イラストレーターとして食べていくために必要なのは、「相場が安い」と文句を言うことではない

──メル先生の場合、ご自身の作品よりご本人のほうが有名、ということもあると思います。イラストレーターは裏方に徹するべき、という方もいるかと思いますが、それについてはどう考えてらっしゃいますか?

メル 僕も、ものづくりをするときは基本的にストイックでありたいので、自分の立ち位置に疑問を感じた時期もありました。けど、話題になって5~6年も経った今は「もうそれでいいかな」と思ってます。

大事なのは、イラストを良いと思ってもらうことなんです。「岸田メルはすごく真面目で純粋なイラストレーターだ」と思ってもらう必要はない。だから、僕自身がコスプレイヤーと思われようと、「あのコスプレイヤーの描く絵は良いな」と思われれば良いんです。僕自身の肩書はなんでもいい。

僕の描いた女の子の絵を見ても、「でも描いてるのあいつだし」って、顔を思い浮かべてゲンナリする人もいると思うんですが…それはもう諦めました(笑)。楽しんでくれる人さえ増えてくれれば、僕がどう思われても別にいい。

──ご自身の立ち位置にすごく自覚的ですね。

メル イラストレーターにもいろいろな方向性があって、僕みたいに前面に出る人もいれば、マンガ家でいうアシスタントとか、大きなプロジェクトの中のサポートに徹するような絵を描く人もいる。そういう人は、ほかの人と同じようなタイプの絵を安定してたくさん描くことが大事だったりする。その場合、自分を前に出すと逆に邪魔になることもあるでしょう。反対に、僕は自分でオンリーワンの個性を出していかなきゃ、と思っている。

どっちが良いという話ではなく、求められることによってスタイルが違ってくる。だから、プロデュースの方向性、「自分がどういうところで、何をして、お金を稼いでいくのか」ということに無自覚ではダメだと思います。お金を稼ぐには、お金を払うだけの価値のあるものをつくらないといけない。

自分が描きたい絵とお客さんが見たい需要のある絵は一致しないことのほうが多いです。その中で、「自分に何が求められているのか?」ということは常々把握する必要がある。絵を描く人の人口は増えていますが、僕の印象だと、絵描きになりたい人でそこまで思い至っている人って、そんなに多くない気がしています。

インターネットの一部には「お金を稼ぐのは悪」という文化がありますけど、いまだに意味不明です。その価値観に毒されてしまうと、生きていけない。例えば、「イラストの相場が安すぎる」とよく話題になったりしますが、企業側だってイラストを買い叩こうとしているわけじゃない。それは予算がないだけの話で、発注側は敵じゃないんだから、それを悪と言ってもしょうがない。お金がほしいなら、予算がある企業と仕事をするしかない。

──一言で「イラストレーター」と言っても、どうやってお金を稼ぐイラストレーターになるかを考えるか、ということですね。

メル お金の問題は切り離せません。お金や仕事は自分から得ていかないといけない。僕の場合、こんな変なポジションになって結果的に得してますが、加減が難しいですね。ずっと変なことを続けていると、より過激なものが求められますし、そのまま行ったら最終的には燃え尽きるしかないですからね。燃え尽きるのは嫌なのでどこかで留めないと。
http://kai-you.net/article/27047


「予算のある企業と仕事をするしかない」ってその通りだと思う。

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