【大阪ラーメン部】

 ある日の昼下がり。産経新聞大阪本社編集局で「月刊オーサカ箱」編集長、白岩賢太と部員の田中一世が「ご当地ラーメン」について、熱っぽく語り合う姿があった。

 白岩 「そういや、なんで大阪にはご当地ラーメンがないんや?」

 田中 「ほんまですね。あってもいいとは思いますが…。ないんなら自分たちで作っちゃいましょうよ」

 そんな何気ないやりとりがすべての始まりだった。4月某日。ラーメン好きの社会部記者が集まり、勢いだけで「大阪ラーメン部」が誕生した。

 ■究極の一杯「まず食材だな」

 古くは「天下の台所」と言われ、今も「食い倒れの街」を誇る大阪。全国各地のご当地ラーメンがしのぎを削る全盛期にあって、大阪ではなぜか地域に根付くラーメンがない。

 記事を通じて、大阪人をうならせる「究極の一杯」はできないものか-。結成まもないラーメン部の期待を一身に受け、「くいだおれ」記者の異名を持つ中井美樹が、ある達人に教えを請うため、さっそく横浜に向かった。

 各地の有名店が集う「新横浜ラーメン博物館」。達人が経営する店を訪れると、眼光鋭い1人の男が姿を見せた。

 「支那そばや」店主、佐野実氏(59)。その世界で知らぬ人はいない「ラーメンの鬼」。仕事で怒鳴られ慣れているとはいえ、恐る恐る趣旨を切り出し、必死でまくし立てた中井。腕を組みじっと黙り込んだ達人のオーラに圧倒されながら、次の言葉を待った。

 「食材だな」

 おびえる中井を推し量ってなのか、「鬼」は親身になって説明を続けた。実は佐野氏、佐賀県唐津市で地元食材にこだわったラーメン店をプロデュース中。「唐津もそこから始めて食材を探したんだよ」。何度も市場などに足を運び、すっきり塩味のご当地ラーメンを完成させたのだという。

 では大阪なら、どんな食材が考えられるのか。

 「例えば…(しばらく考え込む)。あっ、ふぐはどうだ? てっちりの後、雑炊にするとうまいだろ。ラーメンにふぐの頭でとっただしを使ったら上品でコクのあるスープになるんじゃないか」

 確かに大阪人はふぐが大好物だ。価格の問題はあるとはいえ、いいアイデアかもしれない。「大阪にいる弟子も紹介するよ。きっと協力してくれると思う」。その後も様々なアドバイスをくれた佐野氏。素顔はとても優しかった。

 まだ始まったばかりのラーメン作りだが、佐野氏のおかげでほんの少し、光が見えたような気がした。

 「食材にこだわるのはなぜかって? おいしいものとおいしいものを掛け合わせたら、どんなものになるか想像したいんだ。『これがラーメンだ』っていう決まりはないからね。ただ究極の一杯ってのは、毎日食べたくなるラーメンなんじゃねーか」

 取材の最後にも熱く語ってくれた佐野氏。帰りの新幹線の中で、中井は何度もノートを読み返した。

 ■白岩賢太(34)

 岡山県出身。ラーメンも好きだが、実はうどんがもっと好き。

 ■中井美樹(34)

 泉州生まれ、泉州育ち。少々ぼんやりしている三姉妹の長女。

 ■田中一世(30)

 千葉県出身。5年間の大学生活で「主食はラーメン」が定着。

 【U35】(月刊オーサカ箱)は、35歳以下の記者で取材・執筆しています。お堅い記事ではなく、雑誌やテレビのバラエティー番組のようなノリで、サブカルチャーの要素をふんだんに盛り込んだ構成にしてみました。あっという間に“廃刊”となる可能性もありますが、読者のみなさんの応援を糧に今までにない紙面を作れたらと思っています。(「月刊オーサカ箱」編集長・白岩賢太)

 投稿やお便り、質問は下記のアドレス(月刊オーサカ箱【U35】編集部)までお寄せください。u35@sankei.co.jp

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