2017年11月09日

お早うございます、よろず 齧る です。

今回齧ったのは、
です。

その前に宣伝を一つ。

 このブログとは別に新たに「よろず 齧るのblog」
 というのを始めました。
 
 そちらでは、日頃感じていること、考えたこと、
 また、趣味のことなどを自由に、さらにはこちら
 で齧った古典を読み直した場合も、そちらで発表
 していこうと思っていますので、どうぞお越しく
    ださい。

さあ、それでは本題に入りましょう。

といっても、いきなり、また第Ⅳ期と銘打ちました
が、自分のなかでは書き方に多少の変化を感じたと
き、期を改めることにしています。変わっていれば
よいのですが---。

さて、例によって本書で印象に残ったところを挙げ
ると、

一カ所は、
 『「だれも否定できませぬことは、この町が栄えた
 原因が、当地で交易をするひとびとにあたえられて
 いる自由にあるということでございます。」これは
 アントウェルペン(アントワープ)市にすむ外国商人
 が、為替取引の自由に干渉しようとした企てに反対
 して、フェリーぺ二世(中略)にかき送った書簡の一
 節である。』
 (本書P129~130、ただし(アントワープ)はブログ
 作者の挿入、本書にはありません)
であり、

もう一カ所も同じく第二章(一)経済革命から、
  『一般に、政府になまじっか借款能力があるより
 も、政府が破産してしまう方が、人類に危害を与え
 ることが少なかったでろうと、思われる。(中略)ル
    ネサンス時代に起りつつあった中央集権国家はどこ
    の国も、絶望的な財政状態に直面していた。それ
 は、近代的な行政技術や軍事技術がなお中世的な財
 政制 度と結びついていたために、生じた。』
    (本書P133~134)
です。

前者の記述は当然としても、後者も、スペイン国王
フェリペ(あるいはフェリーペ)2世(1527~1598年)の
治世にもあてはまる記述です。

フェリペ2世といえば、まだ映画は観ていませんが、
たしか『エリザベス ゴールデンエイジ』には出てき
ている"はず"で、若い人にはその方がピンとくるかも
しれません。

そして、百科事典によれば、フェリペ2世は、
  『スペイン国王(中略)スペインの王位とともに
 ネーデルランド(中略)新大陸とアジアの植民地を継
 承(中略)、1580年にはポルトガルとその海外領土を
 併合し、ここに「陽(ひ)の没することのない」大
 帝国が出現した。』
    (電子辞書版ニッポニカ『フェリペ2世の項』 小学館
 発行  )
というほどの大帝国を築いた?引き継いだ?その国王に
対し、

最初の引用文は、スペイン領ネーデルランド(今のオ
ランダやベルギー辺りをイメージしていただいて)アン
トウェルペン―当時、ヨーロッパの首都というほどの
繁栄振り(トーニー)の国際商業都市の一商人が、フェ
リペ2世にあてた書簡の中の言葉らしく、

これを見ると、やはり自由とは、優れて商業的あるい
は商人的な概念として発展したのだと思わざるをえま
せん。結局、開発した新しい製品や取引システムで、
どこまでも自由にやらせてほしいという願望がありま
すから。

そして、その書簡を受け取った方のフェリペ2世は当時
のヨーロッパを代表するような、文字通りの帝王で、

わたしなら、それだけの富を得たなら、それこそ何も
せずに遊んで暮らすところですが、

帝王にとっては大事なことはそういうことではなく、

やはり、
  『(前略)陸上で軍隊を編成し、軍事作戦を策定す
 る決定権をもっていた人間集団が、金銭的な計算
 にまったく共感しない(中略)王侯やその大臣にとっ
    て、戦争とは、名誉と、威信と、英雄的自己主張
 の領域に属する営為であった。』
     (ウィリアム・H・マクニール著 高橋均訳『戦争の
 世界史(上)―技術と軍隊と社会ー』P213、中公文
 庫)
とあるように、

お金の問題ではなく、いや、もう少し穏かな言い方を
するなら、お金だけの問題ではなく、ある王が、たと
えて言えば、「アレクサンダー大王を越える存在にな
りたい」とか、そういう類の、名誉や威信にかかわる
願望など、心のことが問題だったようです。

