は「ずさん」という一語につきるだろう。九大の中山敬一教授は「落書きレベル」と言ったらしい。このノートの開示は「小保方さんに裏目に出た」と、ほとんどの人が思っているだろう。しかしながら、私はこのノートを見て別のことを考えてしまった。

 

 もし小保方さんに、「こんなずさんな記録しかとれない私が、間違えずに図を作成できると思いますか?」と問われれば、私は「無理です」と答えてしまうだろう。そう思わせるのに足る極めて説得力のある実験ノートだった。

 

 捏造が行われる時にしばしば起こることは「試料やデジタル媒体の紛失・消失」である(「試料の保存に使っていたフリーザーが壊れた」、「コンピュータが壊れた」、「帰国時に送った荷物がコンテナごと海に落ちた」など)。実験ノートの場合には、該当箇所の欠落や、記載があやふやとなっていることだろう。ところが、小保方さんの実験ノートはそうではない。「8ヶ月で数ページの実験ノート」と「無差別」に多くが欠落しているのだ。この状況では、問題の箇所だけではなく、ほとんどすべての図と実験ノートを照らし合わせることができないのではないだろうか。その小保方さんが「捏造」というような「高等な作業」を本当にできるのだろうか?

 

 

 勿論、このような疑問があっても、小保方さんの研究不正認定は変わらない。なぜならば、前にも述べたが、「研究不正のガイドライン」においては、「被告発者側に疑惑解明の義務」があるからだ。このルールが研究不正においては極めて必要であることは、ノバルティス社のディオパン研究不正の例を見れば明らかだろう。東京地検特捜部が薬事法違反の疑いで家宅捜査を行ったにもかかわらず、「当該の元社員が、データ改ざんの事実を否定、「アドバイスをしていただけ」と、主張しているため、立件が難しいという状態となっている」と、伊藤博敏氏が「ノバルティス事件「高血圧村」の生態と罪に地検のメスが入らない理由」と題したレポートで述べている(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39175)。「不正行為や共謀行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せない場合は有罪」とできれば、おそらく処罰は可能となるだろう。

 

 さて、Yahoo意識調査によると、調査委員会の「再調査は不要で、論文は不正」という結論に対して、2/3近い人が「納得できない」との意見を表明している。ネット上では、「「報道ステーション」の古館キャスターは、科学をわからず的外れのコメントをしている」との批判的意見があるのを見たが、私はそうは思わない。「研究不正のガイドライン」の理屈を、一般の人に理解してもらうことは極めて難しいのだ。それゆえ、2/3もの人に納得してもらうためには、「捏造をした」という証拠をはっきり示す必要があり、それには理研に保存してあるサンプルの分析が必須である(私が、小保方さんを擁護していないことは、今までのこのブログを読んだ人には理解していただけると思うが、誤解する人もいるので、改めて述べておく。私の意見は「論文はすぐに撤回し、処分を甘んじて受ける」)。

 

 記者会見では日経サイエンスの古田さんが、また毎日新聞の記事などでも指摘されているが、一般の人が理解し、納得できるようにするためには、小保方さんの残っているサンプルを分析し、そこに「不正」の証拠を見つけることが必須だ。そして、それこそが、誤った論文発表の報道をして世間を騒がせた理研の最高のプライオリティでなければならないはずだ。しかしながら、会見で理研の川合理事は「検証実験が先」であり、「お金と人は限られているので、現時点では残ったサンプルの分析は考えていない」と答えたのである。

 

 理研はSTAP論文の撤回は求めても、STAP細胞の特許の撤回は求めていない。そして、残っているサンプルは分析せずに、STAP現象の再検証をしている。これらのことから導かれる合理的な結論は、理研は「「STAP現象は存在するかもしれない」と考えており、検証実験で再現できれば、それを理研の特許とする」ことを意図しているのではないか(職務発明なので、理研も特許出願人となっているはず)。「保存されているサンプルを分析しても、わかる事は、単に「捏造」かどうかが判明するだけで、理研には何のメリットもない」と考えているのではないか。

 

 もし私の推測が本当なら、理研は国民を欺いていることになるのではないだろうか?

 

 記者会見の時に、古田さんの「理研にあるサンプルの分析」という意見に対して、川合理事が「極めて貴重なご意見であり、国民の皆様に納得してもらうためには、保存サンプルの分析は必要だと思います。私から理事会に強く働きかけます」と答えれば、まだ理研に対する私のこの疑念は晴れたと思うが、「プライオリティが「検証実験」よりもずっと下」という趣旨の発言は、何よりも「理研が国民に説明責任を果たす意思をもっていない」ことを如実に示しているとしか思えない。保存サンプルの分析を即座に開始するとともに、理研としての特許申請は撤回し、さらに丹羽先生のNature protocol exchangeの論文(STAP細胞の作製法を記載)も撤回すべきだ。

 

 理研の理事会以外にこのことを伝えたい人たちは、小保方さんが所属する理研CDBの「研究室主宰者」たちだ。彼らは3月14日の声明http://www.cdb.riken.jp/jp/index_stap_140314.html)で、「わたしたちは同じ研究者として科学の公正性を回復、担保するためのあらゆる努力を払う所存です」と述べている。もしこの言葉に嘘偽りがないのなら、これらのメンバーで竹市所長の所へ赴き、「理研に保存してある小保方さんのサンプルの早急な分析」を主張するべきだ。そして自らは無理でも、主宰者の研究室の研究補助員に協力させるなどして、一日でも早く分析を終了させ、国民に対しての説明責任を果たすべきだ。それができれば、理研が再度信用を取り戻すチャンスもあると思うが、今の状態では、「特定国立研究開発法人の指定の見送り」どころか、私も含めて「理研は潰した方がいいかもしれない」と思う人が増えるばかりだ。