だから、話が脱線しますが、このことは現代において
も正しく、たとえば北朝鮮は「独裁国家だから、自身
の政権の存続が最優先の課題だ
」というような話をよ
く耳にしますが、それは半分は正しくても、重要な部
分が欠けていると思っています。

それはわたしから見れば、「自己の名誉あるいは威信
を保つ形での
自身の政権の存続が最優先の課題」とい
うことなのだろうと思っています。

なぜなら、ミサイル開発を断念すれば、あるいは非核
化すれば、超大国アメリカ相手の話なので、一応政権
の存続は保障されると思われるので、もし、それが
優先
なのなら、応じるだろうと思われるからです。

何しろ、何も領土の一部を割譲しろなど、難しい話が
出ているわけではないのですから。

ところが、それでも話に応じないのは、現状なら、す
なわち核をもつ、あるいは開発を続けてさえいれば、
良くも悪くも、印象としては、世界のアメリカ相手に
互角に渡りあっている感をアピールできる、つまり、
"威信"が保てているのに、もしそれを放棄した後のこ
とを考えた場合、さて、一体、この政権は何が取り柄
だと尋ねられた時に答えに窮する、つまり威信が保て
ないからではないかと考える次第です。

つまり、極端な話、ただ存続するだけなら、奴隷国家
となっても存続はできますが、それで納得する者がい
ないのと同様、核を手放すといっても、その代わりに
何か国家としての威信が保てる状況が編み出せないと
その何かを発見できないことには、非核化に誘導する
ことはきわめて難しいと思うわけです。

さて、話を元に戻して、そんなわけで、他のヨーロッ
パの君主も大なり小なり同じで、これもマクニール教
授の本にありますが、当時イタリア式築城術(要塞)や
武器(大砲)の進歩で、戦争をするにしても、一昔前の
戦いとは比較にならないくらいに桁違いにお金がかか
るようになっていたにもかかわらず、それでも帝王た
ちは戦争をし続けたわけです。

そして財政制度も、これもマクニール教授によれば、
フェリペニ2世は、
  『カスティリャの農民層に対する課税は、もう
 これ以上の増税は実質的に不可能な水準にまで達
 していた。』
 (『戦争の世界史(上) 』ウィリアム・マクニール著
 高橋均訳 p225  中公文庫2014年1月25日 
 初版発行』)
とあるので、たとえば、現代日本なら、国民全員に
広く薄く課税しているので、年間5兆円にものぼる
防衛費も何とかやりくりできるだろうけれども、当
時のスペインでは、やはり封建制の下、農民の税負
担が最も重かったでしょうから、到底その層に頼っ
た"中世的な財政制度"では、あるいは課税システム
では、大規模な戦争を立て続けに行なうには限界が
あっただろうと。

もっとも、それだから、フェリぺ2世なども、どん
どん大都市などに税金をかけるようになっていく、
それがオランダ独立戦争を招く事態にもなっていく
わけですが---。

本書の著者リチャード・ヘンリー・トーニーが扱う
のは、こういう商人の無数に出てくる、商業の大変
盛んになりつつあったヨーロッパ、そして王侯は破
産してでも機会があれば、名誉や威信のために戦争
をするような、16、17世紀で、

そこで、上記のような商人たちの活動は、王侯から
はその戦争の資金源(重税、高額の借金申込みや国債
の引き受け、など)として、また、国家からはその社
会政策によって、そして宗教からは教会によって、
さまざまの制約を受けることになりますが、その闘
争に個人主義が打ち勝ち、経済の自由が認められる
ようになっていく過程を論じようというわけです。

トーニー自身の言葉によれば、
  『講義の題目は、(中略)宗教改革のすぐ前の時代
 とそれから後の二世紀のあいだに、社会組織と経済
 問題に対して、英国における宗教思想がどのような
 態度を示したかをみようとするものである。』
 (本書P26)
ということで、おおざっぱには、1500~1700年ぐら
いのヨーロッパ、とくに英国が舞台、そしてとくに当
時の宗教(教会)がその個人主義、経済の自由というこ
とに対して、どのように対処していこうとしていたか
が主題です。
  
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